BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 今更ながらこの作品、誇銅の家族を他作品キャラにしなければもうチョイマシな評価になってたんじゃないかと考え始めたぜ。
 手遅れにも程があるがな!


学級裁判 開幕!

「そんな勝手な事認めないわよ!」

「学園長の約束は厳守される! オマエラに拒否権はねえんだよ!」

 

 なんとも強引に進められる会話。あの状況から一気に盾子のペースに戻されつつ場面。

 リアスたちにとっては最も大切な人物、簡単に切り捨てれるわけがない。それは他の三大勢力の一部有力者や冥界の市民たちも同じ。

 

「…………」

『…………』

 

 悪魔ならば一誠を簡単に切り捨てる事はできない。一部は。

 しかしこの時ソーナの一誠を見る目はまるで養豚場の豚を見るような「かわいそうだけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」って感じの憐みが混じった目をしていた。

 他のソーナ眷属も「元から家畜はこうなる運命、いくらかわいがっても自分たちの食卓に並ぶんだね」って感じの仕方ないからスッパリあきらめるかと言った目をしている。

 

「ルールは単純明快。全員があたしの死を望めば兵藤一誠は生きてあんたらはハッピーエンド。外の世界はあたしの最終絶望計画でバッドエンド。

 ただし一人でも兵藤一誠の死を望めば兵藤一誠が死にオマエラはバッドエンド。あたしは生きるけど最終絶望計画は白紙に戻り世界はハッピーエンド」

「ソーナ……!!」

 

 どうすればいいのかとソーナの顔を見るとその憐れみと冷たさと仕方ないという感情が入り混じった目を見て固まるリアス。

 ソーナは一誠をもう見捨てる気でいる。そう確信した。

 これでは盾子のルールでは一誠は確実に殺されてしまう。

 

「安心しな、そいつを殺すか生かすかはお前らだけで決めな。あたしは当然としてそっちのソーナ・シトリー眷属にも投票権利はねえからよ」

「なぜ私たちに投票権がないのですか。私たちもあなたを倒しに来た同族ですよ」

「兵藤一誠はあの赤髪ビッチの所有物だろ? だったら所有者が決めるのがスジってもんじゃねえか。

 でもそれじゃ可愛そうだから民主主義ってことでお仲間全員での投票にしてやったんだよ」

 

 盾子の悪意の親切心が空気を悪くさせていく。

 リアスたちは一誠を生かす気でいるが盾子の残虐さが怖い。ソーナはもう信頼できないリアスたちに事態を任せる事に不安しかない。

 

「リアス、盾子さんの残虐さと悪意のスケールの大きさはもう理解してますよね?」

 

 友情が壊れても構わない。ここは何よりも優先して盾子の最終絶望計画をぶち壊す。そう決心してリアスの説得を行う。

 

「ソーナ! イッセーを見捨てろと言うの!!」

「リアスが、リアスたちがどれだけイッセーくんを大事にしてるかは私も理解してるつもりです。

 それでもここで計画を止めなければ外の世界には絶望が伝染病のようにまき散らされるでしょう」

「でも盾子の強さだってわかるでしょ! ここで倒さないと次勝てる保証なんて」

「傍聴席の皆さんはそろそろ静粛にお願いしま~す」

「リアス! 盾子さんはやると言ったらなんでもやってしまう人です! 彼女を殺すことはもう可能な域まで来てます! しかし、絶望はそれ以上に厄介で必ず多くの犠牲者を出すことになります……!」

 

 盾子は自分とリアスたちの周りを砂のドームで囲んでしまう。

 砂のドームがリアスたちと盾子を包み込みソーナたちと分断する。さらに大量のモノクマがわらわらと湧き出て妨害を妨害する。

 盾子がいくら疲弊しようと人形であるモノクマには丸一日全力で戦い続けられる程の魔力が充電されている。

 疲弊したソーナたちでは倒せない。

 

「くっ、私はまだまだ甘いようです」

「会長」

「リアスの甘さにつけ込むことは簡単に想像できたはず。

 盾子さんに付け入るすきを与えぬように、不毛の大地からリアスたちを逃がすべきではなかった」

 

 日に二度の大きな後悔。

 それも自分の甘さが招いた、盾子から見た一誠の利用価値にもっと目を向けるべきだったと。

 盾子以外の相手ならばここまで後悔しない。しかし、盾子相手には真に非情になりきれなかった自分のミスは後悔しきれない。

 

「私たちの負け……」

「会長、絶望で足を止めてる場合じゃありません」

「匙」

「そうです、絶望で足を止めるなと教えてくれたのはソーナさんじゃないですか。

 僕を立ち上がらせたときのように立ち上がってください」

「ここで立ち止まっては盾子さんの思うつぼ」

「誠司くん、椿」

 

 ソーナの心は何とか折れずに踏みとどまった。

 しかし、この状況は何の解決にもなっていない。

 待つことしかできないこの状況をとてももどかしく思いながらも最後の希望であるリアスたちを信じて待つことに。

 そしてもしも希望を繋いでくれた時にはせめて自分が支えてあげようと。

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 砂のドーム内、砂漠偽装(デザート・カモフラージュ)で新しく創られた空間、その真ん中の議論しあう場所の一角になぜかモノクマがいる。

 

「どう? ここが学級裁判所だよ!

 オマエラの運命を決めるスペシャルな場所だよ!」

「なんでモノクマがいるのよ」

「なにって学級裁判を公平に取り仕切る裁判長としてとか弱いあたしのボディーガードさ。

 あんたら悪魔が無法にも殺しに来るかもしれないから。でもそんなことをしたら生贄どころかあんたたちもオシオキだけどね」

 

 盾子を殺してもモノクマは止まらない。そう暗に伝えている。

 その真意は伝わらなくともここで盾子を倒しても何の解決にもならず事態は余計悪くなるという事は理解できた。

 そもそも今の状態でも盾子に勝つにはまだまだ力不足。

 

「さあ席につきな。議論を始めよう」

 

 盾子が先にモノクマと同じ席につき残りの場所にリアスたちが適当につく。

 全員が席についたのを確認してからモノクマがしゃべりだす。

 

「今回の学級裁判のルールをご説明します。

 通常学級裁判とは罪を犯したクロをお手元のスイッチで投票で投票してもらい正解ならクロだけがオシオキ、不正解ならクロ以外がオシオキとなります。

 しかし、今回は特別ルールとして皆さんに選んでいただくのは希望か絶望どちらのオシオキを投票で決めていただきます。

 全員が希望を選んだなら絶望がオシオキ。だけど一人でも絶望を選んだなら希望のオシオキが執行されます」

 

 モノクマの説明後少しの間沈黙が続く。

 そこで最初に口を開いたのは朱乃。

 

「……何を議論させようと言うのかしら」

「もちろん希望を殺すか絶望を残すかだ」

「イッセーくんの命を天秤にかけろと言うのかい」

「脳天気なお前らにしては呑み込みが早いじゃねえか。もっとわけのわからない事をゴチャゴチャと言うと思ってたぜ」

 

 ごく自然にリアスたちを馬鹿にする。

 その部分に正直腹が立ったが今はそこに構ってる余裕はない。

 

「まさに希望と絶望の戦いというわけだな」

「希望があまりにも弱すぎるけどあんたらにはちょうどいいかもね」

「なんですって!」

 

 挑発に挑発を重ねられ苛立つリアスたち。

 

「貴様の絶望など私たちが打ち砕いてやる!」

「私様一人に手も足も出ないお前たちが私様が命をかけて創り出す最高で最低で最期の絶望を止められるなんて、この愚民どもはどこまでおめでたい思考なのでしょう」

 

 この時一誠は何も言えない程恐怖していた。

 仲間が自分を殺そうとしてる。

 命をかけて仲間を守る意思があると日ごろから言ってもいても仲間に死を望まれることなど考えたこともない。

 恐怖する一誠の手をリアスがそっとつかむ。

 

「大丈夫よイッセー」

「リアス……」

「私様の最期の呪術は冥界、天界、神界だけでなく世界中の人間たちも巻き込む。

 とてもそのクズ一人と変えられない命」

「そもそも本当に最終絶望計画なんてあるのかしら」

「あ?」

「本当にそんな計画存在するのかしら? 存在するとしてもそこまで大層な計画なのかしら?

 今の状況ならそれこそ疑わしいわ」

 

 これは盾子の脅しであると。

 この極限状態なら最終絶望計画などと言われれば何も疑わず信じてしまう。

 本当はそんな計画存在せず自分たちの大切な一誠を自分たちで見殺しにさせて絶望に落とす作戦だと。

 そう考えたのだ。

 

「そうか! これは盾子の作戦だったのか!」

「あたしがまだこの世界にいなくてただの人間だった頃でも世界中を絶望を与え世界を破滅の一歩手前まで追い込んだ。

 これ全部マジね。信じる信じないはあんたたちの勝手」

 

 一度はひっくり返りかけた空気も再び戻される。

 しかし脅しかもしれないというのは少なからず一誠生存の希望を強くした。

 

「そんなあたしの呪術をその役立たずのカス一人の命で止められるのよ、赤字覚悟の大セールよ?」

「イッセー先輩の命はそんな軽いものじゃない!」

「そいつに世界を危険にさらす程の価値があるんですか……?」

 

 その言葉に全員が無言になった。

 だけどすぐに一つの声が響く。

 

「……あるわ」

「ん」

「イッセーにはそれだけの価値があるって言ったのよ!」

 

 その言葉と共にリアス眷属の目に強い意志が籠る。

 リアスの言葉と共に全員が一誠に対する思いを言う。

 

「私たちはイッセーくんを見捨てない」

「イッセー先輩から希望を貰ったのは私たちだけじゃない」

「イッセーはもう何度も私たちだけじゃなくて町の人々や京都の妖怪、三大勢力の和平も救ってくれました」

「それにイッセーくんは冥界の子供たちにも希望を与えた」

「イッセーさんを殺させたりしません!」

「ここにはイッセーを見捨てるような奴は誰もおらん!」

「本当に~?」

 

 盾子の目線の先には眷属機関が短いロスヴァイセではなく一人だけ意思が目に籠ってないギャスパー。

 全員が盾子をしっかり見ているのにひとりだけ見ていない。

 リアスたちは盾子に集中してギャスパーの様子に気づいてないが。

 

「ありがとうみんな……! 

 そうだ、そうだよな、子供たちのヒーローがこんなとこであきらめちゃだめだよな」

 

 涙を流し仲間たちの思いに感動する一誠。

 涙をぬぐって力強い眼差しと声ではっきりと宣言した。

 

「江ノ島盾子、お前との直接勝負には勝てなかった。だけど、お前の絶望には必ず命をかけてでも勝って見せる! 俺たちはお前の絶望なんかに絶対に屈しない!

 そして絶対に大切な人たちを守ってみせる!」

 

 盾子の表情は一ミリも変わっていない。

 だけどリアスたちの結論は既に決した。

 

「議論の結論が出たみたいですね。

 では、そろそろ投票タイムと行きましょうか」

 

 モノクマが議論の終了を宣言する。

 

「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい!」

 

 一誠と盾子以外の席に希望と絶望と書かれた二種類のボタンが光る。

 このどちらかを選べということ。

 全員がそのボタンを選んで押した。

 

「投票完了しました」

 

 投票のその瞬間までギャスパーはまだ悩んでいた。

 本当に一誠を生かして盾子を殺していいのか。

 盾子の事を考えれば絶対に最終絶望計画なんて起こしてはいけない。

 ギャスパーには既にみんな程の仲間意識はない。

 バロールが生まれてからはなおさら。

 

「今回の投票結果は」

 

 ギャスパーはここで…………自分を

 

「満場一致希望と出ました!」

 

 貫けなかった。

 ギャスパーは自分たちが罰を受けなくちゃいけない立場だと言う事はわかっていた。

 一誠一人の命で世界が助かるならそうするべきだとも思っていた。

 しかしいざ目の前にすると怖かったのだ、自分が逆に投票した事により一誠が死ぬ事でみんなから責められることに。

 自分の弱さに絶望しながら希望のボタンを押した。

 

「どうだ、これが俺たちの希望の選択だ!」

「アハハハハ、なにこれ? 超絶望的じゃん! 私の復讐は失敗して世界には絶望の爆弾が降り注ぐ。お互い絶望的な結果じゃん!」

「今回は超高校級の絶望である江ノ島盾子サンの為に、スペシャルなおしおきを用意させていただきましたっ!!」

 

 モノクマがオシオキを執行する時のボタンを取り出し

 

「アハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハッ……………ハ~絶望的に予想通りすぎ」

 

 木槌で叩くと盾子の姿は消え他のモノクマが持ってきた大きなモニターに盾子が映し出される。

 

 

 

『過去の世界にタイムスリップ』

 

 盾子はモノクマに連れられて×印の書かれてる場所まで歩いていく。その上空にヘリコプター。

 上から何か降ってくると思いきや下からガラス容器が飛び出し盾子はその中へ落ち上から落ちてきた蓋によって閉じこめられた。

 巨大なモノクマがまだ地面に埋まってるガラス容器を引っこ抜くとそれは巨大な砂時計。盾子がいるところを下にしてその場に置きなおす。

 砂はどんどんと盾子のいるところに積もっていき窒息死させようとしたと思いきや、またまた新しい機械が現れ砂時計とドッキング。

 その機械によって砂は重力に逆らって上に吸いこまれる。吸い込まれた砂はまた下から噴き出す。まるで時間が巻き戻ってるかのように。

 機械の動きは徐々に早くなりやがては肉眼ではとらえられないスピードまで達した。

 そんなスピードの砂の中に人間がいればどうなるか。

 あまりの砂の速さに中は見えないが水が鉄を斬るような音と共に肉が裂かれる生々しい音。土色の砂に赤色が混じる。

 そうして常識外れまで達した砂時計は機械のスイッチを止められる。中には盾子の姿は無く赤色が混じった砂のみ。

 モノクマが「タイムスリップ大成功」と書いた看板を出して終了。

 

 

 盾子のオシオキが終わり砂のドームは解除されリアスたちが揃って無事戻ってきた。

 ソーナたちは軽く絶望した。一誠が生きて戻ってきたことに。

 それはすなわち盾子の絶望計画が発動してしまったことだから。

 

「リアス……イッセーくんを生かしてしまったのですね」

「うっ……もしもあなたの眷属の匙くんや椿を生贄に指名されたら簡単に見捨てられるの!」

 

 盾子の最終絶望計画で少し負い目があるリアスは言葉を振り絞って反論したが。

 

「ええ、仕方ないですが。私たちはもとより犠牲を払ってでも盾子さんを殺し絶望を拭い去るつもりでしたから。

 まさか死してなお絶望を蔓延させるとは予想外でしたが」

 

 あっさりと仲間を捨てると言いきられてしまう。

 それほどまで冷酷になってしまったのかと今のソーナを今すぐにでも否定して正気に戻してやりたいと思って声をかけたがそそくさと自分のもとを離れて自分の眷属の方へ行ってしまう。

 

「ちょっとソーナ!」

「クロノスの懐中時計は」

「それが盾子さんがあの戦いの最中に砕いてしまいまったようで」

百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)が使えないのは厳しいですね。

 匙、今私たちの最大の切り札は貴方です。かなり負担を強いると思いますができますか」

「必ず会長の期待に応えます」

「さあ、まだ終わってません。むしろ状況はさっきよりも悪くなったでしょう。急いで外に戻りますよ!」

 

 そうして江ノ島盾子は自身の呪いにより死んだ。

 それと同時に盾子が残した最終絶望計画が始動された。江ノ島盾子の意思はまだ終わっていない。

 一誠が生き残った事をとりあえず喜ぶリアスたち(ギャスパーを除く)を置いてさっさと出口へとソーナたちは向かった。

 その少し後に遅れてリアスたちも出口へと。

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 盾子との戦いが終わりリアスたちとソーナたちは急いで表の世界へと戻った。

 表の世界に戻ったリアスとソーナたちは戦いの熱も冷めぬ間に冥界へと至急呼び出された。

 そう、盾子の死と同時に発動された最終絶望計画について。

 

「来てくれたかリアス、イッセーくん」

「一体何が起こったんですかお兄様」

 

 冥界に転移してすぐに今は亡きシャルバ・ベルゼブブとファルビウム・アスモデウス除いた全員の魔王が揃う室内に急いで案内された。

 魔王たちが急いで何が起きてるか説明しようとすると。

 

「ひゃっほー!」

「モノクマ!!? 盾子は死んだのになぜここに!?」

「ボクに内蔵されてる魔力が尽きるか、最初のボクの心臓(コア)を破壊しない限りボクは動き続けるよ。

 なんせボクは絶望学園の学園長だからさ!」

「それで何のようなんだい?」

 

 穏やかに問いかけるが内心焦っているサーゼクス。

 彼がもう少し過激な性格ならば今すぐにモノクマを破壊してしまって事態を知るのがもっと遅れてしまっただろう。

 

「現在起こってる事態をご説明します。

 そこのなんちゃって希望が江ノ島盾子を殺し最終絶望計画を発動させてしまったのです」

 

 モノクマは悪意たっぷりに誰の責任かをまず公言。

 それを聞いてもリアスたちを責める人物はいないがいい雰囲気には当然ならない。

 

「そのせいで現在世界中の今は亡き猛者たちがこの地に黄泉がえり殺戮の限りをつくしているのです!」

 

 

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 昔、まだ聖書の神が生きていた時代、冥界に一つの脅威が訪れた。

 その脅威とは今はもう滅んでしまったが上位のドラゴンに匹敵する強さと邪龍のような凶暴性を持つ種族が冥界に攻めてきた。

 その争いで悪魔は甚大な被害を受けた。

 しかし、その脅威はたった一人の悪魔によって全滅。

 その悪魔は魔力の総量は上級悪魔に遠く及ばない中級悪魔だったが、その強さは最上級悪魔を軽く凌駕する程。

 その悪魔は作戦も命令もすべて無視してたった一人で脅威に戦いを挑みその命と引き換えに種を守った。

 この伝説はあまり語られてはいないが彼女はまさに悪魔の英雄と歴史では称えられることに。

 

 

 

 そんな英雄は今…………。

 

「フハハハハハどうしたその程度か? 吾輩と死を分かち合った友はもっと吾輩を熱く燃え上がらせてくれたぞ!」

「くそ! 上級悪魔のこの俺が」

「ぬるい! その程度では戦乱の世は生きていけんぞ!」

 

 英雄の歩く跡には数人の無残な悪魔の死体が転がっている。

 全員が体を貫かれたり手足を引きちぎられたりしているが判別ができる程度に原型が残ってるため凄惨な状況。

 

「やれやれ、こんな事ならこのまま死なせてほしい。

 アスモデウスを名乗る悪魔もその眷属もいまいちだったからのう」

 

 そうやって愚痴を言ってると蘇った英雄の背後に(ホール)が現れる。

 

「地獄のネジ回し!!」

 

 そこから殺人遊戯コンビ必殺技(フェイバリット)『地獄のネジ回し』が前触れもなく英雄めがけて襲い掛かる。

 だが英雄はすぐさま振り返って両手で攻撃を掴んで回転を止めてしまった。

 

「俺たちの必殺技(フェイバリット)を止めたのはあんたが初めてだぜ」

「肉体・魔力が並みの悪魔たちとは鍛え方が違うからのう」

 

 (ホール)からサイラオーグ眷属、バッボを始めシャルル、ペンタゴナ、クイーシャが出てくる。

 そして反対側の本道からサイラオーグ自身が残りを眷属を引き連れる。

 

「タカルパト・ハルファス殿ですね?」

「その通りじゃが」

「サイラオーグ・バアルと申します。

 タカルパト殿の偉業を知った時はぜひ一度お会いしたいと思っておりました」

「夢がかなってよかったな小僧」

「はい、ですがなぜ英雄様がこんな事を?」

 

 伝説とはかけ離れた味方殺し。

 命を懸けて仲間を脅威から救った英雄がその脅威と一緒に今同族を殺してるのには納得がいかない。

 

「吾輩の意思ではない。吾輩を生き返らせた者の命令でな。

 それに逆らう事はできんし、逆らえば自我を奪われ無理やり動かされるそうじゃ」

「ほう、ではなぜそんなに嬉しそうに戦うのですか?

 私の目にはとても嫌々には、むしろ嬉々として戦ってるようにしか見えぬ笑顔なのですが」

 

 操られてるのは事実だろう。よみがえらされればたいていの場合術者に操られる。キョンシーやゾンビも術者に使役される。

 タリスマンによって死んだ霊を操る術もある。

 だが目の前の英雄は嬉々として戦いを楽しみ、期待外れに落胆する様子などを見せている。

 これでは自主的に殺戮を行ってるように見える。

 

「のうお主らは戦うことは楽しいか?

 ……吾輩は楽しい。だから戦いの中で死にたいと常に思っておった。

 しかしそれを成すのは難しい。

 強くなる度に退屈そうに戦場に出ていく同胞たちを見るたびに強さの先には『飽き』があると覚った。

 戦いで強くなる度にその『飽き』が来るのが恐ろしかった。別の生き方を見つけてしまう」

 

 英雄は語りだす。自らの考え、生きざまを。

 

「だから吾輩は戦いを義務と思う事無く、強制されることもなく、まったく良い一生だったと言い切れる……一瞬間のうちに死にたいのだ!!

 強さのその先があっても、さらなる敵が待ち受けていても、もう必要ない!

 間延びした快楽に真の幸福など訪れぬ!」

 

 自分の思いを感情をこめてひしひしと語る。

 その思いの強さにサイラオーグたち全員はじっと耳を傾けて真剣に聞く。

 

「……きっとこの心の熱は誰しもが持っているものだと思っている。

 だがその熱は一度冷めれば二度と戻らぬ。

 これが真の幸福だとは言わんが吾輩は最上の幸福だった!」

 

 最後に腕を組み胸を張って堂々と勇ましく言い切った。

 

「それが本当の貴方……」

「しかしよくここまでたどり着けたのう。そろそろ他の友も吾輩の先を行ってると思ったんだが」

「あいつら殺しても殺しても再生し続けるからよ~」

「私の魔剣で地面に縫い付けて来たネー。さすがに一人20本も打ちつければ地面とキスし続けるヨー」

「そうかそうか。だが吾輩の友を甘く見ないほうがいい。

 あいつらは生前から悪魔に対して危険分子として種を滅ぼされかけた事を未だに恨んでいる。

 不死身となれば相当な執念で脱出を図るだろう」

「そうですか、それはご親切に」

「だけどそこから先は他の者に任せるしかない」

「俺たちは目の前の英雄を止めなくてはならないし、英雄殿も逃がしてはくれないだろう」

「当然じゃ♪」

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「その前にドライグを!」

「そうだった! 大変なんです、赤龍帝の籠手が!」

 

 一誠は赤龍帝の籠手の現状を魔王に伝えた。

 それを聞いて戦いから戻ってきたばかりの休息をかねてすぐに腕利きの技術者に治療させると言うがそれは無理だと椿が口を挟む。

 

「なぜ無理なんだい」

「盾子さんは神器が死ぬのに5時間と言いましたがおそらく間に合う時間ではないでしょう。

 いや、迅速に砂を取り出す処置をすればギリギリ間に合うでしょう。しかし、三大勢力の技術力では砂を掻き出す事すら5時間程度では到底見つけられない。

 少なくともフランドールの呪いを受けたイッセー君を治療するくらいの技術力は必要です」

 

 精密な魔力操作を要する回復妖術を学んだ椿は今の赤龍帝の籠手の現状を素早くできるだけわかりやすく伝えた。

 

「それじゃ誰もドライグを治せないのか……」

「いや、俺がやる!」

 

 遅れてきたアザゼルが入って早々宣言する。

 とてつもないやる気と覚悟をその目にともし堕天使最高の技術者のプライドにかけて。

 

「神の次に神器に詳しいと自負してる。なんとしても制限時間内に直してみせる!」

「先生……ありがとうございます!」

 

 そもそも治療できたとしても高純度な魔力を持つ悪魔は冥界にはいない。いや、一人だけ今いるがとても力にはなってくれそうもない。

 流石にリアスたちも一誠抜きで戦えるとは思っておらずおとなしく回復に専念。

 そもそも今までの勝利も一誠、というより赤龍帝の力頼りな部分が多く明らかな格上であろう冥界の英雄には勝てる要素はない。

 

「少々強引な方法ですが百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)を使用可能状態にもどしてもらいに行きます。

 盾子さんを殺せるこの神器ならおそらく冥界の英雄も黄泉送りできるでしょう」

「ちょっと待て」

 

 部屋を出て行こうとするソーナたちをアザゼルが呼び止める。

 

「それならついでにそっちも俺が」

「赤龍帝の片手間にできるほど神器は単純ではない。それはアザゼル総督が一番よく知ってるハズ」

「だけど俺以上に神器の内部に精通してる奴なんて」

 

 自分以上に神器に詳しい奴はいない。

 英雄派や一部の禍の団で神器の研究を目撃したがそれでも人口神器に成功したのはアザゼルただ一人。

 その自信と自負が他の奴に神器の修復なんて高度な技術は無理だと思ってる。

 

「神器に精通してなくとも神器にも精通する技術を持っていれば可能。

 それにこれから日本勢力にお願いしに行くのは技術ではなくとても強引な力技」

 

 盾子に勝るとも劣らぬ高純度な魔力、もとい妖力を持つ妖怪にその高純度の妖力を直接注入し、百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)を使用可能状態に復活させる。

 それがこれから日本勢力に頼みに行く。

 厚かましいお願いではあると思っているが単純な戦闘力で特殊な勝利条件を持たない冥界で圧倒的格上の英雄を止めるにはこれしかない。

 どんなにプライドを捨てる事になっても成功させる気で向かう。

 

「ごめんなさい誠司くん、やっぱり重いですよね」

「いいえこれくらい大丈夫ですって。超人を侮らないでください」

「うぷぷ、日本も今頃は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、日本でも冥界同様に大きな騒ぎが起きていた。

 日本でも過去の強者たちがよみがえっていた。

 

「誰なんだあの妖怪、めちゃくちゃ強いぞ」

「あれは初代火影様だ! 1000年前の反乱で亡くなった」

 

 冥界の悪魔より単純な戦闘力が劣る代わりに戦闘技術が多彩な日本では人間界との接点が冥界より段違いに近いのに人間界にはまだ被害を漏らしてない。

 だが、過去の強者により徐々に押し込まれてる。

 

「この体はどんな傷を負っても再生する、封印術で私たちを封印しろ。

 もしくは火車の炎で魂まで焼き尽くせ。それなら封印を施してなくとも私以下の死者たちは魂葬できるだろう」

「隊長、ただ今水影様と二代目陰影様がこちらに向かっております」

「水影と陰影か。二代目陰影がどんな奴かしらんがそれなら私を封印できるだろう。

 お前たちは傷つきすぎた、早く次の時間稼ぎと交代して逃げろ。優秀な司令塔を私の手で殺してしまう前に」

 

 次の時間稼ぎと交代し隊長を務める妖怪は傷ついた仲間を連れて後衛えと下がる。

 そこで本来の司令塔としての役目として他の妖怪全体に妖術で伝令を伝える。

 

「注意するのは初代火影、雷影、風影様だ! それ以外の者は今は最低限の人数で食い止めろ!

 七災怪が到着するまで絶対に妖界から一歩も外に出すな!」

「人間界に出てしまった死者はどうします」

「既に出入り口の殆どは封じた。唯一の出入り口は京都に滞在していた英雄派と名乗る人間たちが食い止めてくれてる」

 

 京都で療養に励んでいた曹操たちはまだ京都の手練れな妖怪相手に修業を重ねていた。

 単純な戦闘力をぶつけてくるしか脳のない悪魔や天使や堕天使と違い弱いなりに技術を駆使して戦う妖怪は良い師となりえたのだ。

 

「報告します、初代雷影様はバッファロー・ボニータと陰陽師が雷影様と火影様、それと火影様の姉上様が協力してくださって封印できるのは時間の問題かと」

「そうか」

「報告します、初代風影様を止めに行った陽影様、土影様、風影様がやられました!」

「なんだと!」

「幸い命は無事ですがもう戦闘に復帰できる様子ではなく」

 

 三人の七災怪が負けた。

 これはすなわち他の大妖怪以下では何体いても対処できないと同意義。

 隊長妖怪はどのように戦力配分をするか必死に考えた。

 彼は本来有事の際には前線で戦いながら指揮をする隊長。だが今回は有事のレベルが高すぎて七災怪が全員前線に出なくてはならなく、たった一人の神天照も他の用事で動けないため彼が指揮をとっている。

 なので全部隊の指揮を任される手腕はあっても経験が圧倒的に足りない。

 

「報告します、初代風影様のもとに元締め様が到着しました」

 

 その報告を聞いて隊長は心底安心した。

 七災怪最強の元締めが駆けつけたなら安心だ。

 彼女なら一人で大丈夫、むしろ一人の方が戦える。

 しかし、それは同時に彼女が突破されればもう天照以外では止める事は出来ないという事。

 日本に大打撃が与えられることは仕方なしと考えるほかない。

 

 

 

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 三名の七災怪が撤退した後、他の大妖怪たちが命がけで初代風影を止めに向かった。

 その過程で何名かの大妖怪が死に重傷を負って脱落していく。

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 巨大な大妖怪の全力のパンチが初代風影に命中。

 だがそのパンチは避けられるわけでもなく受け止められたわけでもなくなぜかパンチを放った方がはるか遠くへ飛ばされた。

 

「ほ~すごい力じゃのう。飛ぶは飛ぶは」

「すさまじい合気だ。完全に相手の力を返している」

 

 駆けつけた最後の大妖怪が倒されると当時に七災怪元締め、こころが到着。

 飛んできた大妖怪を優しく受け止め医療班へと手渡す。

 

「久しぶりじゃのうこころ。ところで合気とはなんじゃ?

「今の時代その技は合気道と呼ばれている」

「そうか、この技は合気と名がつけられたのか」

 

 先程戦っていた妖怪たちは全員避難しこの場には初代風影とこころだけとなった。

 二人は対峙し初代風影は笑顔で、こころはいつもの無表情で相手を見つめる。

 

「それにしてもお主もみんなもあの時と変わらぬ姿をしてるのう」

「お前だって生きていれば今と変わらぬ姿を保ち続けただろう、初代風影、藻女(みずくめ)

 

 二人とも既に自身の間合いに入っていつでも戦闘が始められてもおかしくない状況でまだ始まらない。

 もしもこの状況を見る者がいればいつ突然戦いが始まるかハラハラするであろう。

 

「藻女、私は今でもお前がこいしに殺された事が納得がいかない」

「なっとくがいかんと言われても妾は現にこいしによって殺された。その事実は変わらん」

「確かにお前はこいしと死合う前に火影昇降を殺し雷影否交を瀕死まで追い込んだ。しかしお前にはその程度の傷でまだ未熟だったこいしに殺されるとは到底思えない」

 

 こころが過去の事件を振り返る。

 過去の真実を過去の人物に聞き出すために。

 

「七災怪全員で組手を行った時、私は他の七災怪たちを圧倒していた。すべての試合を1分以内に収める程に。

 しかしお前だけは私に膝をつかせ敗北をにおわせた。

 この恵まれた血と体がなければおそらく私は負けていただろう」

「そうじゃな妾も途中から同族と戦ってる気がせんかった」

「そうか、それよりもなぜお前はあんな無謀を、なぜわざと弟子に殺されるようなことを」

「……今更言う必要もない」

「そうか……!」

 

 会話の終わりと共に最初に仕掛けたのはこころ。0.01秒からの可能な限りの全力ダッシュで一気に最速の拳を叩きつけた。

 しかし藻女も甘くなくその攻撃にきっちり反応してみせ拳を捕らえている。構図は先ほど吹き飛ばされた大妖怪とほぼ同じ。

 しかし先ほどの大妖怪と違いこころは吹き飛ばされるとこはなく、その代りにこころの背後にとてつもない攻撃跡が現れた。

 

「すべての力、衝撃は私の体を透過する。それが長い年月を割いて私が身に着けた高級技、猿舞」

「ほう、それじゃ妾の合気とお主の猿舞、どちらがうえか存分に楽しもうぞ」

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「うぷぷ、オマエラがそんなクズ希望を選んだせいで世界中の過去の強者が絶望として蘇る!

 しかも死人だからどんなに傷つこうが再生する!」

「これが最終絶望計画」

「うぷぷぷ」

 

 これが絶望の前座であるとはだれも思わなかった。

 この時、本当の最終絶望計画がちゃくちゃくと胎動していた。

 その真実を知る者は盾子とモノクマを除き誰もいない。




 アランカル大百科

月「今日のゲストは三大勢力を一人の頭脳と技術力でひっかきまわした絶望の申し子、江ノ島盾子さんです」

盾子「チィ~ス♪ よっろしく~♡」

月「おっ! ノリノリやね~」

盾子「そりゃ超高校級のギャルとして当然しょ」

月「そんんじゃ早速紹介するで。盾子ちゃんは破面としての性能は非常に高くニガテなしのパーフェクトや」

盾子「もち当たり前だし♪ 希望と絶望の両方を持ち合わせる身として希望的に絶望的に盾子ちゃんは完璧なのです」

月「そんな彼女の刀剣解放の名前は『悪意女王(レイナ・デル・マル)
 能力は相手の心を傷つけると体と魂も同時に傷つける能力や。
 例えば悪口で相手の心を傷つけるとその人の体と魂に受けた傷と同じ傷が生まれる」

盾子「昔っから悪口は言葉の暴力、言葉は刃物にもなり得るって言うしね。あたしの能力はそれをよりわかりやすい形に変えただけよ」

月「それが厄介なんや。ただでさえ言葉の暴力ってキッツイのにそれを現実にされたらたまったもんやないで」

盾子「まっ実際そんなことができるのは私くらいだけど、みんなも言葉の扱いには気を付けてね」

月「ほんの些細な無神経な言葉、悪意がなくとも人を深く傷つける事がある。受け取り方の問題なんていわれたらおしまいやけどな」

盾子「だから悪意の女王。まっ結局悪役補正には勝てなかったけどね」

月「ある意味一番恐ろしい嬢ちゃんやで」
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