ルネの以前の事を聞くとは言ったが、ピエロは大したことは知らなかった。
ここよりもずっと南の地で、彼が所属するサーカス団が活動していた折、彼女によく似た少女が観に来てくれたのだという。
最前列で楽しそうに観てくれていたので、壇上に上げてゲストとして参加してもらった。その時に名前を聞いたので覚えていた……とのことだ。
本当はもう少し色々と話していたのだが、ハッキリ言って聞く価値の無い戯言である。
何故なら、そもそも全て嘘っぱちだから。
ルネの名前を知っていたのだって、魔術か何かでオレたちの会話を盗み聞きしたのか、或いはザルフェダール周辺で聞き込みでもしたのだろう。
ルネが「ワールドイーター」に関係する存在だからこそ、記憶喪失を利用して接触を図ったのだ。
プレイヤーの皆様……特に考察班は頭を悩ませているだろうけれど、このピエロが口にする言葉は99%が嘘である。
「それにしても、凄い所だね、機械都市って……」
『どやぁです! 「カオス」で最も発展した機械文明。それこそが機械都市ミカニアです!』
ピエロからルネのことを聞き終われば、話は別の事に移る。
そして、その話題は当然のごとく、機械都市についてだ。
中に入れば、まさしく「別世界」という言葉がピッタリのSF空間が広がっていた。
ロボットが飛び交い、巨大なビルが乱立し、ホログラムが様々なCMやら案内を再生している。
また、良く分からない機械や工場が乱立する、雑多で混沌とした場所があれば。
一方で、計算され尽くした美しい庭園が広がる領域もある。
この光景を見て驚くなと言うのは難しすぎる。
「ねぇ、ミニア。そもそも何で機械「都市」なの?」
この機械都市は1つの国を凌駕する大きさを誇る。
それが、どこの国に属しているわけでもないのに「都市」を名乗り続けているのは何故か。
そのようにキズナ君が問えば、ミニアは待ってました、とばかりに説明を始めた。
『それはですね――』
◆◆◆
機械都市ミカニア。それは元々、とある世界にて建造された、人工の宇宙対応巨大居住空間……即ち、スペースコロニーである。
その世界では「魔法」と「科学」の両方が凄まじい発展を遂げていた。母星が死の星となっても人類は滅びず、宙に進出して栄え続ける。
それからも人類の領域は広がり続け、同時に広大な宇宙は幾つかの大規模なグループに分かれていった。1つの国家に統合されたり、国家連合を形成したり、経済共栄圏やら同盟やら何やらと、線の無かった宇宙はあっと言う間に分割されていったのである。
結局のところ、母なる星から旅立っても人類が大きく変わることは無かったのだ。場所が地上から宇宙へと変わっただけで、パワーゲームや戦争は繰り返され続けた。
……最終的には、それが激化して世界そのものが崩壊したらしいのだが。
しかし。そうした中で、滅びから唯一逃れ、別世界であるカオスへと到達した者達がいた。
それこそがミカニア。スペースコロニー・ミカニアの人々である。
ミカニアのとある研究機関では、あらゆる外的要因を跳ねのける特殊装甲の研究が進められていた。
戦争が激化する中、ミカニアはその特殊装甲をコロニー表面に採用する。未完成であり、貴重過ぎる素材を使っていたが、採算も効果も度外視で「実験のために」採用したのだ。
ミカニアは、そういう場所だった。ある国の研究用コロニーとして運用されていたが、奇人変人ばかりが集うため、半ば放置され続けた研究の都だったのだ。
……結果、宇宙の崩壊に際してミカニアだけは無事だった。そして、他の世界を吸収して広がり続けていた「カオス」に、偶然にも流れ着いたのである。
◇◇◇
『――というわけでして。単純明快、本当の意味でココは「都市」なんです。大本の国は無くなりましたけどね~』
研究の都の人々は、国家という形を欲さなかった。誰もが研究を続けられれば、それで十分だと考えた。
故に。ミカニアは、国家ではなく都市なのだ。これまでも、これからも。
「やべえ。何言ってるのか全然分からねぇ。「宇宙」って何だ?」
「大丈夫ニャ、パドロン。アタシも分からんニャ」
ファンタジー世界の住人にはチンプンカンプンだったみたいだけれども。
実のところ、オレも良く分かっていない。まぁ、そんなものだ。
期間が空いて申し訳ないです。次話は明日投稿予定です。