『はい! というわけで、この先が研究区で……』
ちょっと広い広場みたいな所に着いて、ミニアが言葉を発した直後だった。
『対象を確認』
『――BI-G889-No.016789、了解。BI-G889-No.016790からBI-G889-No.016815までの各機。命令に従い、拘束行動に移れ』
『――了解。コマンドを実行する』
蒼い二足歩行型のロボットがたくさん現れ、オレたちを包囲した。その数、26体。
赤いモノアイが冷徹にオレたちを見定めている。そこに、一切の感情の色は見受けられない。
「なんニャ!?」
「完全に囲まれたぞ!」
「不覚にござる。これほど素早いとは」
あっというまだった。
密かに警戒し続けていたナナシ君も反応できない程の機動力と、圧倒的な統率力。
機兵にしか出来ない迅速な包囲行動である。ナナシ君に落ち度は無かった。
「ミニア、これって……?」
『え、え、え……?』
『自立思考型都市案内用小型機兵BI-F888-No.000008-Minia。対象の誘導任務達成を確認。通常業務に戻られたし』
キズナ君の問いかけに戸惑うミニア。
恐らく、彼女は何も知らされていなかったのだろう。指示されたとおりに研究区に案内をしていただけ。……ただし、それ自体が罠の一環だったのだ。
「どうする、キズナ。突破するか?」
「実現の可能性は?」
「正直、皆無にござるな。個々が相当な戦闘力を有し、連携も見事。全員が捕まることなく脱出と言うのは現実的ではないでござるよ」
「……なら、今は様子を見よう。「拘束」と言っていたし、今すぐ危害を加えてくる訳じゃないと思う。……どう思う、ティエラさん?」
「オレも異論は無いですよ。いざという時は大暴れしてやりましょう」
「それは良いニャ。その時は目にモノ見せてやるニャ」
そんな訳で。
機兵たちに拘束され、オレたちは連行される。
途中。オレとルネとリエスだけが離され、別の道を進まされた。
その時に抵抗を示そうとしたキズナ君たちを、「ルネとリエスの事は任せて下さい。いざという時は逃げ出すくらい出来ますから」などと言って宥めたりもした。
……正直、抵抗したって無駄だ。ここは機械都市。機兵はいくらでも湧くし、街のシステム全てが向こうの武器。
ついでに。微かに残るゲーム知識では、相手の狙いは危害を加える事では無かった筈。ならば、今は流れに身を任せるべきだろう。
そんなわけで。
キズナ君・パドロン君・ナナシ君・ピスカ・パハル・テトマの組と。
オレ・ルネ・リエスの組に一行は分断されたのだった。
そして――
◇◇◇
「我こそは、現在のミカニアの都市長。名をリミエント・コーナストーン」
キズナ君たちと離されて連行された場所には、白衣を着た赤髪金眼の女性が待っていた。
右の眼周辺は機械化しており、右腕を始めとした身体のあちこちも機械化している。
「……早速だが。ルネ君。ティエラ・アス君。そして、リエス・テーベ・ロワ・ラモワティエ君」
彼女は、丈の長い白衣をバサリと翻すと。
左手をオレたちの方へと伸ばして告げた。
「我は、キミたちが欲しい」
「は?」
……初対面の同性が、唐突に3人同時告白してきた件について。