ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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20話 夏イベ<終焉>/祭りの終わり

「OOOOOOOOoooooooooo!!!!」

 

 問答無用で攻撃してくるクリオネちゃんに様々な攻撃をしかけるが、剣も魔術も有効打になっているようには見えない。

 唯一、キズナ君の雷魔術で一瞬だけ硬直するものの、それだけだ。

 

「何だ、コイツ!?攻撃しても手応えがねぇ!?」

「パドロン君!恐らく本体は赤い部分です!」

「2つありますわ、ティエラさん!?」

「リエス殿!異形の姿成れども、上が頭なのは同じでござろう!」

 

 それもそのはず。クリオネちゃんは弱点である頭部と胸部の赤い部分以外は無敵なのだ。

 マグマの中だろうと平然としているのは、これが要因だったりする。

 某使徒のコアみたいとは言ってはいけない。

 

「ん、そういうこと、なら。リエス」

「…っ!分かりましたわ!」

「ルネ!?リエス!?待ってくださ…」

 

 だから、ルネの判断は正しい。それは勝つためには必須のことだ。

 けれど。

 

「赤い玉…それは、スイカ…!」

 

 バカンス1日目を彷彿とさせるように。

 リエスが魔術でルネを空に飛ばす。ルネは凄まじい速度でクリオネちゃんの頭上へと飛翔していく。

 上空から頭部に一撃を与えるつもりなのだろう。

 けれど!それは不味いんだよ!

 

「あのバカ娘…!あんなあからさまな弱点、防衛手段があるに決まっているでしょう…!」

 

 魔術でルネを追いかけるように飛行する。

 視界には、今まさに天空からの一撃を振り下ろさんとするルネの姿が映っている。

 それは不味いんだよ!()()()()()()()()()

 

「む。これは…?」

 

 ルネの攻撃が直撃する、まさにその瞬間。

 バクリと頭が真っ二つに割れた。

 

「ひえっ!頭がパックリっス!?」

「倒したのかにゃ!?」

「否!あれは…!」

「ってオイ!ティエラさんは何を…!?」

 

 蠢く、6の触手こそは。

 過去現在未来を通じ、薄い本に描かれる全てのキャラ達が、

 涙と共に慄く、醜くも人間らしきユメ――『欲望』という名の祈りの結晶。

 その情熱を芸術と掲げ、その物語を描けと糾し、

 今、流氷の天使は高らかに、

 伸ばす触手の学名を吼える。

 其は――

 

「BaKKaRuKOoooooooooooNnnnnnnnn!!!!」

「あ…」

「ルネ!」

「まま!?」

 

 ええぃ!凄く凄く嫌だけど、やるしかない!

 ルネにそっち方面の人気まで奪われるわけにはいかないんでな!

 

「ママじゃないと言ってるでしょうに…」

 

 直後。オレの身体は触手に飲み込まれた。

 

 

◇◇◇

 

 

 まぁ、WFは成人向けゲームじゃないし。

 種族が異なる以上、子孫を残す交尾相手にはなれないわけで。

 普通に考えれば、薄い本的な展開にはならないんだけどね。

 

「ティエラさん!」

「まま、私の、せいで…」

「ルネ!反省も後悔も後にゃ!今は助け出すことだけ考えるにゃ!」

「ピスカの言う通りだぜ!」

「…うん、わかった。絶対、助ける」

 

 単純に、オレを盾として弱点を守るための行動だ。仲間がいる所に攻撃をすることは出来ないと考えての事だろう。

 ここのシーンを見た人が何を妄想して何を描くかは別の話だけど。

 帰るためなら何でもする思いは微塵も変わってない。けど、帰った後で自分が描かれた薄い本を見かけたら微妙な気持ちになりそう。

 

「しかし、これでは迂闊な攻撃は出来ぬでござろう!」

「キズナ!雷は効いてたよな!」

「一瞬だけ動きを止められる!でも、ティエラさんにもダメージ与えちゃうよ!」

「つまり、一瞬でも解放出来れば、雷で痺れさせて助けられるってわけだな!テトマ!何か作戦はねぇのか!」

『再計算再計算再計算…不可能。一手不足する』

 

 ともかく、だ。

 別に催淫作用とかがあるわけでも無いし、服が溶かされたり破かれたりもしない。ただの食べ物を発情させても意味無いしな。食べやすくするために痺れる程度か。

 要するに、非常に気持ち悪いだけ。ヌメッとした触手が身体を這い回るのが生理的に無理なだけだ。一応、我慢できる範囲ではある。

 

『現在も苛烈な攻撃は続いている。これを防ぎつつ、ティエラを解放し、再びの拘束を防ぐ。如何なる計算をしても一手足りない』

「たった一手なのに…!」

「ちっ、なら耐えて機会を待つ…!ティエラさん、もう少し耐えてくれよ…!」

 

 どうしよう、喘ぎ声とかあげといた方が良いのかな?

 でもなー、健全なゲームだしなー。迷うなー。

 ま、いっか。

 色々アウトなら運営さんが描写しないでしょ。判断は運営さんに任せる。頑張れ田中。

 

「んくっ…!…ぁ!は…ぁ…!」

「まま!」

「ティエラさん…!」

 

 オレの心の中で精霊さんと地球サマが白けた眼を向けているが、知った事か。

 必要なら何でもするぞ、オレは。

 

「――まったく、手のかかる奴だ。自己犠牲も大概にしろよ」

 

 直後。()()()()()()()()()()()

 

「Ooooooooooooooooo!!!???」

「…!今でござる!」

 

 流石は忍者。唐突に降って湧いた好機を逃すことは無い。

 たとえ不測の事態でも、迅速に判断して行動を開始。

 状況が把握できずとも、彼の言葉で皆が各々の役割を遂行する。

 

「テトマ、タッタ、サホ!ティエラさんのこと任せたよ!」

『了解。当機がティエラを守る』

「あいあいー!」

「承知ー!」

 

 タッタとサホが落下していくオレの確保に向かい、その後でテトマが保護する算段のようだ。

 彼らに指示をしつつ、キズナ君はリエスの元へ走る。

 

「蛮族!お前も行け!この好機は逃がせねぇ!」

「了解にゃ!蛮族言うにゃ!」

 

 パドロン君が触手の一本を抑えながら叫び、ピスカもリエスの元へ。

 

「打ち上げます!お気をつけて!」

「うん!」

「にゃ!」

「NEeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!」

 

 リエスがキズナ君とピスカを魔術で空中へ飛ばす。

 その一方で、触手が再び人質を捕らえようとオレに迫る。

 しかし。

 

「お前の相手はウチっスよ!」

「ままを虐めた。許さない」

 

 パハルが二本を魔術の爆発で封じ、ルネが大鎌の一撃で2本を消し飛ばす。

 既にパドロンが1つを抑え、残りの1本をナナシ君が防いだ。

 そして。

 

「くらえぇぇぇぇぇ!!!!サンダーボルト――

キャッツ――

 

 キズナ君が雷魔術を拳に繕わせて一撃。

 合わせるようにピスカの拳が振り下ろされる。

 

「「(ニャ)ックル―――――!!」」

 

 痺れた一瞬、絶妙なタイミング!

 同時としか見えない刹那の時間差!

 二人の拳が直撃する――!

 

「OooooooooooooooNEeeeeeeeeeeeeee!!!!!????」

 

 「サンダーボルトナックル」と「キャッツ(ニャ)ックル」って、水着の効果があったからこそ叫べる必殺技名だよね。

 テトマに保護されながら、そんなどうでも良いことを考えた。

 

 

◇◇◇

 

 

 その後。

 

「まま!私のせいで!」

「あれはオレが勝手にやった事ですよ。それに、ルネの判断も間違ってませんでした。でも、今度からはもう少し注意しましょうね。あと、ママじゃないです」

 

 と、自責の念に駆られるルネを慰めて。

 

「流石にコイツは食えねえよな」

「勿体ないですし、やってみます?」

「えぇ!?」

 

 パドロン君の冗談にオレも冗談で返したのだが、リエスが本気で悲鳴を上げて。

 多分、ヌメヌメとか触手とか嫌いなんだろうね。

 

「あのー…ティエラってエルフの彼氏とかいたりしないっスか?」

「いや、いませんけど。正真正銘、彼氏いない歴=年齢ですけど、なにか?」

「そうっスよね!やっぱり勘違いっスか。こんな所に居るわけ無いっスもんね…」

 

 とんでもないことを言い出したパハルの言葉を全力で否定した。

 ヴァルトがオレを助けた一撃は誰にも気付かれないような神業だったが、妹は何かを感じ取ったのかもしれない。

 とはいえ、根も葉もないデマでネガキャンするのは止めろ。

 ヒロインが「純潔」じゃないと嫌だって人はかなり多いんだからな。

 

 まぁ、そんなこんなで。

 ついに夏イベは、最初のお祭り騒ぎは終わりを迎えた。

 

 次は本編2章。大森林と機械都市。

 そこに待ち受けるものは果たして――。

 

 





※なお、喘ぎ声は完全カットされました。

※「クリオネちゃん」について
あるソシャゲでクリオネ型のボスがいると指摘してくれた方がいました。
誠にありがとうございます。確認不足でした。
検討の結果、このまま進めます。
何処のソシャゲにも使われていなくて、そこそこ知名度もある生き物と言うのが見つからなかったのです。

今後とも当作品をお楽しみいただければ幸いです。

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