俺は四年生になった。しかしまだ春休み期間で正確にはまだ四年生ではない。そしていつものように俺とちーちゃんは家で一緒にいた。
「ふふふ...ひなと君はこれが弱いのね...いいことを知ったわ...」
「そんなの知らなくていいよ。...なんで止まるの?」
「さぁ?なんででしょうね?」
「お願いだから動かしてよ...怖いよ...」
「大丈夫そのうち慣れるわ...」
「...ホラー苦手なんだから慣れるとかないでしょ!お願いだからお化け引き寄せてないで逃げてよ!」
俺とちーちゃんは家でゲームをしていた。でも今日はいつものような協力playのあるゲームや対戦ゲームではなく、一人play用のホラーゲームであった。ちなみに俺は前にお姉ちゃんとホラー映画を見た時に癖でもできたのかちーちゃんに抱き着いていた。
「毎日ホラーゲームをしようかしら...?」
ちーちゃんは自分が優位に立ててるのがよかったのかものすごく意地の悪い顔をしている。
「意地悪、それをした瞬間俺は部屋にこもるぞ」
「じゃ、しょうがないわね...いい案だと思ったのだけれど...」
こんなしょうもない会話をしていながらも俺らは年中無休で村単位のいじめを受けている。最初はお母さんに被害が出ることはなかったが次第に家は無視されたり物を売ってくれないようになった。まぁお母さんは仕事場から一番近いスーパーで買い物をしてくるから村の八百屋とかは使わないんだけどね!ざまぁ。勝手に利益を落としてろ。失礼、私怨が出た。って俺は誰に謝ってるんだ?まぁいい。最近では給食に虫が入っていることが当たり前になり、画鋲は当たり前のように上履きの中や靴の中に入ってるし、毎日放課後に追いかけっこをしている。担任がわざと長い話をしてちーちゃんを迎えに行けなかったときは焦ったがちーちゃんはちーちゃんなりに逃げることができたので被害は出なかった。そして俺はなんか難しい問題を毎日当てられるようになった。難しいといっても小学生から見ればの話だが...
「そろそろ昼だね...作るからホラゲ以外のゲームで遊んでて」
「そんなにホラゲを私とやりたいの?」
「違うから。単純に料理に集中したいだけだから」
「そう...」
ちーちゃんは平日の夜と土日は俺の家でご飯を食べたり、過ごしたりしていて俺はちーちゃんの食べる料理を作っていた。ちーちゃんは俺の作る料理を食べると表情が柔らかくなるのでそれを見るのが俺の生きがいになっている。
そうして俺らの日常は過ぎていく。
季節は夏休みになった。
「うんやっぱり似合ってるわね!」
「えっと...その...ありがとうございます」
「いいのよ~私のおさがりだし。ほらひなとあなたも感想を言いなさい」
「え。え~っと、うん。似合ってるよ!」
そう言う俺の目の前には髪型をお団子にし、黒い和服?浴衣?を着たちーちゃんがいた。
「はぁ~...もっと語彙を鍛えなさい。まぁいいわ。着替えたことだしさっさと出発しましょう」
俺らは村外の祭りに行こうとしていた。ちなみに俺も着せられるかと思ったがそんなことはなく夏っぽい私服だった。
「お祭り...始めていくわ...」
「人が密集しているだけだよ」
「そんな悲しいことを言わない」
お母さんは運転しながら突っ込みをした。
そうしてしばらくすると村外の祭り会場に着いた。
「じゃ、私は車で待ってるから二人は楽しんできなさい。あ、これお小遣いよ。祭りに使いなさい」
「ありがと!」
「わたしにも...いいですか?」
「あたり前田のくらっかー!」
「???」
「お母さん死後はやめよ?」
「し、死後じゃないし(死語だし)...ほら!さっさと行った!」
お母さんは手をシッシと振った。
「やっぱり...人...多いわね」
「そうだね。はぐれないように手で持つないどく?」
「うん」
ちーちゃんは俺が手を出す前に手を握ってきた。
「何から行こうか?結構規模がでかい祭りだから屋台も一杯あるね」
「私は何でもいいけど...あれやってみたい」
そう言ってちーちゃんは一つの屋台を指差した。
「射的か...なんかちょっとちーちゃんらしいかも」
「それどういう意味?」
「?いや悪い意味で言ったわけじゃないよ。単純に祭りでしか食べられないような食べ物があるところじゃなくてゲームのところに行くのがらしいなって」
そうして俺らは射的の屋台の前に言った。
「お?やってくかい?」
いかにも何かの屋台をやっていそうなガタイのいいおじちゃんが話しかけてきた。
「うん。って言ってもこの子がだけど」
「妹ちゃんかい?」
「いや俺ら兄妹じゃないですよ」
「そうか...仲良くな」
「はい」
「そろそろやりたい...」
「ごめんな嬢ちゃん。ほらこれ銃と弾ね。五つしかないからしっかり狙いな!」
そうしてちーちゃんは射的をしたわけだが...
「一つも取れなかった...」
「...ほらこれやるから元気出せ」
「いいんですか?」
「こんなに屋台があると射的もいくつかあってだな。そっちの方が景品が豪華で客が流れちまってんだ。でそんな時に君らが来たからな。暇つぶしになったお礼だ」
「ありがとうございます」
「おう!祭り楽しめよ!」
そうして俺とちーちゃんは射的のおじちゃんから小さいクマのぬいぐるみのキーホルダーをそれぞれもらい歩き出した。
「いやーいい人だったね」
「そうね...久しぶりにひなと君の親以外で温かい大人を見た気がするわ...」
「...そうだね」
そして俺らは食べ物を食べたり、ヨーヨー釣りなどをして祭りを楽しんだ。そして残高がなくなってきたので帰ろうとしているところだ。
「来年もこんな風にお祭りに行きたいな...」
「ちーちゃんがポツリとその言葉をこぼした」
「そうだね...」
来年そんなのんきな状況になっていないと知っている俺はそれしかいうことができなかった。
その日の夜俺はいつものように電話をかけた。
「というわけでお祭りに行ってまいりました」
『ずるい!私も若葉ちゃんとひなとの間に入って手をつなぎたかった!あぁ若葉ちゃんの浴衣にひなとの浴衣...はぁ...どうして...どうして!若葉ちゃんは浴衣を着てくれないのでしょう⁉』
いつものようにお姉ちゃんは暴走していた。
「そんなことよりお姉ちゃん」
『そんなことで終わらしたことについて問いただしたいところですが何ですか?』
「お父さんに相談したことまだ教えてくれないの?」
『すっかり忘れていました』
「おい...」
『おいとはなんですか⁉まぁいいです...とりあえず本人の気持ちと証拠とか実態とかそういうのが聞きたいらしいです』
「なるほど...話がまとまったら言うって言っといて」
『わかりました。...ねぇひなとたまにはお姉ちゃんに会いたいとは...』
「思ってるけど状況がそれどころじゃないんだよ...」
『会いたいんですね!そうなんですね⁉』
「はいはいそうですよ」
『それが聞けただけでも今日は十分です!それじゃおやすみなさい』
「おやすみ」
そうして電話が切れた。
「実態と証拠か...今のでも十分な気もするけどもっとひどいのが欲しい気持ちもあるな...」
俺はそう呟きながらベットに向かった。
そうして時期は二回目のちーちゃんの誕生日になった。これが平和な時の最後の誕生会になるはずだった。
「まさか風邪をひいてしまうとはね...」
ちーちゃんは風邪をひいてしまっていた。本当は俺の家で面倒を見たかったが、ちーちゃんが動けないかつずっといないのはさすがにやばそうなのでちーちゃんの家に行きそこで看病をしていた。
「ごめんなさい...準備してくれていたはずなのに...」
「いやいいよー。お母さんの弁当に詰め込むから。とりあえず冷えピタとプリンとアクエリとゼリー冷蔵庫に入れといといたから好きな時に食べてね」
「ありがと...」
「気にしないで。おかゆ作りたいからキッチン借りるね」
「うん...」
俺は塩で味付けをしただけのシンプルなおかゆを作った。
「はい。食べれる?俺はお椀とレンゲを渡そうとした」
「食べさせて...」
「......いいよ」
恥ずかしかったので少し迷ったが弱っていたため息を吹きかけ冷ましてからちーちゃんの口に入れる。
「おいし?」
「よくわかんないわ...」
「そっか...ねぇ、お父さんは今何してるの?」
わかりきった質問を俺はした。
「...明らかに風邪っぽい私を見ても...何にもせずに仕事に行ったわ」
「...」
俺は拳を握りしめるだけで何にも言わなかった。
「明日もまた来るね」
しばらくちーちゃんを見てると外が真っ暗になってきたため俺はそう言って退出しようとした。
「行かないで...」
ちーちゃんは俺の服を掴んでか細い声で言ってきた。
「わかった。ちょっと電話借りるね」
俺はそう言って玄関ではなく電話のある方向に向かった。
『プルプルプル...』
よくある呼び出し音が三回ほどなってから人の声が聞こえた。
『もしもし上里です』
「あ、お母さん?ひなとだけど」
『え?ひなと?どうしたの?』
知らん電話番号から息子の声が聞こえてきたからかお母さんは驚いた声をしていた。
「今日ちーちゃんの家に泊まってくね」
『...わかったわ。いろいろ気を付けてね。ひなたには私から
「わかった。ありがとう。でも事情だけはきちんと説明してね」
『ちっ』
「お母さん?」
『しょうがないから事情も言っておいてあげるわ』
「ありがとう。それじゃそろそろちーちゃんのところに戻るね。バイバイ」
俺はそう言って電話を切ってちーちゃんのところに向かおうとした。しかし突然世界がスローになった。感覚で何が起きたのかを探ると眼鏡をかけたちょとひょろい男が酒瓶を持ってこっちに襲い掛かってこようとしていた。
なぜ急に襲ってくる?とかよりも俺はちーちゃんを放置したことにキレていたため、一瞬で男の間合いに入り思いっ切り腹パンしてやった。
「このガキィ...!」
男はうずくまりながらも顔だけをあげてこちらを睨んだ。
「お前が千景になんかいろいろしてるやつか...迷惑なんだよ!お前が村の嫌がらせに対抗するしその仕返しが返り討ちされるからその八つ当たりというか仕返しが全部俺に来るんだよ!死ねぇ!」
聞いててイラつくので俺は首に思いっきり手刀をして黙らせた。なんでこれで気絶するのかは知らん」
「大丈夫?あの人の声が聞こえたけど...」
ちーちゃんは心配そうに俺の顔を見た。そんなちーちゃんい俺はニコッと笑って見せた。
「気のせいだよ。きっと熱で幻聴が聞こえてるんだよ」
「そう...」
俺はちーちゃんの横にずっといた。このネタは父親に報告するのに使えるな、と思いながら...
そしてちーちゃんの風邪が治った後俺はお父さんに電話をかけてこの二年間で体験したことをすべて話した。
『なるほど大体わかった。あとは任しておけ少し時間はかかるかもしれないがな』
「できれば今年の夏まででお願い」
『無茶言うね...まぁ頑張ってみるよ』
「ありがと」
ひなとが父親に報告してから七月に入る前の間のどこか...
『ピンポーン』
男は家のインターフォンが鳴ったのを聞いて静かに立ち上がりモニターを見た。
「誰だこいつ」
いつもだったら村の連中が嫌がらせしに来るのだがその日は違った。スーツを着た男がそこには立っていた。男は出ることにした
「こんにちは」
目の前の男は家の主がドアを開けた瞬間にあいさつをした。
「誰だお前は」
「挨拶が遅れました。私は上里ひなとの父親です。いつもひなとがお世話になっております」
「上里...あのガキのところか...ふざけんなよ!俺はてめぇの息子に殴られたんだぞ!」
家の主は掴みかかる一歩手前のところまでキレた。
「はい存じております。ですので今日はその非礼を詫びるのと提案をしに来たのです」
「提案?」
「娘さんの親権を破棄してお金を手に入れませんか?」
そう言って男は手に持っていたアタッシュケースを開き、大量の札束を見せた。
「ただお金を渡すだけではありません。貴方は群れでの暮らしに困っていると聞きました。ですので引っ越し費用や土地代そして家を建てる費用も払いましょう。ただ一人暮らしになるはずなのでそれに見合った広さにさせてもらいますがね...」
「俺は千景の親権を手放すだけでいいのか?」
「はい!こちらのいくつかの書類にサインするだけでいいです」
「サインするだけで子供は育てないで済むし、最悪の環境から抜け出せるし、家も手に入る...最高じゃないか!ぜひサインさせてもらおう」
家の主は目の前の男の営業スマイルが一瞬崩れたのに気づかなかった。そして家の主はウキウキで複数の書類にサインをしてハンコを押した。
「あんなに子供に思い入れもない親がいるとはな...これでいいんだろひなと...」
男は帰りの車の運転中にそうこぼした。
そして男が家から帰ったとき
「その顔は成功したんですね」
少し不機嫌そうな娘が話しかけた。
「あぁ姉が増えるぞ」
「な⁉私のお姉ちゃんとしての立場が!」
「...」
目の前で娘が嘆いているのを見て少し笑いながら男はコーヒーを啜った。
そして娘をしばらく観察してから男は息子に電話をかけた。
「成功したぞ」
『え⁉ほんと⁉』
受話器から聞こえる息子の嬉しそうな声を聞き少しだけ男は気分がよくなった。
「あぁ。ただ野郎の家を建てたりとかにいろいろ時間がかかるからまだ終わりってわけでもないしすぐにうちの子になるっていうわけでもないがな。でも七月の末までには間に合うはずだ」
『ありがと』
「いや俺も実際会ってみてやって良かったと思ったから礼なんか言わんでもいい。いかん...そろそろひなたが変わりたそうに見てる視線に耐えられん変わるぞ」
そう言って男はさっきからずっとにらんでくる娘に受話器を渡した
「もしもし...」
『お姉ちゃん...ずいぶんテンション低いね』
「そういうひなとは嬉しそうですね」
『うん!ずいぶんいい方向に事が進んできている気がするからね!』
「そうですか...お姉ちゃんはもういらないと...」
『そういうわけじゃないと思うんだけど...お姉ちゃんにもいいところはあるし、ちーちゃんにも別のところでいいところがあるんだよ?人は十人十色だからさ、別に新しいお姉ちゃんができたからってお姉ちゃんが用済みってわけじゃないからね?』
「だったらいいです。その子が完全にうちの子になったらまあ戻ってくるんですよね?」
『そうだね...お母さんには少し悪いけど』
「まぁお母さんだってしばらくしたら持出ってきますよ」
『そうだよね』
そうしてしばらく姉弟は会話をした。
うーん法律的に不可能な気がする...まぁご都合主義です