ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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23話 “明日”を求め進む歩みを“今日”と名付ける

 

 痛ぇえええええええええ!!

 滅茶苦茶痛いんですけど!? あのクソジジイ、容赦なくやりやがって!

 どう考えても肉親に向けて放つ威力じゃねぇぞ!

 

 ……実のところ、シナリオ的にここで俺が介入する必要性は皆無だったんだけどね。

 本来であればリエスとパハルが魔術を防ぐし、一度戦闘を挟むものの、その後2人のプレゼンが始まるはずだった。

 外で生まれたエルフと、外に出たエルフの言葉が皆の心を動かす。……そういう展開だったのだから。

 まぁ、でも。そこら辺のシーンはオレが目立つためにカットさせてもらう。

 そう考えて、俺はウインターを引っ張りだしてきたのだ。

 冬イベで初登場するキャラクターであり、本来の2章シナリオでは引き籠ったまま出てこない“冬”の概念精霊。信仰の対象である精霊様を登場させることで戦闘を強制中断させることに成功したのである。

 中ボス戦相当を1つ潰してしまった形ではあるが……その辺りは運営が上手く調整するだろう。多分。知らんけど。

 

「え、えっと! だ、大丈夫ですか!」

「無事っスか!?」

「大丈夫!? ティエラさん!」

「貴女はまた無茶を……!」

「えぇ、大丈夫です。この程度、何の問題もありません」

 

 な訳ねぇだろ。滅茶苦茶痛いよ。察しろ。

 

「あ、あの……ありがとうございました!」

「気にしないでください。オレが勝手にやったことですし」

 

 そうだ。感謝しろ。感謝し崇めてオレの出番を増やせ。ポイント稼がせろ。

 

 ……等といった応酬が続いたものの、概ね計画通りだっただろう。

 ただ1つ誤算があったとすれば、それは……

 

 

◇◇◇

 

 

 …………。

 ……………………。

 

「仰るとおり、明日はどうなるか分かりません。(わたくし)たちは予言者では無いのですから当然です」

 

 ……? 気付けばリエスがエルフたちに向かって語っている。

 

「明日は今日より良くなるかもしれませんし、逆に悪くなるかもしれません。それは確かに恐ろしく、足が震えて立ちすくんでしまう事もあるでしょう」

 

 母より継いだ蒼の髪を木漏れ日に輝かせ。

 父より継いだ金の瞳に強い想念を込めて。

 

「ですが。誰かが共に進むのならば。友と、家族と、仲間と同じ方向へと進むのならば。それは恐ろしいだけのモノでは無くなります」

 

 彼女の声は決して大きくはない。しかし、その声は不思議と森の静寂を切り裂き、言の葉はエルフたちの長い耳へと届く。

 

「かけがえのない仲間たちと共に、より良い明日を求めて足掻いていく……その過程。歩みこそが、何より尊く輝かしい“今日”そのものなのだと(わたくし)は思うのです」

 

 深良い~~。

 判定レバー動かしちゃう。

 ……うーむ。しかし、一体どういう流れでこうなったんだっけ?

 

「エルフの長老方。偉大な先人たち。貴方方が平穏を維持しようと尽力した日々もまた、きっと同じだったはずです。違いますか?」

 

 気付けば、リエスのなんか良い話が始まっていたのだけれど。

 おかしいな。意識がハッキリとしない。

 何か考えようとすると、頭の中に靄がかかったようになって上手くいかない。

 それどころか、視界がグニャグニャ歪んで焦点が定まらないし、耳鳴りのようなモノもしている。

 ぼんやりとする意識の外側。リエスに続いてパハルやヒメロス少年、ウインターや長老たち、キズナ君など、皆がそれぞれの言葉を紡いでいくのを認識する。

 ただ、内容までは理解できない。確かに鼓膜は揺さぶられているのだけど、音の羅列を正しい意味として把握できないのだ。

 ……ふーむ。復活したと思ったが、まだアルニマ領域で受けたダメージが残っていたらしい。

 

 ここからは最終決戦クライマックスまで一直線。怒涛の展開で2章最大の見せ場だ。ポイント稼ぎの為には、間違っても離脱なんてしていられない。

 となれば。

 正直不安ではあるけれど、精霊や地球サマに交代するべきだろう。

 言葉選びを始めとしたロールプレイはともかく、戦闘だけなら特に不安材料はないわけだしな。

 そう考え、現在の“俺”の人格を沈めていく。

 例えるならば、全身の力を抜いて水に沈めるような感覚。何度もやってきた人格交代の方法。

 

 ……だが。いつまで経っても交代の感覚が訪れない。

 それどころか、どんどん暗い水の底に……何も見えない漆黒に沈みこんでいくような感覚に囚われる。

 何だ? 一体全体、何が起こっている?

 

 直後。

 

 プツリ、と。

 楽器の弦が切れるように、“オレ”の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

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