BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 久々の誇銅登場! お待たせしました!


開けられたパンドラの箱=BADEND

 ボロボロのドアの先を抜けると辿り着いたのは何とも奇妙な部屋。

 床には子供が遊んだあとのように玩具が散乱しているのに、壁には骨董品の拳銃や絵画や日本刀がきちんと整頓して飾られている。

 他にも椅子や机は子供用なのにその上にはとても高そうなティーセットがピカピカに磨かれた状態で置かれている。

 他にも子供用のジュースの隣に高そうな紅茶の袋。幼児用のDVDが錯乱する中に大人用のDVDが混ざっている。

 子供服はその辺に脱ぎ散らかされてるのに子供用だが軍服はしっかりハンガーに掛けられて少なくとも新品ではない、何度も着られたようによれている。

 

「なんだろう、まるで子供と大人が入り混じってる」

 

 大人と子供の二人が住んでいるならこんなグチャグチャのまま放置はしないだろう。だけど散らかす子供がこんな骨董品や紅茶は似合わない。

 かといって子供が一人で住んでいるような生活感ではない。

 

「お恥ずかしい所を見せてしまった。何しろ片付けても片付けてもすぐに散らかす私がいるからキリがなくてな」

 

 そこには子供用の軍服をピシッと着こなしたフールちゃんが。だけど何度か会ったフールちゃんとはまるで様子が違う。

 

「君はフールちゃん……?」

「私の名はルル、フールでもルールでもない。司るアルカナは愚者(フール)だがな」

 

 ルルと名乗る少女は子供用の椅子に座って紅茶を入れ始める。自分と僕の分を入れて僕にもそこに座るように促す。

 

「子供用ですまない。客人用の椅子はすべて正位置の私が壊してしまった」

「は、はあ」

「私と君は何度か会ったがこの状態で会うのは初めてだな。

 正位置の時は舌も脳もうまく回らないんだ。逆位置の時はこうしてまともに話せるのだが。

 だから初めて自己紹介した時もフールと名乗ってしまった。私の本名はルルだ、正位置の私もそれできちんと反応する」

 

 初めて出会った時の子供……いや、子供としても少しおかしな少女だった彼女とは思えない。

 焦点の定まってなかった目はしっかりと定まり、だらしない服装もきりっとしている。何よりちゃんと会話になっている!

 

「君の期待通りここは試練の最終関門。ここをクリアすれば約束通り生き返らせる」

「本当にこれをクリアすれば家族のもとへ返してくれるだよね」

「きちんと君が生きていた世界に戻すことを約束しよう」

 

 ルルちゃんは紅茶をグイッと一気飲みすると席から立ち奥へと歩く。僕も紅茶を飲みほして後についていく。

 道中も散らかった玩具や綺麗に整頓された装飾品が混ざり合っていたが途中からぱたりとどちらも無くなった。

 そして辿り着いたのは普通の家の玄関。

 

「このドアの先には私の生まれ故郷によく似せて創られた空間が広がっている。

 私に有利なステージではあるが、そこも試練だと思って了承してほしい」

 

 僕は黙ってうなずく。もちろん、生き返るなんて無理をお願いしたんだこのくらいの不利は覚悟のうちさ。

 

「君の勝利条件は私を地に触れされば君の勝ちだ」

「え? それは具体的にどういう意味で」

「ここを出れば私はまた正位置に戻る。話は通じんがルールは守る。私が大地から離れたらスタートだ」

 

 ルルちゃんは僕の質問を聞く前にドアを開けて外に出てしまう。

 ドアを開けた先は森。いや奥に見える景色がかなり高い所だから山の中かな?

 

「あのルルちゃん」

「ぴ?」

 

 僕の声に振り返るルルちゃんの表情は初めて会った時の何も考えてないような表情に戻っていた。

 この状態ではもうまともに会話はできないだろう。

 

「ぴっぴっぴ♪」

 

 まるで鳥のような足取りで先へ先へと進んでいく。ただ前へ前へと。

 

「危ない!」

「ぴ~~~~~~~~」

 

 前へ前へと進みすぎたルルちゃんは崖から転落してしまった。

 木が邪魔で僕もギリギリまで崖になってる事に気が付かなかった。

 僕は急いでルルちゃんが落ちてしまった崖の方へ走るが、その崖したから何か大きな鳥のような影が上がってきた。

 

「たびびとはそらをみつづけがけにおちた。ひとびとはそのものをおろかものといった。

 がけのしたはじごくとはかぎらない。ちのしたはみちのせかい。

 いっぽをふみだしたたびとにしゅくふくを」

 

 上がってきたのはルルちゃん。まるで性能の低い機械に録音させたような言葉を幼い声で読み上げる。

 だけどその姿は人間の腕ではなく鳥の翼、人間の足ではなく鳥の足、明らかに人間の構造ではなくなっている。

 

「ルルちゃん、その姿は……」

「ルールはハルピュイア! ルールはハルピュイア!」

 

 何も考えてなさそうな顔でのんきに崖の上空を飛びまわる。

 流石にこの変化にはすぐについていけない。

 

「すたーと! すたーと!」

 

 そう言って崖の上で飛び回るのをやめて木の上に鳥のように止まる。

 そこから僕を見下ろす姿を見て僕はやっと目が覚めた。

 地に落とすというのはこの事だったのか。

 

「そうとわかれば! 炎目、大きな葛籠(つづら)

 

 大きな箱の形の炎を創り出しそれをルルちゃんに投げた。ルルちゃんはそれを簡単に避けるがこれだけで大きな葛籠は終わらない。

 

「大きな葛籠には舌きりすずめの仕返しさ」

 

 中からスズメの形をした僕の造形炎が飛び出す。

 飛んでるものを捕まえるのならこれが僕の技の中で一番だね。

 炎のスズメたちはルルちゃんにまとわりつこうとしたり、小さな火の粉を吐きかけたり。

 

「僕の手は届かなくとも、普通の炎では追いつけなくてもこれなら」

 

 僕の炎は質量を持っている燃え移れば熱さはそれほどではないけど重くなる。重くなればスピードも落ちるしもしかしたらそのまま地面に落ちるかもしれない。

 限界数の数の炎を出してるからこれ以上なにもできないけど確実にルルちゃんを追いつめてる。

 

「ぴー! ぴー!」

 

 ルルちゃんはその場にとどまるのををやめて抵抗するかのように羽をばたつかせる。

 ルルちゃんの近くの木の葉がゆれたから風を起こしたのだろう。

 だけどあの小さな翼じゃ起きる風も少量。質量をもつ僕の炎はその程度じゃ散らない。

 そよ風程度じゃびくともしないハズなのに。

 

「なんで……」

「わすれた」

 

 炎のスズメは形を失いただの炎に戻り消え、ルルちゃんに燃え移った炎も消えてしまった。

 一体なぜ!? 僕の炎は水の中につけても早々消えないし魔力なんて逆に燃やしてしまうのに。

 

「わすれた! わすれた!」

「こうなったら直接捕まえるまでだよ!」

 

 この距離なら僕の効果範囲内。炎の手で直接捕まえるために巨大な炎をの手を創り出して直接捕まえに行くことに。

 

「ふー」

 

 ルルちゃんは僕の手をふーと息を吹きかけた。たったそれだけなのに僕の炎はまた形を崩し消えてしまった。

 

「な、なぜ」

「私は愚者(フール)、自由と忘却を司る。

 自由な私は何にも縛られず空を飛ぶように自由にどこへでも行き来できる。

 私の忘却にあてられたものは人だろうとものだろうとすべてを忘れる。

 炎は役目を忘れ、人は自分を忘れ、やがて万物は存在自体を忘れ消えていく」

 

 突然風のような速さで僕の目の前に移動してきたルルちゃん。

 しかも逆位置の方に戻っている。

 

「君は自由な旅人? それとも忘却を望む愚者?」

 

 それだけ言うとルルちゃんは僕の顔にふっと息を吹きかけた。

 一体なぜ? なぜ僕に息を吹きかけた? なぜ僕はルルちゃんに手を伸ばさない? なぜルルちゃんに羽が生えてるの? なぜ僕はここにいるの? なんで……返ろうなんて思ったの?

 

「愚者のアルカナは人類最初の試練。難易度はルナティックさ」

 

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 暗い世界、その中で光る一本道。そに僕はいる。

 後ろに道はなく前にだけ。周りには暗闇と懐かしい品々が並んでいる。僕が小さい頃に遊んだ玩具だ。

 少し見上げると記憶にある両親の写真。

 僕は先に興味を持ち歩いてみると飾られてる品々はどんどん僕が成長した時の思い出の品になり写真もそれに合わせて変わっていく。

 

 だけど、あるところからまったく見覚えのないものや写真が並ぶ。さらには見覚えはないが見てるとつらくなってくるものまで出てきた。

 僕はつらくなって後戻りしようと思っても道が無くなっている。

 もしかして道が見えないだけであるのかもと思ったがどうやらこの暗闇はただくらいだけでなく本当に何もない。この道を踏み外せばまっさかさま。

 

 仕方なく進むがさっきより辛くなることは無くなったけどやっぱりつらいものが多い。

 僕は進むのが嫌になってきた。

 そう思って立ち止まっているとなんだかさっきまで恐ろしかった闇がなんだか心地よさそうなものに見えてきた。あそこへ行けばもう苦しまなくていい。そう思えた。

 そう思って自ら足を踏み外そうとした時、奥の方から僕を呼ぶような何かが聞こえたような気が。

 僕はそれを確かめようとつらいけどもう少し進んでみる事に。

 

 それでもやっぱりつらくなって何度も暗闇に降りようとした。だけどそのたびに徐々にはっきり聞こえてくる声に呼び戻されて進むことに。

 そしてついに辿り着いたのは一枚のドア。ここで道は終わりのようだ。

 僕はそのドアを開けると……すべてを思い出した。

 

 

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「やっとお目覚めかい?」

 

 僕は目覚めて初めて目にしたのは椅子に座って堅い本を読んでいる逆位置ルルちゃん。

 既に鳥の姿から完全な人間の姿に戻ってる。

 僕はとりあえずルルちゃんを椅子から降ろして地面に置いた。

 

「合格、君の勝ちだ」

「僕はどのくらいこうして?」

「大体二年くらいかな」

「二年!!」

 

 長い時間意識を失ってたと思ったけど桁違いに眠ってたよ!

 どうしよう! どうしよう!!

 

「確かにすごいな。私の忘却から我を思い出したのは君を入れて二人目だ」

「そういうことじゃなくて!」

「大丈夫、この世界の一年は現世の一日程度さ」

 

 それを聞いて安心したよ。

 家族を長い時間悲しませないように、それに僕も早くみんなの顔が見たい。

 二年の時を無駄にすごしても家族が悲しむ時間が短いならいい。

 

「賢者の部屋は一時間が外の世界の一時間。悪魔の部屋では一分が一日。死神の部屋では一日が一週間」

 

 それを聞いて安心が一気に不安へと変わった。

 ちょ、ちょっと! それじゃ僕の不在は現世の一体何日分に相当するの!!?

 家族が悲しむ時間がたった今計算した予想よりはるかに多いんですけど!

 僕が一人であたふたしてるとルルちゃんが僕の家の玄関によく似たドアを出現させる。

 

「この扉の先が現世だ。早くかえってやるがいい」

「あ、ありがとう! それじゃ!」

 

 僕は大慌てでドアをくぐった。

 

 

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 ドアをくぐった先は僕の家の中。今更どんな顔をして帰ればいいのかわからない。

 のんきにただ今と言って何事もなかったかのようにするのも難しい。

 

「ただいま……」

 

 とりあえず小声でただ今と言っておく。

 それから僕はコソコソと盾姉の部屋に。盾姉なら何かいいアイディアを考えてくれるえとの考えで。

 それに盾姉になら言いやすい。

 

「盾姉~」

 

 盾姉の部屋のドアを開けるとそこには誰もいない。

 そこでやっと気づいた、家の中が静かすぎる。僕は全員留守なんだとのんき考えをしてたけどそれが違う事にすぐさま気づかされた。

 

「こ、これは……」

 

 リビングについてやっと気づいた。部屋の中が荒らされてる。

 リビングだけじゃない、盾姉の部屋だっていつもきれいに整頓されてる本棚がグチャグチャ。

 

「月! 恋! フラン! ルピ君! テト姉! 盾姉! プロシュート兄貴! アルセウスさん!」

 

 全員の名前を呼びながら全員の部屋を開けると荒らされてるだけで何もない。

 裏側の世界のドアに関しては閉じられている。

 外に出てみると家の悪魔避けや天使避けがすべて壊されている。

 

「こ、これは一体……」

「これが真実や」

 

 僕の背後から知らない声が聞こえた。振り返ってみるとそこには目の細い20歳くらいの男性が立っていた。

 

「初めまして、ボクは(ムーン)。ルルちゃんやファウル君と同じ存在や」

「アルカナの守護者」

「そ、アルカナの守護者」

「僕に何の用ですか?」

「君が不在やった時の真実を教えにきたんやけど、どうする?」

 

 僕の不在だった間の真実! これは願ってもないチャンス。

 ぜひ知りたい。そうすれば今僕の家族たちがどこにいるかがわかるかもしれない。

 

「ぜひお願いします!」

「その前に一つ。これは義務やない権利や。君は真実を知る事を拒むこともできる。それでも知りたいんやな?」

「家族を探すために僕にはその記憶が必要なんです!」

「ええでっしゃろ。それじゃ受け取り」

 

 (ムーン)さんが僕の頭に手を置くと僕の頭の中に僕の知らない記憶が流れ込む。まるで漫画家小説を読んでるかのように僕の知りたい記憶が流れ込んでいく。

 それにより僕は絶望した。まさか家族全員が僕の復讐の為に死んでしまったなんて。

 

「で、でも、救世の神薬(メシア・アンサー)なら! 救世の神薬(メシア・アンサー)なら死んでしまった家族も生き返らせられる!」

「君の家族の遺体が処分されたのが二日前。ああなってまえば救世の神薬(メシア・アンサー)も通用せえへん。

 そもそもどうやって三大勢力のとこから取りに行くん? ボロボロゆうても君一人拒むくらいはできるで」

「そ、そんな……」

 

 (ムーン)さんは顔を上げたらいなくなっていた。僕はどうしたらいいのかわからなくなりフラフラと荒らされたリビングで何も考えられなくなる。

 気が付いたら僕は盾子さんの研究室へ辿り着いていた。裏側の世界に創られた盾子さんの研究室もひどく荒らされている。

 もらった記憶では三大勢力が損害をなんとな埋めるため盾子さんの技術を吸収できるだけ吸収しようと侵入したと。アルセウスさんが出入りしたことで不安定になった裏側の世界の出入り口から侵入して。

 今ではすっかり安定し三大勢力の悪魔や天使、堕天使はギラティナの逆鱗に触れて入れなくなった。

 

「ここにも何もないのか……」

 

 僕は三大勢力が憎くてたまらなくなったができることなどない。

 僕の力ではまた殺されて終わり。

 僕が今ノコノコと出て行けば神器と無理やり適合させられて都合のいい回復薬として使われるかもしれない。

 研究所内で鋭そうな刃物の欠片を見つけた。もうどうでもいい、このまま死のう。

 僕はその刃で自身の喉を掻き切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誇銅の家族の遺体が完全に処分されたのが二日前。愚者の世界での二年間、現世で数えて二日のタイムロスがすべてを手遅れにさせてしまった。

 運命は誇銅を幸せにしてくれなかった。彼の生を呪われた生にしてしまった。

 誇銅は最後に三大勢力に復讐したいと願ったが彼にはその力はなく自殺。

 しかし、運命はその願いだけはかなえてくれた。

 誇銅が自害につかった刃物。それはルピの斬魄刀の欠片。

 誇銅の体の中に破面の力が流れ込む。自殺により完全に死に体となった誇銅に変化が訪れる。

 誇銅の顔面が骨のような仮面に覆われると死体となったはずの誇銅が起き上がる。手に持っていた刃はノコギリへと変化。

 そうして誇銅はフラフラとどこかへ行った。

 

 

 

     ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 その頃冥界では。

 

「復興もかなり進んできてるわね」

「ああ、みんなが頑張ってくれてるのもあるけど、他の勢力が協力してくれたのもありがたい」

 

 冥界最大の事件、堕落した神アルセウス。またの名を堕神アルセウスによる冥界の被害はまたたくまに三大勢力に属する派閥から他の勢力へ広がる。

 これを好機と敵対勢力が攻め込んでくる危険性はあったが、一誠が補正がまだある頃に繋いだ繋がりが冥界を保護してくれた。

 そもそも他の勢力も一部を除き死者の襲撃でそんな事をできる状態ではない。

 

 この事件は江ノ島盾子が主犯となり自らの快楽のためだけに起こした事件として世界に発信された。

 実際江ノ島盾子に至っては真実であり、戦いを終わらせたのも確かに冥界。

 広がった三大勢力の影響力もありそれがまかり通ってしまった。

 

 あの激戦で今までより少し関係が前進したリアスと一誠は冥界の復旧に他勢力からの援助もあり順調に進んでる事に喜びを感じていた。

 

「それにみんなも酷いけがだけどちゃんと助かった」

 

 怪我の状態がある意味一番ひどかったリアス眷属たちは何とか一命は取り留めた。

 しかし、ほぼ全員に酷い後遺症が残った。

 木場は全身、特に利き腕をおしゃかにされて回復の見込みはない。人口骨とリハビリでも二度と今までのような剣士としては戦えない。

 ゼノヴィアは怪我こそリハビリで何とかなる見込みは高いが最大の武器であるエクス・デュランダルに後遺症が。

 折れたエクス・デュランダルは核がまだ無事で直せるがゼノヴィアと適合しなくなった。聖剣に詳しい者の意見では聖剣が恐怖してると。

 特にゼノヴィアが持つ分には拒否反応まで起こし二度と手にはできないと。

 

 朱乃は単純に残酷に二度と子供が産めない体に。さらに飛ぶ力も魔力に頼らなくてはいけない部分が多くなったと。

 小猫は傷は他の眷属より圧倒的に少なくとも魂の傷があるせいで回復がとても遅い。あまりの傷の治りの遅さと体の悪い意味での適応能力で日常生活に支障のある後遺症は免れないと。

 

 ロスヴァイセは今回の事でオーディンな泣きついてリアス眷属を止めさせてもらう事にしたらしい。

 そしてアーシアは……誰も癒せなくなってしまった。神器が壊れたとか魔力がうまく扱えなくなったとかではない。

 ただ、回復の力の放出口である手を焼かれただけ。普通に焼かれたくらいなら関係ないがアルセウスの特殊な炎と焼き方で焼かれたせいで放出口が完全に焼き塞がってしまったらしい。

 さらに普通に火傷もひどくこれまた手に後遺症が残ると。

 

「ギャスパーはどうしたんだ?」

「ギャスパーの治療を負担したいと申し出があったからレイヴェルが連れて行ったって聞いたわ。

 どこかは秘密らしいけど、レイヴェルは信頼できるって」

 

 実はギャスパーは個人的にサイラオーグ眷属と深い面識があるためサイラオーグが秘密で特例で受けることができた超人勢力の治療を受けさせてもらえることに。

 

「サイラオーグさんたちはどうしたんですか? 確か冥界の英雄と戦って大けがをしたと聞いたけど」

「サイラオーグたちは別の勢力で治療を受けるそうよ。なんでも独自のつながりがあって特例で治療を受けられたそうよ」

「そうなんだ」

 

 大した怪我を負っていないリアスと赤龍帝の力を失っただけの一誠はすぐに退院して元気に日常と冥界の復興手伝い、眷属のお見舞いの毎日。

 

「わるいリアス、赤龍帝の力なくしちまって。もう今までみたいに力になれそうもないや」

「大丈夫よ。イッセーなら必ず前みたいに強くなれるわ。

 だって今までの厳しい特訓が何よりもイッセーを支えてたんですもの」

 

 その後リアス眷属は眷属全員が使い物にならず、それでも期待していた一誠は思うように力を伸ばせなかった。

 唯一頼りにしていたギャスパーはただの一度だってバロールの力は貸してくれない。そしてとうとう眷属を止めてしまう。

 

  元々赤龍帝の力頼りで、器用でも才能があるわけでもなくいろいろ覚醒で能力を得てすぐにそれに頼っていたため努力の成果もほとんどなく何一つ赤龍帝以外が身についていない。

 さらに呪いの代償で才能がなくなったのに才能がないなりに一つの事を極める事はせずに今まで通りの事しかしていない。

 いや、赤龍帝ありの特訓だったのでそれ以下、頑張ってる時期でさえ同じくらい。

 今まで期待されてた分憧れていた者たちの一誠への失望は大きかった。それでも残った眷属たちは一誠を見捨てなかった。

 彼を見捨ててしまえば何のために自分たちがここまで体を張ったのかわからなくなるから。

 結局一誠やリアス眷属に期待した者たちは現在も過去も丸ごと損失となった。

 

「でも、これで終わったのね」

「ああ、すべて終わった。きっとここから冥界も復興して三大勢力による世界平和が実現するんだ」

 

 リアスたちはこれで終わりだと思っていた。

 実際破面騒動で結束力はある意味高まり、他の危険分子や犯罪者は盾子にいいように利用され過激派は全滅したと言ってもいい。

 その後起きた事件など小さな禍の団の生き残りの些細な嫌がらせと破滅の蠱毒が盗まれたことくらい。

 こうしてリアスと一誠はハッピーエンド…………とはならなかった。そして冥界も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、また破面が現れたってうわさ知ってるか?」

「おいマジかよ! 全滅したんじゃないのか!?」

「いや噂なんだけどよ、どうも破面っぽいっていうか目撃者も出てるけど死者はいない」

「死者がいない? だったら破面なわけねえだろ。破面なんかに会ったら魔王様だって殺される」

「それが死ぬより苦痛な呪いに掛けられるんだってよ」

「どんな呪いだよ」

「なんでも痛みの死神って言われてるらしいけどそいつに斬られても斬られないんだ」

「おいそれどういう意味」

「まだ続きがあるんだ。その斬られた部分がな痛み出すんだ。それも想像を絶する程に。

 痛みに耐えかねて腕を斬り落とした奴もいるらしいんだけど、なぜかないハズの腕の斬られた部分が腕を切り落としてなお痛むんだってよ」

「それは恐ろしいな。でもそれが何で破面だと思うんだよ」

「それはそいつが得物を持ってこう号令するからだってよ」

 

 冥界で噂になった辻斬りにも似た正体不明の小さな仮面の死神。別名痛みの死神に会った悪魔は永遠に癒えず逃れられない痛みに生涯苦しまされる。

 この数週間後この痛みの死神に出会ってしまったリアスと一誠はあまりの痛みに死んでしまいたいと願ったが、自殺をしようとする度に大鎌で斬られた何十カ所が何倍にも痛みショック死もできずただ自殺を止められる。

 ギャスパーを除くリアス眷属もこの死神に何カ所も斬られ若くして衰弱死。

 ギャスパーとレイヴェルは一度見逃されたのにもかかわらずその死神を探し出して腕に一カ所だけ斬ってもらう。

 リアスと一誠は寿命まで生きる事ができてしまった。生涯命が尽きるまで痛みに生かされ続けた二人は死の間際死神の号令を思い出した。

 

「償え、『罰十字架(ゴルゴタ)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルセウスの出現で出入り口が開かれたままの裏側の世界にリアスたちの体験を参考にし入り破面の本拠地を調べた。

 建前は他に絶望の脅威が潜んでないかを確認するため。しかし実際は持ち手のいなくなった破面の技術を盗むため。優秀な破面の遺体が手に入り彼らの種族的強さを何かに生かせないかと。

 そうやって探しているとパンドーラの間という部屋を見つけた。そこにあったものは殆どが世界中から盗まれた呪いのアイテムの空き箱。だがそのさらに奥に秘密の隠し部屋、盾子の秘密の書斎があった。その中で一際厳重に保管されていた箱、パンドーラの箱。

 そこには盾子が記した破面、虚の研究成果が詳しくわかりやすくまとめられていた。

 資料を読んでいくと破面の技術は医療にも応用が利くことが判明した。

 本物と同様の義手義足、完璧な人工臓器。破面の細胞を一部だけ使う事で破面にならずに補う事もできる。

 この技術を使う事を破面をよく知る一人の悪魔は強く反対したがその有用性からその意見は却下される。

 その技術は三大勢力の傘下に加わった派閥を中心に僅かを除いて世界中の人外たちがその治療を望んだ。

 破面の医療技術により三大勢力は一気に底辺から名を高め世界から絶対の信用と繁栄を約束されたかのように見えた。

 

 実は盾子のアランカルの研究成果を残したノートを入れた箱にパンドーラの箱と書かれている、そのノートには実は重要な欠点や重大な副作用、そられを抑えるために必要不可欠な材料などが意図的に省かれている。

それを知らずにアランカルの研究は医療面でも実に役に立つとして三大勢力を中心とした医療関係に貢献される。

 副作用を抑えるためには純粋なアランカルの体とプロメテウスの力、つまりルピと誇銅の力が必要不可欠。盾子たちは体の中にわずか残っていた誇銅の力とルピの中にも残っていた誇銅の力でぎりぎりのところで繋いでいたがそれもいずれは消えてしまうほどののも。

 それなのに培養アランカルの細胞を使ってしまった三大勢力は最初はなんの異変もないように見えたが、徐々に虚の力に体が浸食されて治療を受けたものは下等な虚へと変わってまずは親しいものを襲い、次に同族や他種族を襲うようになる。

 盾子がなぜアランカルの研究成果の箱をパンドーラの箱と名付けたかというと、パンドラの箱の諸説の一つ、プロメテウスが希望を残したとする説にあやかった自分たちが希望を捨てたという皮肉からきている。

 

 こうして悪魔の殆ど、堕天使、天使の殆ども、三大勢力に友好的な種族もかなりの数ができそこないの虚へと変化し世界に再び絶望を振りまいた。

 その時無事でその迷惑を被ったのは三大勢力に属さなかった勢力。

 

 

 

 

 

 

 

「儂らはこの事件の真相を知っておった。

 しかし儂の国は世界からすればあまりにも小さく発言力がない。

 お主の勢力ならば真実を発信して被害を抑えられたのではないか? アメリカ」

 

「哀しい、俺は実に哀しいぞ。

 俺が世界の中心を取り戻してやる前に愚行を走らせた。

 その危険性をわかってかわからずか乗ってしまったところなど助けることなどできない。助ける価値もないな日本よ」

 

「だけどこうして元凶は自身の手で滅び、残った賢者と生き残りは助ける事ができた。

 それでよしとしようではないかアメリカ、日本。

 そして今我ら三国の誕生を祝おうではないか」

 

「哀しい、実に哀しい。

 この俺が直接舵をとってやらなくなってしまった今の時代が。

 しかし、頂に立つ者としての役目を怠り、三大勢力という愚かな凡夫に愚かな夢を見させてしまったのは帝王としての落ち度だ。そこはすまない事をしたと思ってる」

 

「そういわず既にこんな時代になってしまったんじゃ。

 これから末永く仲良く喧嘩しあおうじゃないか、アメリカ、エジプト」

 

「そうして均衡を保ちましょう。あなたももうこれでお役御免でしょ?」

 

「うぷぷ、そうだね。ご主人様が死んだ日君たちに捕まって今日まで生かされた。

 ボクから有力な情報も搾り取り、ご主人様の絶望もすべて終わった。

 本当はアルセウスに勝てない奴らがこの計画を知って自ら破滅に向かう予定だったんだけどまあここまでできたからいっか。

 このボク、最初の一体、オリジナルのモノクマが停止しご主人様の絶望は消える」

 

 

 

 

 三大勢力は最後自らの手と自らの意思で世界に絶望を振りまき世界から絶対的に信用を失い、世に厄災を振りまいて事実上滅んだ。

 

 虚による厄災を振り払ったのは、巨人の帝王ことアトラス率いるアメリカ、太陽の女神こと天照率いる日本、太古の美貌ことクレオパトラ率いるエジプトの三国同盟。

 その三国同盟が三大勢力非加盟勢力を中心に束ね盾子死亡時の絶望にも死者をほとんど出さず、すぐさまオリジナルのモノクマのもとへ辿り着いた三国が人外世界の中心へと変わった。

 その三国同盟に滅ぶずっと前に傘下に加わったわずかな悪魔の協力により破面の技術は早急に闇に葬られ、その出来事の発端が世界に公表されその最たる原因の悪魔の悪名は愚か者の象徴として未来永劫世に残る事となった。




 あんな非道な事をしなければこうはならなかった。途中で負けておけばここまではならなかった。
 もし負けていれば、すべてを最悪の形で失う事はなかった。

 残念ながら愚者の扉はBADENDでした。以外でもなんでもないって?
 まあそれでもいい。それより皆さんに効きたいのは(時間を)巻きますか? 巻きませんか?
 誇銅が愚者ではなく世界を選んだ世界まで。

 強い要望があればおまけでアルセウス戦後の原作組の日常を掘り下げて書こうかなと思います。

PS
 巻いた場合はこのサブタイトルを開けられたパンドラの箱=BADENDに変えさせていただく事と、完成まで10日、いや一週間いただきたいと思います!
 そして一応物語は完結ですがその後をプラスaでもう少し書かせてもらおうかと。
 これ以上テメエの作品なんて見る価値ねえよ! 消えろ! となればここで締めてドロンします。
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