ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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本日2話目です。
かなり本編とは毛色が違います。
好みに合わない方はスルーしてください。

忘れている方のために
○星地 流斗:ティエラの中身


【幕間】星地 流斗と探沢 璃推【過去編】

 午前の授業終了を告げるチャイムが鳴る。

 やたらと高らかな音に聞こえるのは、授業から解放される俺の心が晴れ晴れとしているからかもしれない。

 

「やぁ、流斗くん。少し良いだろうか?」

「どうした、探沢」

 

 自作の弁当をどこで食べようかと考えていたら話しかけられた。

 探沢(たんざわ) 璃推(りすい)。俺のクラスメイトで大切な友人の1人だ。

 

「いやね、他ならぬ君の妹殿の事なのだが…」

宙音(そらね)がどうかしたか?」

「このままで構わないのか、と。或いは勉学の時間を減らすべきでは、と思ってね」

「…もしかして、無償での家庭教師はもう嫌になった、とか?」

 

 探沢は滅茶苦茶に成績が良くて、しかも塾とかも行っていない。

 時間に余裕もあるようなので、病気でなかなか学校に行けない妹、宙音の家庭教師を頼んだ経緯がある。

 実際、彼はゲームがかなり好きで、気付けばゲームをしていたりする。

 何故それで成績を維持できるのか、と問えば。「学校の授業があるじゃないか。あれを一度聞けば高校のテスト程度はどうとでもなる」とのことだった。俺には良く分からなかった。

 

「断じてそういうことではないさ。この程度は何も負担ではないし、君たち兄妹との時間は楽しい。……しかし、宙音クンは…その…決して長くは生きられない、そうだろう?」

「…あぁ。…そうだな」

 

 探沢の言う通りだった。

 妹は決して長くは生きられない。現代の医療では治せない不治の病を抱えている。

 

「ならば、勉学などに時間を取られず、好きな事をするべきなのではないか、と。家族でも無い私の言うことでは無いかもしれないが」

「何言ってんだよ。俺の家に来ない日の方が珍しいくせに。母さんよりよっぽど家にいるぞ、お前。それなら、もう家族みたいなものだろ。少なくとも、お前が妹の件に首突っ込んでも何も不快じゃない」

 

 実際、家庭教師を頼んでいることもあって、探沢は基本的に俺の家にいる。

 一方、母さんは女手一つで俺たち兄妹を育てるため、遅くまで働くことも普通だし、帰ってこれない日も多い。だから、探沢のほうが家に居るという奇妙な事態が発生している。

 

「それで、勉強の時間を減らすべきじゃないか、か。俺もそれは思ったんだ。ただ、宙音が望んでることなんだよ」

「それは、どういう?」

 

 俺だって探沢と同じことを思って宙音に尋ねたことがある。

 でも、宙音は勉強をすることを望んだ。理由は。

 

「あいつってさ、その…普通じゃ、ないだろ?」

「……失礼を承知で客観的事実を述べるならば。肯定だ。彼女自身は普通の少女でも、彼女が抱える病が彼女を特別たらしめる。それは逃れようのない、事実だ」

 

 俺はコイツのこういう所も気に入っている。

 宙音の家庭教師を頼んだのも、単純にコイツの頭が良いからってだけじゃない。

 探沢は中々触れにくいような内容でもズバッと指摘できるので、そういう点でも俺は彼を気に入っていた。妹も同様だ。

 必要以上に気遣われることが、かえって負担となることもあるのだから。

 

「だからこそ、病気以外の所では「普通」でいたいらしいんだよな。他の同年代の子が学校で学んでいるだけの時間は、自分も同じように学びたいってことらしい」

「…なるほどね」

 

 そう、宙音はそれを望んだ。

 母さんは宙音をそういう風に生んでしまった事を一時期とても気に病んでいた。いや、今も表には出さないがずっと気に病んでいる。

 だからこそ、かもしれない。

 妹はきっと、「自分は決して不幸ではない」、「普通の子たちと変わらない」、「生んでくれてありがとう」という想いを伝えようとしているのだろう。

 なら、兄はそれを全力で支えるべきだ。

 

「てか、お前ならこれくらい推理できるだろ?人の本音とか人間性とか簡単に見抜くんだからさ」

 

 探沢の推理の力は異常と言っていい。漫画に出てくる探偵そのもののような存在が彼だ。

 心理学やら何やら俺には良く分からない分野をたくさん知識として有しており、隠された真実を容易に導き出す。

 

「確かに。私は推理が得意だよ。自信もある。けどね、推理は推理でしかない。絶対ではない」

「どういうことだ?」

「私にとって、君たち兄妹との関係が大切だからこそ、読み間違えて壊してしまいたくない。そも、君たちは犯人ではなく友人だ。ならば、自己の内で完結する推理で触れ合うべきではない、そうだろう?」

「なるほどなぁ…」

「というか、これを教えてくれたのは君なのだけどね」

「え?俺、そんな格好良いこと言ったか?」

 

 全然覚えがない。

 

「言葉としては一言も発していないさ。ただ、私が君たちから学んだというだけで」

「なんだ、ソレ。意味わからん」

「はは、そうかもね。それで良いのさ」

 

 やっぱり、コイツは良く分からん。

 だが、一緒にいて面白い。

 

「その姿勢で行けば結構友達出来そうなんだけどな、探沢って。顔も良いし、背も高いし、頭も良くて、運動も出来て、ゲームとかの話もできる…完璧か?なんだ、喧嘩売ってんのか?」

「自分の発言でキレ散らかすのは止めてくれたまえ…まぁ、私が完璧であることは紛れもない事実なのだが」

「よし表へ出やがれ」

「君が私に勝てるのかい?喧嘩も私は強いよ。ネオ=バーティツを独自にアレンジしてマスターしているからね」

 

 …なるほど。ネオ=バーティツが何かは良く知らないが、確かにコイツは強かった。

 今日の所は見逃してやるとしよう。

 

「…と、冗談は置いておいて」

「逃げたね」

「うるせぇ。話戻すぞ。お前って俺以外の奴と仲良くしているの見たこと無いんだが、友達ちゃんといる?」

 

 コイツは基本的に俺といる。学校にいる時もだ。

 探沢が他の友達と仲良く会話しているのを見たことがない。基本的に他人とは何かで揉めている印象がある。

 お得意の推理で人が当たり前に隠している色々な事を全部明らかにしてしまう。しかも、意味深な発言で当人を揺さぶった挙句、「今はまだ語るべき時ではない」とか言って煙に巻く。うん、これは仲良くするの無理だな。

 

「…ふむ。私にとって友人と呼べる存在は君と宙音クンだけだが」

「まじか」

「まじだ」

 

 予想以上に俺の友人の交友関係は狭かったらしい。

 なんで俺、コイツと友達やれてるんだろう…?

 俺は常識に溢れた一般人の筈なんだが…。

 

「…ま、いいや。それで、今日もお願いできるか?家庭教師」

「あぁ。ついでに君の勉強も見てあげよう。そろそろ中間テストだ」

「げっ」

 

 これは、今は遠き、ある日の物語。

 

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