「あれが大森林……お母様の故郷……」
夏イベが終わって。
キズナ一行は遂に、大森林「ンル・ヲ・リエス」に辿り着いた。
機械都市を目指すだけなら大森林に立ち寄る必要は無い。どこかでリエスとパハルを降ろしてしまっても良かった。けれど、そんなことをキズナ君たちが考えるはずも無く。
ここまで来たら乗り掛かった舟だと、大森林へと向かっている次第。
いやぁ、しかし……
「いくら大森林って言っても、これは流石に桁外れニャ!」
ピスカに完全同意。
ゲームで何となくは知ってたけど、流石に想定外。
地球じゃ間違いなくギネスに載るような大木が無数に……一切の比喩ではなく無数に屹立している。いや、多分だけどギネス軽く超えてるだろうな。ファンタジーパワーで水を吸い上げられるからこそ実現可能な高さだろう。
奥は勿論のこと、左右を見ても森の果ては見えない。永遠に広がっていると言われても納得する。
「ふふーん!これがエルフの誇る大森林っス!どやぁっス!」
「別にお前の功績じゃねぇだろ」
「……確かにっス!」
アホの子っぽさ全開のドヤ顔を披露したパハルが、パドロン君の容赦ないツッコミに沈んだ。
まぁ、故郷を自慢したくなる気持ちは分かるよ。オレも外国人やら異世界人に和食を褒められたら嬉しいしね。この世界でオレが作ってるのは材料やら調理法やら全部違うから、「和食もどき」でしかないけれど。それでもだ。
そんな緩い会話を続けていれば、遥か遠くから見えていた大森林の目前に到着。
一行がテトマから降りると、パハルの周囲に風が渦巻く。
どうやら、特殊な風魔法で森の何処かへと声を運ぶ算段らしい。
『何をしに戻って来た、パハル。掟を忘れたか。それともヴァルトに代わって秘宝を届けに来たか』
しかし、パハルが言葉を発するまでもなく、威圧感マシマシの声が此方に届いた。
緑の光の球体がオレたちの周囲を漂っている。
確か、
「掟は覚えてるっス。ついでに秘宝は持ってないっス」
『話にならぬな。去れ』
「待つっス待つっス!今回は長老たちに判断してもらいたい事があって来たっすよ!」
『判断だと?』
「ほら、リエス。ウチに出来るのはここまでっス。あとは自分で自己紹介するっスよ」
「はい。ありがとうございます、パハルさん」
無情にも話を打ち切られそうになったが、パハルは慌てて話を繋いだ。
そして、リエスへと会話を譲る。
……自分だって出来ることなら故郷のヒトたちと会話したかっただろうに、掟だからと割り切ってリエスに譲ってあげたのだ。
やっぱパハル可愛い。オレが兄属性持ちの妹スキーでヴァルトと兄同盟だからというのが大きな要因だろうけど、オレはパハルのこと超好きである。
促されたリエスは一歩前に出る。
そして、リエスは……蒼い髪の
「先ず始めに突然の来訪となったこと、深く謝罪致します。
『森の外で生まれたエルフだと!?』
『混血!?』
『馬鹿な!?』
『ロワ・リエスだと!?ありえん!』
上へ下への大騒ぎ、大パニックである。最初に会話をしていた一人以外の動揺した声がたくさん聞こえてくる。
音声だけでも、彼らの混乱がありありと伝わってきてしまう。
『……失礼。少々取り乱した。暫し話し合いを行うので、お待ちいただけないだろうか?』
「畏まりましたわ。元より、此方は便りも無く唐突に押し掛けた身。文句などある筈もありません」
『感謝する。それでは暫しお待ちくだされ』
「……ねぇ、パハル。ロワ・リエスって?」
「うーん?どっかで聞いた気がするっスけど……何だったっスかね?」
キズナ君の質問に首を傾げるパハル。
けれど、聞き耳を立ててるだろうヴァルトも凄まじく動揺してるはずだ。
エルフにとっては常識的な知識の1つ。パハルがおかしいだけである。
だって、それはエルフの王族だけが名乗ることを許された姓なのだから。
◇◇◇
待たされること3時間ほど。ついに大森林側に動きがあった。
再び緑の球体が周囲を浮遊し始める。
随分とかかったが、それだけ喧々囂々とした議論が繰り返されたのだろう。ご愁傷さまである。
そして、その結果は――
『すまぬが、貴殿が森に入ることを許可することは出来ない。早々にお帰りを願う』
「ならばせめて!母の言葉を!」
『ならぬ!余所者は去れ!それ以上、言の葉を紡ぐならば容赦なく攻撃する!……儂らは「今」を壊したく無いのだ。どうか、ご理解頂きたい』
それきり。緑の球体は消え失せ、大森林側の言葉が届くことは無かった。
「そんな……
「リエス……」
キズナ君をはじめ、みんなが落ち込むリエスに声をかけようとして止まる。
何て言葉をかけて良いのか分からないのだろう。
「……どうして。言葉を聞くくらい」
「キズナ君。閉ざされているからこその平穏は確かに存在しているんですよ」
「え?」
キズナ君の呟きに、さり気無く言葉を返す。
「外からのあらゆるモノを拒み、内で完結した世界。そこに住まう彼らにとって、リエスの言葉は……いえ、会話から推測する限り、彼女の存在そのものが劇毒です。たとえ、リエスとリエスのお母さんに悪意なんて微塵も無くとも」
「悪意が無くても……?」
そもそも、薬と毒なんて表裏一体。身体に良い作用を及ぼすか悪い作用を及ぼすか。それで分けているに過ぎず、本質は同じだ。
たとえ、リエスの母がただただ純粋に故郷へと想いを伝えたいだけだったとしても。その変化は、森の中のエルフたちにとっては毒になってしまう。
森の外へ出る事、森の外へ出て内へと戻る事、それらを禁忌として扱ってきたエルフにとって、森の外で生まれた王族……しかも人間との混血など劇毒以外の何物でもない。
「彼らは変化を拒んだのでしょう。変化は未知です。今より良くなるかもしれないけれど、悪くなるかもしれない。分からないのなら、今のままでいい。……そんな想いは「悪」では決してありません。少なくとも、オレはそう思います」
「変化を拒んだヒトたち……」
こうやってゲームに採用されそうな言葉を積極的に発していかなければ、2章でオレの影は薄くなってしまう。
目指すは語り部ポジだろうか?
……というのも、だ。
この2章では、敵の一部は双剣『葬送』『回帰』が効果を発揮しない「機械」であるだけでなく、SSR癒キャラが出てくる。……それも
1体は別に問題ない。可愛い女の子がヘビ如きに人気で負けるわけがないから。問題は、もう片方。
さらっと顔出しして活躍した後、1周年アニバーサリーで実装される人権キャラの方である。
こんな状況で、影が薄くならないように立ち回らなければならない。それがオレが2章で為さねばならぬ事だ。
ヴァルトはSSRなので、テトマに頼らなくても湖を超えるくらい朝飯前です。