BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 この作品がオリ主不在になり誰の視点かわからないという意見が出ました。
 私の技能の低さから本来作中で伝えなくてはならないものを、タイミングがわからずタイミングを完璧に逃してしまい不透明なままここまで来てしまったことをお詫びします。

 この作品のテーマの一つは悪役が悪役になった理由はいい加減な正義にあったというものです。
 つまり、この場合原作組の自分勝手な正義のせいで被害を被ったオリ主たちが悪役にならざる得なかった姿を伝えたかったのです。
 だから視点は原作組に合わせて自分勝手な正義さを見せようと。

 そう意識した結果原作組の目線で見れば消して自分たちは後ろめたい事はしておらず気づいたら仲間が悪の道に落ちていたと見えるように描いていたつもりです。
 逆にオリ主視点ではどれだけそのワリをくってきたかを見せれたらなと思っていました。

 私の技能が足らないのに変なアイディアで創ってしまって皆様の期待を裏切り申し訳ありません。
 それでも最後まで見てくださるのなら感謝の極みです。


堕ちた神 降臨

 椿に修復は無理だと断言されてからもアザゼルは必死に赤龍帝の籠手を復活させようと頑張った。

 だが時間だけ過ぎて一向に解決の糸口は見つからない。「ど~う? 直りそう?」

「ウルセェ! しゃべりかけてくんな!」

 

 敵陣の真ん中でゆったりとくつろぐモノクマに対して苛立つアザゼル。

 相棒の無事を祈る一誠、それを心配そうに励ます仲間。

 場の空気は二つの悪い空気に満たされている。

 

「ファルビウム……戻ってこないね」

「何の連絡も報告もない……やられたと考えるのが妥当か」

 

 アスモデウスとベルゼブブがやられ残り二人となってしまった魔王。

 もはや威厳などあったものではないがこの二人が殺されれば冥界は完全に崩壊してしまうため前線には出られない。

 もちろん前線で戦って勝てれば士気も威厳も取り戻せるが、敵の強さは予想の範囲で

 

も二人よりもずっと強い。敗北が濃厚な戦場に魔王がノコノコ出ていくわけにはいかない。

 超越者と呼ばれた者も過去に多勢に無勢で有利にもかかわらずあっさりと敗北した経験から自信過剰にはなれない。

 

「苦しい……みんなが戦ってるのに戦えないのが苦しい」

 

 サーゼクスさ自身のふがいなさに苦しんでる間どこから持ってきたのかビーチチェアに横になりながらトロピカルジュースを飲むモノクマ。

 おそらく屋敷から勝手に持ち出したのだろう。

 敵であるモノクマがここまで好き勝手にくつろぐことが悪い空気をさらに悪くする。

 しかもモノクマが占拠してるのは本来アジュカ・ベルゼブブの席。

 

「今までどかどか戦場に出向いてたのにここでグッと堪えるなんて一応トップの自覚はあるんだね。

 なんていうかボクはもっと自分たちが戦えばすぐに解決できると自信満々に行くと思ってたよ」

 

 トロピカルジュースを飲み終えたモノクマはイスとグラスを持って部屋から出ていくと今度はでっかいこんがり焼けた骨付き肉を持って戻ってきた。

 

「むふふ、うまいもんだな~。初めて食べたよ。

 なんていうか野性を思い出す味だ」

 

 正直その場の全員が今すぐにでもモノクマをぶっ壊したい衝動に駆られている。

 だが唯一の情報源であるモノクマを破壊すれば本当の情報を得られなくなる。

 それがわかってかそれともただの嫌がらせかモノクマは大胆に空気を悪くしていく。

 

「ところで頑張ってるとこ悪いんだけどさ~」

「なんなんだ! 黙ってろっつったろ!」

「ボクが見たところこの冥界、いや三大勢力とその加盟勢力に赤龍帝の籠手を復活させることができる純度の魔力の持ち主はいないんだよね」

 

 キレ気味に返事をしたアザゼルだが次の言葉に怒りが一時冷めてしまった。

 アザゼルだけでない、一誠たちもその言葉が聞き捨てならない。

 

「ボクの見立てではそんな純度を持つのは日本に5人、アメリカに10人、エジプトに7人、中国に2人ってとこだね。後は複数集まればってのが10人ほど。

 ボクでも探しきれないのがいたかもしれないけど全部三大勢力非加盟勢力って事は共通してるね」

 

 これはつまり椿のいう事が間違っていて砂を除けても注入する魔力がないという事。

 既にドライグ死亡まで一時間程度しか残ってない。

 三大勢力非加盟勢力であれば説得は難しい。それに今は世界中でこんな事態が起きている、加盟勢力でも間に合うかどうか。

 

「だから戦いに行く意思があるならそのお荷物ほっといて行った方がいいよ」

 

 ドライグは、赤龍帝の籠手は絶対に助からないから無駄だ。暗にそう伝えるモノクマの能天気な声に怒りがグッと再発する。

 だが赤龍帝の力なしでは不意打ちでもモノクマを倒す力はない。せいぜい校則にかこつけて殺されるのがオチ。

 

「モノクマくん、君から見て僕たちは冥界の英雄とどれほど戦えると思う?」

 

 不意にサーゼクスがモノクマに質問をした。

 まさか魔王がモノクマにこ友人と話すような感じで話しかけるとはだれも思わず驚愕。

 モノクマもそれに悪態をつくわけでもなく普通に反応を示す。

 

「お兄様! なぜこの人形に」

「仕方ない事なんだよリアスちゃん。今この場で敵の情報を持ってるのは彼しかいないし彼から何としても少しでも多く情報を得ないと」

「その悪魔がどこまで強いかなんて知らないよ。

 盾子(ご主人様)はただ強いって聞いたから手当たり次第生者の生贄を用意して復活させただけだし」

 

 そう言って骨についた残りの肉をむしゃむしゃと食べる。

 

「そうか……」

 

 実はリアスたちと集中してるアザゼルは感じていないが魔王らはさっきからずっと遠くに比べるのも馬鹿らしくなる程の今まで感じた事のない類の何かを感じとっていた。

 それはある種の何者かの高揚感が高まり一定以上の存在に今自分は楽しみの最中だから邪魔をするなと語りかけてるかのよう。

 魔王らはそれを自分たちとの実力の差と受け取り勝機を見いだせないためここでじっと耐え忍ぶ。

 実際魔王たちが戦場に出れば一人か二人くらいの脅威ならば倒す事が出来、劣勢を拮抗に押し戻せるだろう。

 だが、それは一時的なものであり最後は格上の英雄に必ず崩壊させられる。

 だから今魔王たちがする最善の手法は少数精鋭の悪魔を捨て駒にしてできるだけ悪魔を避難させる事。

 流石に一般人は避難させているが、それでも魔王たちは最後まであきらめずに戦い勝つ作戦をとってしまっている。

 

「となれば後は……彼が頼りか」

 

 サーゼクス、いや全悪魔が最後の希望とするのは赤龍帝の力。

 赤龍帝の倍加のサポートと赤龍帝自身の奇跡の力があればほんの少しだが勝率が0ではなくなると誰しも思ってる。

 実際子供たちは赤龍帝がまた冥界を救ってくれると思い込んでいる。

 いざとなれば一誠の倍加の力を譲渡してもらい相打ち覚悟で死のうとサーゼクスは考えていた。

 莫大な消滅の力ならば死人を完全消滅させられると。

 

「そろそろ出るほかないか。例え無謀とわかっていても」

「魔王様! 奴らがこの城まで」

 

 脅威はついに一誠たちと魔王がいるこの場所まで迫ってきた。

 

「オマエラ、ゼッタイニユルサナイ」

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 その頃ソーナたちは現七災怪が倒したが、元々が強くいずれ破られる程度の封印しか施せなかった死者の初代風影と火影を禁手で黄泉に送っていた。

 

「まったく厄介な術だった」

「コの蘇生術のセイで封印デキル程のダメージを蓄積デキナカッタ」

「私たちを頼ってくれて助かった」

 

 日本に転移したソーナたちは真っすぐに高天原付近の妖界に向かった。

 そして日本でも冥界と同等の事態が起こってる事を知り協力。歴戦の死者妖怪に太刀打ちできると思う程うぬぼれておらず終始サポートの身に徹し危なくなったら真っ先に逃げて真の強者(つわもの)大妖怪の足手まといにならないようにした。

 所詮今のソーナたちでは上位の中級妖怪程度の力しかないから。

 そのおかげで条件付きだがすんなりと禁手の再使用可能状態にしてもらった。

 その条件が他でもない死者七災怪の黄泉送りだ。

 

「多摩でも七災怪レベル一人魂送するのは骨が折れるにゃ。

 その点一度に送れるのは便利だにゃ~」

「いえその分封印の解除に時間がかかりますしうっかり他の人が映ってしまえば連れて行ってしまいます。そもそも魔力効率も相当悪いですからやはり火影様の炎の方が」

「ここで無駄なおしゃべりする時間はないのだろう? ほれ、私が充電してやるから鏡よこせ」

 

 日本で純度の高い妖力を持つ妖怪の一人、だいだらぼっちが誠司の手から鏡を受け取ると妖力をどんどんつぎ込んでいく。

 するとまっしろになっていた百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)はどんどん紫色に染まっていく。

 

「ほれ、私たちはついて行かんから使い所を間違えるなよ」

「ありがとうございました。これで何とか冥界を救えるかもしれません」

「この一件が収まったら何があったがゆっくり聞かせてもらうぞ」

 

 こころに後ろからトンと手を置かれた時はその脅しにも似た何かに一瞬ビクッとなったが、最初からこの大不祥事を隠し通すことも無理。そもそも隠す気もないので冥界を一度つぶす気で日本にはリークするつもりだったので恐れる事はない。

 

「それとさっき調べてわかったこのなのだが、この術は高度な禁術以外に一つ余計な機能がついておる」

「それは確かなのですか!」

「うむ、役小角も同意見を出したから間違いない。

 そんでその余計な機能とは……」

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 冥界の英雄、タカルパト・ハルファスと戦っていたサイラオーグ眷属たちはそれ相応の戦略と代償を支払って何とか戦っていた。

 

「OH~これじゃまた入院コースまっしぐらネ」

「シャルル! お前はもう前線に出るな!」

「このくらいまだまだネ! ワタシは食らいついたら離さないヨ~!」

「左手右足引きちぎられてまだ言ってんのか!」

「バッボも目見えてないくせにいきがんな!」

 

 左手と右足を失い出血多量でキャラと意識が飛びそうになるシャルルと義頭の鉄球を破壊されて目が見えなくなったバッボ。

 

「ペンタゴナ、そろそろクロノスチェンジのサポートに専念してもいいんじゃない?」

「まだまだ飛べない事もないさ。それよりもクイーシャの方が限界じゃない?」

「翼片方ないのにまだ飛べるなんて流石超人の子孫」

 

 翼を片方もがれたペンタゴナとそろそろ生命エネルギーで代用しなくてはならない程に(ホール)で魔力を消費したクイーシャ。

 

「四人とも重傷の割に元気だな。ラードラはどうだい?」

「他に比べたらまだまだ戦えない事もない」

「そうか、私も同じだ」

 

 ドラゴンの姿で指をすべて逆方向に曲げられたラードラに魔法と神器の使い過ぎと自分の武器を折られいくつかの骨を骨折したリーバン。現在なれないシャルルの魔剣を使っている。

 サイラオーグも禁手を何カ所も破壊された状態で戦っている。

 

「ハァハァハァ、伝説に違わぬ愚直な強さ。

 今の時代ではお目にかかれぬ程正統派な強さだ」

「貴様こそ周りの奴らからさっき皇帝(エンペラー)と呼ばれておった悪魔よりもずっと楽しめる!」

皇帝(エンペラー)!!」

 

 ここに来てレーティングゲーム第一位の名前が出る。

 この言葉の意味することは自分たちと戦ってる相手は自分たちと戦う前にレーティングゲーム第一位との戦いを済ませてここにいるという事。

 

「なんというかあいつは格上との戦い、苦戦を強いられる戦いを知らない、もしくは忘れてるといった感じだった。

 その点貴様らの戦い方は圧倒的な格上との戦いに馴れておるようじゃ」

「こっちがどんな事をしようと真正面から食いちぎりにくるワニのような鬼教官にしごかれてるので」

「そうか、それは良い師に巡り合えたのだな。

 かくゆう吾輩も負けたら自害すると豪語する理不尽な強さを持つ師にここまで鍛えられた」

 

 この会話の中でもひそかに死角に(ホール)を創り背後から急所めがけて全力攻撃を不意打ちでかますが防御され蚊が刺したほどのダメージも与えられない。

 だがそこに気を向けた一瞬にサイラオーグが詰め寄り技をかけに行く。

 それでも技がかかる寸前までいくがかかりきらずに離される。

 

「やっぱりそっちのデュラハンと堕天使がまともに戦えなくなったのが痛手じゃな」

 

 最初はこの奇襲後の襲撃にはバッボとペンタゴナの超人の子孫が加わっていた。

 バッボは耐久とパワー、ペンタゴナはスピードがサイラオーグよりも上でむしろこの二人をフィニッシャーにサイラオーグも動いていた。

 それがどんどん二人の負担が増え、奇襲攻撃もより大胆なものにせざる得なくなりこの結果。

 

「お主らとはもう10年後に戦いたかった」

 

 腕を組み時期早々を惜しむようにつぶやく。

 サイラオーグもそのくらいの期間があればもう少し戦いらしい戦いができたのではないかと感じる。

 それでも、時期早々であろうが成長途中であろうが戦いは今起こっている。今ある状態で戦うほかない。

 

「今一度名乗ろう、吾が輩の名はタカルパト・ハルファスじゃ!」

「サイラオーグ・バアルです」

「バッボ・オーブだ」

「シャルル・ヴィッカースネ」

「ペンタゴナ」

「クイーシャ・アバドンよ」

「リーバン・クロセルです」

「ラードラ・ブネだ」

「うむ、これでしかと覚えたぞ。では参るぞ!」

 

 タカルパト・ハルファスはここにきて本気の殺気を見せつけた。

 一度死んだ身でありながら周りは自身を燃え上がらせるには至らない同胞ばかり。

 なので今まで殺された悪魔も死者に刷り込まれた殺戮命令と実力の違い。本人はじゃれついてるくらいの気持ち。トラが人間にじゃれついてるだけなのだ。

 だから初めて燃え上がらせたサイラオーグたちを餌として認めた。

 その感じた事のない遥か格上の殺気に一瞬だが体が固まってしまう。その一瞬はまさに命とりの一瞬。

 

「お、おお?」

 

 だがその殺戮の拳は放たれない。

 それどころかタカルパトの様子が何かおかしい。しぐさは苦しそうも辛そうにも見えるがその表情にはそのような感情は一切なく、むしろ自分でもこの良く解らないといった表情である。

 しかしそのような表情をしてる死者は彼女ただ一人。

 

『あ゛…………あ゛あ゛ッ!』

 

 冥界で暴れまわっていた死者たちが突如苦しみだす。冥界だけでない、世界中で蘇った死者たちが一斉に苦しみだした。

 

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ユルサナイ、ユルサナイ……」

「ん! 流石は脅威と呼ばれる種族。強い」

 

 城に侵入してきたのは上級悪魔たちの包囲を運よくすり抜けた一体だけ。

 それでも脅威の強さと執念は半端なものではなく魔王が二人掛りで何度も倒している。

 だが不死身の脅威は消滅の力でも消えず何度も蘇り立ち上がり脅威となり得る。

 今は一体だけだからいいがこれが複数体この場に辿り着けば、数が多い前線ではどんな事になるやら。

 

「ゼッタイニユルサナ……あ゛あ゛ッ!」

 

 何度消滅を受けてもケロッと立ち上がった脅威がなぜか突然苦しみだす。

 誰かが何かをしたわけでもなく勝手に自然に苦しみだす。

 すると脅威の体から半透明の魂が近くの湖に吸い込まれていく。

 

「な、なんなんだい? 何が起こってるんだ?」

 

 この時他の場所でも同様なことが世界中で起こっていた。

 誰の目にもハッキリと見えるように死者たちの魂が鏡、湖など姿を映す物の中に吸い込まれていく。

 魂を吸い込まれたのは蘇った死者だけではない。この戦いによって死んだ者の遺体からも魂が抜けだし吸い込まれていく。

 そして魂が吸い込まれた鏡や湖からは同じものが映った。その映ったものとは。

 

「これは……」

「……間違いない」

「アルセウス……」

 

 鏡中にアルセウスの姿が映っている。

 だが鏡に映るアルセウスの目には生気が灯っておらずまるで博物館に展示されてるティラノサウルスのよう。

 

「これって……死んでる?」

 

 明らかに生きてるように見えないアルセウス。

 しかし、突然アルセウスの目が怪しい赤色に光ると鏡にはひびが入り、湖には大きめの波紋が現れた。

 起こった変化は今の所それだけでアルセウスの赤い目もすぐに消えてしまった。

 

「モノクマ、これは一体どういうことなんだ」

「うぷぷ」

 

 なんど問いかけても壊れたように笑うしかしないモノクマについにキレて破壊する悪魔一行。

 これで完全に事が起きなければ事態を知る事ができなくなった。

 どっちにしろモノクマはこれ以上は笑う以外の事はしなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「供物?」

「そう、死者たちには禁忌蘇生以外にも供物と呼ばれる呪術がかかっていた」

 

 だいだらぼっちが見つけたという死者に掛けられた別の呪い。

 盾子の真意を見極めるべくそこをもっと詳しく考えてみる事に。

 

「その供物というのは詳しくは?」

「その名の通り捧げもの、魂の供物さ。

 ただし、この呪いは少しタチ悪く改造されて死者が殺した生者の魂まで供物にされる」

「なら今回の騒動で相当な数の魂が供物に」

「しかし少なく見積もっても回収される魂は万は超えるだろう。人間たち殺せば億に届いたかもしれない。

 それだけの魂を集めて一体何をするつもりなのだ?」

 

 だいだらぼっちがそう言うと誰もがその理由を考え始める。

 すると巡は一つの仮定を思いついた。

 

「破面や虚は魂を主食としますよね。もしかしたら食糧確保の」

「いいえ最後の破面の盾子さんが死んで発動したのでその可能性は低い。虚に食べさせるとしても冥界に放って暴れさせた方が趣旨に合う」

「そもそも供物の呪いは一体の生命体に対して使われる。この呪いで他の何かに溜めておくことは無理だ」

 

 こころが二人の考察に補足を入れて違うと断言する。

 盾子も基はただの人間。だったら盾子はなぜこのような術を自身の死を発動条件にしたのか。

 

「だいだらぼっちさん、普通なら魂を集める目的はなんなのですか?」

「そうだな傷ついた体や妖力を手っ取り早く回復させることやドーピング。後は……長年の封印で魂をすっからかんにされた神などを復活させたりとか」

 

「復活! 盾子さんは死んだ自分を術で復活しようと」

「死者蘇生はまず無理だ。封印されてるものなら魂事態はこの世に縛られ魂のエネルギーのみがなくなった状態だからな」

「仮にできたとしても人間程度の魂じゃ万の魂を入れられれば破裂してしまう。受け入れるには最低でも天照様レベルの魂でなくては」

 

 今度はだいだらぼっちとこころの二人掛りで間違いを断言。

 ならば魂を集める理由はなんなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鏡や湖に異変が起きて皆の警戒が収まってきた頃、アルセウスの映った鏡がバリーッンと勢いよく割れ、湖は巨大な何かが湖の底から出てきたような大きな水柱をたてた。

 殆どの場所ではそれだけで終わったがある一カ所だけは違う。

 

 絶望の女王が死に絶望の神が復活した

 

 悪魔たちと脅威が戦闘を繰り広げていたド真ん中に人間の姿のアルセウスが姿を現した。

 その場にはまだ大量の重軽傷を負った悪魔たちがいる。

 

「な、なんだあいつは……!」

「くそ、また新手か」

「怯むな! こちらは負傷者が多いとはいえ相手は一人だ!」

 

 空中にたたずむアルセウスは下の悪魔が何か騒いでるなとすら思っていない。無視してるわけではないが道端に落ちてる葉っぱ程度の意識。

 

「害虫共がわらわらと」

 

 アルセウスは神であるがゆえに並大抵の方法では破面化することはできなかった。

 破面化させるには相当量の魂のエネルギーを必要とした。

 だから盾子はこの計画で自分たちの中で最も強くもっとも頼りになった()を最期の絶望に仕立て上げた。

 

「ふむ、屈強な魂がまだ5体とゴミが無数か」

 

 実は現時点でまだ死んでいない死者が5名生存している。

 供物の呪いは死者が、中身の生贄が死んでいない、つまり一度も殺されていないと肉体から屈強な魂が離れない。

 アルセウスに吸収されなかった強者とは。

 

「屈強な魂はこの近くには……」

「ここにいるぞ!」

 

 サイラオーグと戦っていた冥界の英雄タカルパト・ハルファス。

 大量の悪魔たちの上を飛ぶのではなく飛び越えて誰よりもアルセウスの真ん前に立つ。

 

「誰だ!?」

「吾輩の最も大切な友は冥界に仇名す脅威だが、吾輩とて悪魔、自由の身となったなら冥界のために戦おう!」

 

 英雄の姿も名も半分葬り去られた歴史と共に大々的には語り継がれなかったため彼女を知らぬ悪魔も多い。

 しかし、悪魔であり自分たちの味方であろう事はわかる。

 タカルパトは基本的に自分が悪魔である事を忘れていないため冥界の為に戦おうとする意志は生前から持ち合わせていた。

 ただ、自分の死に方は誰にも指図させないだけで。

 

「さっきの衝撃で吾輩を縛るものはなくなった! これでやっとお主のような強者と熱い戦いができる!」

 

 供物時に魂を抜き取られなかったため蘇生の術だけが残り他の呪令は解除されタカルパト・ハルファスは晴れて自由の身となった。

 

「空中など不安定なとこで戦う気か? おりてこい!」

「図に乗るな、害虫が。

 我は破面の神、創造神アルセウス。

 悪魔ごときと対等な地に降りていけるか。この無礼者ッ!」

「そうか、ならばまずは神に地に降りてもらおう!」

 

 タカルパト翼を出したがそれで飛ぶのでなくただジャンプした。だがそのジャンプ力はそれだけでかなり高い位置に立ってるアルセウスまで届いてしまう。

 彼女が翼を使うのはここから。

 

「これで対等の地じゃ!」

 

 翼を使って空中に停滞できるようにして蘇って初めて使用する本気の攻撃。単純なジャブで圧倒する程の迫力はなかったが彼女が使えば一誠の全力のドラゴンフルバーストをそらすことができる。

 

「虫ケラにしてはすさまじい」

 

 だがアルセウスは棒立ち状態でそれを受けきった。

 本当は攻撃が当たる部位に霊力で防御力を上げたが、彼女の高純度の魔力を防ぐには同等の純度が必要。

 そうしなければ何の意味もない。純度の低い魔力で受けるなど普通の人間が魔力のこもった人外のパンチを受けるようなもの。

 つまり……

 

「ほう、吾輩と同等の魔力か」

「この世界に降り立つまで5年。我らは5年間この境地に至る地道な修練を積んだ。

 結果唯一間に合ったのは盾子のみ。

 しかし、破面となり我もやっとこの領域に足を踏み入れる事ができたわ」

 

 攻撃が効かなかった事にとてもうれしそうな顔をするタカルパト。

 次に彼女は全力で回し蹴りを放つが。

 

「カウンター!」

 

 今度はアルセウスは明らかなガード体制をとり受け止めた。攻撃を受け止めただけでなく受けたアルセウスの体からタカルパト一人めがけて衝撃波が放たれる。

 その衝撃量はタカルパトが放った衝撃の2倍。

 流石にその衝撃を受け止める事ができずに地面にたたきつけられた。

 そのせいでタカルパトの体が破壊され術の蘇生が始まる。

 

「くくく、初めてこの蘇生機能に助けられたわ」

 

 生身であればもう全力では戦えなかったところ術のおかげでしばらく行動不能になるだけで済んでいる。

 だがこうやって二人が戦ってる間も自由となった死者がまだ暴れていた。

 

「脅威だ! 脅威がまだ残って襲ってきたぞ!」

 

 生き残った4人の脅威が近くで一番悪魔が集まるこの場所に引き寄せられてきた。

 脅威はアルセウスとタカルパトを完全無視して本能でやってるかのように碌に動けない悪魔たちを殺していく。

 

「おお、我が友よ」

「ちょうどいい」

 

 アルセウスは脅威に狙いを定め。

 

「エアカッター」

 

 鋭い風が脅威の首を正確に切り落とす。

 脅威たちは悪魔を殺すことに夢中でアルセウスの攻撃にまったく無反応に切られた。

 どうせ生き返る死者なので首を落とされたところであまり問題はない。

 悪魔たちは助かったと束の間の喜びを得たが。

 

「は~す~は~す~は~~~~」

 

 アルセウスは深呼吸をするように空気を吐き吸いを繰り返し最後に思いっきり息を掃出し。

 

終末魂吸(フィンゴンズイ)

 

 思いっきり息を吸うように魂を吸い上げた。

 一度死に体と魂が離れやすくなった強者の死者から強靭で良質な魂を吸い上げると同時に近くにいたまだ元気な生者の魂を吸いつくし、遠く離れた者からも立ちくらみがする程度の魂を吸い上げた。

 冥界の相当な範囲から悪魔が完全に死滅。

 

「キサマらのような木っ端悪魔殺したところで何の足しにもならんわー!

 我の狙いは魔王、そしてリアス・グレモリーとその眷属共だー!!」

 

 アルセウスの叫びが死体だらけの地に響きわたる。

 その叫びに反応する生者はもう一人もいない。

 アルセウスは自身の知る仇の霊圧を感じ取りハイスピードで飛んで行った。

 

 

 

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 アルセウスが移動を始めた頃、リアスたちは城の中でまだ赤龍帝の籠手の復活を待っていた。

 

「くそっ、細部にまで砂がパンパンに詰まって少しも掻き出せねえ」

 

 椿が最初に言った通り神器の修復は遅々として進んでいない。

 だが神器に最も詳しいと自負するプライドが意地でも解決してみせると躍起になっている。

 そもそも誰かに手伝ってもらいたくても手伝える人員はこの辺りにはいない。

 

「アザゼル先生も頑張ってくれてるけど、もう4時間近く経っちまった」

「ところでさっきのはなんだったのだろうか」

「急にこう生気を吸い取られたかのような」

「まだ気分が悪い」

 

 アルセウスの終末魂吸はリアスたちの魂まで吸い尽くす事は出来なかったが確かに届いていた。

 魂を吸われた時点で魔王たちと一部リアス眷属は何かあったかと疑ったが周りには敵らしい姿は無く近くの一般悪魔も無事であるため気づかない。

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

 だが、ものすごいスピードで近づいてくるのであれば話は別。

 魔王二人、アザゼル、ロスヴァイセ、リアス、朱乃、小猫は近づいてくる巨大すぎる気配にいち早く気づいた。

 その少し後に木場とギャスパーが、さらに後にゼノヴィアがその気配に気付く。

 アーシアと一誠は周りが何か言い始めてやっと何かが来てる事に気づく。

 アーシアはともかく今までの一誠ならリアスと同じタイミングで気配に気づいただろうが神器のサポートがなくなり本来の性能のため気づかなかった。

 

「何この巨大な力は!?」

「これは……まさか!」

「魔王様、わかるのですか?」

 

 誰も向かってくる気配が誰かわからなかったが、その力を近くで体験した魔王はその力の持ち主が誰か検討がついた。

 しかし、その正体は魔王たちが言うまでもない。

 

「見つけたぞ、害虫共」

 

 その正体はもう目で見えるところまで来ていたから。

 

「アルセウス!!」

 

 魔王たちはアルセウスの実力をその身をもって心得ている。

 さらに冥界に大打撃を与えアジュカ・ベルゼブブを殺した破面の実力もしっかりと理解している。

 だからいつものような正々堂々な戦い方を捨てアルセウスの姿を確認した瞬間に窓と壁ごと瞬間最大威力の魔法で先制攻撃をかました。

 

「虫の抵抗などこの程度よ」

 

 アルセウスは何のダメージも負ってない。

 それどころが窓と壁を破壊した事でさらに凄惨な光景を見る事に。

 

「まさか……」

 

 外では自分たち以外の悪魔が首をはねられ心臓を何かで貫通させられていた。

 アルセウスが到着したのはほんの数秒前のハズ。

 さらに数分前に窓からまだ元気に警備をする悪魔を数十人を目撃している。

 つまり数秒で自分たちが気づかない速さで声一つ上げる事を許さずにこの人数を殺したのだ。

 

「害虫の王共、貴様らに対する恨みは死んでからも一瞬たりとも忘れた事はない」

「アルセウス! なんでこんな事をするんだ!」

 

 ここぞとばかりに一誠は前に出てアルセウスに訴えかける。

 盾子に聞いても答えてくれなかった真実を知りたいと同時に冷静になるための時間稼ぎをしようと。

 

「教えてくれ! なぜこんな事になったのかを」

「隣のクズ共に聞け!」

 

 その言葉にリアス眷属の殆どが勢力のトップの方を向いた。

 その姿を見て機嫌をよくしたのか攻撃は行わずまた話してくれる。

 

「魔王様、どういう事なんですか?」

「…………」

「お兄様!」

「くくく、やはりひた隠しにしていたか。よかろう、我が教えてやろう」

 

 相変わらず巨大な霊力、悪魔から見たら魔力差がとてつもないがそれでも威圧感が少し減った。

 目の前の敵が混乱してる姿を見て少しだけ満足を覚えたからだ。

 

「復讐の始まりはあの日、我々はあの日三大勢力に同盟破棄を申し出に行った」

「……」

「最初の同盟条件の迷惑はかけないを完全に抵触してたし十分な理由はあった」

 

 アルセウスはあの日の事を語りだす。

 自身の大切を奪った憎き悪魔共を見ながら。

 

「スムーズに事を進めるために話す内容を用意し、これまでの我らの貢献と被害をまとめ準備に抜かりはなかった。

 しかし我々が同盟破棄を申し込む前に冥界に呼び出しがかかった」

「! それは誇銅が禍の団と繋がり俺たちを裏切った証拠が出た時の」

「黙れ!」

 

 一誠が口を挟んだ事でまた怒りの形相を浮かべだす。

 自分の失言だとわかっていたがそれでも一誠はまだ言い続けるつもり。しかしアルセウスの威圧で無理やり黙らされる。

 

「配下でもない我々を呼び出すとは忌々しいと思ったがちょうどいいとも思った。

 同盟破棄を伝えるべく誇銅と護衛として我とルピは冥界に行った。

 しばらく全く関係のない話をさせられしばらくして誇銅は少し席を外した。今思えばあの飲み物に何か仕込んでいたと思う。

 それからほんの少しして誇銅が襲われてる事に我々は気づき助けに行こうとしたところを止められた、隠れていた大天使共と魔王共にな」

「大天使がだと?」

 

 流石に誇銅との話し合いの場に大天使がいたことにすごい違和感を感じる木場。

 木場だけでない教会出身のゼノヴィアや堕天使の朱乃、リアスや小猫やロスヴァイセも疑問を感じた。

 唯一大した疑問を感じてないのが仲間なんだからそこまでおかしい事ではないと考えてる一誠とアーシアのみ。

 

「我らは何としてでも誇銅のもとへ駆けつけようと強硬手段に出たが、奴ら我々を部屋ごと異空間に閉じ込めよった。

 明らかに我らを外に、誇銅のもとへ行かせんための行動。

 すぐに問い詰めて場合によってはそのまま殺してしまおうと思っていたが、その時とんでもない事が起きた」

 

 こぶしを震わせ泣いてるような怒ってるような表情を見せる。

 その様子からよほどのことが起きたのは全員が正しく理解した。

 

「ルピが言うのだ……誇銅の霊圧が消えたと。つまり生命反応がなくなったと。

 誇銅は殺されたのだ、害虫共の謀略でな!

 我らはすぐさま害虫の王共を痛めつけた。すべての真実を吐かせて少しでも誇銅の無念を晴らすため、我らから誇銅を奪った復讐のため殺すのはガマンしてな」

「まさかそんな事が……」

「しかし、誇銅の力によって生き返った我らは誇銅が死んでただでは済まなかった。

 ルピは誇銅の力によって増幅した力に耐えきれず最期は害虫に殺され、我は我たらしめていた17属性の力を失い死んでしまった」

 

 アルセウスが話し終えると魔王二人はリアスたちの方に向いて頭を下げた。

 

「これがこの復讐を始めるに至った経緯だ」

「……すまない、リアス、イッセーくん、そしてみんなも」

「……こんな事にならないようにしたつもりだったのにまさかこんなことになるなんて」

「俺もこの計画に賛成して手を貸した。こんな結果を生んでしまってすまないと思ってる」

 

 サーゼクス、セラフォルー、アザゼルはリアスたちにしっかりと頭を下げる。

 リアスたちは特に魔王やアザゼルを責める事はしない。批難の視線を向ける事もしない。

 ただ本人も反省してるんだからくらいの気持ち。

 

「本当にすまない事をしたと思ってる。だから僕たちの命でどうかこの場は収めてもらえないだろうか。

 未来ある若者には何の罪もないんだ!」

「ソーナちゃんやリアスちゃんの未来、冥界の未来まで奪わないで!」

「こいつらはこれからの平和を築いていくために必要な存在なんだ!」

 

 トップたちは必死でアルセウスにお願いするが。

 

「ならん! 貴様らは我の大切なものをひとつ残らず奪い去った。しかも二度も!

 それをたった害虫三匹の命で収められるとでも? 我の怒り悲しみがその程度で清算されると本気で思っているのか!!」

 

 破面の姿で初めてこの場に立った時と同じくらいの怒りに完全に戻ったアルセウス。

 怒りの矛先は魔王たちだけでは終わらない。

 

「例え我が受けた悲しみが貴様らを殺す事で癒えようと誇銅の無念は消して癒えん!

 誇銅は貴様らに殺される以前から不当な扱いを受け入れてきた! そして貴様らはそれを当然のように誇銅を見下し続けた!

 リアス・グレモリー、貴様の事だ!」

 

 アルセウスははっきりとリアスを指差して言った。

 

「その仲間共も同罪だ! そこの無能王共々誇銅を蔑ろにし続けた!

 我はそれも許せんのだ!」

「私たちが……そんなことしてま」

「まだいうか! 同じ立場であった兵藤一誠やそれよりも後に入ったアーシア・アルジェントとの待遇の差を見れば明らかではないか!

 そもそも貴様らは誇銅が見捨てられた日、そろいもそろって誇銅の存在を忘れたではないか! そこが貴様らの誇銅に対する見かたがありありと現れておる!」

 

 反論はいくらでもあった。だけどアルセウスの威圧がそれを許さない。

 しかしその反論を言ったところで火に油を注ぐだけなので逆に良かった。

 

「それも誇銅が我らを連れて戻ってきたときには手のひらを反して誇銅を見るようになったな」

「それは死んでしまった誇銅が戻ってきたから」

「いいや、貴様らも誇銅の希少性と利便性から価値を見出しそれを手に入れようと考えただけのあさましい害虫。

 そこの害虫の王共とまったく同じだ」

 

 その言葉に多大なショックを受けるリアスたち。

 自分たちはそんなつもりはなかった。だが今までの行為はまさにその通り。

 今リアス眷属は初めてほんのちっぽけだが誇銅に対しての罪悪感をやっと抱いた。

 

「いや、誇銅の神器目当てで誇銅を悪魔に引き込み期待外れとわかれば蔑ろに扱う。

 お前はそこの害虫の王よりもけがらわしい悪魔だ!」

「やめろッ!」

 

 アルセウスの威圧をがむしゃらに振り払い声を上げたのは一誠。

 アルセウスの言葉に今一番傷つき震えているリアスを護るようにギュッと抱きしめアルセウスをにらみつける。

 

「確かに俺たちは誇銅に対して仲間としての接し方をしてなかったかもしれない。

 だからってここまでしていいはずはない!

 不満があったなら俺たちに言えばよかったんだ! 戻ってきた誇銅なら十分言える力はあったはずだ」

「戻ってきてからはなおさら言えるはずがなかろう。そんなことをすれば誇銅が殺される日がもっと早まっただけだろう」

 

 一誠は黙った。ここでそんなことないと否定してしまうのは簡単。

 だがそんな否定はもう通じないのはわかる。

 だから一誠はアルセウスの主張を全面的に認め謝罪した。

 

「……すまない、本当に悪い事をしたと思っている。

 魔王様たちも今回の事でもう十分わかったと思う。

 だからもうやめてくれ! このままだとお前が誇銅と同じ悲劇を生んでしま」

「貴様も同じだ!」

 

 一誠がたわごとを漏らすのが耐えられるアルセウスは無理やり言葉を遮った。

 ただ聞くに堪えなかったからではなく、一誠の存在もアルセウスにとっては今すぐにでも視界から消したい害虫の一匹だから。

 

「貴様はどれだけ都合のいい言葉で誇銅を縛ろうとした。貴様の行動が誇銅を仲間などと思ってないことなどわかりきっている。

 現に貴様は今も我を聞こえのいい狂言で縛ろうとした」

「俺はただ誇銅を仲間だと思っていた! それに俺はただお前がそんな事をすることで誇銅は喜ばないということを」

「いいや、貴様は誇銅を仲間だとは思っていない。そこの害虫と同じで都合のいい物だと思っている。

 それを自覚していない分貴様の方がドス黒いけがらわしい害虫だ」

 

 アルセウスは威圧をさらに強めて一誠程度がどれだけ抗おうと口を開く事すらできなくする。

 現に一誠はまるで標高の高い山にいるかのように呼吸にすら苦しんでいる。

 

「他の者なら貴様らだけ殺せれば満足しただろう。しかし我は違う!

 貴様らを殺し、悪魔を根絶やしにし、三大勢力に属する全種族を滅ぼし、こんな害虫をむざむざのさばらせたこの世界に終末を与えてやる!!」

 

 明らかな格の違い。もはや最大奥義を使う事すら馬鹿らしくなる程の格の違い。

 魔王たちも戦闘に関しては政治のように愚かではない。その力、戦闘力でこの地位についてるのだから。

 だからこそ今の不意打ち一発であの時以上の格の違いを実感することができた。戦う意味を成さない程実感できてしまったのだ。

 

「横のクズ共と共に死ぬがよい」

 

 足がすくんで動けないわけではない。だが抗う気にもならない。

 例えばアリの攻撃がゾウを倒す事が出来なくとも、何千何万何億回噛みつけばいつか死に至らしめるダメージに届くかもしれない。

 しかし、もしもそれがゾウではなく鉄やダイヤモンドならばアリの抵抗はそれだけやっても無駄。破壊できない。

 だとしたら魔王たちがとる行動は一つ、逃走。大切な人を連れての逃走。

 と、行きたいところだが守りたいもの、守らなくてはいけないものが多すぎる。

 

「くろいまなざし」

 

 アルセウスの目が怪しく光る。

 するとリアスたちは逃げられなくなった。

 足が床に張り付いたとか逃げるという事を考えられなくなったとかではなく、ただ戦闘を放棄できないと魂が何かに縛られたような。

 

「これで誰も逃げられない。誰もだ」

 

 リアスたちが強敵を前にして頼れるのは一誠の赤龍帝とギャスパーのバロール。

 だが、赤龍帝は死亡同然、バロールも先ほどの戦いで回復なんてできてない。

 どちらにせよ現状で二つともあっても何の意味を成さない程の力の差。

 もう座して死を待つしかないその時。

 

「グギャゥ!」

「ギャーッ!」

「ブルルルルッ!」

「グォーッ!」

「バルルルル!」

「「ガルルルルッ!」」

「「「ガァァッ!!」」」

 

 七属性の幻獣たちがアルセウスに向かっていく。

 その属性幻獣たちをリアスたちは知っている。盾子戦の時にもこんな風に助けてもららったから。

 

「あれはソーナたちの」

「ソーナちゃんたちが!?」

 

 魔王にとってこの規模の攻撃を行う事は難しくない

 だが集まり互いを高め合う相乗効果でこの合体攻撃は魔王にとっても無視できる威力に収まらない。

 無傷で相殺するにしても相殺できるにはできるが同規模の攻撃では相殺しきれない。

 そんな恐ろしくも今は頼もしい攻撃がアルセウスに牙を向ける。

 

「でも、盾子もこの攻撃を簡単にやり過ごした。はたしてあいつに効果はあるのか?」

 

 ゼノヴィアの言うとおり盾子に効かない攻撃が神であるアルセウスに届くのかと言えばNOと言うだろう。

 だからこそアルセウスが防御態勢を取ったのが不思議でならない。

 幻獣たちは見事にアルセウスを呑み込み攻撃をヒットさせた。

 

「やったか!?」

 

 しかし、それはぬか喜びに終わる。アルセウスは服が少し汚れただけでピンピンしてる。

 

「ミラーコート」

 

 さらにアルセウスの体魔力によく似た衝撃波が幻獣たちが放たれた方とは逆の方向に飛んでいく。

 そこには既に目視できる程こちらに近づいて来ているソーナたちが

 

「皆さん! 僕の後ろに! す~~~~~~~~~~~!」

 

 誠司がソーナたちを守るように一歩前に出て大きく息を吸う。誠司の腹には異常なほどの空気が溜めこまれていく。

 

「エアークッション・マッスル!」

 

 誠司の腹にたまった空気が誠司の体全体に行きわたる。

 動物の中には空気で体の一部を膨らませるものもいる。そのように超人の誠司も空気で筋肉を膨らませた。

 一時的に筋肉を二倍に膨らませソーナたちの肉盾となる。

 

「ふんぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ!!」

「二倍のカウンターダメージを耐えきったか」

 

 ギリギリだが何とか一歩も下がることなく盾としての役目を果たした誠司。

 膨らんだ空気も抜け元も筋肉量に戻る。

 だがソーナたちの合体技の二倍のカウンターを受けた誠司も無事ではない。

 

「誠司くん、大丈夫ですか」

「はい、だけどもう一撃は無理と思います」

「一撃防いでくれただけで十分すぎます。もう大技なんて使いません」

「後は俺たちらしくチームプレーの小技だ。後は任せてくれ」

 

 誠司をその場で休ませると今度は自分たちの番と逆に前に出ていく。

 

「禁手『百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)』」

「禁手、『怨嗟の獄煙龍王(グレイトフル・ヴリトラ・プロモーション)』」

 

 解放時でも瘴気で老化ガスをまき散らす匙は少し離れたところで禁手化。

 そして開幕老化ブレスを放つ。

 おそらくまったく効かないであろうが。

 

「プロシュートの老化ガスか。悪魔に使われるのは忌々しいが、弟子の貴様ならまあよいか。

 きりばらい」

 

 一振りで老化ブレスを吹き飛ばすと目の前にソーナたちの姿は無い。

 そんなことは始めからアルセウスはわかっていた。

 だからすぐに真後ろに壁を張った。

 

「ひかりのかべ」

 

 背後に移動していた椿の砲撃を壁で軽く防ぐ。

 そちらに気を取られてる間に忍術と技術で最大限に気配を消した匙がアルセウスのすぐ近くまで近寄っていた。

 

「捕まえた」

 

 匙はアルセウスを羽交い絞めにして(じか)に老化の力を叩き込む。

 さらに生命力を吸い取り自分の体力を回復させる触手を巻きつける。

 

「グレイトフルザデッド」

「しんぴのまもり」

 

 しんぴのまもりに包まれ直の老化攻撃を防ぐ。

 それがなくとも効くかどうか疑問だったこの行動が完全に無効化される。

 だからこそ効いたらラッキー、効かなくて当然の作戦。

 

「これくらいで終わられちゃ拍子抜けですよ!」

 

 羽交い絞めの体制から空中スープレックスをかます。

 匙の本当の役目はアルセウスを空中から叩き落とす事。しかしそれには大きな穴があった。

 空中であろうと霊子の足場を創れる破面には空中も地面となんら大差ない。そのためアルセウスならば匙程度ならば余裕でスープレックスを投げられないように耐えられる。

 

「おもしろい、乗ってやろうではないか」

 

 耐えられるのにわざわざ匙の技をくらって見せる事に。

 匙自身も耐えられる可能性があるとして何重かに拘束しいざとなれば触手を引きちぎっても素早く脱出できるように準備していたため疑問を感じた。

 それでもこの次の作戦が信頼がおけるものなのでこのままいくことに。

 

「この次はどうするつもりだ?」

 

 地面に突き落とされてなお余裕の風格をまったく崩さない。それどころか受け身一つ取らずに腕を組んだままただ寝転んでるだけのよう。

 

「ここからどうするつもりだ?」

 

 ソーナたちには他にいくらか策はある。

 こんな無理やり地に落とすだけではなく空中で仕留める卑怯と呼ばれかねない策が。

 だがこれが通じるのは少し格上まで。アルセウスや盾子程の格上には通じない。

 だからと言ってこのやり方よりはダメージは与えられるだろう。

 それでもこの方法を強行したのは盾子に通用したあの術につなげるため。

 

『不毛の大地!』

 

 盾子の技の選択肢をごっそり削り取った属性魔獣合体と双璧を成すソーナたちの最大奥義。

 いくら相手の実力が高くともいくら相手の魔力の質が高くともいくつか無条件に効く技は存在する。それを教えたのはほかでもない昔の盾子自身。

 その時点から盾子は質の高い魔力を知り会得していた。ゆえに信憑性は高い。

 

「この術でアルセウスさんの命を枯らします。例え私たちの魔力が尽きようとも」

 

 ソーナたちの魔力ではアルセウスを殺しきる事はできない。かといって百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)の解放を待つ程時間は稼げそうもない。

 だからせめて解放の時間を稼げる程度に弱らせられたらと。

 確かにこの術はアルセウスも知っているし自分に効いてしまう事も真実。だからアルセウスはこんな方法で破りにきた。

 

「じしん!」

 

 アルセウスは地面を思いっきり叩きつけて大地震を引き起こした。

 魔力で防げなくとしんぴのまもりで覆われたアルセウスならしんぴのまもりを剥がされるまで、数秒だけ不毛の大地を防げる。

 だから強引な方法で手っ取り早くじめん全体に攻撃しソーナたちを倒しにきた。

 その技は強力な力でじしんを発生させ周りのすべてを攻撃。ソーナたちどころか地面に接しているすべて、建物も崩壊させた。

 数字上威力60の技で脅威すら殺せる。それが威力100の技ならどうだろう。

 技が形が違うとはいえ一撃で最低戦闘不能。

 刹那の瞬間技が破られるビジョンが見えたソーナがとっさに回避の指示を出したため直撃はしなかったが術に参加していない匙と椿を除き全員が戦闘続行不可能状態へ。

 

「そんな、不毛の大地まで効かないなんて……」

 

 椿と匙はただの一撃で全員がやられた仲間を見てそちらに目を向けてしまった。

 アルセウスから目を離してしまったのだ。

 

「!!」

「かなしばり」

 

 いつの間にか近づいてきたアルセウスが椿に手をかざすと百霊悪行の紫三面鏡(ベルギム・パープル)が閉じてしまい開かなくなった。

 

「そんな。開け、開け!」

「無駄だ。おいうち」

 

 見た目は普通のパンチが椿の腹に入る。

 逃げる者には倍の威力を発揮するおいうちだが椿は逃げなかったので通常のダメージ。

 それでも死なないまでも戦闘不能に。

 そこでやっとアルセウスに視線を戻す匙。しかし攻め入る前に既にアルセウスに攻め入られた。

 

「ドラゴン/あく……いや、ドラゴン/どく」

「なッ!」

「ハートスタンプ」

「うごっ!」

 

 鎧の上から急所を外してハートの形をした念力でまたまた一撃で戦闘不能へ。

 全員しばらく起き上がれない程ダメージを負っているが命に別状はない。

 

「貴様らは誇銅を無碍にしなかった。神の温情だ」

 

 ソーナ眷属が全滅したところでリアスたちの方へ向き直り元々いた空中へ戻りリアスたちを見下す。

 

「さて、次はオマエラだ。貴様らに温情などあると思うなよ」

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