ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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13話 ソシャゲのオート戦闘は“ながら作業”に最適。

 

 

「マジっスか!? あのヒメちゃんっスか!? うわー、大きくなったっスね!」

「そのヒメちゃんって言うの止めろって何度言えば分かんだよ、パハル姉。女の子みたいで嫌なんだよ」

「ヒメちゃんはヒメちゃんっスからね~」

「抱き着くな撫でるな頬擦りするなーっ!!」

 

 ……おかしいな。直前までシリアス展開だった筈なんだけど。

 現在、パハルさんが幼いエルフ少年を抱きしめて撫で繰り回すほのぼの展開にシフトしてしまった。

 

「えっと……そろそろ紹介してもらって良い? 姉呼びってことは、弟さんだったりするのかな?」

「おっとっと。つい、夢中になっちゃったっス。めんごっス」

 

 促せば、ようやく少年は解放された。

 ただ、「酷い目にあった……」と呟く彼の顔は言葉に反して嬉しそうだった。なんなら、離れていくパハルさんの事を寂しげな視線で見つめていたし、反発する言動は照れ隠しの側面が大きいのだろう。

 

「ヒメちゃんは実の弟ではないっスよ。ウチの部族の隣の部族の子で、よく一緒に遊んでたっス。年は……あれ? いくつになったっスか?」

「今年で20。精霊祭も済ましたし、もう子供じゃない」

 

 エルフは人間と寿命が異なる。そう前にティエラさんが言っていた。

 確か、エルフの20歳は人間の10歳に相当するんだったかな。

 

「精霊祭?」

「エルフの半成人の儀っスよ。ほら、あっちに滅茶苦茶高い樹があるっスよね?」

 

 パハルさんが指さす方を見れば、そこには異様な高さの樹。

 ……樹、だよね? あれ?

 大森林の樹はどれも大きいけれど、その樹の高さに比べれば赤子のよう。

 高すぎて一番上が良く見えない。雲の高さまで届いていると言われても信じてしまう高さだった。

 

「あれは大森林の中央に聳える世界樹っス。ウチたちエルフの大森林世界の核であり中心っス。

 

 1つの世界の中心。……ということは、あの樹に何かあると大森林そのものに影響が出てしまうのだろうか?

 

「エルフは20歳になると、この世界に産まれ生きて来れたことを感謝し、世界樹に自分の魔力を捧げるっス」

「魔力を捧げる……ですか?」

「儀式を通して自分の魔力を世界樹に流すっスよ。そうすれば、20年経って自分の魔力が凝縮された果実が成るっス。40歳の成人の儀でその実を食べると、晴れて成人として認められるってな具合っスね。……いや~、それにしても」

 

 リエスの問いかけに答えるパハルは、どこか誇らしげだ。

 故郷伝統の風習を紹介できるのが嬉しいのかもしれない。

 僕に故郷の記憶は無い。けれど、楽しそうに語る彼女を見ていれば、こっちまで嬉しい気持ちになってくる。

 きっと、凄く楽しいお祭りなんだろうな。

 

「オネショを証拠隠滅しようとして大火事を起こしたヒメちゃんが立派に成長したっスね~」

「いきなり恥ずかしい過去を暴露するなあっ!!」

 

 ……と。再びヒメロス君は拘束されて撫で繰り回され始めてしまった。

 これは流石に彼に同情しちゃう。近所の綺麗なお姉さん……みたいな存在に自分の子供っぽくて恥ずかしい過去を暴露されるなんて。10歳の年頃じゃ、尚更ダメージが大きいはずだ。

 

「精霊祭。成人の儀、ですか……」

「どうしたの、リエス?」

「……あ。いえ、何でもありませんわ」

 

 ……どうしたんだろう?

 今のリエスさんは何だか少し悲しそうだった。それは、いつも毅然と振舞う彼女らしくない表情で……

 

「もしかして……」

「さぁ、皆さん! 今は旧交を温めている時ではありません! 樹兵に機兵。対処すべき事柄は山積みなのですから!」

「はっ! そうだったっス! 今は超絶ヤバヤバなんだったっス!」

 

 そうだ。今は何を置いても先に、機械都市の侵攻について考えなくちゃいけない。

 

「申し訳ありません、キズナさん。何か発言しようとしていませんでしたか?」

「ううん。独り言だし気にしないで。先ずは目先の問題を何とかしよう」

 

 気を引き締め直さなきゃ。

 今頃きっと、ティエラさんたちも必死に戦っているはずだから。

 

 

◇◇◇

 

 

『ふふん。どんなもんです。慣れてしまえばこの通りですよ』

 

 テトマが有する集積の力で大きな人型兵器——T²というらしい——を造り、機兵に対抗する。

 いつものことだが、ティエラさんの発想には驚かされてばかりだ。

 そして。最初こそ転んだり攻撃を空ぶったりしてばかりだったT²だが、直ぐに本領を発揮し始めた。

 ティエラさんの双剣を彷彿とさせる巨大な二対の剣。それが固い機兵を真っ二つにしたかと思えば、無数の弾丸を射出して広範囲の機兵を一掃してしまう。

 並み居る機兵をバッタバッタと斬り倒し吹き飛ばす様子は、まさしく一騎当千という言葉が相応しい。

 しかし……。

 

『訂正。現在ティエラは操縦していない。当機の判断で動いているのであり、ティエラは操縦席に座っているだけである』

『少しは空気を読んでくれませんか??』

『現在の大気成分は酸素が――』

『もしかして、わざとやってます??』

 

 どうやら現在の挙動はテトマによるもので、ティエラさんは関与してないらしい。

 ……上手く操縦できなくてテトマに奪われてしまったのだろう。

 

「なるほどニャ。道理で急に動きが変わったのニャ。……ま、さっきの発言も理解できるニャよ。あれだけ格好つけて登場した挙句に操縦できなかったのが恥ずかしかったのニャ」

 

 ティエラさんはしっかりした大人の女性だが、時々抜けている所があるのは仲間内では周知の事実。

 過酷な戦闘の最中だが、ついつい笑みが零れてしまった。

 

『なんですか皆さん! その生暖かい眼をやめてください! 夕飯つくりませんよ!』

 

 何っ!? それは不味い!

 

「今の発言はピスカだ! 俺は関係ないぜ、ティエラさん!」

「にゃ!? パドロンずるいニャ! 自分だって同じこと考えてたくせに! およそ領主に相応しくない器の小ささニャ!」

「何だと蛮族!」

「蛮族言うニャ!」

 

 コイツ……!

 流石に、今回ばかりは許しておけない。

 この蛮族に俺こそが次期領主に相応しい男なのだと認めさせなければ。

 

『多勢に無勢の戦場のど真ん中で喧嘩するとか~、ミニアには理解不能です~』

「あの二人はあれで良いでござるよ。喧嘩するほど仲が良いというやつにござる」

 

 ……は? ふざけたことを言うじゃねえか、ナナシの奴。

 

「断じて仲良くないぞ、ナナシ!」

「断じて仲良くないニャ、ナナシ!」

 

 否定の言葉を発したのだが、何故か一言一句違わずにピスカと被ってしまった。

 

「真似すんじゃねぇ、蛮族!」

「そっちこそ真似するニャ! あと蛮族じゃにゃいニャ!」

「ほら、息ピッタリにござろう?」

『ほんとですね~』

『苦言。当機だけに押し付けず、さっさと戦闘に戻れ』

『どうしてこうなった』

 

 最後のティエラさんの呟きが、この滅茶苦茶な状況を的確に言い表していた。

 

 

 

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