納得していただける内容かわかりませんが、一応当初の予定していた終わりはこんな感じです。
長くなったので三つに分けて描いています。
「誇銅君がもしも世界の扉を選んでいたら」
「そんなもう一つの運命を皆様にお見せしましょう」
「僕にそんな力あるかだって? そもそも僕は誰だって?」
「ふふふ、僕はファウル、死神のアルカナさ」
「詳しくはこれからの物語の中でわかるさ」
「だけどこれでどうやらお別れみたいだ。次に僕と会ってもそれは僕じゃない。
僕と同じ姿で、同じ役割で、同じ力で、同じ考えを持って、同じ事をするけどそれは僕じゃない」
「どういう事だって? それは詳しく言うと長くなっちゃうから言えないな。
たぶん君たちが知る事ができるどこかに詳しく描いてると思うよ?
それでも僕から言えるのは僕たちの主で神である彼がやめると決意したからだね」
シンプルであるが神秘的な雰囲気がするドアの先を抜けると辿り着いたのは何とも奇妙な空間。
ただ広々とした空間が広がっている。空はまるでシャボン玉の中にいるかのようなキラキラ輝く空が広がる。
床は虹色で人工物のようにも見えるがまるで地面のような感触。見た目はただのガラス床なのに。
そんな空間がただずっと続いてる。地平線はなくただ無限に伸びている。
「なんだこの空間は……?」
(ようこそ、日鳥誇銅)
「!?」
どこからか僕の名を呼ぶ声が聞こえる。正確には声は一切聞こえない。
だけど僕が呼ばれてる確信が持てる。
はっきりとわかるのに感覚的にはまるで自分自身に自問自答してるかのような。
(私の名はない。しかし主からタブーとも呼ばれている。司るアルカナは
さっきの同じ感覚で語りかけてくる自分かもしれないと思う何か。
自己紹介されたところでやっと自問自答ではないという不思議な疑問が晴れた。
そんなわけないとわかりつつもそう思ってしまう不思議な何か。
(私は完成された存在。あらゆる命、物質、存在、森羅万象が辿り着く終着点)
「タブーさん、貴方が僕に最後の試練を与えてくれるんですか」
(その通り)
「なら早く初めてください! 僕には戻らなくてはいけない場所があるんです!」
姿も見えず声もはっきり聞こえるのにはっきりしない存在を探すように声をかける。
(よかろう。私
「進化と限界?」
(あらゆるものを進化させ終点である私に近づかせる。あらゆるものの限界を定め進化を妨げる)
おぼろげだった声が少しだけはっきりとしてくる。
それでもどこから聞こえるのか、まるで自問自答してるような気持ち悪さは拭えない。
(君に与える試練は私に辿り着く事)
「タブーさんに辿り着く」
(そう、君にわかりやすいように形容するとかくれんぼのようなもの。私を見つければよい。
探すのだ、この世のすべてがそこにある)
つまりスタートというわけだね。
僕は周りを何度も見回して注意深く周りを見回す。
そして何も誰もいない事を確信してから走り出した。
目的地なんてわからないだけどこの広すぎる空間のどこかに居るハズ。だったらじっとなんてしてられない。
(狭き視野の者は限定された方向にしか進めない)
また僕の中にタブーさんの声が響く。
だけどそれにどころじゃない! 早く見つけないと。姿もわからないけど。
(狭い視野の者はその狭き視野を頼りに一歩ずつ世界を知る)
声が聞こえる。だけどどこから聞こえてくるかなんてわからない。
自分の声がしてるのではないかと思ってしまうくらいなのだから。
(広き視野の者は一歩も動かずに世界のすべてを見る)
まさかずっと語りかけてくるのではないだろうか?
普通ならこの声を頼りに探すのだがこの声は何処から聞こえてくるか不明なうえに本当にどこからか聞こえてるのかすら怪しく思える。
それほど不思議な感覚。
(広き視野、動かず世界を知るため一歩も前進しない。)
だけどこの感覚、不思議だけどなんだか少しだけ似た経験がある気がする……。
(広い視野を持つ者は決まった方向へ進めずいつの間にか元の位置へ戻る)
そうだ! みんなと出会った時だ。
家族の記憶が僕の中に入り、僕の記憶が家族の中に入る。魂に直接触れ会話した時となんだか似てる!
(世界のすべてを見渡す者は、死角のない完全な円であろうと、世界に比べれば小さな小さな円。
その者は円の外側にいる数多くの存在とで会う事はない)
なぜこんな事をしたのかわからない。
なぜそこにいると思ったのかわからない。
だけど僕は自分の脳から体に命令をだしたわけでもなく意識的に地面に手を置いて。
「見つけた、タブーさん」
触れていたガラスの地面が消え去った。そして僕は大地の上に立つ。
大地はない。だけど僕は大地に立っている。
そこに大地は無くとも僕は立っている。
矛盾してるけどそんな状態に今僕はいる。
(円の外の世界を知者はさらに外にいる私に気付ける希望がある。その希望をよくぞ見つけた)
僕の目の前に半透明で光っている男性のような何かが現れた。
その胸には
(外の世界を知らぬ者、知ってなお自分の世界にこだわる者、そんな者では例え那由多の時間を使っても私を知る事はできない)
次に瞬きした瞬間世界そのものが変わっていた。
まるでどこかの聖堂のような。
「終わったんだね誇銅くん」
「ファウルくん」
そこにはファウルくんが立っていた。
だけどそれよりも。
「ねえファウルくん! 試練は全部クリアしたよ! 僕を家族の元へ返して!!」
「あわてないで。大丈夫、この空間では外の時間とは隔離されてる。どれだけいようがもう時間は進まない。
だから安心してついて来て」
とりあえずファウルくんの言葉を信用してあとをついていく。
すると今度はさらに神秘的な雰囲気がする部屋に案内された。
「あれを見て」
ファウルくんが指差したとこには22枚のカードが掲げられていた。
逆さ吊りにされてすまし顔で合掌するお坊さん、別々に方向に逃げようとする白と黒のライオンを腕力で堪えてる女騎士、瓶の水を缶ビールに移し替える不良、目を布で隠してラッパを吹く女性などが描かれている。
「ん!」
よく見ると崖に向かって歩いていくルルちゃんを子犬が必死に止めようとしてるカードが。
他にもナイフの刃の方を持って血を流しながらも笑顔の|悪魔の守護者。たくさんの本をランプの光で読む隠者のおじいさん。
カードの真ん中で手を広げて四匹の良く解らない生き物に見つめられる世界の守護者。
そして、白い馬にのって大鎌を持つファウルくん。
「僕たちがアルカナの守護者ってのはもう知ってるよね?」
「うん」
「これが僕たちの魂であり存在」
ファウルくんが何を言ってるのか正直あまり理解できない。
だけどとても大事な事、僕なんかが想像もしない遥か上の次元の話である事はなんとなくわかる。
「世界は物語。この場所はすべての物語の中心なんだ」
「世界は物語、ここが中心?」
「もっとわかりやすく言うなら誇銅君が住んでる世界も僕たちが主や神と呼ぶ存在が創り出した物語の一つ。主から見ればこの世界は君たちの世界の本の世界。
神が描いた本の物語の世界さ。
そして僕たちはその神の手となり足となり物語に干渉しながらも円滑に進める役目を担ってる」
ファウルくんは一体何を言ってるんだ?
僕たちが住む世界は一つ世界。決して本のような世界じゃない。そのはず……。
「たとえば世界は神の想像力。神が想像した世界を
陰者は神のアイディアを本として残したり設定を書き留める。
節制は崩れたパランスを調整し、恋人は決まった人物にキャラを巡り合わせる」
ファウルくんが言ってる事に僕はついていけなかった。
何を言ってるのか僕には理解しがたい。
「つまり僕らは君たち主人公のサポートをする、世界をサポートする。つまりは神をサポートする。
神が頭の中で話を組み立てやすくするための存在」
僕たちの世界が本の世界……?
「誇銅君、君もある意味ではその一人なんだよ?」
「え?」
ファウルくんが今度は別の方向を指差す。
そこには22枚と同じようなカードが掲げられている。
ただし、枚数はたった四枚。
「これは……」
四枚がつながって一枚の絵になっている。
一番左は安らかな川の中で剣を掲げてイエーイと言ってるような笑顔の女性。その隣は大量のコインを川の中に落としているジョンさん。
またその隣はかなり激しいそうな激流の中で棒一本で流されないようにしがみつく僕くらいの男性。
そしてその水の発生源の一番右端にはカップから大量の水があふれ出てあたふたしてる僕の絵が。
「
主要の四つの物語の小アルカナたち」
なんで僕の絵がカードに。
「君は神に選ばれて創られたん。この悲劇の主人公に。主人公補正に蹂躙される被害者として」
被害者、僕は被害者になるために生み出されたっていうの!?
そんなのあんまりだ!
「そんな、僕はこんな目にあうために生み出されたってこと……」
「
ファウルくんがまた何かを語ってる。
今更それに興味を持とうなんて思わない。
「君は幸せな今に永遠の停滞を望んだ。だからこそ再生の力を得た。
その力は永遠に幸せになる力にも永遠に苦しむ力にもなる。破滅の蠱毒は君の為に用意された神器。
僕たちより下位ではあるが世界創造の神と邪神が主の創った筋書き通りに神器に納められた」
ファウルくんは僕の肩を掴んで僕の目を力強い目でじっと見つめる。
「今ならまだ間に合う。神は残酷だけど救いも与えてくれる。ただの被害者で停滞しないで、幸福なラストにはまだ間に合う!」
「間に合う……」
「君の家族は君が死んでる間に全員殺された。だけど三大勢力が全員の遺体を持っている。
三大勢力に奪われた君の神器を取り戻せば全員取り戻せる!」
ファウル君が指差す方向には僕が通った事のある普通のドア。
僕はそこへ急いで行こうとするがファウル君はまだ手を放してくれない。
「この扉の先はアメリカのとある場所へ通じている。そこで出会う者に君のすべてを話すんだ。そして協力してほしいと願うんだ。
彼らは君に絶対的な忠誠を誓い、君を幸福へと運んでくれる。
彼らは君の世界の住人で君の最大の力と忠誠を誓ってくれるだろう。
主が君の幸せをより確実なものにするため、不測の事態にも強引に解決するために用意した救済措置が」
そう言ってファウル君の姿が消えた。
僕はその場で一言「ありがとう」とだけ言ってその扉に駆け出した。
◆◇◆◇◆◇
冥界の大惨事、一誠とサーゼクスとリアスは復興作業を一時中断して休息をとっていた。
「冥界の復興作業にこうも他勢力がここまで駆けつけてくれるとは思わかなったぜ。
魔王様の冥界を思う日ごろの頑張りのたわものだな」
「ふふ、イッセーくんが頑張ってくれたおかげでもあるんだよ」
冥界最大の事件、堕落した神アルセウス。またの名を堕神アルセウスによる冥界の被害はまたたくまに三大勢力に属する派閥から他の勢力へ広がる。
これを好機と敵対勢力が攻め込んでくる危険性はあったが、一誠が補正がまだある頃に繋いだ繋がりが冥界を保護してくれた。
そもそも他の勢力も一部を除き死者の襲撃でそんな事をできる状態ではない。
「そういってもらえて光栄です。
さて、もうひと頑張りすっか! 倒れてるみんなの分もな」
「まあ頼もしいわね」
「やーやー御精が出ますね~悪魔の皆さん!!」
一誠たちが復興作業の手伝いに戻ろうとした時、銀髪高身長の明るい笑顔の美青年が歩いてきた。
屈託のない笑顔で一誠の嫌いな女性にモテそうな同性。
「誰?」
「おっとこれは失礼。私アメリカ勢力に所属してる者です」
「アメリカ勢力が!?」
男性がアメリカ勢力と名乗った時、サーゼクスは驚いた様子を見せた。
なぜそこまで驚いたのか一誠は疑問に思って聞いてみると。
「アメリカの神話にはずっと三大勢力への協力を断られ続けてたんだ。しかも強くね。
アメリカ勢力は強大で賛同を得られればかなり心強かったんだけどね」
「という事はついに和平を願う心が通じて」
「いえいえ、その件で私が来たわけではないというかそもそも今回は私用で来ているので」
一誠が能天気に希望観測を言ってそれを否定される。
ここまで来て一誠の能天気な考えは方は一切変わっていなかった。
「ではどのような要件だい?」
「はい、あなた方が保管している破滅の蠱毒という神器を譲っていただきたいのです。
後貴方たちが保管してる8体すべての破面の遺体も」
「!!」
破滅の蠱毒については保管期間がそれなりに長いので漏れていても不思議ではない。
問題なのはつい最近の出来事で冥界でもトップしか知らない破面の遺体についてもなぜか知られていること。
「なぜそのことを……!! どちらにせよ渡すことはできない」
「まっ、もう盗み出してますけどね!」
「「「!!」」」」
青年の見過ごせない発言に三人はこれでもないくらいに反応を示した。
そんな事を言った青年はどうしたの?くらいの軽い反応。
「君は自分が何を言ってるのかわかってるのかい」
「ええまあ。冥界のザル警備じゃ例え襲撃前でも簡単に盗み出せますよ~。
それなのにこの現状で神器と遺体8つ盗み出すくらい私たちならわけないですよ~」
魔王の権幕に対してものすごく軽い青年。
サーゼクスは目の前の青年が完全なデタラメを言ってるのではないと確信し魔力をたぎらせる。
「悪いけど君は拘束させてもらうよ」
「冥界の魔王如きが私を拘束? 冗談きついですね~。
未だに世界最強がグレートレッドなんて思い込んでる連中に私が負けるとでも」
青年がケラケラと笑っている間にサーゼクスは半分殺す気で拘束しにかかる。
今まで何もできない程の実力差を見せつけられて少々焦っていた。表面上冷静に見えて超越者と呼ばれた自分が今まで戦闘面で何も役に立たなかった事を気にしている。
だから拘束のつもりでも無意識化で力を誇示するためにいつもより格段に乱暴になってしまっている。
「だから~無理ですって」
最上級悪魔でもかすりでもすれば軽症では済まない程の魔力量をものともせず簡単にすり抜けて何事もなかったかのように数歩動いただけで躱した。
「こんなことをしてアメリカ勢力は確実に反感をかうよ」
「私たちアメリカ勢力は三大勢力に他すべての勢力が属しても傘下には降る気はないとドンは宣言してましたから大丈夫です!」
三大勢力に属する他勢力から反感を買っても一向に構わないと同義の宣言。
今世界の中心に限りなく近い三大勢力に対してとても大きく出た発言に怪しさすら覚える。
「10日後にアメリカ勢力のトップ、Mrドンが貴方たち三大勢力と話し合いの場を設けたいと言っていたので苦情もその時に」
「なぜ君はこんな事を。それよりなぜアメリカ勢力はそこまで僕たちの和平を受け入れられないんだい」
「三大勢力の傘下に収まってるのは我々から見れば弱小勢力! 私たちのような強豪勢力は決して弱い勢力に属さない!
と、ドンは宣言していました。まあそれ以外にも理由はあるそうですがね~」
なんだか他人事のようにつぶやく青年。
アメリカ勢力に属し冥界の王に堂々と泥棒宣言。彼が一体何をしに来たのか一向につかめない。
「それじゃそろそろ私は失礼させていただきま~す! では、当日までに話し合いの内容を決めておいてくださいね!」
サーゼクス含む一誠たちがアメリカ勢力の青年と話すずっと前、誇銅の神器が保管されてる場所に誇銅と執事風の男が足を踏み入れていた。
「魔法系統の設備が軒並み動いていない。無意味とはいえいくら警備が甘いといってもこれは……。
まあどうでもいいでしょう。
誇銅様、ご家族のご遺体は既に私たちの方へ。こちらの神器は私では触れる事ができないので」
「うん」
ファウルくんに示された扉の先は外国につながっていた。
そこで会った人たちは僕を見るなりなぜか丁重にもてなされた。僕はファウルくんに割れた通りその人たちに事情を説明するとなぜか快く引き受けてくれることに。
一秒が惜しい状況だったからなぜ僕に協力してくれるとか細かい事は聞かずに今はお言葉に甘える事に。
「ちょっとお待ちください。その辺に隠れてる悪魔たち、何か用があるのでしたら姿を見せてもらえませんか?」
僕をここまで送ってくれた執事さん。送ってくれたと言ってもアメリカからテレポートのようなもので一瞬でこの場所だけど。
執事さんがそういうと物陰からソーナさんが出てきた。
「何もせず見送るつもりでしたが、下手に攻撃されたらたまりません」
「ソーナさん!」
「お久しぶりです、誇銅さん」
まずい、冥界側の人に見つかっちゃった。
戦う気はないと言ってるけどここでばれたら僕に協力してくれた人に迷惑がかかってしまう。
「悪魔なのに私たちを止めないと」
「今更私たちに誇銅さんを止める資格はありません。どうぞそれはすべてお持ち帰りください」
ソーナさんは僕の方をじっと見つめる。
だけどその目は哀しそうでありうれしそうな目。
「……何も聞かないんですか?」
「余計な詮索はしません。私たち悪魔はこうなっても文句の言えない事を貴方に、そして世界中で起こしました。
ですが、これだけは言わせてください」
ソーナさんは僕に向き直って深々と頭を下げる。
「本当にごめんなさい。
そして、お帰りなさい」
ソーナさんはそれだけ言って背を向けて歩いて去る。
後から気づいたけどどうやら他の眷属の皆さんも見えないように待機していたらしい。
僕は普通に救世の神薬(メシア・アンサー)をとり再び体に宿す。
「これで完了ですね。では屋敷に戻りましょう。
ご家族の蘇生も早くしなければいけませんからね」
◆◇◆◇◆◇
冥界にわざわざ犯行予告をしに来た青年が言った通りアメリカ勢力から話し合いの提案を持ちうけられた。
呼ばれたのは三大勢力のそれぞれトップたち。
自分たちが目指す平和のためにもトップたちは話し合いに必要な資料や内容を作成。
そして当日、指名された場所に行くとそこにはアメリカのトップだけでなくあきらかに他の勢力らしき二人がトップが座る席に座っていた。
「突然の会談に集まってくれたこと感謝する悪魔、天使、堕天使のリーダーたちよ。
俺がアメリカ勢力のリーダー、アトラスだ」
2mの筋肉の巨体が立ち上がり社交的に握手を求めた。
かなり貫録のある顔つきをしているが見た目ほど無礼な性格ではなかった事に安心感を覚える。
「私はエジプト勢力のリーダー、クレオパトラ。正確にはクレオパトラの血と役目を引き継いだ者よ」
とても美しくスタイルの良い色白な女性が次に立ち上がり三大勢力のトップたちと握手を交わす。
「儂の事は覚えてるかのう? 日本勢力代表、天照じゃ。一応よろしく」
最後に天照が立ち上がり形式的に三大勢力と握手を交わす。
一応笑顔ではあるが他の二人よりも含みのある笑顔。
お互いの社交的な礼儀も終わり話の本題に突入した。
「さて、今回三大勢力のトップたちにお集まりいただいたのは一月前に起こった世界同時死者の殺戮についてだ」
「私の国エジプトでは重軽傷合わせて負傷者100人、アメリカ30人、日本80人。いずれも死者0との比較的被害は少なかった」
「他の国も儂らが調べた結果、殆どの人外勢力で負傷者の数は4ケタ。死者の数は3ケタのところばかり。
儂らは相当軽症で済んだが世界的に見れば甚大な被害が出ている。
それも、場所によっては人間たちにも被害が出てそれの対応も楽ではないそうじゃ」
「ああ、今回の事件は本当に悲劇的な事件だった。
私たちも大量の死者を出した。
今回の事件の首謀者、江ノ島盾子および破面の被害は私たちも重くとらえている。
だから私たちは平和に向けて一致団結し二度とこんな事態を引き起こしてはいけないと考えて」
「ほう、事の原因を作ったにしてはえらく他人事な意見じゃのう」
三大勢力を代表してしゃべるサーゼクスの言葉を途中で遮って敵意のある言葉を放つアマテラス。
アトラスとクレオパトラは目で無言の同意を示す。
「それは一体どういう意味ですかなアマテラス様」
「どうもこうもない。すべての調べがついているという事だけじゃ」
急な空気の変化に固まり気味になる三大勢力のトップたち。
しかしここで固まる程軟な精神力ではトップはつとまらない。
「私どもには何のことやら」
「始まりは日鳥誇銅という転生悪魔から始まった」
動揺する三大勢力のトップたちを前にアトラスが調べてわかった事の出来事を話す。
「その悪魔は一度貴様らが和平を結んだ際に仕掛けられたテロで命を落とした。
しかし、数日後その悪魔は強力な仲間を引き連れ帰ってきた。
お前たちはその力を欲し危険視し何とか味方に引き入れようとして強引に同盟関係を結ばせる事に成功。
だが、同盟後の待遇にしびれを切らした彼らが同盟破棄を申し出ようと冥界にやってきた。
その時偶然にも彼らを処分する大義名分を見つけ、どうせ敵の手に渡るなら自分たちで消してしまおうと。彼らには平和のため仕方ないが生贄になってもらおうと。
そして悪魔の仲間全員を殺す事に成功したが、彼らは破面となって復讐に来て今回の事件が起こった」
アトラスの言葉を口で否定するのは簡単。
しかし、あまりにも事情を知りすぎるゆえ証拠も当然あるだろう。
ならばここで否定してしまえば心象を悪く確定してしまうおそれがある。
だからここは否定するのではなく自分たちの理、他人から見れば身勝手な理を主張し自分たちがやったことは仕方ないと思ってもらおうと説明することに。
「仕方なかったんだ。禍の団とのいざこざで彼らの力を吸収される事は何としても避けなくてはならない。
禍の団との戦いで僕たちは彼らの協力が必要だった。だけど彼らが禍の団とつながっていたなら僕たちは一気に不利な立場に立たされてしまう程に彼らは強大。
僕たちはそれぞれが手を取り合って平和な世の中を目指している。
信じてくれてる平和を願う善良な者を守るためにも平和を脅かす存在は絶対に放置できなかった」
「身勝手な理じゃのう……」
サーゼクスが熱弁するも相手側は完全にあきれ顔。
最初は愛想よくしていたが完全にあきれられている。
「貴様らのその甘い自由が禍の団を生んだ。貴様らの自分勝手な法律が今回の騒動を引き起こした。
既に三大勢力に馬鹿にも従うのは骨の髄まで毒された救えん弱小勢力だけだ」
アトラスが言ったことの意味をトップたちは気づいた。
これはつまりいくつかの同盟勢力が自分たちから離れてしまっている。おそらく今回の事件の真相を暴露されてしまったのだろう。
自分たちがこれからもひた隠しにしようとした真実を。
「ま、まってくれ! 誤解だ! 私たちはそんな」
「だが俺も一つ詫びなければいけない」
トップたちの弁解を遮ってアトラスが強く何かを宣言する。
その強い声に主導権を奪われてしまった。
「帝王学を知っているか?
頂に立つ者は大衆に定期的に虎を殺して見せなくてはならない」
「それがどうしたんだい?」
「だから俺はお前らに詫びなくてはいけない。
俺がその役目を怠ったせいで無知な凡夫が哀しい夢を見てしまい、こんな悲劇を起こしてしまった」
アトラスは席を立って両手を机に乗せより注目を集める。
「俺が頂に戻りその役目を果たそう」
アトラスはそう宣言すると再び席について指をならす。
すると執事風の男が突然ウイスキーとグラスを持って現れた。
アトラスはグラスを受け取り執事はウイスキーを注ぎ残りを机の上に置いて消える。
「俺は貴様らのような凡夫と手を取り合うなんて思わん。頂に君臨する者として哀しい夢に惑わされ暴走し世界のバランスを崩さんように絶対の正義となろう。
アメリカ、エジプト、日本の三国の同盟。俺たち三国同盟が貴様らに変わって世界の中心となる!」
グラスを掲げアトラスは高らかと宣言した。
「これからはこの王者たる俺が世界の頂点としての役目をしっかりと果たそう。
俺が世界を収めればもうこんな悲劇は二度と起こさせん。
厳しい法のもと我が国が裁く」
「それじゃアメリカ勢力の独裁政治じゃないか! アトラス、貴方の言葉は自身が世界の支配者になると言ってるのと同意義ですよ!」
「そのための三国同盟だ。俺には敵わんが俺が見込んだエジプト、日本がもしもの時は俺を止める」
ミカエルの反論にアトラスは左右のクレオパトラとアマテラスを見る。
しかしその物言いにクレオパトラとアマテラスは心底心外そうな目を向けた。
「おい! 儂らは対等なハズじゃろう!」
「俺の国、大国アメリカと真の意味で対等になんぞなれるわけないだろう。それでも国としてなら二国が手を結べば国としては俺と対等になれる」
「おうおう強くでるのうアメリカよ。確かに日本は小さな島国じゃがなめてると痛い目みるぞ?」
「エジプトの兵力はアメリカよりもずっと多い。歴史の中で積み上げられてきた死してなお我が国に尽くす祖先の英霊たちを軽くみないで」
仲間であるはずの二国からアトラスに対して敵意のこもった言葉と視線が向けられる。
三大勢力のトップたちは早速大丈夫なのかよといった思いが強まる。
「おいおい同盟同士が早速仲悪くなって大丈夫なのかよ。
そんな仲悪くて同盟なんてよく言えるな」
「儂らは貴様らみたいにじゃれ合うつもりはない。むしろ同盟後もしっかりとにらみ合う。
そうして強大な三竦みを作り上げることが儂らの目的じゃ」
三竦み。かつて三大勢力が和平前になっていた状況。
それを真っ先に思い出すが、今回の場合規模が違う。
三国同盟は規約のもとにらみ合うだけで無法に戦い合うわけではない。そしてこの三国のトップからにじみ出るトップとしてのオーラの違いに三大勢力のトップたちも肌で感じている。おそらく本当に自分たちのような争いはしないだろうと。
それでもまだ心配は残っている。
「しかし、それでもアメリカ勢力の独裁体制は何一つ変わらない」
「安心しろ独裁者になるつもりはない。頂に立つ者として公平に厳正な正義を約束しよう」
「そもそもさまざまな勢力で迫害や差別を受けた種族を抱え込み多種多様な種族が入り混じるアメリカは国民の信頼と力がなければこの国力は当然維持できない」
「儂も一度アメリカに訪問したが犯罪を犯した人外の処遇については人外専用の刑務所や細かい法律までしっかりと備わっていて統率は見事なものじゃった」
「良ければ一度足を運んでもらっても構わん。アメリカの表と裏をしっかりとお見せしよう」
アトラスは余裕たっぷりに自国の裏まで見せると豪語する。
冥界で自分たちの裏を探り出した日本勢力のトップが褒めるくらいなのだからそこは信用がおけるのだろうと考える。
既に隠しきれない事態を起こしてしまった三大勢力のトップにはもう反論材料はない。
例えあったとしてもこれ以上は自分たちの首を絞めることになる。
相手は誇銅たちと違って相手は自分たちより強大な大勢力なのだから。
「そして今回の貴様らの罪状だが、場合によっては減刑してもいい」
「え?」
「今後一切余計な事をしなければ刑罰を軽くしてやろうと言ってるんだ」
アトラスからの刑罰の減刑の提案。
トップたちはすぐさまその話に飛びついた。
その中で最も早く口を開いたのはアザゼル。
「その話もう少し詳しく頼めるか」
「今まで貴様らが勝手にやってきた過去の罪。三大勢力結成前の罪はまあこの際置いておこう。
しかし、今回の一件だけはとても容認できるものではない」
「…………」
「今後一切の勢力としての権利と権威を放棄するというのなら必要最低限の権利は保障しよう」
「……断れば?」
「貴様らは三国同盟始まって最初のA級戦犯となり死罪は免れんな。そして、今回の一件に深く関わった者の裁判。重いもので死罪、軽い者でも終身刑くらいが妥当だろう。 そして刑罰を逃れても悪魔、天使、堕天使は今後どこへ行っても迫害されるだろうな。
特に今回の原因を作りだした原初の原因、魔王貴様の妹なんかは一体どれ程だろうか」
アトラスは他人事のように言いつつ精神的に三大勢力の中心とも言える冥界のトップを追いつめる。
実際やる事が山積みでいちいち裁判を開く労力も惜しい。
なので少々甘い判決とは思いながらも司法取引を持ちかけた。
「俺たちの提案を受け入れるのなら貴様らが今回の一件の非を認めたとして刑が執行されたとしよう。
事件の真実は公にさらすから差別は受けるだろうが最低限の生活ができるようにはとり計る」
「つまり悪魔、天使、堕天使は今後一切の繁栄はなく細々と隠遁暮らしね」
クレオパトラが最後にこれからの元三大勢力の行く末を伝えると三大勢力のトップたちは一様に暗い顔をして下を向く。
確実に自分たちが積み上げてきたものが終わった。夢は潰えたと。
その時、突然の出来事ですっかり忘れていたことを思い出した。
「そうだ、数日前アメリカ勢力の者と名乗る青年が冥界で犯行予告を僕に直接伝えにきたんだ。
確認してみたら確かに冥界に厳重に保管されていた神器が盗み出されていたのだが」
サーゼクスは立場が逆転したといった風にアトラスにこの事実を突きつける。
しかしアトラスはケロッとしたままウイスキーを飲んでいる。
「ほう、それで?」
「それでって……君の部下が盗みを働いたんだぞ!」
「俺の部下って証拠でも? まさか名乗ったからなんてしょうもない事言うなよ?」
サーゼクスは何の反論もできない。
確かに青年が自分はアメリカ勢力と名乗ったからと言って本当と言う証拠はない。
つい立場をよくしたくて勢いで言ってしまったことを後悔する。
「まっ、お前がいう青年とは間違いなく俺の部下だろう。本人から聞いた」
「!!」
証拠がないと言い逃れれる状況でまさかの自白。
そして犯人自身もそれを自身のボスに伝えると言うわけのわからない状況。
「それじゃ今回の窃盗行為についてはどのように考えているのかな?」
「元々盗品だ。それを持ち主の手に戻す手伝いをしただけだ。
むしろ証拠品を押収したに過ぎない」
いろいろ言える事もあるが手痛い反撃を受けぬ反論がなかなか思いつかない。
サーゼクスが脳をフル回転させて考えているとアザゼルがアトラスのある言葉に引っかかる。
「今、持ち主に返すと」
「ああ言った。お前たちが殺した転生悪魔、日鳥誇銅は戻ってきた。そして今俺の部下と一緒にいる」
「!!」
トップたちにとって衝撃の真実。
まさか今回の事件の原因と“三大勢力のトップが責任を押し付けられる存在”が戻っているとは想定外。
そこを突っつこうとするがトップたちが突っつく前にアトラス自身がその話題に触れる。
「もちろん今回の事件の実行犯にはきちんと罰を受けてもらう。
しかし既に相手は罪を認め貴様らと同じような司法取引は完了してるがな」
「あっ」
「あいつらはお前らの悪事の被害者。情状酌量の余地はお前たちよりもずっとある」
また手札が一つなくなった。
責任を押し付けられそうな相手に責任を押し付けられなくなった。
しかもアトラスから告げられたのは罪は自分たちの方が大きい。
逃げ場などもう一ミリもない。逃げれば逃げるだけ傷口は開くだけ。
「さて、何か反論はあるかな?」
反論などできるはずもないのにアトラスは意地悪に三大勢力のトップたちに聞く。