ソシャゲで人気投票1位にならないと帰れない!   作:夢泉

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1話 少なくとも会談ではない

 

 

 ――秋。

 スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋、芸術の秋エトセトラエトセトラ……うん、節操がない。もはや「○○の秋」とフレーズ化してしまえば、なんでも成立してしまうのではないか……そんなことさえ考えてしまう。秋とは即ち、混沌の季節である。

 そして。この世界「カオス」は幾多の世界が節操なく集まる――名前の通りの混沌とした世界だ。

 混沌とした世界の、混沌とした季節。何も起こらないはずがなく……。

 

「パドロン・ザルフェダール」

「なんだよ、リミエントさんじゃねぇか。アンタ、機械都市と大森林の復興で忙しいんじゃなかったのか」

 

 復興作業に必要な物資を運んでいた時だった。機械都市の長であり、半身が機械化した赤毛と白衣の女――リミエント・コーナストーンが話しかけてきたのは。

 大森林と機械都市――2つの世界の戦いの爪痕は深刻だった。なにせ最終的には怪獣大決戦みたいになっていたのだし。

 とはいえ、機械都市は分離した都市のパーツを集めていけば復興は難しくないとのことだった。大森林の方も時間こそかかるが、それでも巡る四季の中、木々は再び青々と茂ることだろう。「戦火に焼かれ、草木も生えないと言われた土地にも花は咲くんです。大自然の生命力は凄いんですからね」とはティエラさんの言葉だ。

 何はともあれ、この女は戦争を引き起こした張本人である。戦後処理やら復興作業で忙しく、こんなところに顔を出している暇など無いはずだった。

 

「ふ。その程度の認識か、ザルフェダールの次期領主」

「なに?」

「我らの科学力を侮るな。既に完璧な復興計画の元、全てを完全自動化して運用している」

 

 ……成程な。

 俺の生まれ育った城塞都市ザルフェダールは、カオス全土でも指折りの発展した街だ。しかし、こと科学力・技術力の領域では機械都市の足元にも及ばない。俺の知識や想像を軽く超えた「奇跡」を成し遂げるだけの力が、あの都市にはあるのだ。

 悔しい。ただ単純に、純粋に、悔しいと感じる。愛してやまぬ故郷が負けているという事実を、俺は正直に認めるしかない。この都市ほどの技術力があれば、ザルフェダールの利便性は更に高まり、経済は活性化し、救える命も増え、民の笑顔が広がるだろう。

 少し前の俺であれば、こんなことは絶対に考えられなかったはずだ。「優れた技術力の機械都市」を知識として知っていても、俺は盲目的にザルフェダールが最上だと信じて疑っていなかった。……なんという愚かさだろうか。

 だが、今は違う。今の俺はザルフェダールの次期領主として、都市長リミエントを尊敬している。彼女から学ぶべきことが多々あると、そう感じていた。

 手に持っていた物資を地面に置き、彼女と目を合わせ、しっかりと聞く姿勢を整えたのは、そのリスペクト故であった。

 …………まぁ、それは完全に無駄だったのだが。

 

「そもそもの話。ぶっちゃけ、体力もやし以下の我とか、現環境では完全に邪魔でしかないのでな。今は絶賛ニート状態だ」

「ただの厄介払いじゃねぇか!」

「仕方がないだろう。機械都市が誇る超高性能AIに『マジ邪魔www』とか言われたんだからな。……泣きたい」

「発展の犠牲に自らなっていくスタイル!」

 

 俺の尊敬を返せ。「大森林は必要な犠牲」だの「カオス全てを見捨てでも、機械都市だけは生き残る」だの覚悟ガンギマリだった女はどこへ行った。

 ……でも、そうか。

 やはり、安易で完璧な「正解」など存在しない、ということなのだろう。あれだけ優れて見えた機械都市でも、どこかには欠点がある。全てを機械任せにすれば便利である反面、生き甲斐を奪われる者もいるかもしれない。

 ヒトの社会に、この世界に、「正解」はない。だからこそ、統治とは難しいのだ。

 

「それで? だからって何の意味もなく来たわけじゃないんだろ?」

「…………鋭いな、パドロン・ザルフェダール」

「アンタは俺が一人でいる時に話しかけに来た。それが単なる偶然と考える程、俺は馬鹿ではないつもりだぜ」

 

 ここまでの軽快なやり取りは……実のところ、努めて意図的なものだった。

 なにせ、少し前まで俺たちは命がけで戦争をしていた間柄なのだ。

 もっとも、俺たちの仲間にも、そして機械都市の側にも死者はいない。死者数0。それが、あの戦争の()()()()()()()()()である。

 それでも。

 俺は知っている。俺たちは知っている。

 最後の最後。あの緑髪の少女が、とても大切な何かを喪ったことを。

 結果論ではあるが、戦争さえ無ければ彼女がソレを喪うことはなかった。それが動かせない事実であるが故に、リミエントと俺たちとの関係は決して和やかとは言えない。

 軽口のような応酬は、互いに「敵対の意思はない」と示し合うために必要だった。その辺り、俺は次期領主として、彼女は現都市長として、よくよく知っているのだ。

 

「機械都市長リミエント・コーナストーン殿。城塞都市ザルフェダール領主パラモア・クア・ザルフェダールが息子、パドロン・ザルフェダールが、父の名代として用件を聞こう。何用があって参られたか」

 

 リミエントは、戦争をしかけて敗北するという長として最低最悪の失態を犯しているし、現在はニート状態とのことだが……それでも、今なお「機械都市ミカニア」の頂点に立つ都市長である。

 対する俺は、実際のところは何者でもない。未だ何も成し遂げていない俺は、領主である父から否定された「次期領主候補の一人」に過ぎないのだ。

 それでも。

 それでも、先ほどリミエントは俺のことを「()()()()()()()()()()()()」と呼んでいた。機械都市のトップが、俺をそう呼んだ。

 ならば、今この瞬間この場は、非公式ではあるものの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だからこその、名乗り。ザルフェダールを背負って立つ者としての名乗り。

 

「……その、だな」

 

 その名乗りに対する、リミエントの返答は――。

 

「……………………ラーメンが、食べたい」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」

 

 

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