◇◇◇
「ティエラさん! 伏して頼む! この俺に究極のラーメンを伝授してくれ!!」
上記の申し出に対し、オレが抱いた感情を10文字以内で述べよ。
A.ふざけんな死ね。
◇◇◇
改めて確認するまでもないことだが。
料理はオレのアピールポイントだ。ヒロインポイントを着実に重ねていくための武器。戦闘力でも回復力でも低レア相応のパゥワーしかない現状において、最も信頼できるメインウェポンである。
常に安定した収穫が期待できる、金の成る木ならぬ、票の成る木に他ならない。
――そもそもの話。
今回のトチ狂ったとしか思えない「ラーメン」云々のコレは、十中八九「秋イベント」の前振りである。記憶には無いが、ほぼ間違いない。――何故なら、あの
1章も2章も夏イベも。これまでの全ては、本来の――「俺」がかつてプレイした時の――シナリオと同一だった。だが、今回は違う。明らかに
これが意味するところは、つまり。「ティエラ・アス」の行動が、ついにイベント1つを完全に塗り替えたということだ。
このイベントの成立は、これまでのオレの積み重ねの結果に他ならない。これまでの行動の全てが今日この日に繋がっている――のだが、その中でも特に、磨き続けた『メシウマ属性』が大きな要因となっていることは間違いない。だってラーメンだし。
コツコツコツコツ毎日3食+αを作り続けた結果が、5年間の成果が、今ここにある。
それをパドロン貴様、よりにもよって「料理を教えてくれ」だと!? それは正に、収穫直前の畑に踏み入る畑泥棒の如し蛮行! テメェは食レポだけしてオレの引き立て役になってりゃ良いんだよ!! 超高圧電流の電気柵で畑の肥やしにしてやろうか!!!
……というのが、嘘偽りない本音。パドロン君の申し出は、心の底から断りたい。
けれど。
ここで「嫌です」と応じる狭量なヒロインが人気投票で1位になれるだろうか? 「お前には無理だ」と突き放すのは、清楚系メインヒロイン・ティエラちゃんの言動として正しいか?
――否。圧倒的に否である。
ならば、未来の人気投票1位ヒロインが発するべき台詞は――
「ラーメンの道は麺のように長く、スープのコクのように奥深い。――オレの修行は厳しいですよ?」
――――これしかない。この台詞しか選べない。
お祭り騒ぎのイベントに合致するようにと、ほんのりギャグテイストを加えたのは、本当に些細な、せめてもの抵抗だった。
夏イベ終了後あたりにピスカが「料理を教えて欲しい」とか言ってきて殺意を覚えていたのだが、ここに来てパドロンもだと? ふざけんな。メシウマ属性はオレのモノだ。未来永劫オレだけのモノだ。素人はすっこんでろ。
考えろ、考えろ、考えろ。
どうすれば、この状況を打開できる?
オレのアイデンティティを死守しつつ、秋イベントで存分に目立つためには――――
◇◇◇
「……というわけで、第一回『チキチキ☆ラーメン王はオレだ!カオス杯』を始めます!」
――――フゥーッハハハ!! これぞ起死回生の一手!!
「審査員長」と書かれた席に座り、スーツスタイル+眼鏡+就活系ポニーテールでゲンドウポーズをするオレは、どっからどう見ても厳格な審査員。
そして――
「ティエラ先生の一番弟子として、この勝負で負けるわけにはいかないニャ!」
「忍法ラーメン、その神髄をお見せするでござる!」
「勝負事には全力を出すのが
……うん。「弟子として認めた覚えはない」とか、「忍法ラーメンって何? お前まさか浜松の出身?」とかツッコミどころは多々あるが、今日のオレは冷静沈着な審査員。公正公平な立場で、あえてスルーする。私的な発言は封印だ。
「ままの料理を、いちばん食べているのは、私。ままの味は、私のもの。よって優勝は、私」
「ママじゃないですけどね」
とにもかくにも。
こうして参加者を増やせば、各々の活躍シーンは相対的に少なくなる。
これでパドロンや、夏イベ後にちゃっかり「弟子枠(仮)」に収まりつつある色ボケ猫の出番を減らせる…………だけでなく! 審査員なので、イベントを通して常に登場し続けることが出来る!
撃って良いのは撃たれる覚悟のある奴だけ。
パドロンよ。オレのメシウマ属性を奪おうとするのならば、オレは貴様の食レポ属性を奪い去るだけだ!!
…………ところで、食レポってどうやるの??
〈1章3話『美少女精霊ティエラちゃんの異世界生活日記!』より「食レポ」抜粋〉
うまい。
――以上。