BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 次回で最終章。
 だがその前にこのシーンがうまくかけてるか心配。
 戦闘シーンは書いてて自信がなくなってくる。

 間違って昨日の晩投稿してしまいました。既にご覧の方は申し訳ありませんでした。


覚悟の者

 重音テトの処刑を見せつけられて心の折れかけたソーナ一向は盾子が約束通り開けた第一壁の居住区域へと進んだ。

 居住区域という事は必然的にここから先ソーナたちの前に立ちふさがるザコは虚ではなく破面。

 流石に破面は大広場の虚の数程はいないだろうが2~5人程との戦闘は覚悟しなくてはならない。頼りになるテトももういない。

 

「会長、なんだか静かすぎませんか?」

「逆に不気味です」

「二人とも落ち着きなさい」

 

 破面の魔力、霊力を感じ取れないソーナたちは忍術でそれぞれの属性で周りの音、振動、熱、空気などを感じながら不意打ちを徹底的に警戒した。

 不意打ちを警戒すると同時に先行して敵を発見することにより戦闘を回避したり逆に不意打ちを仕掛けたりなど。

 だがその結界に不自然なほど何も引っかからない。

 

「しかし二人の言うとおり何も反応がなさすぎです。

 存在してる限り微弱な熱や振動、空気の流れの変化はあるはずですがそれすらありません」

「このフロアには破面が待ち受けていると思ってましたが……まさか本当に誰もいない?」

 

 ソーナと椿が中心的に現状の不可解さを考えていると仁村留流子が何かに築いたようにつぶやく。

 

「もしかして」

「何かわかったんですか」

「テトさんは私たちを役者に見立てていると言いました。

 盾子さんにとってこれは自身をラスボスとしたゲームなのではないでしょうか」

「ありえます。むしろ豹変した盾子さんならそう考えた方が妥当ですね」

「だとすれば敵がいないこの部屋はさしずめラスボス前のボーナスダンジョン」

「さすが男の子ゲームが好きだね」

 

 ソーナたちは注意しながら部屋らしき場所へと向かう。

 だが個室それぞれには電子ロックがかけられている。

 もしやと思い自身の持つ電子生徒手帳をかざしてみると案の定ロックが外れた。

 だがいくつかある部屋の中で開いたのは中華風の部屋と和室二部屋、それとテトの部屋と恋の部屋。

 そこには禍々しいオーラを漂わせる箱が部屋のど真ん中に置かれていた。

 中にはそれぞれ血で染まった藁人形、紫色の液体が入った小瓶、ギロチンの刃、腹にナイフの突き刺さったフランス人形。

 その中で藁人形にだけは誠司以外何か知ってるようだ。

 

「この藁人形はもしかして」

「ええおそらく」

「え? 知ってるんですか」

「誠司くんは来てないから知らないよね。

 これは日本妖怪のあるところから最近盗み出されたらしい御縁の藁人形。

 所有者が死に直面すると死から救ってくれるのですがその代り大切な人が身代わりに死ぬという呪具らしい。したしい

 しかもその大切な人は自身が死んだ方がマシと思えるくらい大切な人限定だとか」

「そ、それは恐ろしいものですね」

「だとすれば他の道具も大きな代償を必要とする便利アイテム」

「いかにも盾子さんの考えそうなこと。正直リスクを背負ってでも持ってきたいですが盾子さん相手には逆手に取られる危険性が大きいですね」

 

 ソーナたちはその道具を一つも持たずにその場を後にした。

 再び周りに注意しながら先へと進む。

 テトと言う頼れる案内人がいないためこの道が正しいかもわからない。

 迷い迷いながら道なりに進む。

 そしてある程度の距離を進むと火遁使いの由良が何かを感じ取った。

 

「会長、熱に反応が」

「距離と何の熱かわかりますか?」

「まだ距離はあるようですがこの熱量と大きさはキセルかタバコってとこでしょう」

 

 由良頼りに進んでいくと徐々に他のメンバーの感知にも同一人物らしきものが引っ掛かる。

 そうしてソーナたちは目的に、第二の壁へと到着した。

 

「よう遅かったな」

 

 そこで待ち受けていたのは余裕そうに煙草を吹かすプロシュート。

 壁にもたれかかって知り合いと待ち合わせするかのようにソーナたちに話しかけた。

 その敵意のなさに一番ホッとしたのはプロシュートに直接師事してもらった匙。

 

「プロシュートさん! よかった師匠にここで会えて。

 あっそうだ大変なんですテトさんが」

「知ってるよ。盾子に殺されたんだろ?」

 

 プロシュートは吸っていたタバコを捨てて足でぐりぐりと火を消す。

 

「テトは確かに家族だが俺たちにとって邪魔だった」

 

 壁から離れソーナたちの近くまで歩いていき懐から出した物が良く見える位置まで近づきそれを見せる。

 

「だからこれで殺された」

 

 プロシュートは自身の電子生徒手帳をソーナたちに見せつけた。

 

「そ、それは!?」

「そうだよ匙、お前らが持ってるもんと一緒だ」

 

 匙はそれが何でどういったものかを理解してる様子なのになぜそんなものをさも当然のように見せてきたのかわからない。

 前セリフなしなら校則の落とし穴に引っかからないように自分も持っていると誇示するためと思えたかもしれないが、今ではそんな風に考えることができない。

 

「残念だがあいつは甘すぎた。

 だが、だからこそあいつの在り方こそが誇銅が俺たちに望むことかもしれねえな」

 

 協力者と思えたプロシュートはテトのように壁を開けてくれるようなそぶりは一切せずむしろ阻むように目の前に立つ。

 

「今頃外では人口破面たちがリアス・グレモリーたちと戦ってる妖怪とリアス・グレモリーを殺しに行ってる。

 多分今頃全滅してんじゃねえか? 人口破面の方がな」

「リアスたちが盾子さん自身が創り出した破面に勝てるとは思えないですが?」

「会長、友人に対してその感想はどうかと……」

「残念ですが真実です。ここでリアスたちに気を使ってもしょうがないですし。

 帰ったらもちろん内緒ですよ」

「悪魔なんかに負けねえよ。妖怪の方にだ。

 いや、22号の馬鹿は生け捕りにされてるかもな」

 

 ソーナの中ではリアスたちは既に昔のような良き親友でライバルで超えるべき壁という評価は完全に消え去っていた。

 と言うよりも悪魔の価値観より日本妖怪の価値観に浸食されつつあるソーナ眷属。

 なので既に悪魔事態の評価が低めになっている。

 

「プロシュートさんそれじゃ盾子さんの味方してるみたいじゃないですか?」

 

 匙はプロシュートがまるで味方ではないような態度に疑問を感じた。

 いや、尊敬する師匠が家族を平気で惨い殺し方をする人の仲間だと思いなくなかった。悪盾子と対面したソーナと似た状況に陥っている。

 

「確かに盾子は止めねえといけない邪悪だ。

 だがよ、その前に俺にはやらなきゃならないことがある。

 盾子を止めるより先にな」

 

 プロシュートは鋭い目つきをさらに鋭くする。

 

「俺たちの大切な誇銅を殺された恨みをよ」

 

 そしてソーナたちの味方ではない決定的な言葉を伝えた。

 

「俺はここに来る前はとあるマフィアの暗殺チームに所属してた事は知ってるよな?

 そこで俺たちは組織の為に力を尽くしてきたのに地位どころが満足な報酬すら与えられなかった。

 そのうえボスに仲間を二人殺された」

 

 プロシュートは自身の過去をしみじみと語りだす。

 ソーナたちはそれを黙って聞き匙は未だに信じられない様子。

 

「なんでだろうな、その時から死んだ後まで俺の心には復讐を遂げられなかった無念ばかり残ったのによ。

 誇銅に出会ってなんていうか前に進めるようになった。復讐に縛られなくなった」

 

 しみじみと語るプロシュートの拳にギュッと力が入る。

 声も先ほどよりも力と感情が混ざる。

 

「なのによ、誇銅が死んだ瞬間俺の中にまた復讐の鬼が暴れだしやがる。

 もう俺には仇をうつ以外のことが考えられねえ。

 前のボスへの敵討ちもしたいくらいだ。だが流石にそれはあきらめざるを得ない。

 だが誇銅の仇は是が非でも、何よりも優先させるんだァよォーッ!」

 

 プロシュートは感情を爆発させた。

 その爆発した感情の言葉がどれほどプロシュートが恨みを抱えてるかをソーナたちに知らしめる。

 

「盾子を止めるなんざそれからだッ!

 むしろ今はあいつが必要だッ!

 だから利用する」

「でも、電子生徒手帳を渡されたということは盾子さんに呪いをかけられたってことですよ!?

 プロシュートさんもテトさんみたいにきられるかもしれないんですよ!?」

「俺が復讐を望んでる限りあいつは俺を信用し確実な情報と俺を生かす戦略を渡す。

 だが謀反の可能性もある俺に首輪をつけるのは当然だな。

 前のボスがかけた首輪よりはるかにマシなもんだし甘んじて受け入れてやるよ」

 

 プロシュートは拳銃の形をした斬魄刀を取り出した。

 破面の最大の武器を取り出したということは……。

 匙以外のソーナ・シトリー眷属は身構えた。

 

「おしゃべりはここまでだ。さっさと始めるぜ」

「は、始めるって……」

「わかってんだろ? ここに来て殺ることと言えば。

 食らいつけ『魂合怪魔(グラン・ムエルテ)』」

 

 プロシュートは自身のこめかみに拳銃の形をした斬魄刀を突きつけ引き金を引いた。

 すると銃声と共にプロシュートの体は白い煙に包まれる。

 そして煙はだんだん大きくなると同時に紫色へと変色していく。

 煙を引き裂き中から現れたのは、全身に目玉がある巨大な紫色の化け物。その下半身はなく胴体から下は触手が数本垂れている。

 まさしく避けられぬ死を具現化した化け物の姿。

 

「殺し合いに決まってんだろ!

 俺は暗殺者だがここは正々堂々勝負してやるよッ!」

「でも! 盾子さんに協力すればたくさんの死者が出る!

 あの人は関係ない人も巻き込もうと!

 プロシュートさんの復讐以上の罪のない人が!」

「ああ、そうだな。

 盾子の計画が進めば間違いなく三大勢力以外にも被害が出る。

 それも人外だけでなく人間にも。

 俺たちのような悲劇をさらに生むかもしれない」

「だったら」

「やるんだったらトコトンやる。絶対逃がさないッ!

 それに、たいしたこたァねーだろォーッ!

 毎日、世界中のどっかで途方もない数の命が消えている……。

 それよりは軽く済むッ!」

 

 世界中の人を巻き込んでも復讐を成し遂げようとする姿勢。

 悪役の鏡のような躊躇無い残虐さ。

 それに見え隠れするプロシュートの何が何でも成し遂げようとする覚悟。

 

「そ、それじゃ……」

「匙、無駄です。

 プロシュートさんはもう覚悟を決めています。

 覚悟を決めた人には何を言っても無駄です。それはあの人から直接指導を受けたあなたが一番よく知ってるでしょう?」

「敵を前にして余裕すぎやしねえか?」

 

 プロシュートの無数の目から紫色のガスが噴き出す。

 そのガスは触れた生物を老化させるガス。体温が高い程早く、低い程遅く老化していく。

 ガスの正体と効力の恐怖はソーナたちは知っていた。

 だから素早く反応して距離をとった。

 しかしそれがプロシュートの狙いでもあった。

 

虚砲(セロ)

「くっここから一方的に攻撃されるのはまずい」

 

 ソーナは眷属たちに合図を出してプロシュートを囲んで遠距離忍術を当てようとするが。

 

全方位虚砲(オール・セロ)

「あの目全部から虚砲を撃てるんですか!?」

 

 全方位の虚砲により簡単に崩壊させられてしまった。

 ただでさえガスで視界が悪く近づくことも安易にはできない、室内であるためガスが広がれば逃げ場もない。

 

「盾子さんまで力をできるだけ温存したかったのですが仕方ありません。

 不本意ですが大技で決めに行きます」

「でも、まだプロシュートさんに確実に当てられる確証もどれほど効果があるかの予測も付けられてません」

「小手調べをしてもしもガスで老化させられれば元も子もありません」

「そうですよね」

 

 ソーナは特別なコンパスを取り出して方角を調べる。

 そして小さな水の生物を創り出し配置させる。

 

「草下、由良、椿、桃、巡、留流子、匙」

 

 眷属たちに自分たちの配置を指差す。

 ソーナ眷属はその位置に素早く移動する。だが匙だけはなぜか動かない。

 

「匙ッ!」

「は、はい!」

 

 匙は一歩遅れて指定された配置につく。

 ソーナ眷属は巨大な魔力を練り上げて一気に放った。

 

「水遁魔獣」

「火遁魔獣」

「雷遁魔獣」

「風遁魔獣」

「土遁魔獣」

「「陽遁魔獣」」

「陰遁魔獣」

 

 ソーナは水のリヴァイアサン、由良は火のフェニックス、二村は雷のユニコーン、花戒は風のグリフォン、草下は土のスレイプニル、椿と巡は二人の力を合わせて光のオルトロス、匙は闇のケルベロス。

 それぞれ生物の形をした巨大な属性の塊を放つ。

 さらにそれぞれの属性が正しい方角から同時に放たれ、互いの力を高める。

 

「負けるかよッ! 全方位虚砲」

 

 プロシュートの対抗全方位虚砲を受けて生物たちは一時止まるが負けじと抗う。

 プロシュートも攻撃を受けないように必死に虚砲を放ち続けソーナたちも放ち続ける。

 だが、突如闇のケルベロスだけが虚砲に突破され、闇の加護がなくなった光のオルトロスが負け、闇と光の協力がなくなった五行もドミノ倒しに崩れ去った。

 

「匙ッ! 何をしてるんですか!」

「す、すいません」

 

 ソーナはその場で匙を厳しくしかりつけた。

 それはプロシュートの攻撃に負けたからではない。

 何か匙に異常がないかと駆けつけた時に匙が今までの覚悟目からとんでもなく情けない目に変わっていたからだ。

 ここまで来て覚悟を失った匙に対してソーナは怒った。

 それは連携を重視するソーナたちにとってこの心の弱さはまさしく命とり。

 

「尊敬していた人が敵になる事のショックは私もわかります。

 ですが、こんな土壇場で尻込みする程度の覚悟でここに来たのですか!?」

 

 ソーナが匙をしかりつけてる間もプロシュートはもちろん待ってくれていない。

 他の眷属たちが何とか足止めを行っているだけ。

 

「とんだマンモーニが混ざってたみたいだな!」

「元ちゃんは弱虫なんかじゃない!

 自分よりも強い相手にも何度も立ち向かえる強い子なんだから!」

 

 花戒は匙をマンモーニと罵るプロシュートに対して抗議するが、その講義はハッと花で笑われた。

 

「いいやそいつはママっ子(マンモーニ)だ。

 ビビったんだ……甘ったれてんだよ」

「プロシュートさんの言うとおりです」

「会長まで!?」

「自分を育ててくれた先生が敵になれば私も焦りました。

 なんせ自分の力は今は先生の劣化でしかないのですから。私も勝てないと思いました。

 正直怖気づきました。だけどそれは先生のせいじゃなかったのです。

 心の奥底で怖気づいてたからでした」

「か、会長、何を!?」

 

 ソーナはこれまで何もしなかった、実際は戦闘前に合図で止めていた誠司にサインを送り動かせる。

 そして他の眷属に遠距離から援護せよと匙以外に合図を送り自身は誠司共にガスが充満しているプロシュートの方へ向かう。

 

「成長してください匙。

 そうしなきゃ私たちに栄光はありません。

 盾子さんどころかプロシュートさんにも勝てません。

 そしてはっきりと言います。私たちは何も失わずに成り上がろうとする口だけとは違うんです」

「ほう突っ込んでくるか。

 確かに俺のガスは体温によって進行速度が変わる。

 だが散々動き回ったお前の体温ならそう時間はかからねえ!」 

 

 先ほどよりも大量の老化ガスが噴射され完全に視界が奪われてしまった。

 これではこちらの攻撃は照準を合わせることができず全方位から攻撃できるプロシュートの攻撃は軌道が見えない。

 さらに迫りくるガスから有限の逃げ道を使って逃げ続けなくてはならない。

 だが、敵が見えないと言うのはプロシュートも同じ。

 しかしプロシュートは破面の能力でソーナたちの正確な位置を霊圧で知ることができる。

 それでもソーナは眷属たちに自分たちとは逆側に回り込めと合図を出した。

 そして自分は老化ガスの中に突っ込んだ。

 

「水遁、蒸気暴威数(ジョウキボーイズ)

 

 大量の蒸気暴威をプロシュートと護衛として自身の周りに配置させる。

 蒸気暴威を通してガスで見えない部分を補うと同時に攻撃の役割も持たせる。

 本来破面プロシュートのガスは本来の偉大な死(ザ・グレイトフル・デッド)よりもはるかに老化スピードが速い。例え体温の低い女性であってもすぐにヨボヨボの姿になるくらいに。

 だがソーナの姿はあまり老いていない。

 

「成るほど、水を操って体温を上げて緩和させてるってわけか。

 この爆弾も爆発と同時に周りの気温をさげている。

 だが、そう長くは続かない」

 

 ソーナは徐々にだが確実に老化している。

 

「まだです」

 

 老いていく過程で基礎体力も落ち、動き回ることで体力も大きく失う。

 そうして維持できる蒸気暴威の数もどんどん減っていく。

 

「もう爆弾を維持するのも避けるのも限界だな。

 そんで……俺が後ろのガキに気付いてないとでも?」

「!!」

 

 プロシュートの言葉にソーナに動揺が現れる。

 そうして一時の動揺と老いのせいで攻撃が避けられない。

 

「くっ」

 

 ソーナはガスの外で待機させていた蒸気暴威を通して指示を送る。

 するとガスの外からプロシュートに向かってそれぞれの属性大技が飛来してくる。

 だがその攻撃はいとも簡単に迎撃された。

 

「蒸気暴威、水爆輪(すいばくりん)

 

 数体の蒸気暴威が手を繋ぎ合いプロシュートの首輪となる。

 そして同時に爆発して無防備な首を爆撃した。

 だが、プロシュートにダメージが通った気配はない。

 

「おいおいいつまでそこの新入りを取っておくつもりだ?

 いくら切り札とはいえきらなきゃなんの意味もないぜ」

「やっぱり誠司くんの正体は盾子さんには露見してましたか」

「ああ、知ってるぜ。

 そいつが冥界をたった7人でほぼ落とした超人だってことをよ」

 

 プロシュートは自身から少し離れたところでチャンスと指示を待っている誠司の存在に気づいていた。

 そしてソーナが引か隠しにし、悪魔化もせず駒を渡すだけの契約だけで眷属としている誠司の正体も知っている。

 

「立ちふさがる敵をその身一つで戦う超人。

 異能に対して恋並の耐性があるとは知っていたが俺のガスも防ぐとは恐れ入ったぜ」

 

 誠司はプロシュートのガスの中でも老いずその若さを保ち続けている。

 すべての蒸気暴威を失って自身の事も知られ奇襲の意味もなくなった事を悟った誠司はソーナの指示もなくプロシュートに襲い掛かった。

 

「ふんっ!!」

「はぁっ!!」

 

 プロシュートと誠司の力比べが始まった。

 プロシュートは片手だが足がなくもう片手で踏ん張りをきかせている。

 最初は良い勝負をしてるように見えたが体格差もあり徐々にプロシュートが押してきている。

 ソーナは既に老いすぎて戦える状況ではなく、仲間の援護も蒸気暴威の伝達なしでは弱っているであろうソーナにあたる危険性が大きい。

 

「へっなんで超人が悪魔の助けをしている?

 超人は悪魔に対して俺たち並みに良い印象はないハズだろ?」

「僕は怖気づいたせいで最大の友を、タッグパートナーを失い、仲間も見捨てた。

 そんな僕を再び立ち直らせて、仲間のもとへ帰れるようにしてくれたのがソーナさんだったんだ。

 だから僕は超人同盟に帰る前に、その恩返しとしてソーナさんの、希望にあふれた夢の力となるんだーッ!」

「おおっ!?」

 

 先ほどまで押されていた誠司が巻き返しに入った。

 だがそれでも五分五分。

 やはり外部からの一撃が望ましい。

 

「お前の覚悟はわかった。

 だがな、覚悟は俺のが上だぜッ!」

 

 プロシュートの力がさらに上がり再び押し戻す。

 誠司も踏ん張るがそれも長くは持ちそうもない。

 

「ふ、ふぐぐ……」

 

 誠司が今にも押しつぶされようとしたその時。

 

龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)! うぉぉぉぉぉっ!!」

 

 修業の成果で完全にコントロールできるようになった龍王変化でガスの中へ突っ込んでくる匙。

 

「奇襲ってのは気取られちゃ意味ねえって教えただろ!

 そんなの虚砲で簡単に迎撃できる」

「ええその通りです。やっぱりこの力は暗殺には向きません。

 ですが、師匠レベルの注意も引ける迫力がある! 今はそれが重要、それだけあれば脱出できる!」

 

 プロシュートは腕の目から向かってくる匙を正確にとらえる。

 だが、その刹那にほんのわずかだが注意が匙に向いた。

 それが匙の狙い。

 

「うおおおおおお」

「うおっ!!」

 

 押し込まれていた誠司が意識が逸れ力がほんの少し抜けた隙をついて一気に押し戻した。

 そしてつかんだ手を逆に持ち上げて空中に放り投げた。

 

「いくぜ誠司!」

「ああ、匙」

 

 匙は空中にいるプロシュートの体に全ラインの半分をくっつけ残りの半分を誠司に繋ぐ。

 誠司はプロショートの巨体をパイルドライバーの態勢に捕まえる。

 

「「ドレイン・ファイバー・ドロップ」」

 

 プロシュートのエネルギーを誠司に譲渡した最高威力の力で地面に脳天をたたきつけられた。

 周りのガスが消えガスを受けたソーナと匙の老化もなくなる。

 

「匙、わかってくれたんですね」

「はい、会長の覚悟が言葉ではなく心で理解できました。

 会長が既に覚悟を決めたってのに俺は、この土壇場でビビっちまいました。すいませんでした!」

 

 匙はその場でソーナに土下座をする。

 ソーナは何の言葉も掛けずに匙の頭を軽く撫でて立ち上がる。

 

「匙、あなたの中途半端な覚悟で全員を危険にさらしました。

 私にだけ謝るのではなくみんなにも謝りなさい。

 そして今日の事を忘れてはいけません」

「はい!」

 

 これで終わった。

 誰もがそう思った瞬間異変は起こる。

 

「!!? な、なぜ!?」

「再び老化が!」

「あともうちょっとで喉に食らいつけるって「スタンド」を決して解除したりはしねえッ! たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようともなッ!」

 

 解放状態が解けたプロシュートが再び立ち上がった。

 頭に大ダメージを負って足元は若干ふらついているがそれでもまだまだ戦えそうな状態で立つ。

 

「もうお前たちは俺のスタンドに侵されている!

 五行の一つと陰陽の片方をつぶせばこの状態の俺でも殺せる!」

 

 ソーナは老化以前に老化状態での忍術の使い過ぎで魔力切れ。

 誠司は送り込まれたパワーが多すぎて技の反動で負傷。

 匙も老化状態での精密作業と巨大なパワーの移動で全力では戦えない。

 プロシュートは拳銃の斬魄刀の銃口をソーナと匙に向けた。

 

「やらせません!」

 

 残りのソーナ眷属がプロシュートに向かって術や体術で応戦する。

 だが、術は拳銃からの虚弾で相殺され、体術はプロシュートの方が格段にうえで簡単に流される。

 

「俺はさっきのレスレクシオンが解かれたんじゃねえ、解いたんだよ。

 この意味がわかるか?

 俺はもう一度レスレクシオンが使えるんだ。

 レスレクシオンすれば傷も癒える。

 癒えるのは外傷だけだがそれだけで十分だ」

 

 この状況でその言葉は死刑宣告にも等しい。

 だがソーナたちは少しも絶望した表情を見せずむしろその情報を得て動きを変えた。

 全員が一カ所に集まるように動くと言う一見愚策のような手段に。

 そして全員がプロシュートからそれなりの距離がある場所で一カ所に集まると椿が一人でみんなを背にして前に出た。

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)

 

 自身の神器を取り出して構える。

 プロシュートはその場で拳銃を自身のこめかみに構える。

 

「俺の攻撃を跳ね返すつもりか?

 だが無駄だ。強くなったとはいえお前じゃ無理だ。

 そっちの超人がまだ健全なら跳ね返せたかもしれねえけどな」

「……プロシュートさんを甘く見たつもりはありませんでした。

 ですが、それでも私たちの4つある奥の手のうち3つも使うとは思いませんでした。

 『追憶の鏡(ミラー・アリス)』禁手化!」

 

 椿の持つ追憶の鏡が不思議な光を放ちながら宙に浮かぶ。

 不思議な光はだんだん怪しい紫色の光に変わり鏡が見えなくなっていく。

 

「禁手化『百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)』」

 

 手に持てるサイズだった鏡は紫色に塗られた大きな三面鏡へと変化した。

 そして椿の傍に浮遊している。

 

「御開帳」

 

 椿がそういうと三面鏡が開き正面のプロシュートを映す。

 移された鏡の中に黒い怨霊の手が映り込み外に出ようと鏡をぺたぺた触る。

 

「俺が言えたことじゃねえが気味が悪いな。

 食らいつけ『魂合怪魔(グラン・ムエルテ)』」

 

 プロシュートは再び刀剣解放しスタンドと一体化し巨大な怪物となる。

 それでも椿の三面鏡は怪しくプロシュートを映し出す。

 

「例えその鏡がどれだけ強いカウンターを持っていたとしても俺の能力の前には関係ねえ!」

「強い妖力にあてられて変化してしまった私の神器。

 油断はさせませんよ」

 

 プロシュートを映す鏡に映る怨霊が触った部分が白くなる。

 そしてその白くなった部分に怨霊の手が文字を書き込む。

 

(来世で会いましょう)

 

 するとすべてを昇天させるような極大の光がプロシュートに向かって放たれる。

 その光はプロシュートの老化ガスを消しながら進む。

 

「うぉっ! 俺のガスを裂いただと!?」

「私の禁手『百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)』は怨霊が書く文字によって属性が変わりその属性の強力な攻撃を放ちます」

 

(すべて奪ってやる)

 

 今度は鏡の中から怨霊の塊のような巨大な玉が放たれた。

 プロシュートが全力で虚砲を放ってやっと相殺することができるほどの威力。

 この力にはさすがにプロシュートもまいった。

 

(熱い 熱い ここから出して)

(こわいよ こわいよ 痛いよ)

(僕の 私の 手は 足は 首はどこ)

 

 それから3発程火、雷、風の大技を放つもプロシュートには届かない。

 

「正直驚いたぜ。まさかこれほどのパワーがあるなんてよ。

 だが、こんな強力な力ノーリスクじゃ使えねえだろ?

 例えば色が薄くなっている事かな」

 

 プロシュートの言うとおり三面鏡の絵具で塗られたような紫色が最初と比べ薄くなり鏡にもひびが入った。

 椿ももう見抜かれたかと思いながらふっと笑い余裕を見せる。

 

「その通りです。

 この『百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)』は使う程にその色を失います。

 それでも使いつづければやがて鏡も割れしばらく使用不可となってしまいます」

「やっぱりな」

「ですが、それもこまめに休ませれば問題ありません。閉帳」

 

 そういうと三面鏡は閉じ紫色が徐々に戻り始めた。

 

「このように閉じていれば少しずつ戻ります」

「敵に教えちまっていいのか?」

「ええ、もう配置についたので」

「!!」

 

 椿が何やらネタばらしをすると椿の後ろにいたはずのソーナたちが消えた。

 プロシュートが『百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)』の強力な攻撃と陰属性の時に生まれる霊障を煙幕として分身とすり替わったのだ。

 そして本物はプロシュートを取り囲んでいる。

 

「匙、今度は大丈夫ですね?」

「はい、もちろん」

「させるかッ!!」

「邪魔はさせない!!」

 

 プロシュートは今度はガスの噴射量を一気に高めて妨害しようとするが誠司の介入によりガス噴射に意識を割けない。

 

「では行きますよ! 水遁魔獣」

「火遁魔獣」

「雷遁魔獣」

「風遁魔獣」

「土遁魔獣」

「「陽遁魔獣」」

「陰遁魔獣」

 

 水のリヴァイアサン、闇のケルベロス、火のフェニックス、土のスレイプニル、風のグリフォン、雷のユニコーン、光のオルトロスが再びプロシュートを襲う。

 さし程と同じようにプロシュートの全方向虚砲で防がれるが今度は匙のケルベロスも先ほどとは比べ物にならない程力強く食らいついている。

 

「ぐおおおおおおおおおおおッ!!」

「いっけ―――――――――――!!」

 

 巨大な属性魔獣たちはついにプロシュートの全方位虚砲を突破して本体に食らいついた。

 ソーナたちの攻撃は多数であり属性の相乗効果を足してはいるがこの勝負の最後の決め手になったのは間違いなく思いの力。

 その攻撃を受けたプロシュートは今度は間違いなく刀剣解放を解いたのではなく解けた。

 

「プロシュートさん、貴方が負けたのはたった一つシンプルな答え。

 暗殺ではなく試合をしたことです」

 

 倒れ動かなくなったプロシュートに近づき声をかけた。

 それはなぜ自分たちとまともに勝負をしてくれたのか。なぜ得意の暗殺で殺しにこなかったのか。そうすればおそらく自分たちはほぼ勝ち目はなかった。

 そう思いこの言葉をかけるがプロシュートはソーナたちから顔をそらして答えない。

 その時、プロシュートはぼそりと何かをつぶやいた。

 小さな声だったが不思議とその声はソーナたち全員に聞こえた。

 

「匙……よくやったな……」

「師匠……」

「……お前たちもよくやった」

『プロシュートさん……』

 

 それは褒めの言葉。

 その言葉がなぜ暗殺ではなく試合で戦ってくれたかの答えだった。

 

「栄光は……お前たちにある……」

 

 プロシュートからの褒めの言葉に感動の静けさが包む。

 

「はい! しょーもない感動はそこまで!」

 

 その空気をぶち壊すようにモノクマが介入してくる。

 案の定感動の空気はぶち壊され次の恐ろしい結末を予測させる。

 

「プロシュートクン、わかってるよね?」

「ああ、そういうルールだ」

「今回は負け犬暗殺者であるプロシュートサンの為に、スペシャルなおしおきを用意させていただきましたぞっ!!」

 

 モノクマの床下からボタンがおかれた台座がモノクマの高さまで伸びてくる。

 そのボタンをモノクマは木槌で押した。

 ボタンが押される瞬間、プロシュートは匙に向かって自身の斬魄刀である拳銃を投げた。

 そしてテトの時と同じようにプロシュートの姿は消え、大きなモニターに映し出される。

 

『フィレンチェ行き超超特急」

 

 レトロな電車の車内。そこにはプロシュートの他に胸元にジッパーのついたモノクマと胸元プラス両腕にジッパーのついたモノクマがいる。

 胸元にジッパーがついたモノクマがプロシュートに飛びかかり、もう片方のモノクマがその先にあるジッパーを開いてプロシュートを車外へ突き飛ばす。

 プロシュートは車外に放り出されたが何とか吹き飛ばされないように時速150キロに耐え抜きながら掴まる。

 その掴む手をさっきのモノクマ二人と新たに現れた下半身のないモノクマが突き落とそうとする。

 破面化したプロシュートは深手を負いながらもそれに抗い続けた。

 だが、突如電車のスピードが時速300キロ以上に加速される。さすがにプロシュートも余裕がなくなりついに完全に振り落された。

 プロシュートが吹き飛ばされると電車が止まった。

 そして運転室から釣竿を持った気弱そうなモノクマが出てくるのが最後に映し出され映像は消えた。

 

「いやっほうっ! エクストリ―――――――――ムッ!! ……あれ? みんななんだかテンション低いね~。

 もっとテトの時みたいにリアクションないの?」

「プロシュートさんは覚悟してました。

 だから私たちももう取り乱したりしません」

「は~つまんないの~。何にもないなら進んでいいよ」

 

 そう言ってモノクマはつまらなそうにして消える。

 匙は最後にプロシュートから渡された拳銃を手に持って眺めている。

 

「元ちゃん……」

「……プロシュートさんは……きっと俺たちに託したんだと思います」

「ええ、そうですね」

「……俺、絶対にプロシュートさんを無念のまま死なせません。

 この戦いが終わったら、復讐までは行かなくとも誇銅を殺した奴を見つけ出してきちんと罪を背負ってもらいます」

 

 匙が決意を決めるとプロシュートの拳銃がボロボロと崩れだした。

 そしてプロシュートの刀剣解放の姿のような半透明な化け物が現れ匙の中に入っていく。

 

「今の俺できると思います。いや、できます、禁手化」

 

 匙は化け物がすっと自身の中に入ってきて自分の中で埋まってなかった何かが埋まった感覚を感じた。

 なぜかそれが自身の禁手化であると心で理解できたのだ。

 

「そうですか。それは頼もしい。

 これで私たちの4つの奥の手は5つになりましたね」

 

 ソーナは頼もしそうに匙を見ると第二の壁を越えて先へと進む。

 プロシュートから力と思いを託されたソーナたちの胸には大きな希望が宿っていた。

 その希望がまさかあんな形で崩されるとは夢にも思っていなかった。

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