◇◇◇
気付けば、いつもの精神世界にいた。
そして、そこには“星”も“精霊”もちゃんと居る。
「おい、これは一体どういうことだ?」
声が苛立っているのが自分でも分かる。
しかし、それも当然だろう。此処にコイツ等が居るということは、“星”と“精霊”の人格に何かがあったわけでは無い。それなのに交代しようとしなかったという事を意味しているのだから。
「……
すると。ややあって“星”が静かに応えた。
何故か、その声音は重苦しい。
「限界? 何の?」
「貴様の……
「……は?」
どういうことだ?
仮に限界なのだとして、それが今の状況とどう結びつく?
「“精霊”も“星”も異なる故に失念していた。普通の知的生命体は、精神が限界に達すれば肉体にも支障を来すという単純な事実をな」
「貴方がこの世界に来ておおよそ5年。精霊の身体は睡眠を必要とせず、“人間”の意識・精神は常に稼働状態にありました。それだけでも“人間”にとっては異常事態なのに、そこにアルニマ領域での負荷が加わり、無視できぬダメージとなってしまったのです」
「確かに“ティエラ・アス”は概念精霊。その肉体は本来、寝食をせずに使命の為に稼働し続けられる。……が。その一方で、“ティエラ・アス”は“星”と“人間”と“精霊”の三位一体の存在でもあるのだ。故に、三分の一は“人間”。当然、こういう限界はいつ訪れても不思議ではなかったのだろうよ。……もっと早くに気付いていれば対策も立てられたのであろうが」
“星”と“精霊”が交互に説明をしてくれている。
だが、全く納得は出来ない。だって――
「“
「無理だ。“人間”は肉体と精神が密接に結びつく生物。故、今どちらか片方の人格に入れ替えて肉体を動かし等すれば……」
「間違いなく、貴方の精神に治癒不可能な傷を負わせてしまうでしょう」
傷? 傷だって?
「そんなもの関係ないだろうが! 優先すべきは帰還と宙音を救う事、それだけだ! 多少の傷くらいで立ち止まる理由には……!」
「冷静になれ。妹を救いたいという願望も、故郷に帰りたいという渇望も理解はしている。『
「今ここで無理をしては、この先の長い旅路で必ず大きな懸念となりますよ。長期間の行動不能にでもなれば、それこそ稼げるポイントを見逃すことになってしまいます」
……ぐっ。
くそっ。正論だ。“星”と“精霊”の言い分は、全くの正論だった。
けれど。それでも。
「……じゃあ、何か? 俺はこのまま2章が終わるのを黙ってスヤスヤ寝過ごせと? 稼げるポイントをみすみす見逃して、他のライバルたちに出番を譲れと?」
納得できずに、そう言い捨てた。
……そもそもが“星”や“精霊”のせいじゃない。“俺”の魂の脆弱性が招いた事態だ。
だから、こんな事を言われたって困るだけだろうに。
「そうならぬよう、今『
「お星サマと「
それでも“星”と“精霊”は、悪態の一つもつくことなく治療してくれている。
……あぁ、クソっ。なんて“俺”は格好悪い。
「…………そうか。すまん、八つ当たりした。ありがとう、2人とも」
「……ふん。分かったのなら、さっさと意識を完全に眠らせろ。治りが多少は早くなるかもしれん」
そのまま。地球サマの助言へと素直に従い、意識を手放して……
◇◇◇
「……ぅ。ん……。そうだ、オレは確か意識が途切れて……」
目を覚ます。
治療が終わったとのことで“星”と“精霊”に叩き起こされ、直ぐに意識を浮上させたのだが。
……一体あれから、どれだけの時間が経った?
シナリオはどこまで進んだんだ?
そう思い、周囲の状況を確認しようとして……
「なかなかなかなか、どうしてどうして? 存外に粘るじゃありませんか、ヴァルトさん! ワタシも昂ってきてしまいますね!」
「くそっ、コイツ……!」
「しかし、しかし? お荷物2つ抱えてでは、流石のアナタも限界のようですよ?」
「僕様を荷物扱いしないで欲しいな!」
「これはこれは! 概念を奪われた元精霊が言うじゃありませんか! ならばならば! アナタもワタシの手の上で舞い踊りなさい!」
「この女には指一本触れさせねぇよ……!」
「エルフ君に同意だね。貴様のような変態外道なら尚更お断りだ」
「エクセレント! その意気や良し! ですがですが! ワタシのサーカスを止められますかな? さぁさぁ、ショータイムの始まりですよ!」
なんか、ここ最近フラグの立ちかけた男キャラ共が眼前で壮絶な戦いを展開していた。
……本当に何があったの??