「リエスとパハルは先に行って! エルフたちに伝えて!」
「しかし、それでは……!」
濁流の如く大森林に進軍する機械兵の大軍。
防衛機構ガン積みの超SF巨大都市……しかも都市長の居る中枢に今から突撃して説得or制圧とか普通に考えて無理なわけで。
今のオレたちに出来るのは、進行される大森林側に一刻も早く事態を伝える事。ついでに避難やら大森林の放棄やらを決断させられたら最高……なんだけど、それは頭カチカチ系エルフたちが絶対に無理な選択なので、精々が彼らに戦う用意をさせる程度。それが現実的な選択肢だろう。
「キズナの言う通りだぜ。ここは俺たちに任せて先に行けよ」
「一度は言ってみたかった台詞が言えて良かったニャ、パドロン」
「あぁ、そうだな……って違ぇよ! 普通に思った事を言っただけだ!」
「見事な誘導尋問。語るに落ちたでござるな、パドロン」
「ナナシまで! くそっ、味方が居ねぇ……!」
む。乗るしかない、このビッグウェーブに。
「オレは分かってますよ、パドロン君」
「ティエラさん……!」
「そういう言葉を言ってみたくなる時期があるんです。仕方ないですよね」
「だから違うって!」
よし。出番確保。
ありがとう、パドロン君。今日の夜ご飯は大盛にしてあげよう。
さて、と。稼げるときに稼いでおくのは基本。
流れに乗じて更に加点を重ねておこう。
「……キズナ君も行ってください」
「え?」
「リエスとパハルだけでは話も聞かずに追い返されてしまうでしょう。先程の二の舞になるだけですよ」
「それはそうかもしれないけど……僕が行って変わるとも思えないよ?」
「ふふ、そんなことはありませんよ」
これぞ、キズナ君(=プレイヤー)の理解者ムーブ!
貴方は凄いんですよ、って肯定してあげる。やり過ぎると人を駄目にするが、時々零すと凄く効果的に作用する……と思う。多分。
少なくとも、オレはそういう女の子が好き。
「ルネ、テトマ、ピスカ、パドロン君、ナナシ君、リエス、パハル、そしてオレ。今はミニアと……一応サーカスさんも。種族や立場、あらゆるモノを飛び越えてオレたちは共にいます。ピスカとパドロン君なんて敵同士でしたし、テトマも最初は敵対していましたよね? なのに、今は一緒に旅をして戦っているんです。これって凄い事で、それはキズナ君だから成し得た事なんですよ」
「僕、だから……?」
「全ては、キズナ君が誰に対しても真っ直ぐに向き合い続けた結果です。それは誇るべきことだとオレは思います。そんなキズナ君なら、きっとエルフたちの心も動かすことが出来る。そんな風に思うんです」
うん。良い感じのセリフになった。
ここら辺の会話の描写お願いしますね、運営さん。
すると、オレの言葉にパドロン君、ピスカ、ナナシ君が続いていく。
「確かに、ティエラさんの言う通りだぜ。行けよ、キズナ」
「キズナ。ここはアタシたちに任せて先に行くニャ!」
「てめっ、まだ弄るか……!」
「何のことニャ~? アタシは思ったことを言っただけニャよ~」
「この蛮族、絶対に確信犯だろうが……!」
「蛮族言うニャ!」
「……ま、このような感じにござる。元気だけは有り余ってる故、心配はござらんよ」
これは確定演出。
これだけ主要メンバーの会話が続いたのなら、間違いなく描写される。
「……むずかしい事は、よく、分からない。けど、キズナなら、出来ると思う」
ここでメインヒロインが続く。
「それに、私はSSS。最強」
「SSSって?」
「分からないけど、凄いらしい」
ムフーと胸を張るルネ。
うーん、この可愛さを意図せず出してるんだから凄い。オレの演技100%とは違う。
「ともかく。キズナ君たちは急いで大森林へ」
「うん、分かった。皆も無理だけはしないでね!」
「えぇ」
「うん」
「おう!」
「承知」
「ニャ!」
『了解』
そんな経緯で。
キズナ君・リエス・パハルは大森林へ向かって。
オレたちは機械兵と戦う事となった――
◇◇◇
――けれど。
『コマンドの妨害を確認。排除します』
うん、やっぱコレ無理。
「オレの剣って機械には無力なんですよね」
「そういうことは早く言っておくニャぁぁ!!」
ごめん。完全に戦力外だわ。