ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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4話 運命の日

 ちょっと最後は良く分かんない感じになってしまったけど、とても楽しい日々だった女傭兵ティエラちゃんを卒業し、リズ先輩と別れてからもオレの旅は続いた。

 オレのことは嫌いになっても、女傭兵のことは嫌いにならないで…!なんてね。

 当然、嘘だ。女傭兵とか嫌いになっていいからオレを推せ。そして投票して1位にしろ。

 

 この土地勘も無い広大な世界で目当ての人に会うというのは奇跡に近しい事ではあるのだけど、それでもブラブラと旅をしてそこそこの数の実装済みキャラと関われたと思う。

 

 オレは「私」でもあり「俺」でもあるので、「女」の意識と「男」の意識が完全に重なって存在している。ついでに「人外」と「人間」の意識も重なっている。だから、どんな存在にも気さくに偏見無く接することが出来るのであり、このことは交友関係を広めるうえで非常に有効だった。

 例えば、異性と話すときに抱きがちな僅かな緊張とか羞恥とかが皆無なのである。他にも、明らかに人外の見た目でも「(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ」という感情が真っ先に浮かぶ。ただし魔獣、テメーは食料だ。

 

 それでも人間というのは千差万別。その心というのは複雑なもので。仲良くなれなかった奴もいる。

 人気のショタ系キャラクターは原作時よりさらに幼く、何やら矢鱈と俺に突っかかってきた。会うたびに暴言を吐かれ、何よりも目も合わせてもらえないのが辛かった。彼には嫌われているとみて間違いないだろう。残念、繋がり作り失敗である。

 

 あと何故か別れ際になると妙な反応をしだす人が数名いたのは何なんだろう。終盤の頃のリズ先輩と似た感じだったので、(ないとは思うけど)リズ先輩みたいに暴走する前に手を打っておいた。彼女との別れ際で要領は掴んだので、同じように対応したら何とかなったのだ。

 まぁ、いらぬ心配だとは思うけどね。リズ先輩は暗い過去にかなり追い詰められた人物で、色々貯め込んでしまったが故の暴走だと思うんだよ。せっかく友達となれたのに離れてしまうから昔のトラウマを刺激されて~みたいな。

 「(ストーリーの展開上)いずれ(主人公クン陣営として)必ず会うことになるから」と言うことを幾つかの言葉と共に伝えていけば、あら不思議。何故か皆納得してくれるのよね。回数を重ねるごとに手並みも鮮やかになっていったと思う。女の気持ちも男の気持ちもわかる俺には、人間関係において死角など無いのだ!

 

 戦闘技術の方も十分仕上がっていると思う。SSRキャラの剣聖ちゃんには「未熟」の一言で片づけられたが、そこそこ戦えているし、そもそも本来はヒーラーだし。問題ないだろう。

 

 そういえばヒーラーと言えば、だ。実装済みキャラクターにヒーラーが少なかったのでまさかと思っていたが、やはりこの世界そのものにヒーラーが少なかった。ので、各地で修行も兼ねて色々な人を治療して回ったりもした。回復魔法は実際に損傷した部位がないと発動しないので、なかなか練習も出来ないのだ。山にいた頃から自傷して回復を繰り返すのは鉄板の練習方法となっていたが、やはり痛いものは痛いので、既に怪我してる人がいるならそっちで練習したほうが良いのである。

 

 戦地で重傷の兵士を回復して回ったら「翠の天使」なんて呼ばれることも一度や二度ではなかったものだ。褒められて悪い気分になるはずもなく、あれは実に気持ちのいい経験だった。

 だから、ある村では「いいぞ、いいぞ!褒めよ、崇めよ!」って感じでやってたら軽く宗教組織化しそうだったので一目散に逃げたりしたなぁ…。そう言えばあの村にいるはずの実装済みキャラ結局会えなかったけど、どこにいたんだろ?村の名前間違えてたのかな?

 

 そういや、戦争真っ最中の地に上空から両軍に向けて広範囲回復魔法をぶっ放したこともあった。あれは最大範囲と最大捕捉人数の実験だった訳だが、人権キャラほどのぶっ壊れ性能を持っていない俺では、対象範囲と人数を増やしたら効果が弱まり過ぎて綺麗な緑の光が出るだけで終わった。戦場が淡い緑色の光で包まれたのは綺麗だったが、格好つけて登場した挙句何の効果も無しでは無様にも程があるので、直ぐに逃走したのだった。アレは思い出したくない黒歴史だ。

 あの争っていた2国の間でオレはどんな笑い話にされているのだろう。考えるだけで憂鬱だ。救いがあるとすれば、黒衣を纏っていたから若草色の長髪のナイスバディ美女程度にしか認識できないことだろうか。

 

 

 そんなことを大陸各所でしつつ、オレの旅は続いた。

 いま振り返ってみても波瀾万丈で悪くない旅だったと思う。

 

 そうだ一番大切なものを忘れていた。この旅で最も上達した料理である。大陸各地の食文化と食材に親しみつつ、仲良くなった人から指導を受けたりもしたオレの料理技術は既に一角のモノである。生猪の味を軽く凌駕したと言えば、その凄さは分かることだろう。約5年の研鑽は無駄ではなかったのである。

 剣聖ちゃんですらオレの料理には「見事」との評価を下した。ふふん、勝った。なお、剣での模擬戦では何が起きたかもわからぬままに一瞬で敗北したけどね。ちくせう。

 

 

◇◇◇

 

 

 そんなこんなで旅を続け。日記の日数が1685を示した日、ついにオレの全身を得体の知れぬ感覚が襲った。

 感覚の示す方向に何かがいるという謎の確信。

 そう、原作主人公クンがこの世界に降り立ったのである。

 そして――

 

 

「ぐぇ!?くっ…これは…想像以上、ですね…っ!」

 

 何だ、この得体のしれない強烈な感覚は…!?

 半ば覚悟していたこととはいえ、なるほどこれは凄い。

 身体が熱くなって胸がドキドキする~とかそんな生易しいものじゃない。

 慣れ親しんだ重力の何倍もの重力に突如として晒されたような感じといえばいいだろうか。そんな経験ないけど、多分それが正しい。明確な方向性と確かな力さえ伴って、物理的に身体が引き寄せられている!

 そう!これは「地球」様の意思だ。「俺」の弱すぎる魂を補うために借りた力は、やはり単純なモノではないらしい。

 

 だが、それでも!「私」の意思も「俺」の意思もしっかりと抗えている。意識と思考だけは微塵も乗っ取られていない。

 

 オレの目的は変わらない!人気投票で1位となって妹を救い、家に帰ること、だ!

 

 ……ふう。意志を強く持てば大分抑えられる。完全ではないが、不足という訳でもない。

 

 取り敢えずは、だ。この「地球」様の執着パワーを利用して、急ぎ主人公クンの元へ向かうとしよう。

 

 さぁ、本編の始まりだ。

 

 そして、オレの人気投票ランキング1位を目指す戦いの始まりだ…!

 




これにて1章終了です。
2章では個人的に描きたくて仕方が無かった「掲示板形式」がついに導入できます。楽しんでいただければ幸いです。

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