ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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これは昨日の分です。遅れてすみません。


7話 脱獄

◆◆◆

 

 

 ルネとティエラさんとリエス。3人と分断された僕たちは、密室に閉じ込められた。

 ……一通りの生活に必要なものは揃っているし、広さも十分。快適な空間だ。

 ただ、出入り口はロックされてビクともしない。監禁よりは軟禁に近い状態かな。

 ちなみに、テトマはコアのクリスタルだけにされて一緒に居る。集積パーツは別の所に運ばれて行ってしまった。

 

「どうするよ、キズナ」

「ティエラさんは大丈夫だって言ってたけど、行動を起こすべきだと思う」

「ま、それには同意だ。このまま待ってても状況が悪くなっていく一方だぜ」

 

 パドロンの問いかけに答えれば、彼も同意してくれた。

 ティエラさんを信用してないわけじゃない。彼女の実力は本物だ。

 でも、それが行動を起こさない理由にはならない。

 

「然れども、打開策が無いのも事実にござろう」

 

 ナナシの言う通りだ。この分厚い扉を開錠しなければ、外に出る事も出来ない。

 

「そうなんだよなぁ……」

「次期領主ニャら、何か考えついてみせるニャ」

「そう言うお前も、次期族長として少しは頭を使え。蛮族」

「蛮族じゃ無いニャ! 今日という今日は許さんニャ!」

「へっ、格の違いを教えてやるぜ!」

 

 ……また始まってしまった。

 もはや恒例となっているパドロンとピスカの喧嘩。

 いつもは大事になる前にさり気無くティエラさんが止めてくれるのだけど、そのティエラさんが今は居ない。

 とりあえず、ナナシと協力して宥めたけど、いずれ限界が来そうだ。こんな所でもティエラさんに助けられていたんだな……。

 

「流石に暗号とか言って開いたりしないっスよね~。例えば……開けゴマ! とか」

 

 すると、好奇心全開で扉をずっと弄っていたパハルが言葉を発した。

 流石に、そんな雑な暗号で開いたりなんて……

 と思ったのだけど。

 

『pipipipipipipipi』

 

 瞬間、謎の機械音が部屋に響く。

 

「うそっ!? あれで開いたの!?」

「これは違うっスよ? 扉は相変わらず開いてないっス」

「え? じゃあ、一体……?」

『――pipipi――インストール完了』

 

 その言葉の発信源は、青いクリスタル。

 コアだけになったテトマからだった。

 

『データ解凍。展開。出力開始』

 

 そして。コアが一度強く輝くと、青い光が何かを形作っていく。

 赤い髪、白い肌、ヒラヒラフリフリの服、背中には小さな翅……そばかすをチャームポイントにニシシと明るく笑う姿。

 悪戯好きな妖精を連想させる、手のひらサイズの彼女は――

 

『私は都市公認ガイドのミニア☆ 皆様の都市滞在中の案内係を務めさせていただきます! 先ずはご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか? ――なんちって!』

 

 ――僕たちを案内してくれていたミニアだった。

 

 

◆◆◆

 

 

『正直、迷惑な話ですよ! 私のガイドは罠かもしれないなんて風評が出回っちゃうじゃないですか!』

「じゃあ、ミニアは命令に逆らって此処へ?」

『はい! 私の使命は都市内のご案内! お客様に快適安全にミカニア観光をしてもらうのが仕事です! 無事にお帰り頂くまで、私は皆さまのガイドですから!』

 

 どうやら、ミニアは「ガイド」としての矜持……彼女の言葉を借りるなら「使命」を優先して、僕たちを助けに来てくれたらしい。

 自らをデータ化して、テトマのコアに送信したとか何とか……難しい事は分からないけれど、彼女が危険を冒してまで助けに来てくれた事は確か。凄く凄く嬉しい事だ。

 

『なるほどなるほど、状況は把握しました! お三方が居る場所は予測可能です! 案内は任せて下さい!』

 

 僕たちの現状を説明すれば、フフンと胸を張ってミニアは言った。

 

「けどよ、この扉が開かねぇんじゃ、案内も何もねぇだろ」

『ふふーん! ミニアを舐めちゃ駄目ですよ! ……この都市にて語り継がれる伝説。進入禁止エリアを案内し続け、観光客を喜ばせ続けた存在。容姿はガイドで最も可愛いく、トーク力も他の追随を許さない! 人呼んで「クリミナル・ガイド」とは、何を隠そうミニアの事なのですから!!』

 

 そう言いながら、ミニアは扉のロックを容易く解除してしまった。

 凄い……けど、色々ダメな感じがする。ミニアって、実はかなりの問題児なのかもしれない。

 けど、今は純粋に助かる。ルネたちの所へ向かおう。

 

「途中で機械の兵士と遭遇した場合はどうするよ?」

「交戦して最短最速で突破する! 脱獄は直ぐに発覚するはずだしね!」

「へっ、そりゃあ良いぜ!」

「迅速さ重視で行くのでござるな、承知致した!」

 

 走りながらパドロンの問いに答える。

 どうせ発覚するなら、コソコソと時間をかける必要は無い。ミニアの案内に従って、最短最速で走り抜ける!

 待ってて! ルネ、ティエラさん、リエス!

 

 






感想、いつもありがとうございます。
全て目を通して、暖かな気持ちになる日々です。生き甲斐です。

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