語彙力と投稿スピードは香川へ行きました。
いいなー俺も行きたい
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俺たちは今、瀬戸大橋記念公園に立っている。
ちなみにお姉ちゃんもいる。俺たち勇者は戦う際の変身姿。お姉ちゃんは巫女服を着ている。それぞれ大きめのリュックを背負っており、その中には食料、キャンプ用具、着替え、医療品、水質地質調査のサンプル採取器具などが入っている。
「にしてもさ、四国の外に出るのって何年ぶりだろ」
珠子の口調と表情からは、遠足に出かける子供のように、楽しげな雰囲気がにじみ出ている。
「私、バーテックスが出てきた時に本州から移ってきたから、三年半ぶりくらいだよ!」
「あんまり遠出とかしなかったので、私は四国を出るの初めてです」
「私も...そうね...」
「タマは四年ぶりくらいだな〜。家族で広島言った時以来だ」
みんなでワイワイと話している。
これから俺たちは、結界の外へ調査遠征に出かけることになっていた。
四国から出発し、諏訪や人類生存の可能性が見出された北方を目指す。ヘリや船を使った移送は、バーテックスを引き寄せるかもしれないので、移動手段は徒歩のみだ。
バイクか、電車出してもいいかな?
しかし勇者たちは問題ないのだ。飛べばいいし。だが、お姉ちゃんの身体能力は普通の人と変わらない。というかあんま運動してなかった気がするから普通の人より悪いかもしれん...そういうこともあって、ほかの勇者たちが彼女を背負って移動することになっていた。
まぁ家族だし俺がやろうかなぁ...
「すみません、皆さん」
申し訳なさそうに言うひなたに、友奈は明るく答える。
「気にすることないよ、いつもヒナちゃんには、私たちができない巫女のお仕事やって貰ってるんだから!」
「ありがとうございます、友奈さん」
友奈の言葉に、ひなたは微笑む。
「じゃ俺がお姉ちゃん背負うよ」「では、私がひなたを背負おう」
俺と若葉の声が重なる。
「いやいや若葉。家族の面倒ごとは家族が引き受けると相場が決まってるんだ。ということで任してくれ」
「いやいやひなとよ。いくら家族とはいえ異性ではないか。ここは同性である私に任してくれ」
「ふっ...若葉。俺は今一応女だぞ?それに一緒に風呂まで入ったんだから今更異性もくそもないだろ?」
「くっ...だ、だがひなたは人並みに重いはずだ。ひなたより身長の低いお前の場合潰れてしまうだろう?」
「確かにお姉ちゃんが人並みに重いことは認めるが、そこは勇者のパワーがあるから問題ないだろう?」
そうやって言い合っていると。
「さっきから聞いてみれば...私のことを重い、重いと好き放題言ってくれますね〜?若葉ちゃんにひなと?」
お姉ちゃんがそれはそれはドスの効いた声でこちらに声をかけてきた。
「違うんだ!ひなたこれは私がひなたを背負うためにひなとでは無理だと言いたくてだな...」
「俺は若葉の言ったことを肯定しただけだ...」
「ちょっ、ひなと!?」
「どっちもどっちです!全く...でもまぁせっかくですし、若葉ちゃんに背負って貰うとしましょう...」
それを聞いた若葉は嬉しそうにこっちを見ながら、
「という訳で私が背負わせてもらうぞ」
と言ってきた。
「へいへい、俺はお姉ちゃんと若葉の荷物でも持つかねぇ」
俺がお姉ちゃんと若葉の荷物を持つと
若葉がスッとひなたを抱き抱えた。
「では、行くか」
「「「「「...」」」」」
ごく自然にひなたをお姫様抱っこした若葉に、他の勇者たちは一瞬呆気に取られる。
「お姫様抱っこ...」
「なんか、見てるこっちが照れるっ!」
杏と球子は頬を赤くした。
「...?何かおかしいか?」
周りの反応の意味がわからなかったのか、若葉は怪訝そうな顔を浮かべた。
「いや、別に街中じゃないし、おかしくはないと思うぞ。俺もそうしようと思ったし」
「まぁ...あなたがおかしいと思わないなら、いいんじゃないかしら...ひなと君は軽々しくお姫様抱っこしちゃだめよ?」
「お姫様と王子様みたいだね!」
やや呆れた表情のちーちゃんと、感心したように目を輝かせる友奈。うーん...お姉ちゃんに女性を運ぶときはおんぶかお姫様抱っこにしなさいって言われたから問題はないと思うんだけどな...
お姉ちゃんは照れたような笑みを浮かべ、若葉はやはりきょんとしていた。
「よーし!それじゃあ勇者、しゅっぱ~つ!」
友奈の掛け声を合図に、俺たちは記念公園から跳躍した。
瀬戸大橋を通って本州へと向かう。
移動しながら俺は暇だったのでバーテックス総攻撃の日から今まで起こったことを思い出してみる
二月に起こった大侵攻の後、巫女の信託により、四国の平穏はしばし保たれると告げられた。前回の総攻撃で、バーテックス側も戦力の大半を失ってしまったのだろうというのが、大社の推測らしい。
敵の攻撃が沈静化している今なら、勇者たちが四国を離れることも可能となる。そこで大社は、四国外の地域を調査できないかと検討を始めた。北方の大地と南西の諸島で人類生存の可能性が見つかったことも、理由としては大きい。
調査任務を行うにあたり、瀬戸内海にある結界外の小島で実験が行われ、いくつかの事実が判明した。
まず第一に、勇者の力は結界外でも使える。
第二に結界外の大気は十分に清浄である。結界外はバーテックスが持つ毒素やウイルスにより汚染されている、といううわさが一部で流れていたが、それは完全に誤りだったようだ。むしろバーテックス出現前よりも大気の状態は良くなていたらしい。
第三に、神の力を織り交ぜた通信により、四国から離れていても四国内と連絡を取り合うことは可能である。これはかつて、四国と諏訪の間で行っていた通信技術の応用らしい。
これらの実験結果によって、勇者たちが結界外へ出て調査を行うことは可能である、と大社は判断した。
また、もしもの時のために、神樹から信託を受け取れる存在として、巫女のお姉ちゃんも同行することが決まる。
俺たちの任務は、四国外の環境状態の調査、および人が生き残っている地域がないかを調べることだ。生存者を探す地域は、諏訪、北方の大地、そして各地の都市。また、各地で水質や地質調査のためのサンプルも採取せねばならず、やることは多い。
俺たちは大橋を渡り、瀬戸内海を越えていく。
任務とはいえ、バーテックスの活動が沈静化していることと、前回の戦いの勝利もあって、みんなの気分は明るい。
「タマちゃんのアウトドアグッズがあって良かったね!」
「ふふん、火の起こし方、米の炊き方、なんでも任せタマえ!」
友奈の言葉に、球子が得意げに答える。
遠征中、野営地を確保したり、食事を用意するのも、彼女たちだけで行わなければならない。球子はアウトドアが趣味のため、野外生活に関する知識が豊富だ。遠征に必要な道具は、すべて球子が用意してくれた。
「まさか、タマっち先輩のアウトドア趣味が役に立つ日が来るなんて...」
「人生は...思いもよらないものね...」
「人生について考えるほどかっ!タマをバカにしているだろーっ!」
にぎやかに話しながら進む球子、杏、友奈、ちーちゃん。
一方、若葉は抱えているお姉ちゃんを気づかう。
「怖くないか、ひなた?」
勇者が跳躍して移動する速度は、車以上だ。俺たちはすでに慣れてしまっているが、お姉ちゃんにとってはずっとジェットコースターに乗っている気分だろう。
しかし、お姉ちゃんは若葉の問いに首を振る。
「いいえ。だって若葉ちゃんが私を落としたりするはずがありませんから。そうでしょう?」
「...当たり前だ」
若葉は力強く答えた。
「でもひなとはからかって落とすかもしれませんねー」
「そんなわけないだろ」
なんかお姉ちゃんが意味不明なことを言ってきたのでぶっきらぼうに答える。
「ちょっとすねちゃいましたか...」
お姉ちゃんがなんか言った気がするが、風に流されたせいかよく聞こえなかった。
瀬戸大橋終端に来るとみんなの明るい気分が消えた。
倉敷市臨海部の工業地帯が、もはや原形をとどめていないほど破壊されているのだ。
化学物質による大規模な爆発が起こったのか、建造物の多くは内側から吹っ飛ばされている。形を残している建物も、熱によって変形した跡が見られた。
俺体は無残な姿をさらす工場群の中に降り立った。
「ひどいな、これ...」
球子が周囲を見渡しながら、険しい表情を浮かべた。
人間が築き上げてきたものなど、バーテックスにとってはすべて蹂躙の対象でしかなかったのだろうか。
お姉ちゃんは若葉の腕から降り、デジカメで工業地帯の様子を撮影する。
「念のために...生き残りがいないか周辺を探そう」
重い口調で若葉が言った。
それから俺たちは歩き回ったり、跳躍しながら人の気配を探す。
知っていたけど結局、人を見つけることはできなかった。
バーテックスの姿を見つけることもできなかったから、大社の予想も当たっているのかもしれない。
みんな重い表情を浮かべていた。だが、足を止めている時間はない。
「行こう。先はまだ長い」
若葉は再びお姉ちゃんを抱きかかえる。
その後俺たちは予定のルート通り、東方へ移動を始めた。
岡山県を通り過ぎて兵庫県に入り、神戸にたどり着いた。
俺たちはかろうじて形を残しているビルの屋上に降り立った。そこから神戸の全景を見てみたが、何もかもが破壊されていた。これが元都会か...
「今度は二手に分かれて調査するか」
若葉が提案する。
「「「「「「「グーとパーで別れましょ!」ほい!」」」」」」
今の子ってほいまでいうのか...別れましょ!で終わるのかと思った...
結果は、若葉、お姉ちゃん、ちーちゃん、のグループと俺、友奈、球子、杏というグループ分けになった。三時間後に神戸港のフェリー乗り場近くに集合することを決め、それぞれ別方向へ向かった。
俺たちは廃墟と化した街並みを歩きながら生存者の気配を探す。
「やっぱり生き残ってる人はいませんね...」
と杏が言うと
「わかんないよ!まだ奇跡的に生き残ってる人がいるかもしれないよ!」
と友奈が励ますように言う。
「奇跡的にって言ってる時点でほぼいないようなもんだぞ...」
「そーゆ―ことは言わないもんだぞ」
「...?あれバーテックスですね。あ、こっちに来ます!」
杏が叫び会話が一時的に終了する。
三時間後、俺たち三人は、待ち合わせのフェリー乗り場にやってきた。
若葉たちは先についていたらしく俺たちに向かって軽く手を振っていた。
「私たちのほうでは、生存者は見つけられませんでした。若葉さん達のほうは、どうでした?」
重い口調で尋ねる杏に、若葉は首を横に振る。
「こちらも同じだ。それに、今でもバーテックスがうろついているとなると、このあたりに人が残っているとは考えにくいな...」
若葉は枯れ果てた神戸を見つめた。
他の皆も、同じように街並みを見つめながら、押し黙る。
やがて、沈黙を破ったのは球子だった。暗い雰囲気を消そうとするように、明るい口調で言う。
「日も暮れてきたし、そろそろ野宿する場所を決めないとなっ!」
すると杏も同じように明るく振る舞う。
「そうですね!お腹も空きましたし!」
若葉は周囲を見渡しながら言う。
「無事に残っている建物があればいいが...」
「うーん、どれもボロボロで、今にも崩れそう...」
友奈も同じように周りを見るが、ちょうどいい建物は見当たらない。
そこで声を上げたのは球子だった。
「いや待ちタマえっ!野営するなら、きれいな水があるところでないとだめだ。タマたち、そんなにたくさん水を持ってきているわけじゃないからさ」
球子が腕を組んで、思案しながら言う。
「あと、焚火をするために木の枝を集めやすいところがいい。ご飯を作るにも火が必要だしなっ!となると...」
「キャンプだなっ!」
球子が先頭になり、俺たちは六甲山近くのキャンプ場跡にやって来ていた。既に日は落ち、あたりは暗くなっている。
「というか、タマっち先輩がキャンプしたかっただけなのでは...?」
と杏がジト目を向けた。
「そ、そんなことはないぞっ!ほら、ここだったら水も確保しやすいしっ!焚火のための木枝だってある!」
キャンプ場の近くには川が流れている。山中だから木枝も簡単に集まるだろう。
俺たちはキャンプ場を探索した。使える道具が残っていないか確認するためだ。探しているとお姉ちゃんが倉庫の中でテントを発見した。
「やった!これでもッとキャンプ感が強まるぞっ!」
球子は目を輝かせながら言う。
「やっぱり、球子さんはキャンプがしたかっただけなのでは...」
「そそそそんなことはないぞ、ひなたっ!ほら、雰囲気って重要だろっ!」
「まぁまぁお姉ちゃん、その辺にしたいてあげなよ。球子がキャンプしたかったとかそういうのどーでもいいでしょ。結局アウトドアは球子に任したほうが安パイですし。それに久々のキャンプだからワクワクしてきた」
「そーだろーそーだろー」
俺たちは協力してテントを張り、木枝を集めて焚火を起こした。
夕飯は鍋を使ってお湯を沸かし、四国から持ってきたうどんを茹でる。こんな夜中にうどんかよ()
「タマ、大活躍だなっ!」
鍋を焚火にかけながら、球子が嬉しそうに言う。
テントを張るにしても、焚火するにしても、簡単にように見えて、ちょっとした知識がないと難しい。球子のアドバイスがなければ、どちらもできなかっただろう。
「タマっち先輩が、本当に先輩っぽく見えます...」
「それな」
「それはど~いう意味だ、杏、ひなと?普段から先輩っぽいだろっ!」
「いたた!頭をグリグリしないでください!」
「いやなんで俺まで⁉俺の場合同学年から見た感想だから普通に誉め言葉なんだが⁉」
うどんをおいしく茹でるためには水が重要らしい...
焚火を囲み、茹で上がったうどんを七人で食べる。
「うん、おいしい!みんなで食べるうどんは、やっぱり格別だね!」
一口食べて、明るく友奈が言う。
「そうだな。今日はずいぶんひどい光景ばかり見せられたが...こうしてみんなと一緒にうどんを食べていると、心が安らぐ」
「若葉ちゃん、しんみりし過ぎです」
「そうですよ」
お姉ちゃんと杏が苦笑しながらも、優しく言う。
「まだ一日目だっ!明日は大阪に行って、そのあとはもっと遠くまで行くんだから、きっと無事な地域だってあるっ!」
球子の言葉に若葉はうなずく。
ちーちゃんはうどんを食べながら、無言で夜空を見上げていた。俺は無心でうどんを食べていた。
夕飯を食べると、みんな(俺以外)で川に入って汗を流すことにした。
「覗くなよひなと」
と球子が言ってきたので
「お前のその貧相な体見るなら自分の体見るわ」
と煽っといた。
「んだとぉ?」
そう言って球子は俺を押し倒してきた。俺はよそ見をしながら会話をしていたため、球子を避けることができなかった。そして俺はそのまま押し倒される。
「タマより胸がでかいからって調子に乗りやがって...その胸揉ませてもらうぞ!前はけられたが、今は手足がふさがれている!防げるものなら防いでみタマえ」
「え、ちょまっ!ひっ!やっ!ほんとに待って!変な声出るしなんかおかしな気持ちになるから!」
そういうが球子はやめようとしてこない。ほんとにおかしくなりそうになった時に球子が胸から手を離した。そして球子が俺からどいたので体が軽くなった。
起き上がって周りを見てみるとお姉ちゃんが球子を殴ったのか、見事な正拳突き姿勢で止まっていた。
「何するんだひなた⁉」
球子が殴られたであろう頬を抑えながら叫んだ。
「何をするんだ、じゃありません!何人の弟押し倒して変な気持ちにしているんですか!次やったらもっと強めになりますよ!」
「いやひなたさん...その次は私にやらせてくれないかしら...?」
「いいですよ。むしろ大歓迎です。私はそこまで力が強くありませんからね」
「待って!勇者の力で殴られたら死んじゃう!」
「待ってと言って待たなかった人は誰かしら...?」
「ひぃっ!」
球子は悲鳴を上げ震えた。そういう俺はというと、無意識で女の子が胸触られた姿勢(胸を抱える)をしていた。
「ひなともひなとですよ。いくら興味がないからって人の体型をいじっちゃだめですよ」
「はいすいませんでした」
そう言ってその姿勢のまま頭を下げる。
「わかればよろしい。では私たちは入ってきますね。見張りよろしくお願いします」
そう言ってお姉ちゃんたちは川へ向かっていった。
俺はみんなが川に入ったのを音で判断し実験を始める。
「闇よりいでて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」
俺はバーテックスだけを通さない帳を下した。初めてだったがチートってスゲー。なんかできた。
水浴びを終えた後は、テントの中で睡眠をとる。明日も朝から長距離を移動するのだから、休憩は十分に取っておかなければならない。
いくら帳を張ったとはいえなんかの間違いがあって入ってくる可能性があるので、交代で二人は起きて、見張りをすることになった。ちなみに説明がめんどいのでみんなに帳の説明はしてないです。
結局バーテックスは来なかったで6時くらいに俺らは大阪に向かった。
「そういえば、大阪の梅田駅あたりには、すっぞい広い地下街があるみたいですよ。そこだったら雨風の心配もないし、シェルターみたいにして避難している人がいるかもしれません」
杏の言葉に若葉は頷いた。
「そうだな...地下ならば、出入り口を塞いだらバーテックスも侵入できないだろう。地上より安全かもしれない。そこに行ってみるか」
大阪駅と梅田駅は地下街でつながっている。そしてこの二つの駅には数多くの鉄道が通っており、そのせいで地下街は複雑な構造を持っていた。
阪急神戸線の線路を辿り、梅田駅に到着した。相変わらずのひどい光景だった。
「あああぁぁああ⁉」
突然、杏が絶叫を上げた。
バーテックスの出現かと、全員が身構えた。
「どうしたんだ、あんず?」
球子が杏に声をかけると、彼女は青ざめたまま、高架下の一角を指差した。かつては数多くの店が並んでいたのだろうが、今はすべて壊されている。
「こ...このあたりはですね、確か大阪で有名な古書店街だったんです!ひどいです!ものすごく貴重な本が...世界に一冊しかない本だってあるかもしれないのに!」
体を震わせながら、涙目でいう杏。
「なんだよ、びっくりした。本くらい別にいいじゃんか」
「タマっち先輩はわかっていません!本は人類の結晶なんですよ!むうぅ、バーテックス、許すまじ...!」
憤慨する杏を、友奈が
「大丈夫だよ、きっと貴重な本は四国に運び込まれてるよ!」
となだめていた。珍しい光景だな~と思った。
駅周辺もやはり無残に破壊されていたが、地下道へ入る階段は残っていた。
階段には瓦礫の他に、どこかの店で使われていたであろう棚やテーブルなどが錯乱している。おそらくバリケードが作られていた跡だ。しかしそのバリケードも、破壊されてしまったのだろう。
「...」
その光景にみんなは表情を曇らせていた。みんなバリケードを破壊したのはバーテックスだろうかとか考えているんだろうなと思った。前世の記憶を掘り起こしてみると確か狂人が破壊したんだっけ...
そんなことを思っていると、若葉が階段に向かって足を踏み出していた。
地下は冷たい空気と静寂が支配していた。既に電気も通っていないため、出入り口から少し奥へ進むと、もう暗闇だ。持ってきた懐中電灯であたりを照らす。
地下街は地下に比べれば元の状態を保っているが、階段やエレベーターなどが壊れていたり、床や壁には亀裂が走っていたりと、やはりバーテックスの襲撃を受けた跡が見えた。
出入り口近くに設置されていた地下街の地図をスマホで撮影し、その地図を見ながら歩いていく。
「誰かいないかー---ッ⁉」
通路を歩きながら、時々若葉はそうやって呼びかけるが、エコー以外に返ってくるものはない。
「人がいた痕跡はあるのですけどね...」
お姉ちゃんが地下街に設置されたごみ箱を見ながらつぶやく。確かにゴミ箱の中には、空になった缶詰やペットボトルや弁当の箱などが詰み込まれており、入りきれない分は周辺の床に散らばっていてかつてはここで食事が行われていて、人がいたのは明らかだった。
「歩いていると、各所で防火用シャッターが降りていたり、バリケードが作られていたりする。侵入してきたバーテックスに、必死で抵抗したのだろう。しかしシャッターもバリケードも、今は破壊されていた。
半時間ほど地下街を歩いていると円形の広場のような場所に出た。
「な...なんだよ、これ⁉」
球子が驚いた声を上げる。
広場の中央には、噴水のような設備があるが、当然ながら水はもう噴き出していない。
そしてその周辺に白骨が大量に積み上げていた。
杏が悲鳴を上げた。
お姉ちゃんは驚いて力が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
俺は骨があるのは知っていたが、実際に見るとかなりショッキングな光景だったので、思考放棄を起こしていた。
「...ひどい...地上は、ボロボロになって、地下も、こんな...」
ちーちゃんは呻くような声でつぶやいた。
若葉は噴水へと近づいた。放置された大量の骨は雪みたいに見えた。
いったい何人分の骨なのだろうか...
数十だろうか?それとも百以上?思考放棄から回復した俺はそんなことを思った。
そして若葉は遂に床に落ちている一冊のノートに気づいてしまった。
内容を知っている俺は見たくないなと思った。
先にノートを見ていた若葉の手が震えていた。
はい呪術廻旋(漢字あってる?)要素が出てきましたが、もう出ないと思います(かも、多分、きっと)
原作の上巻が終わったので、ちょっと休憩します(最短一週間、最大一か月?)