リエスが森への侵入を断固拒否されて。
とりあえず一緒に機械都市に行って今後の事を考えるという方針になった。
近くの街であれば交流とかもあって、打開策が見つかる可能性があるとの判断である。
そして――。
『ようこそ♪ 此処は機械都市ミカニア! 果て無き進歩の都です! 私は都市公認ガイドのミニア☆ 皆様の都市滞在中の案内係を務めさせていただきます! 先ずはご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?』
はい、カオス。SF来ちゃいましたー。
これをどう表現するべきだろう……?基本は銀色の楕円形で……ガスを詰めて飛ぶ飛行船みたいな?……それを高さも横も奥行きも果てが見えない程大きくした感じである。楕円形の上半分は一面透き通っているが、高い場所にあるので中の様子は伺えない。
側面には、本体の四分の一程度の楕円形が並行するように左右に1つずつ並ぶ。腕みたいだなーなんて要らぬフラグを立てておこうか?
それで、本体の楕円形の真ん中には大きな切れ目が頂点から上下の中間まで入っている。要するに、上半分はパックリ2つに分かれている感じだ。それで、その切れ目から超高い塔がマストのように伸びている。
全く上手く伝えられている気がしないが。要するに宇宙船である。
否。宇宙を行くのが「宇宙船」であるならば、是は「世界船」とでも呼ぶべき代物。
世界を渡って来たギガトン級の移民船。それが、この船の正体である。
ちなみに、案内を喋っているのは……何て言うのかな?バーチャルアイドル?
フワフワ飛行する野球ボールくらいの大きさの球から、手のひらサイズの女の子が飛び出してきている。赤い髪、白い肌、ヒラヒラフリフリの服、背中には小さな翅……そばかすをチャームポイントにニシシと明るく笑う姿は、悪戯好きの妖精を連想させる。
表情は豊かで言葉は流暢。そこに人間との差異なんて見受けられないが、これは紛れもなくAIと立体映像の産物だ。半分くらいは魔法・魔術技術が使われているから、「地球」のソレとは明確に異なるけども。
そして、そんなガチSFを見たファンタジー住人たちの反応は……
「わー……」
「びっくり……」
「驚嘆にござる……」
「ふわぁ……」
「何度見ても驚くっス……パネェっス……」
「こ、これくらい次期領主なら、お、驚かないぜ……」
「強がるニャよ、パドロン。お前もアタシも田舎者ニャ」
『当機、完全敗北……』
「テトマの凄さはオレたちが知ってますよ。いつもありがとうございますね」
『ティエラ……』
ま、こうなるよねー。
順にキズナ君、ルネ、ナナシ君、リエス、パハル、パドロン君、ピスカ、テトマ、オレである。
事前知識がそこそこあったオレだって情緒が暴走しかねない光景だ。案の定、みんなポカーンと口を開けて固まっている。
それはそれとして、ちょっとは心の準備が出来ていたので、さり気無くテトマに対してフォローを入れる。性格が良くて面倒見の良いお姉さん感を醸し出して行く。影が薄くならないための必死の抵抗である。
「えっと……僕たちは、このパーツの出所が知りたくて来たんだけど……」
『むむむぅ~? う~ん? 型式番号も制作社名も無しですね~? でもでも~、これ程の技術はミカニアが関係しているとしか思えませんし~? 少々お待ちを~!』
するとミニアは、こめかみに両の人差し指を当てて「むむむ……」という擬音が聞こえてくるように顔をしかめて。
『アクセス――データベース利用許可申請――承認――データ照合――該当なし――議論開始――終了――要検証対象と判断――研究区画入場申請開始――承認――……っとと、お待たせしました~! とりあえず、研究区に行ってみることをオススメしますよ! そこなら何か分かるかもです! 案内は任せてください!』
と言った。
「あ、えっと、うん……?」
キズナ君の発した戸惑いに満ちた返答が、状況の変化に付いて行けない一行全員の心中を見事に代弁していた。
上手く表現できている気がしない。
SFの描写は難しいですね。もっと修行しなきゃ。
話は変わりますが。
第5話(WF情報など)に人権キャラ設定を投稿しておきました。
よかったら梅雨の暇つぶしにでも読んでみてください。