BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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絶望の女神

 モノクマに案内され進んだ先はまるでゲームに出てくる魔王の間のような場所。

 あたりには水晶でできたモノクマの像やアンティークの道具が多数置かれている。

 

「どう! 世界を滅ぼそうとする魔王と世界を救う勇者(笑)が戦うには相応しい空間じゃない?」

「ええ趣味が悪いという意味ではね」

「わかんないかな~この一昔前のドラクエみたいな空間。ベターな設定にレトロナ空間をわざわざ演出したってのに」

 

 広々とした空間にそこかしこに置かれる置物。そのさらに奥には盾子が座る玉座の後ろにピラミッドに匹敵する量の砂が5つも盛られている。

 

「江ノ島盾子、お前に聞きたいことがある」

「ああ?」

「お前たちはなんでこんな事をしたんだ? それにそもそもフランドールや董卓や呂布は直接冥界や俺たちを狙ったがお前はなんでこんな回りくどいやり方を選んだんだ?

 他にも禍の団なら三大陣営の和平を撤回させる、英雄派やヴァーリーたちだって強い奴と戦いたいという目的があった。

 だけど俺はお前ら破面が何をしたいのかわからねえんだ」

「はあ? そんな事もまだ調べてないの、めんどくさ。

 ちょこっと操作マニュアル調べればわかる程度の事自分で調べろっつうんだよ。そんなつまんない事で私の手を煩わせんな」

「つまんない事じゃないだろ! 誇銅の家族だったフランドールも董卓も呂布も理由もなしに命をかけるなんておかしいだろ。

 確かに誇銅が死んだのは俺たち悪魔に関わっちまったせいかもしれないが死んだ誇銅の事を考えれば残った家族には平穏に生きてほしいと思った」

「ハイハイどうでもいいことだから自分で勝手に想像しな」

 

 ありったけの気持ちを込めて言った言葉を心底どうでもよさそうに流された事に動揺する一誠。

 フランドールや月相手にも話は一切通じなかったがそれでも怒りと言う表現でしっかりと答えてくれた。

 だが盾子は今まで戦ったどの敵とも違う反応を見せる事に未だに強い違和感と忌避感を覚える。

 

「さて、ごちゃごちゃ言ってないで始めようか? 最終戦にふさわしく正々堂々とね」

「望むところだ、お前に殺された魔王様の(かたき)()たせてもらうぜ」

 

 一誠がそう威勢よく言うと盾子は口元だけをニヤリとさせ手をポケットに入れた。。

 

「……!!」

 

 それは悪魔の身体能力のおかげか実戦を何度か潜り抜けたかはたまた訓練の成果か、ほんの一瞬だけだが盾子の行動に集中させられた一誠たちは真後ろから奇襲をかけてきた槍状の砂の一撃を回避することに成功。

 

「流石にこの程度でくたばる程拍子抜けはしなかったみたいだな」

 

 盾子はポケットから手を抜いて何も持っていないと手を広げて見せる。

 

「くっ、なにが正々堂々と戦うだ初っ端から卑怯にも背後からとはな」

「何甘い事言ってんだよ! 俺たちはここに殺し合いに来てんじゃねーか、卑怯もクソもねえよ。

 うぷぷ、それにボクの城に入ってきたんだからこのくらいの奇襲は覚悟しておかないとね。

 それに初歩的なブラフに引っかかるなんてダサ~イ」

 

 ゼノヴィアへの返答の中で何度もキャラを変えて話す盾子。確かに一般的には卑怯と呼ばれるような攻撃を加えたがそれでも盾子には一切の負い目はない。逆に相手がソーナたちであればその程度のブラフにはつられなかっただろう。

 

「まっ偶然でも初撃を避けたのは褒めてあげる。あんたたち程度の実力でよくできまちた~」

 

 相手を馬鹿にするような拍手、盾子の言動一つ一つが無駄なくリアスたちを挑発する。

 その挑発に乗っかる者約数名、ムカッとくる者弱冠数、動じない者一名。

 

「コイツ……言わせておけば……」

「はっ! ザコ虚にも勝てないクソザコじゃ私どころか下級破面にも勝てねーよ」

 

 ゼノヴィアの売り言葉にまたまた馬鹿にした買い言葉で返す。

 苛立ちで平常心は乱れているが初撃の不意打ちがきいたのか周りへの注意は怠っていない。

 だがそれでも盾子からすれば穴だらけな注意力、そこにつけ込まないのは完全に見下されているからだ。

 

「オラオラさっさと掛かってこいよ、ビビってんのかあぁ?」

 

 その挑発をきっかけにリアス、朱乃、ロスヴァイセの遠距離攻撃が一斉発射される。

 

「虚無砲、いや虚弾以下か……ん?」

「え!?」

 

 リアスが滅びの力を放った時、盾子に向かって腕を突き出した時ソーナから託された数珠が突如赤・青・黄・緑・茶・白・黒の七色に光りだす。

 リアスたちは何事かと驚いているが敵である盾子は特別驚いた様子はなく既に事態の予想をたてている。

 

「ソーナのブレスレットが!?」

「ほうほう」

 

 数珠玉が割れ漏れ出した光がそれぞれ水のリヴァイアサン、火のフェニックス、雷のユニコーン、風のグリフォン、土のスレイプニル、光のオルトロス、闇のケルベロスへとなり先に発射された攻撃を追うように盾子に襲い掛かった。

 

「ソーナはこれを私たちに託して」

「七属性の巨大な魔獣、こんな道具を用意していたとは」

「すごい、これなら盾子にも大ダメージを!」

「プロシュートを倒した属性魔獣たちか。あ~あ絶望的に予想通り、もっと予想外のことをしてほしかったな」

 

 盾子が砂で先に発射された魔法をろうそくの火を指でつまんで消すように消してから部屋の物の位置を変え指を鳴らす。一見何の意味のないような行為にリアスたちは意味を見いだせなかったがその理由はすぐにわかる事に。

 

「グギャゥ!」

「ギャーッ!」

「ブルルルルッ!」

「グォーッ!」

「バルルルル!」

「「ガルルルルッ!」」

「「「ガァァッ!!」」」

 

 数珠から飛び出した魔獣たちが互いを襲い始めたのだ。

 それぞれ阻害しあう属性の魔獣がそれぞれに噛みつき魔獣の猛攻は完全に中断。

 

「なっ! なぜ突然同士討ちを!?」

「さっきまで足並みそろえていた魔獣たちがなぜ!?」

「この場所は北北西に位置する、だけど私様が東北東へと変えました」

 

 木場、朱乃の疑問に盾子が親切に説明を入れる。

 

「東北東は今年の凶方位、つまり吉方位により力を増すその術はすさまじく弱体化するのです。

 まっ貴方たちはそんなこと知らないでしょうけど」

 

 盾子の言うとおりリアスたちにそんな知識はない。むしろ三大勢力でそのことを知ってるのはソーナ眷属と妖怪としてのキャリアをそれなりにもってから悪魔化した転生悪魔くらいである。

 

「ちなみに物の位置を変える事により風水を変えて互いに阻害しあう関係性に変えたのです。

 術者本人から放たれたものでないのでこの程度で攻略は可能」

「ソーナたちからの希望が」

「そして」

 

 盾子は神社で使われるような紙の人型を争う魔獣たちに投げた。そして呪文を唱えると魔獣たちが人型の中へと吸い込まれていく。

 さらにすべての魔獣が吸い込まれると人型はびりびりに敗れて魔獣が争うのを止めて襲い掛かる。ただし襲い掛かる相手は盾子ではなくリアスたちに。

 

「呪い返しの人型。受けた呪いや術をそのまま術者に跳ね返す術よ」

 

 傷ついた魔獣といえどリアスたちに力で跳ね返されるような威力ではない。

 一誠なら全力を出せば相殺くらいなら可能だろうが本当にすべてを出し切った全力でなければ可能性はない。

 

「まっ、これは技術面での絶望的な差を見せつけるためだけのものだけどね。

 次は絶望的な力の差を見せつけてあげる」

 

 そういうと盾子は空中の一カ所に大量に砂を集めて急速にある動物の形にして後を追わせた。

 

「砂の怪獣『守鶴(しゅかく)』」

 

 超巨大な砂の狸が巨大な魔獣たちを呑み込んでなお勢いは全く衰えずに襲い掛かる。

 その大きさと威力からリアスたちには何一つ防ぐ手段はない。

 一誠は何とか仲間をかばおうと盾になるように前に出た。だが、その砂の狸はリアスたちを呑み込もうとする一瞬にただの砂へと戻りリアスたちは大量の砂の中へ。

 

「このくらいじゃくたばらないでしょ~、さっさと出て来いよ~」

「ぶはっ! ぺっぺっ! みんな、無事か!?」

「私は大丈夫よ一誠」

「よかった、他のみんなは!?」

 

 まだ半分以上埋もれたままのリアスを引っ張り出しながら他の仲間も探す。しばらくすると他の眷属たちも次々に砂から這い出てきて一誠とリアスはその手助けをする。

 その無防備ともいえ自身の凶器である砂のど真ん中にいるというのに盾子は何もせずににやにやと無様に這い出てくる様子を眺める。

 

「大変だ! ギャスパーの姿が見当たらない!」

「なんですって!」

 

 這い出てきた中にはギャスパーの姿だけなかった。

 みんなそれぞれ、アーシアですら近くでアーシアを守っていたゼノヴィアと一緒とはいえ自力で脱出したというのに。

 

「……もしかしてギャー君の力じゃ砂の中から出られないんじゃ」

「!! それじゃ早く助け出してやらねえと。ギャスパー! 今助けてやるからな、それまで頑張ってくれ!」

「……ぷぷ、ギャハハハハ」 

 

 一誠が必死に砂を掘るのを見て盾子が大爆笑。

 その姿に普段温厚な木場すらも怒りをあらわにした。

 

「何がおかしいって言うんだいッ!」

「は~お前たち仲間の事も理解できてねーのかよ」

 

 笑い疲れた盾子は一度呼吸を戻してから話を続けた。

 

「そいつは砂が降る前に闇のシェルターに一人で閉じこもったんだよ」

「え、でも確かにギャスパーの禁手ならそのくらいの事は可能だ」

「チームワークや仲間意識なんて言っちゃって仲間の実力も把握してないなんてさ、滑稽だね。

 それとも、ギャスパーくんが君たちを信用してないだけかな?」

 

 盾子の言葉はズバリ的中していた。

 ギャスパーは砂に埋もれる前に禁手の闇で自身を守り盾子を一時でも油断させて奇襲しようと考えていたから。

 リアスたちを守らなかったのは盾子をさらに油断させるため。協力しなかったのは既に昔ほどリアスたちの間に絆がなくなったから。

 

「地面に触れ砂に埋もれてる間はお前の行動すべてが私に筒抜けなんだよ! そのデカイバリスタは隙を見て私に打ち込もうってのか?」

 

 ギャスパーは砂の中で自身を守る闇だけでなく周りに闇で作られた巨大なバリスタを創っていた。砂のガードを突き抜けて一撃で盾子を殺すために。

 

「敵を欺くにはまず味方からって言うけど味方だませても敵騙せてねーぞ」

 

 ドゴン

 

 砂の中から大きな音が響く。砂の中からなので音はそれほど大きくないように感じるがそれがどれ程の威力で放たれた音なのかはリアスたちでも想像できた。

 

「はいあま~い」

 

 そのバリスタの矢は砂の山を突き抜けることはできなかった。正確には殆ど突き抜けていた、だが表面上の砂がまるでネットのように矢を捕まえて盾子に当たる寸前で受け止められてしまったのだ。

 

「そんな、あの不意打ちを、あんな巨大な矢を簡単に受け止めるなんて」

「なんて強力な砂だ」

「仲間の信頼を裏切った不意打ちしっぱ~い♪」

 

 文字通り仲間の信頼を裏切ってまでの不意打ちは攻撃前に見破られ、覚悟の重い一撃も後数ミリのとこで届かない。

 

「そろそろ出て来いよ。それとも仲間の信頼を裏切って出にくいか? このまま砂の圧力でつぶしてやろうか?」

 

 盾子は砂に圧力を加えてギャスパーを圧殺しようとした。

 『砂瀑送葬』と同じ技だが規模は大きく力は弱くしている。耐えられなくなって無様に仲間に顔を出させようとしてるから。

 

「やめろ!」

 

 一誠が盾子を止めようと飛び出すと同時に他の眷属も次々と盾子を止めようと襲い掛かる。

 

「イギーズ」

 

 インディアンっぽい砂の獣たちがリアスたちの行く手を阻む。

 

「除け、モードチェンジ『龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)』」

禁手(バランスブレイク)聖覇の竜騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)

「我が敵を切り裂け、エクス・デュランダル!」

 

 まずリアス眷属内の神器、聖剣持ちが切り込む。だが、獣をいくら切ったり殴ったりしたところでひるむことなくすぐに再生しむしろ攻撃を取り込もうとしてくる。

 

「こいつら滅びの力がきかないの!?」

「雷光も効果なしですわ」

「一応ダメージはあるようですけど効果は薄いですね」

「浄化の炎も効いてる様子はありません」

 

 遠距離攻撃組も表面の砂を削るだけで貫通させるには至らない。

 小猫の攻撃に至っては本当のノーダメージ。火車の炎は例え水であろうと大地であろうと煙であろうと燃やすことができると黒歌から聞いた小猫は悔しさとその知識を生かして一か八か本気の炎を纏って一撃に賭けてみる事にした。ギャスパーを助けるためにも。

 

「はぁぁぁぁぁっ! ぐっ!!」

「その程度の炎でイギーは突破できるなんて思ったの? 自信過剰すぎっしょ」

 

 その結果むなしく小猫はイギーの体に取り込まれただけ。

 

「小猫ちゃん! ぐっこいつら」

「こいつらのせいで私たちも身動きがとれん」

 

 小猫も助けに行こうとするがイギーたちが邪魔をして進めない。

 戦闘に参加していないアーシアにもイギーがついている。ただしアーシアを見つめてじっとしているだけ。

 時折アーシアが遠距離回復をしようとする時だけ襲い掛かり邪魔をする。

 

「くそッ!」

「アハハハハハ」

 

 リアスたちは今までに絶対に勝てないであろう戦いに勝利を収めてきた。ライザー、コカビエルと当時はリアスたちも未熟も未熟で相当な実力差があったにも関わらず勝利。

 サイラオーグには負けはしたが良い戦いができるほどに。

 さらにフランドールに対しても手加減されていたとはいえ何とかくらいつき最強の一撃を耐えきる事もできた。

 しかしリアスたちは盾子のようなタイプは初めてであり、ここまで実力差と勝機のなさを実感させられたのは初めてである。

 そんな絶望の中に新たな希望が現れた。

 

「シャバッ!!」

 

 突如砂を突き破り黒い巨体が飛び出す。その巨体は小猫を捕らえたイギーを破壊し小猫を救い出して他のイギーたちをあっという間に撲殺してしまった。

 

「シャババババ、お望み通り出てきてやったぞ」

「誰なんだあいつは」

「あれがギャスパーの禁手『禁夜と真闇たりし劫の真眼』に眠っているもう一つの人格だ」

「じゃあ彼が魔神バロール」

「シャババババ」

 

 一誠とアーシア以外は始めてみるギャスパーのもう一つの人格、超人モードのギャスパーが砂の圧力を突き破って地上へ飛び出し気を失った小猫を小脇に抱えて盾子の真ん前に躍り出た。

 

「やっと出てきたか一番面倒な超人が。でも素超人よりはマシか」

「我を超人かぶれのド下等超人なんかと一緒にするな、今は魂だけとなったが我は原初の完璧超人に名を連ねた超人だ。

 この体でも貴様が知ってるであろう下等超人共よりもはるかに強いぞ。

 下等悪魔共受け止めろ!」

「え、ちょっとおおっと」

 

 バロールは小猫を一誠たちのいる方へ投げた。投げられた小猫を一誠が見事キャッチしたのを見届けてからバロールは再び盾子の方を向く。

 

「超人の戦い方は基本レスリングなのよね、それはあんたも一緒なの?」

「ああ、その通りだ」

「じゃあこんなのはどう?」

 

 そういうと盾子は角柱形で構成された巨体をバロールの前に創り出し対峙させる。

 大きさはバロールに劣らぬとも勝る程の巨体。

 砂の巨体はすぐさまバロールと組み合いロックアップの態勢へと持ち込んだ。

 

「なるほど我の実力を計ろうというのだな、面白いならばとくと見せてやろう!」

 

 バロールは砂でできてるとはいえ圧縮され硬度と重量をヘビー級となった巨体をそのままの態勢で持ち上げて腕力だけで強引に空中へ抛り投げた。

 

「シャバババ所詮下等生物の創った人形、我の敵ではない」

 

 空中に放り投げられた巨体を追ってバロールも飛び上がり追撃をかけようとしたが、砂の巨体は空中で一度バラバラになりバロールに複雑な技をかけた状態でもとに戻る。

 さらに落下地点には砂でできた鋭い針の山。砂で創られてるとはいえ盾子の魔力によりその硬度は本物以上。

 

「なんで超人相手にレスリングで勝負するわけ? 所詮人形なんだからこのくらいできるっつーの」

「そうでなくてはつまらーん!」

 

 バロールはがっちりと組まれた状態から力だけで砂の巨体の四肢を引きちぎって脱出し裏拳で巨体を破壊。

 さらには落下地点の針の山もエルボードロップで破壊してしまった。

 

「そうだ、どんどん小細工をしろ! 貴様ら下等生物は策を弄し側面から攻めねば我と戦うことは叶わぬ」

 

 再び形成された巨体は後ろからがっちりとホールドをかけるが、またしてもバロールはそれを力だけで巨体を四肢を無理やり引きちぎって盾子に投げ飛ばす。

 砂の巨体は盾子に当たる前に盾子を中心に真ん中から綺麗に割れ砂に戻った。

 

「さあどんどん来い、下等生物の攻撃などすべて真正面から受けきってやる」

「ふ~ん、じゃあ私の土遁がどれくらい超人に通じるか試させてもらうわ」

 

 そう言って盾子は大量のイギーと砂の巨体、巨大な砂の手に砂漠棺の砂を同時展開させバロールを襲わせる。

 

「そうだ、どんどん来い! ちょうど良いサンドバッグに出会えて我は嬉しいぞ」

 

 襲い来る砂の生物は素手で殴り消し、纏わりついて枯渇・圧殺しようとする砂をまたしても力だけで弾き飛ばす。

 盾子の手札はバロールただ一人によって封殺されている。それを好機と見たリアスたちはバロールが時間を稼いだおかげで回復も済ませチャンスにつけ込もうと考えた。

 盾子に気付かれないように取り囲むように移動し一斉攻撃を仕掛けようと考えたのだ。

 リアスたちは盾子はバロールで手一杯で自分たちに気付いてないと思っているが、実は盾子はしっかりとリアスたちを認識し逆に認識されないように反撃の準備を整えている。

 だが、その必要はなかった。

 

「今よ!」

「邪魔をするな―――――――――――ッ!」

 

 その攻撃を遮ったのは盾子ではなく味方のはずのバロール。

 滅びの力や雷光、魔法陣攻撃は砂の盾で止められたが一誠にゼノヴィアの聖剣と木場の禁手たちを一掃したのはバロール。

 盾子の砂のモンスター軍団を突っ切ってわざわざ仲間も妨害に駆けつけたのだ。

 

「我の戦いを邪魔するなッ! 我の邪魔をするなら例え仲間であろうと容赦せんぞ。

 特に赤龍帝、貴様には一度言ったハズだ殺されたいのかッッ!!」

「戦いを単純な足し算ととらえてるような素人に負けたなんてフランもうかばれないね」

「フランというのは貴様の仲間の吸血鬼だなギャスパーの記憶にある。

 下等生物にしてはかなりの強さと復讐心があったようだがこんな奴らに自滅しては確かにうかばれんな」

「まあそれは置いといて、やっぱりあんたの目厄介だわ。まず視界から奪いましょうかね」

 

 盾子の後ろに山盛りになってる大量の砂の一部が盾子の周りに集まり銃弾程の大きさの球体になり浮遊。

 今までの攻撃に使われた砂もすべてこの砂を使ってるので山の大きさは最初の半分程。だが同時にそこにしかなかった砂は今フィールドにばらまかれてるという事でもある。

 

「いけ」

 

 浮遊していた砂はまさに弾丸となり不規則な軌道を描きながらバロールの目に向かって飛んでいく。

 

「我が目の力を知りそれを奪いに来ることなど既に何万回と繰り返されている。別に目新しい事でもない。しかし」

 

 弾速のスピードを苦も無くハエをつぶすかのように人差し指と親指で対処。

 すると今度は同じ砂の弾丸が守鶴が着地した砂の山から発射された。

 

「ここまで次々と予防線を張る戦いは新しい。

 今までの戦歴で貴様のように自身の武器媒体となるものをまき散らす輩は確かにいた、だがここまで攻撃と裏工作、精神攻撃を織り交ぜる魔術師と戦ったのは私の記憶では初めてだ」

 

 背後から迫る弾丸を今度は強力な裏拳の衝撃だけで一度にすべてを散らせた。

 その様子に盾子も口笛を吹いてちょっとだけ驚く。

 

「ひゅ~やるね~」

「当たり前……!」

 

 盾子があからさまに様子をうかがうような動きをしたためこの攻撃にはバロールも意表を突かれた。

 砂ではなく石畳の床が突如粘土のようにぐにゃぐにゃになってバロールの喉を突き刺そうとしたのだ。

 だが自身の喉に突き刺さる前に蹴りで根元を壊し未然に防ぐ。

 

「これも防ぐか。まいったねこりゃ」

「そんな、盾子が操れるのは砂だけじゃなかったのか!?」

「どういうわけだ? しかし、我が目でその正体隠しきれるとおもうなよ」

 

 バロールは能力を使い攻撃してきた床を見た。

 すると今度は床だけでなくもっと奥の床、天井までも見渡す。

 

「ほう、これは」

「わかったかい?」

「シャババババ、これはこれは。まさかこの目で見るまで気づかないとは我も相当鈍ってるみたいだな」

「一体どうしたってんだよ」

「この部屋は今見えてるよりも倍は大きい」

 

 一誠の疑問に対してバロールが出した答えはそれだけでは意味が解らない。なのでもっと詳しく教えてほしいとお願いすると愉快そうに説明してくれた。

 

「砂だ、床も天井も砂で作られている。砂でできてない物といえばそこらへんの小物くらいだな」

「じゃあ私たちはずっと盾子の

「ずいぶん便利な目ね。やっと一人私の予想を超えてくれたわ」

「シャババババ、これではさすがの我も下等悪魔共を全員守りきる事はできん!

 自分の力量もわからぬ下等生物の癖にわざわざ不利な地へ出向いたと思ったら予想以上に不利なステージのようだな」

「それじゃ盾子はいつでも俺たちを殺せるのに……遊んでいたのか」

「バロールさんの言うとおり俺たちは悔しいけど盾子の砂の魔法に勝てない。くそっ! 俺たちの今までの特訓はなんだったんだ!」

「時間の無駄だったんじゃない?」

 

 何気ない一言で一誠たちの心をえぐりながら周りの偽装を解く。そこに現れたのは砂漠を思わせるような一面の砂景色と天井を覆い尽くす砂のドーム。

 天井の砂ははがれ元々あった砂の山と合わさりモノクマの顔をしたスフィンクスの形に。

 砂がはがれた天井には満天の夜空のように広々とし星の代わりに浮遊する鏡。

 

砂漠偽装(デザートカモフラージュ)公開はもうちょっと後の予定だったんだけどな~」

「砂を扱う貴様にとってはまさに俺たちはさながらありじごくに落ちたアリというとこか?」

「まっそんなとこかな。一匹だけやたら屈強な、アリじゃなくてカブトムシがいるけど。

 ちなみに天井は近いように見えて地上から宇宙までと同じ高度があり、その奥には薄く強力な幕が張られてるから飛ぶことと外の鏡を割る心配はすんな」

 

 この世界の事を殆ど知らないリアスたちだが盾子が鏡を割る心配をするなという言葉から鏡を割ると何かまずい事は予想がついた。

 また盾子の圧倒的余裕からくるある種の安心感から飛ぶことに関しては信頼していいと考え地上は砂で埋め尽くされ危険と感じ全員が上空へ避難。

 

「さて、そろそろよいではないか?」

「ん?」

「決まっておるではないか、貴様ら破面の真の力刀剣解放(レスレクシオン)の事だ」

 

 ギャスパーの知識からバロールも刀剣解放については知っていた。

 だから今まではいつまでも通じないと砂で小細工する盾子に対し苛立ちに近い感情を覚えていたのだ。

 

「我相手にいつまでその姿で戦うつもりだ! 貴様の砂など我には通じない事は十分理解できたであろう。ならば真の姿、真の力で戦え!」

「……そうねこれ以上絶望に変わる希望なんて出そうもないしね。じゃあ見せてあげる私の刀剣解放」

 

 盾子は懐からサバイバルナイフの形をした自身の半身を取り出し自分の喉にその刃を当てる。

 

「そうだ、貴様の全力を我に見せろ!」

「愚弄しろ、『悪意女王(レイナ・デル・マル)』」

 

 そうしてナイフを横に引いた。すると当然首から血があふれ出るがその量はあまりにも異常な量。その血が盾子を包み込み全身をすっぽり包み込みその中から赤黒いドレスに身を包んだ盾子が現れる。

 

「それが貴様の真の姿。確かに魔力の質も量も格段に上がったがまだ脅威には足りん」

「それは残念。ところで一つ聞きたいんだけどあんたたち完璧超人ってなんなの?」

「シャババ、下等生物には難しい言葉だったか? いいだろう教えてやろう。

 完璧超人とは善悪や感情を超越した精神と完璧なる強さと思想を身に付けた、超人の中で最も神に近い存在の事だ。

 そしてその中でも特に優秀な神に選ばれた者はまさしく神の一端を背負う超人となるのだ」

「じゃああんたは完璧超人じゃないんだ」

「ガハッ!」

 

 盾子の言葉と共にバロールに何らかの異変が起こった。

 胸のあたりに刀で斬られたような大きな傷ができており体を形成してる闇が漏れ出す。

 本来ならこのくらいの傷ではバロールはうろたえない。だが体の傷以上に“別のダメージ”も受け見た目以上に疲弊している。

 

「な、なんだと……!」

「だって他人の魂に寄生してまで醜く生き恥をさらす奴のどこが完璧っていうの?」

「ガバァッ」

 

 またまた体に新たな大きな傷跡が生まれた。

 盾子が何かを仕掛けた様子はなく両手は前で組まれており砂を操った形跡もなく魔法を使った際の魔力の変化も起きてない。

 

「下等生物と見下した相手に膝をつけられるのってどうなの?」

「ぐぐぐ……」

「確かあんたは優秀な兄の存在で完璧から堕ちたんだったよね」

「なぜ貴様がそこまで知ってる」

「とんでもない言い訳だな」

「ジャババ!!」

 

 今度は口から血の代わりに闇を吐き出し傷口もより一層深いものが刻まれていく。

 

「完璧な存在ならば堕ちるなんてあるはずがない、堕ちるのはいつの時代も不完全な不良品ばかり。

 神話の神と呼ばれる存在共も空想という名の堕ちようのない世界でさえ殆どが堕ちる。それは不完全な人間によって創られたものだから。

 現に現実で神と呼ばれる存在も不完全な人間から見ても完璧とは言い難い存在ばかり」

 

 盾子が何かを言うたびにバロールの体に傷が増えていきついには片手も地面につき盾子を見上げる姿勢にさせられてしまった。

 バロールは屈辱を感じながらもこの原因不明の攻撃の正体を何とか探ろうと冷静になろうとするが。

 

「あんたの兄、完璧超人とやらがどんな存在かは詳しく知らないけど少なくともあんたよりはずっと完璧に近い存在だって事はわかる。

 いや、完璧超人事態が大して完璧と言える存在じゃなのか」

「完璧超人は神よりも完璧な種だ! 種に交われば種に非ずこれは完璧超人の長が言った言葉だ、完璧な我々が他の種に感化され完璧さを失う事を危惧してのな。

 つまり我々完璧超人は他の種が立ち入る隙もない完璧な存在である証。

 我もその言葉に従い生涯決して他の種と交わる事はしなかった!」

「ふ~ん、なのにあんたはこの地上に堕とされた」

「例え地に堕ち魂だけになろうともう二度と我が完璧さは失わんッ!」

「でもさ~そんな一部の隙もない完璧さを持つはずの超人サマが堕ちる事自体がおかしいよな?

 完璧なら何があってもその完璧さは揺らがないハズなんだよな?」

「ガァァァァッ!」

 

 今までで最も深い傷とダメージを負わされたバロールはついに両手両膝をつき盾子を見上げる事すらできなくなってしまう。

 

「気づいた? お前が言う完璧論ではお前自身が完璧な存在ではないと言ってるんだよ」

「貴様……私に一体なにを……」

「所詮オマエは始めっから完璧になれる器じゃなかったってことだよな」

「ガァァァァァァァァァァァァァッッ!!」

 

 ついにダメージが限界に達したバロールはついに自身を形成している闇を完全に崩壊させてしまい元のギャスパー・ヴラディだけが残った。

 ただし傷はなくともバロールが受けた深いダメージはいくらかギャスパーの体にも影響を与えギャスパーも立つのがやっとの状態。

 

「シシシ、さて次は誰?」

 

 リアス眷属最大の戦力をいとも簡単に撃退した盾子は上空のリアスたちを見上げてニヤニヤと笑う。

 そんな盾子にリアスたちは見上げてるはずの盾子にむしろ見下されてるような感覚を覚えた。




 アランカル大百科

月「今回はかっこよく弟子に託して消えた覚悟の男プロシュート兄貴さんです!」

プロシュート「いちいち変なナレーション入れるんじゃねえ。もっと普通に紹介しやがれ」

月「なに? 照れてるん?」

プロシュート「うっせぇ! さっさと初めて終わらせろ!」

月「はいはい。プロシュートは万能型だけど、しいて言うなら虚砲と探査神経が得意で響転が苦手かな?
 刀剣解放は『魂合怪魔(グラン・ムエルテ)
 簡単に言ってまえば自身のスタンドと融合する能力やね」

プロシュート「簡単に言っちまえばその通りだ。だが、グレイトフル・ザ・デットではできない目からの全方向虚砲。それに老化ガスもスタンド時よりもだいぶ強力になった。直なら即老死させることだってできるぜ」

月「そ~なんや。でもやっぱ老化までなんやね。なんか同じ老いで直接殺す事もできるのもおるらしいねんけどその辺はどない思ってるん?」

プロシュート「よそはよそ、うちはうち。その分俺には相当な耐性があるから別にいい。そもそも刀剣解放使うよりスタンドで大量暗殺の方が俺には向いてる」

月「よをはよそって意外とオカンみたいなこと言うんやね」

プロシュート「ないもんねだっても仕方ねえ。最終的に殺っちまった方が勝ちなんだぁらよ。
 俺たち暗殺者にとっちゃむしろそれ以外に勝利はねえ」

月「やっぱ深みを知ってる男はなんか違うな~。おっとそろそろ時間や、じゃあまたね~♪」
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