本編が難産。うまく文章がまとまらない。
◆◆◆
騎士王ハイリガン様からの命を受け、このレギス砂漠に派遣されてより数日。
この砂漠は今、荒れている。情勢も、天候も、人心も、そして魔力も。
そう。
一月ほど前、この混沌の砂漠にて尋常ならざる魔力の高まりが繰り返し検知された。規模は世界融合と同等であり、しかし全く異なる周波と頻度。ほぼ間違いなく人為的に引き起こされた現象で、あるいは悪辣王の“遊び”が関係している可能性も高い……とは宰相の分析だ。
そんな地にて、怪しさの塊のような概念精霊と遭遇したのを偶然と考えるわけもない。
八騎士の知覚すら欺く黒衣。未確認の精霊。黒衣を外して分かる魂と能力の異常性。
王の使命の妨げとなる可能性が高く、放っておくなど論外。如何なる不敬・禁忌の道であろうとも、カオス全土の精霊教徒を敵に回す事となろうとも、それでも詳細を調べる必要がある。
とうの昔に、この身は血と罪で黒く穢れている。今更1つ2つ大罪を抱えようとも、この黒は変わらない。
そして。王は全てを知りながら、それでも全てを受け止めて騎士に任じてくださった。
その王の為、私は如何なる罪をも背負うと決めたのだ。この黒の鎧と剣に誓って、自らの意思で修羅の道を歩むと。
故にこそ。この精霊を逃すつもりは無かった。たとえ四肢を切り落とす事となろうとも、その命を奪う事となろうとも、それでも口を割らせる覚悟をしていた。
けれど――
「……輪廻の精霊だと?」
「そうですよ。貴女のような指示待ち人間、派遣騎士にどうこう出来る存在ではないのです。分かったのなら、さっさと本社の者に…あのショタ王様に取り次いでください」
不自然な程に黙秘を続けていた精霊が、観念したように口にした概念。
輪廻転生――この混沌の世界から失われた概念。遥かな昔に消え失せ、永遠に戻る事は無い概念。数多の世界の何処にも存在せず、如何なる強者や術理であっても復元が叶わぬ概念。
そんなものを司る概念精霊。既に無い概念を司る事など不可能。当然、嘘であると考えるべきかもしれない。
だが、精霊とは即ち概念そのもの。自らの全てである概念を偽る精霊は聞いたことが無い。
加えて。“輪廻”の概念は精霊たちにとっても重要極まりない。その場しのぎの嘘に使うような愚を犯すとは考えにくいのだ。
もしかしたら。本当に、この精霊は――
「………………。……………………………分かった」
「おや、随分と物分かりが良いですね」
「非常に腹立たしいが、少なくとも貴様は私個人の裁量で処断して良い存在でない。それだけは確かなようだ。……何故か私たちの計画も知っているようだしな」
「分かれば良いのですよ、分かれば」
先程、この精霊は騎士王様の目的と計画を言い当てて見せていた。私の理解を超えた何かが彼女にあるのは間違いない。
魔力を流して通信装置を作動させる。
言いなりになるようで癪ではある。だが、今の私に出来るのは騎士王様に判断を仰ぐこと。全ての中心は己では無く王なのだから。
◇◇◇
騎士王の計画を暴露することで、簡単に手出ししてはいけないと思わせる。
その上で、自らが“輪廻”の概念精霊である……という事実ではあるが一部に過ぎない情報を公開。
こうすればムレ騎士は……というよりも、八騎士ならば確実に騎士王の判断を仰ぐだろう。彼ら彼女らの目的を考えれば当然。オレは確実に解放される。
では。そんな方法があるのに半日も拷問されていたのは何故か。無論、オレがドMだからではない。断じてない。
単純明快に、出来る事なら使いたくない手段だっただけ。
「はいはい。通信変わりました、美少女精霊ティエラちゃんですよー」
『……成程。実に興味深い存在だね。こんな精霊が誕生していたとは知らなかったな』
これだから嫌だったんだ。
コイツに隠し事とか出来ないのよ。いくら誕生経緯が複雑だろうが、この身が精霊である限りは絶対に。
何故なら、この騎士王は――
「流石は騎士王ハイリガン……いえ、あえて呼び方を変えましょう。流石は
『随分と古い名を知っているね。余も流石と賞賛を返した方が良いのだろうか?』
「はは、皮肉だって事くらい分かってるでしょうに。さっさと本題に入ってくださいよ、“
『……ふむ。確かにそうだね、“
ちゃんと意図が通じたようで何より。オレは騎士王として接するから、そっちは“輪廻”以外の概念をばらすなという交換条件である。
本編開始前だし描写される事は無いと信じたいが、念には念を入れるべきだろう。
『すまなかったね。うちの馬鹿騎士が暴走したみたいでさ』
「マジで勘弁してくださいよ。こっちにも大切な使命があるんですからね」
『あはは……まぁ彼女にも、そして余にも使命があるからね。大目に見てくれると助かるな』
「ふざけないでください。使命って言えば何でも許されると思ったら大間違いですよ。菓子折りの1つでも持ってくる誠意を見せてみたらどうなんですかね?」
『あれ、おかしいな。本当はクレーマーの精霊だった?』
失敬な。いきなりSNSに晒したりせず、ちゃんと本社への電話対応してるじゃないか。
『菓子折りはいずれ必ず届けるとしよう。ただし、その時は敵同士になっているかもしれないけどね』
「見逃すのは今だけ。準備を整えたらオレも狩る…そういうことですね」
『話が早くて助かる。……全ては使命の為に』
「その時は全力で迎え撃ちますよ。……全ては使命の為に」
通信装置をムレ騎士さんに放り投げて渡す。おお、ナイスキャッチ。
……なんか流れで迎え撃つとか言っちゃったけど、絶対無理だよな。あの人権SSRに勝つとか無理ゲー過ぎる。今のままでは逆立ちしても不可能だ。
詰まる所、オレ自身が人権キャラになれるように頑張らなければならない。
その為には人気を出す必要がある訳で。満を持して実装されたSSRティエラちゃんの性能がイマイチだったらユーザーが怒り狂う程度には好感度を稼がなければならないのだ。
となると。やはり絶対に花火魔術を習得せねばなるまい。イベント等で見せ場がつくれることだろう。
そう。この砂漠の何処かにいる花火職人に弟子入りするのが、今回の最大の目的なのだ。
「……はっ。全ては王の御心のままに」
なんてことを考えている内にムレ騎士さんと王様の通話が終わったようだ。
さて、と。どう落とし前つけてやろうか。
「理解出来ましたよね。さっさと謝罪して、さっさと去ってください」
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ」
ふははは、悔しかろう。
心酔して止まぬ主君の為にやったことが、その主君直々に“暴走”と断じられて厳重注意されてしまうというのは。
ねぇ、どんな気持ち? 今どんな気持ち? ニヤニヤが止まらないぜ。
「………………す」
「す?」
「すまなかった。私が悪かった。本当に申し訳ない」
はーはっはっはっは! 愉快痛快!
だが、まだ許さん! 半日拷問の恨みは深いのだ!
「おや~? 騎士様の謝罪ってのは頭を下げて終わりなんですかね~? おかしいですね~誠意が感じられないですよ~?」
「……くっ。何が望みだ」
お~、生くっころ。
本当は土下座を要求したい所だが、ここのシーンが過去回想なんかで描かれるとマズイ。
令和のご時世じゃコンプラに引っ掛かる可能性が高いし、そこまでやっちゃうとメスガキムーブが過剰過ぎて人気を落としかねない。
ここは寛大に許しつつ、ネタに出来そうな結末で幕としよう。
「とりあえず、貴女のあだ名はムレ騎士さんということで。それで手打ちにしましょう」
「…………は?」
次回はあの子を出せるはず。