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さて、と。そろそろキズナ君は救世主ムーブをかましている頃だろうか。
オレより目立ちやがって許せん……というのは、まぁ3割冗談。
彼は主人公だし、主人公が活躍しないとゲームとしても面白くない。WF自体の人気が落ちてしまうと、妹を救うという目標の達成が困難となるとテラは言っていたしな。
そういう意味では、彼が活躍するのは悪い事じゃない。
彼の活躍以上のアピールをオレがすればいいだけ。
しかし……
正直な話。今のオレは影が薄くなっている。人型機動兵器T²という一大アピールポイントこそあったが、あれは結局のところテトマのポイントだ。テトマと票を食い合ってしまう。
ロボット作品好きはパイロットキャラクターが好きという人も少なくないが、ロボットやら戦艦が好きという人も多いだろう。プラモ作ったりしてる人だと、やっぱり後者の傾向が強くなるだろうか。
正直パイロットの性格は好みじゃないけど機体はドストライクみたいな事もままある。
まぁ、何が言いたいかというと。T²かっけぇと思ってくれても、美少女パイロットティエラちゃんに投票してくれる人ばかりではないという事なのだ
故に。
もっともっと目立たなければならないのだが……。この場所では目立つ機会はもう無さそうだ。
今この状況。ソシャゲでは2場面同時進行で描かれるだろう。でも、やっぱりメイン進行はプレイヤーがいる側で、その他はオマケ程度。
オレたちが必死になって戦っているのは軽く描写されて終わりなのだ。
それでも。そんな状況なのにキズナ君の方に行かなかったのには理由がある。
パワードスーツT²というアイディアが降りてきたからというのも理由の1つだが、
「かなり時間が経ちましたが……キズナ君たちは大丈夫でしょうか」
慎重に言葉を選びながら言葉を紡ぐ。
ここから、自分の思う展開へと話を運ばなければならない。
「……正直分からねえ。アイツの事は信頼してるが、あんだけ頑なだったエルフたちの説得はそうそう簡単に出来るもんじゃねぇしな」
「話し合いの席にさえつければ、キズナ殿なら成し遂げるにござろう。しかし、それ以前に武力で追い払われては為す術がない」
「にゃ!? それは不味いにゃ!」
パドロン君が不安を口にし、ナナシ君が的確な分析を行う。
そうすれば、主人公好き好きサブヒロインのピスカちゃんは不安になる訳で。
「アタシが加勢に行くニャ!」
「この色ボケ猫! 蛮族でも今は貴重な戦力だ! テメェに抜けられたらアタッカーが少なくなるだろうが!」
……と。ピスカは加勢に行こうとするがパドロン君に止められる。
今回は機兵を一体も通さないという防衛線。しかし、機兵は脅威対象を優先的に攻撃してくる。逆に言えば、脅威と認識されなければスルーして大森林へと向かってしまうのであり、実質的には攻撃メインの戦いだ。
故に。こちらは攻撃の手を緩めず、機兵が脅威と認識する攻撃を常に続けなければならないのである。
その意味で、完全無欠の戦力外が1人いたりするんだよね、実は。
「……戦況的に考えて、オレですよね。抜けるとしたら」
「ま、そうだな。ティエラさんの回復は長期戦を支えてくれるが、今のままじゃジリ貧だ。一番重要なのがエルフたちに避難を促す事ってんなら、ティエラさんはキズナの方に行くべきだろ」
パドロン君は知らない事だけど。
エルフの主戦力は樹兵とかいう樹木のエネミーだったはず。そういう点でも、オレは有利極まりない。輪廻転生を司る双剣『葬送』『回帰』は機械には全く効果を発揮しないが、植物とか生物系エネミーなら雑草の如く刈り取れる。
どう考えても、オレは森の方に行くべき戦力なのだ。
「そして少しでも早く目標を達成させる、ということですよね」
「あぁ。そうすりゃ、結果的に俺たちも離脱できる。頼むぜ、ティエラさん」
ただ、1つ問題があるとすれば。
「皆さんの回復を行うことが出来なくなりますが、大丈夫でしょうか?」
1つだけ問題があるとすれば。言葉にした通り、みんなの回復が出来なくなる事――
「いつもティエラさんが回復してくれてるおかげで、旅立つ時に用意してた薬草やらポーションやらは余りまくってるしな。この辺りで使っておかないと駄目になっちまうよ」
いやー本当、パドロン君は良いやつだな。苦しい戦況なのは明白で、彼なんかメインアタッカーとして獅子奮迅の働きをしている……当然、疲労だって凄まじいだろう。薬草なんかで癒せる程度じゃない。
彼はオレの不思議ヒーリングパゥワーでなければ長期戦闘は難しいと理解している。理解していながら、それでも全体の戦況を鑑みてオレを向かわせようとしているのだ。
「にゃあ……分かったニャ。任せるニャよ、ティエラ」
『鼓舞。パイロットティエラ。無事の帰還を』
「……まま。無理は、しないで」
「御武運を、ティエラ殿」
「えぇ、任されました。皆さんもご無事で。……あとルネ。オレはママじゃないですからね」
ただし、オレがここを離れるという事は。懸念対象が解き放たれてしまう事を意味している。
そう。ずっと気にしていた重要な問題、それは――
――『
◇◇◇
戦闘を離脱して大森林を目指しながら、『奴』について考える。
ただ、奴について語るならば必要な言葉はそう多くない。
一言でまとめるならば――
――実態の伴ってしまった中二病。この言葉に尽きる。
名をアクル。アクル・イルムフィス。
いわゆる人権キャラの1人であり、準レギュラー枠でメインストーリーにも出張りまくる奴。
奴こそは、オレなど足元にも及ばない最強ヒーラー。ハーフアニバーサリー実装は伊達じゃない。
その奴は今、
主人公と離れて戦う仲間たち。圧倒的な数の敵。徐々に追い詰められていく中で、颯爽と現れる救いの手……みたいなポジを狙ってやがるのだ。
世界の危機とか戦争とか使命とか、そんなのは奴には関係ない。
世界の危機を救う自分がカッコイイ。戦争止めちゃう自分がカッコイイ。使命背負ってる自分がカッコイイ。そういう奴だ。
奴にとっては中二病的カッコよさが全て。だからこそ、今この瞬間も一番目立てる登場タイミングを伺っている。
マジさー。カオスの危機とかどうでも良くて自分の出番が全てとか頭イカレてるよな。そういう空気読めないヤツとか無いわー。ちょっと男子~、文化祭の準備手伝ってよ~みたいな感じである。
……ん? ブーメラン? オレは良いんだよ、オレは。元の世界に帰る+妹を救うっていう崇高な目的があるんだからな。ただの目立ちたがりのメスガキと一緒にするな。
とにもかくにも。
同じヒーラー。同じ無属性。能力は奴の方が圧倒的に上。
そんな奴も……いや、奴だからこそ。ヒーラーのオレが居る状態では登場しない。そう考えてオレはキズナ君と別れて戦っていた。
だが。それでは活躍の場面が少なくなってしまう。
自分が目立てないから他者の活躍の場を奪ってしまおうなんて消極的姿勢では駄目だ。そんな姿勢では1位なんて取れない。
この場は奴に出番を譲ってでも、オレ個人の出番を増やさねばなるまい。
そういう決断を下して、今オレは大森林へと……正確には世界樹へと向かう。
世界樹に住まう同族に会うために。