ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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10話 夏イベ<驚愕>/パドロン覚醒

 そうか、そうか、つまり君たちはそんなやつなんだな。

 

 なーるほど。なるほどね。

 オレはやっと理解した。

 つまりキズナ君たちWF主人公パーティは、昔懐かしのRPGの主人公パーティだったのか。救世の旅という名目のもと、他人の家に無断で踏み入って壺の中やらゴミ箱の中を漁る系の主人公だったのね。今ようやくオレは理解したよ。

 「世界を救う」は万能の免罪符じゃねーぞ。

 まぁ、あれがゲーム的ご都合主義だというのは知っているし、オレ個人は大好きなシステムだけどね。

 ついついゴミ箱とか箪笥とか全部調べちゃうんだよなー。攻略本とか見ずに隠しアイテムを見つけた時の楽しさと言ったら筆舌に尽くしがたい。

 でも、最近そういうシステムのゲームが少なくなった気がするのはオレの気のせいだろうか?もしかしたら批判とかもあるのかもね。最近といっても「カオス」にくる前の話だから、随分と前のことに感じるけれど。

 

 と、思考が逸れたな。

 何が言いたいのかというと。

 開幕早々に湖の水を消し飛ばしたルネが、再びやらかしたのである。

 

 オレの目の前には正座させたルネ。

 そして、オレの指が指し示す先には巨大なクレーターが出来ている。

 

 おかしいな?スイカ割りってクレーター作って遊ぶ世紀末な遊びだっけ??

 

「ルネ。オレが言いたいことは分かりますね?」

「ごめんなさい…」

 

 さぁ、原因究明と説教タイムの始まりだ。

 

 もっとも、今回は最初の飛び込み事件よりも理解は容易だった。やっぱり納得は露ほども出来なかったが。

 単純な話、スイカを割ろうと意気込んだ結果、全力全開の一撃をぶっ放し、地面にクレーターを穿ったのである。

 異世界は常識がおかしいということを改めて認識した。はやく地球に帰りたい。

 一応スイカは無事だった。ルネが明後日の方向に振り下ろしたからだ。

 

 とりあえず、魔術とかそういう超常パワーは一切いらないのだと言い聞かせておいた。

 いくらワールドイーターの巫女といえども、素の筋力は高が知れている。どれだけ最適化を施そうとも、肉の器の枷からは逃れられない。

 ルネに限らず、この世界の存在が発揮する怪力や瞬発力は肉体を魔術で強化してるからこそだ。

 

 今度こそ平穏無事に行われる、と信じたい。

 

 

◇◇◇

 

 

 昼食の時間となった。

 オレは昼食の準備をしていたので見ていなかったが、特に大きな問題は起きなかったらしい。

 ルネが空ぶった一撃がパドロン君を強打し、パハルの腕からすっぽ抜けた棒がパドロン君に衝突し、そういう流れなのかと勘違いしたピスカが意図的に叩こうとした事でピスカとパドロン君の喧嘩が勃発したらしいが、クレーターと比べれば些細な事だろう。

 あ、あと目隠し状態のキズナ君がピスカと衝突してラッキースケベをしたらしい。

 …キズナ君はともかく、ピスカは目隠ししてなかったんだから気付けたはずだよね?わざと避けなかったんだよね?

 

 などと色々なイベントがあったようだが、全ては過ぎたこと。今は昼食の時間…待望のバーベキュータイムである。

 バーベキューの準備はテトマのおかげで非常に楽だった。

 集積した部品でバーベキューに最適な金網と台を用意してくれたし、食材は均一な大きさで切ってくれる。

 テトマは「ほどほど」「適量」「目分量」といった感覚的なこと、あるいは応用やオリジナルレシピなどは壊滅的に出来ない。しかし、均一な形に切る、均等に熱する、などは完璧にこなす。まさしく、一家に一体欲しい便利グッズだ。

 自分で焼くんですよーなどと説明をし、食材を見せると若者たちの眼はキラキラしていた。わかるよ、その気持ち。皆で焼いて食べるだけなのに、妙に楽しいのがバーベキューなのだ。

 ただ一人、パドロン君だけが少し残念そうな表情で呟いた。

 

「バーベキュー…?この用意された食材を自分たちで焼くってことなのか。ティエラさんの作った料理じゃねぇのか…」

「ふふ、パドロン君、嬉しい事を言ってくれますね。お肉の下準備などはオレがやっていますし、普通とは一味も二味も異なっているはずですよ」

「そうなのか、そいつは楽しみだな」

 

 このオレが、バーベキューだからと手を抜くわけないだろう?

 下準備の段階で味付けをしてあるのだ。

 果物やら野菜やらお酒やら様々な素材を最適な配合で肉と一緒に漬けておいた。

 正直、滅茶苦茶に手間がかかっている。あの状態の肉ならば、ただ焼くだけでも破格の美味しさになるだろう。

 肉の圧倒的な性能に心奪われるがいい…!

 

 

◇◇◇

 

 

 ティエラさんは下準備をしてあると言っていたが、正直、俺はまだ懐疑的だ。

 料理とは焼き加減や盛り付けも含めるもの。素人の焼き加減で、しかも食べたいものだけを食べるなど、料理としての形を保っていない。

 ティエラさんの腕を知っているからこそ、懐疑的になってしまうのは仕方がないだろう。

 だが、言われたとおりに肉を金網の上に載せる。

 ジュージューと食欲をそそる音が響く。白い煙と赤い火の対比、そこに挟まれ徐々に色を変えていく肉。

 ふむ、そろそろだろうか?

 頃合いを見て肉を持ち上げ、ティエラさんから渡されたタレをつける。タレは数種類用意されていて、それぞれの違いを楽しむことも出来るのだろう。焼いただけの肉だが、そこは嬉しいポイントだ。

 

「…っ!」

 

 肉を口元に近づけた瞬間、一瞬で俺の全身が臨戦態勢となった。

 ただ焼いただけのはずだ。焼いただけの肉、まさしく庶民の食べ物…いや、もっと言えば蛮族の食べ物と言っても良い。何度確認しても変わることは無い事実。

 だというのに、コレは何だ?

 口元に近づけると香る肉の芳香。「よおダチ公、元気してたか?」と軽く挨拶をしてくるような、嗅ぎなれた香りだ。まさしく、「肉々しい」という表現が最適なようにも思われる。

 しかし、何かが違う。久しぶりに会ったダチ公は昔と明らかに何かが異なっている。暴力的な荒々しさはそのままだ。けれど、所作が洗練されているし、何よりも目つきが違う。思慮深さを伺わせる眼差しは、「大人びた」という表現が的確だろうか。

 このまま香りだけで検分することは十分に可能だ。だが、それは食材への冒涜に他ならない。この焼きたて熱々で白い湯気を立ち昇らせる肉を、早急に口へと運ぶ以外の選択肢があろうか。

 故に。迷いはない。

 即座に口に入れ、親友との再会を懐かしみ――

 

「こ、これは…!」

 

 柔らかく、嫌な臭みが一切ない。そして、味わいに奥深さがある。これは絶対に肉だけの風味ではない。

 …そうか、友よ。

 わかる、わかるぞ。

 お前は最愛の伴侶を得たのだな。

 瑞々しい果実の弾けるような香りと、食べる側を考え抜いた野菜たちの優しい味は、可憐で家庭的な姿を連想させる。しかし、一方で香辛料による苛烈な情熱も内に秘めているのが興味深い。そして、何より上品で大人びた酒の風味は育ちの良さを伺わせるものだ。

 そんなバラバラの要素が(しゅやく)を引き立たせるという1つの目的のために足並みを揃えている。(おとこ)を一歩下がった所から支え続ける姿勢…なんとも古風である。しかし、だからこそ得も言われぬ魅力がある。

 友よ、お前は運命の相手と出逢うことが出来たのだな。

 それは正しく、伝説に聞く「比翼」のごとし。

 育ちの良いお嬢様が、如何にして荒々しい男と出逢い、連れ添うまでになったのか。その物語を知ることが出来ない自分が口惜しい。結婚式には是非とも招待してほしいものだ。

 

「美味すぎっス!?ウチに料理の才能があったっスか!?」

「おいしい!ピスカ焼くの上手だね!」

「そう言ってもらえると嬉しいにゃ。次も焼けてるにゃ」

「うま、うま」

「あの?ルネさん?それ(わたくし)が焼いていたお肉なのですが?」

「見切った!これぞ最良の焼き加減と見つけたり!」

 

 どいつもこいつも、この肉にかけられた手間の半分も理解しちゃいない。

 しかし、それで良いのかもしれない。マイフレンドと伴侶の結婚式は厳かな式より、賑やかで多くの笑顔に溢れた式の方が相応しいだろう。

 手間は明らかにかかっている。けれど、それを決して主張していないからこそ、この光景がある。全ては、一つの鉄板で皆が思い思いに食材を焼き、食し、笑顔になるためのもの。食べる側が笑顔になる事、食卓が明るい声で溢れること…それだけを考えて作られた料理なのだから。

 それが作り手の想いならば、俺も従おう。

 

 とりあえず、ピスカが集中して焼いている肉を一切れ拝借する。

 

「にゃ!?お前のために焼いていたんじゃ(にゃ)いにゃ!」

「スイカ割りの時に殴りかかってきた分だ。これでチャラにしてやるよ。…ほう、蛮族にしては中々上手く焼くじゃねぇか」

「蛮族じゃ(にゃ)いにゃ!」

 

 今回は一枚目とは異なる赤いタレで食したが、これも素晴らしい。ピリリとした辛味が肉に良く合う。これは全てのタレを試してみたいものだ。

 

 そういえば、ティエラさんはバーベキューを夏らしい食事と言っていた。

 つまり、この3日間は夏ならではの食事が出てくるのだろう。

 ならば、全てを余すことなく味わい尽くさなければならない!

 

 父上!確かに俺の視野は狭すぎました!未知の世界は皿の上にこそあったのですね!

 

 

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