上里ひなとはts勇者である   作:エフさん

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今回珍しく長いです。

そのほかはいつも通りです(多分?)

お気に入り登録ありがとうございます


第19話 自己紹介

「はぁ、ふぅ...。どう?タマちゃん達、そろそろ体力戻ってきた?」

 

「おう!タマはばっちりだ!」

 

「私は、まだ少し...」

 

「そっか!まぁでもここからさらに頑張れば戻ってくるよ!」

 

 俺たちは丸亀城の敷地内のランニングを終え、本丸城郭で一息ついていた。入院期間がものすごく長かった球子たちの体力はやはり落ちていたが、この一か月で大体は戻せたらしい。

 

「ほら、みんなひなたが作った特製スポーツドリンクだ。熱中症にならないようにな」

 

 そう言って若葉はみんなにスポドリが入ったペットボトルを配った。今は夏真っ盛り。俺らは、少しランニングしただけで汗だくになり、体操服も素肌にぴいたり張り付いてしまっている。そのため目のやり場に困り、俺はずっと空を見ていた。雲すこ。周囲の木々からは、騒がしいほどのセミの声が響いている。俺は空にある入道雲を見ながら、お姉ちゃん特製のスポドリを飲んだ。甘みと軽い酸味が口の中に広がった。

 

「そういえば皆さん聞きました?」

 

「...なにを...?」

 

「結界強化の話です」

 

「ああ...今大社が進めている計画か」

 

 七月下旬、間もなくバーテックスの襲来が起こるという神託が下った。だが、いまだに壁の外で融合を続ける超巨大バーテックスへの対処法は見つかっていない。規格外の化け物はこちらの戦力を見ながら、緩やかに成長を続けている。

 また、壁の外には、その超巨大バーテックス以外にも、大型バーテックスの存在が確認させられていた。以前のサソリ型と同サイズ級のものが数体、出現しているのだ。最後、玉藻の前の力を初めて使ったあの日から、バーテックスは四国内へ侵攻していない。それは壁の外で、大型バーテックスたちの成長を待ち続けているためなのだろう。神樹の神託によれば、敵は間もなく完全に戦闘準備を終え、四国に一斉侵攻を仕掛けてくるという。大社はそれら大型バーテックスへの対抗手段を、いまだ見いだせていない。俺がやつを叩く前に吹っ飛ばされたから、大社はそこまで俺を信頼していないのだ。何ならこの間脅したしね。

 で、次の総攻撃さえ乗り切れば、敵の進行を食い止める対策を二つ用意できると、大社は言った。ほんとかなぁ~。

 その対策の一つが、以前から計画されていた結界の強化である。なんでも勇者や巫女の血をかき集め、神樹にささげることみよって、神樹が強化されるらしい。

 俺は飲み終わったペットボトルのキャップを締め自分の隣に置きながら言う。

 

「今度は視界の遮蔽だけじゃなくて、しっかり結界を強化するらしいね...」

 

「ええ...たしか今もよくわからない儀式をして準備してるらしいわね」

 

「そうですね...あと数か月で完成するそうです...」

 

「そういえば...『もう一つの対策』って何なんだろうな...」

 

 球子が不思議そうに言った。大社が行う二つの対策のうち『もう一つ』については、お姉ちゃんを含む全員が知らされていない。

 

「...とにかく、次の戦いに勝てば、対策が全部そろうんだよね!そしたら、バーテックスはもう来なくなる。平和になる!」

 

 友奈が明るい声でそう言った。

 

「そうだな」

 

 若葉がそう言うのを聞きながら、俺は変わらず遠くの空にある、白く大きな入道雲を見ていた。

 

 

 

 

 俺らは変わらず『日常』を過ごす。次の戦いに備えて、格闘と基礎体力の訓練を受け、十分な休養と栄養を取って過ごすという『日常』を...

 そういえばこの間俺たちの勇者システムがアップデートされた。神樹が勇者システムを解除しようとしても解除できないようになったのだ。

 

 

 

 

 肉体的訓練を終えた後俺らは教室に行った。そこで俺らを待っていたのはお姉ちゃんだった。

 

「ではでは皆さん、今日のお勉強を始めましょう~!」

 

 それぞれいつも座っている机の上には、様々な本が積まれている。日に焼けた古書や、古い勇者御忌が書かれていそうな本(和綴じ本)よくわかんない折り畳まれた紙の書籍(帖装本)など...すべて神話や神事にかかわる文献だ。

 全部お姉ちゃんが用意したものだ。

 

「う、勉強は嫌だー!」

 

 球子が叫んでいるのを横目に俺はお姉ちゃんに話しかける。

 

「ねぇ、俺のだけやけに多くない?」

 

「そりゃあそうですよ。だってひなとは酒呑童子、大天狗、八岐大蛇、玉藻の前、一目連、義経、七人岬、輪入道、雪女郎といったほかの人が使える精霊を使えるんですからその分それぞれの精霊の知識をつけておかないといけないのですから」

 

「うぅ...」

 

 ちらっと周りを見てみる。ちーちゃんと杏はもう読み始めている。友奈、球子は本を持ちながら寝そうになっている。若葉は渋い顔をしながら本を見ている。

 俺は本を読むことは嫌じゃない。何なら意外と好きだ。だから最初の方は楽しかったのだが、最近お姉ちゃんが持ってくるのは書かれている文字は読みづらく、文章も古語。なので『読書』と言うよりも、『解読』と言ったほうが正しい形になってしまうのだ。

 

(先生今日もお願いします)

 

『任せろ』

 

 正直普通の中学生(高校生)では古語を読めないのだ。そこではるか昔から生きている?精霊たちに音読をしてもらうのだ。

 

『ほらバカ息子のむぞぉ』

 

『おい!やめろ!酒瓶を持って近づくな!たまには親父もひなとの手伝いをしろ!』

 

『やはり百合は最高...』

 

 ...使えないのが約二名ほどいるが...

 

『ではいくぞ』

 

(あ、はい)

 

 

 

 

 みんなが一通り本を読み終えた後に友奈がみんなに言った。

 

「ねぇ、明日みんなでお出かけしない?」

 

「いいな!それ!タマも勉強してリフレッシュしたいと思っていたところだ!」

 

「タマっち先輩さっきずっと寝てたでしょ...ほら部屋に戻ったら一緒に読んであげるから一緒に勉強するよ?あ、わたしももちろんオッケーです」

 

「うぅ...」

 

「私も明日補鍛錬も休みだし、構わない」

 

「はい、私も」

 

「まぁみんなが行くなら俺も行くぜ」

 

「...日本人の象徴ね、ひなと君。...熱いのはそこまで好きではないけれど私も行くわ」

 

 ちなみに今は夏休みで授業はない。よって今やることは鍛錬ぐらいしかないのだ。宿題?何それおいしいの?

 

「じゃあ、決まりだね!」

 

 こうして俺らは明日みんなで出かけることになった。

 

 お姉ちゃんはにこにこしながら言う

 

「つまり、みんなでデートですね。ひなと良かったですね。ハーレムですよ」

 

「やめてくれ」

 

『む、百合のにおい』

 

 

 

 

~夜~

 俺はお姉ちゃんの部屋に来ていた。

 

「珍しいですね。ひなとが自らの意思で私の部屋に来るのは。耳かきしてあげましょうか?」

 

「じゃ、あとで...それよりもお姉ちゃん!」

 

「はいなんでしょう」

 

「明日の服とか髪どうしたらいいと思う⁉」

 

 そう言うとお姉ちゃんは俺の方に来て手をおでこにあてた。

 

「ふむ熱はないようですね...急にどうしたんですか?」

 

「いや、お姉ちゃんがデートとか言うから服装とか意識したほうが良いかなーって」

 

 嘘である

 本当はこの男玉藻の前に

 

『デートなんだからものすごく女の子っぽい格好で行くのよねぇ?ねぇ⁉』

 

 と脅されたから姉に相談しに行ったのである。

 

「なるほど...だったらカギを開けておいてください。明日の朝に突撃して整えてあげますので」

 

「わかった...ありがとう」

 

「えぇ。ではおやすみなさい」

 

「あ、うん。おやすみ」

 

 

 

 

~翌日~

 

 「おはようございまーす」

 

 宣言通りお姉ちゃんは俺の部屋に突撃してきた。

 

「ん~...おはよぉ~」

 

 伸びをして少し眠たそうにして俺はお姉ちゃんにあいさつした

 

「では髪をいじりますのでそのまま動かないで来ださいね」

 

「...うん」

 

 結構時間がたった後。

 

「できましたよ」

 

 そうお姉ちゃん後言ったので目を開けてみると一部が編み込まれた髪型をした自分が鏡に映った。なんかザ・お嬢様って感じ~。

 

「服はどうしましょうか?」

 

 俺が鏡を見て

 

お姉ちゃんすげ~

 

 と思っている間に、お姉ちゃんは俺のクローゼットを開け服を選んでいた。そして納得のいくものが見つかったのか。一着服を出して俺に見せつけニコニコしながら

 

「これで行きましょう!」

 

 と言った。その服とは真っ白なワンピースだった。肩までしか袖がなく、よくお嬢さまか清楚系が来ているイメージがある。

 

「え、それ?そんな清楚なの俺には似合わないような気が...」

 

「ひなとが似合わないともかく、世間のイメージ的にはひなとは『お嬢さま』なんだからこれ着たほうが良いと思いますよ?」

 

「...本音は?」

 

「こういう服を着たひなとを見てみたい!」

 

「変わらないね...お姉ちゃんは。でもまぁいつもお世話になっているし、そのぉ...着ても...いいよ?」

 

 パシャ

 

 突如シャッター音が鳴り響く。

 

「ひなとのテレ顔頂きました~」

 

「お姉ちゃん?」

 

「てへっ」

 

「やっぱ違うの着ようかな...」

 

 真面目に検討する俺だったが、結局着る服が思いつかないし、髪型とあっている服がなかったためお姉ちゃんが出してきた服を着るのだった。

 

 

 

 

 昨日話し合って寮の玄関とか部屋の前からみんなで行くよりも、外で集合したいという感じになった。まぁ一緒に行きたい人は一緒に行っていいよって感じにもなったので、俺はお姉ちゃんとちーちゃんと行くことにした。

 ちーちゃんは寮の玄関で待っていた。いつもの格好だ。

 

「あ、ちーちゃん。お待たせ―」「こんにちわ千景さん。お待たせしてすいません」

 

「こんにちわ、ひなたさんに、ひなとk...」

 

 俺を見て急に硬直するちーちゃん

 

「?どうしたの?」

 

 俺は首を傾げた。お姉ちゃんは俺の頬をつつきながらどや顔でいう。

 

「どうです~?千景さん?うちの弟美しいと思いません?」

 

「...ええ...豪華絢爛、八面玲瓏、面向不背、綾羅錦繡...そんな言葉は今のひなと君のためにあると思う程にきれいね」

 

「?ありがとう?」

 

 言葉の意味が分からない俺はとりあえずほめていることは分かったので礼を言う。お姉ちゃんは相変わらずどや顔を続けていた。

 

 

 

 

 俺たちは集合場所の丸亀城大手一の門前にいる。誰もいないため、全員を待つことになる。

 

「変ですね、待ち合わせでしたら、若葉ちゃんはいつも時間十分前を厳守なのに...」

 

「確かに...珍しいこともあるもんだね...」

 

 そんなことを言っていると、球子と杏が姿を現した。

 

「おーい!ひなと達―!」

 

「あ、球子さん」

 

「後ろに伊予島さんもいるわね...」

 

「こんにちはー。待ちました?」

 

「いや、全然。何なら今来たとこ」

 

「そうですか...ならよかったです」

 

「にしても今日のひなとはなんか気合入ってんなぁ。なんかタマより女の子っぽくないか?」

 

 球子が少し苦笑いしながら言った。

 

「まぁ、私が全て整えましたからね!」

 

 またお姉ちゃんがどや顔を発揮した。

 

 そんな感じに会話を繰り広げていると、若葉が姿を現した。

 

「すまない、待たせてしまった!」

 

「あ、若葉ちゃん。大丈夫ですよ、まだ集合時間ですから...って、なんですか、その格好」

 

 若葉はサングラスと大きなマスクをつけ、野球帽をかぶり、ジャージを着て、刀を携えていた。はっきり言おう。どうしてそうなった...

 

「変装だ。あまり勇者が町中を歩き回っていると、目立ってしまうからな。精一杯目立たない、私だとわかりにくい服装を選んでみたぞ。しかし刀だけは手放せなくてな、有事のために」

 

「...若葉ちゃん...」

 

「乃木さん...それじゃあ結構目立つし、刀を持っている時点で乃木さんだとわかるわ...」

 

「ほら!やっぱりタマたちも変装をするべきだったんだ!」

 

「タマっち先輩は少し黙ってて」

 

 球子以外が若葉をジト目や、呆れた目で見ていると、続いて友奈が現れた。

 

「みんな早いね!」

 

「あ、友奈さん...って、なんですか、それ」

 

 友奈はお面をつけていた。祭りの縁日で売られているような、特撮ヒーロー番組のお面だった。だからどうして(ry

 

「変装だよ!町の人たちに勇者だってわからないように!

 

「...高嶋さん...さすがにそれは...」

 

「あ、ぐんちゃんも欲しい?全員分持ってきたよ!」

 

 そう言って友奈はどこからかお面を取り出した。え?ほんとにどこから取り出した?

 

 お姉ちゃんは若葉と友奈の肩に手を置いて、言った。

 

「二人とも...『デート』にその格好は却下です。ひなとを見てください。あの子は昨日私がデートだといったせいで意識し、服装を私に相談してきたのんですよ?お二人も少しは見習ってください」

 

「お姉ちゃんやめて。普通にハズイ」

 

 

 

 

 そのまま流れでお姉ちゃんが若葉と友奈の服装をコーディネイトし直して、出かけることにした。ただし若葉は、

 

「有事のために!有事のために!」

 

 と言って刀を手放そうとしなかったため、相変わらず刀を持っているが。

 

 丸亀城の敷地内から出て、人通りがある場所を歩てみたが、通行人は若葉たちを気に留めるものの、それで騒ぎ立てたりはしない。

 

「いいですか?若葉ちゃんに友奈さん。皆さんは確かに有名人ですが、悪いことをしているわけではないんですから。堂々としていればいいんです」

 

「うぐぅ...」

 

「お姉ちゃん。ちーちゃんに大ダメージが入りましたー」

 

「いいですか千景さん。確かに千景さんは、私の弟を殺そうという大罪を犯しました。しかしそれはあくまでも精霊のせいですし、何なら報道はされていません。千景さんも変わらず堂々としてください」

 

「わかったわ...ありがとう...」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

「ところで友奈ー。みんなで出かけようとか言っていたけど、どこか行きたいところとか、目的地でもあるのかー?」

 

「ううん、そういうのは別にないけど...みんなで街の中散歩できたらいいなって。ダメかな?」

 

 友奈の言葉に、みんながほほ笑む。

 

「いや、いいと思うぞ。たまにはそういうのも」

 

「私も...全然大丈夫よ...」

 

「確かにあんまり散歩してないからこういうのもいいかもな!」

 

「あ、散歩するなら本屋にもよりたいんですがいいですか?」

 

「あ、俺も少しよりたいかも」

 

「いいよ」×5

 

「目的なんてあってもなくても、友達ですから、一緒にいられるだけで楽しいですからね」

 

 

 

 

 丸亀城から近くの本屋によってから、丸亀駅の方へ向かうことにした。大手一の門から大通りを通って、その大通りにある本屋に少し見てから、市役所を通り過ぎる。そのあたりで、商店街に入った。

 商店街は人通りが多く、賑わっている。4年前、本州や九州から四国へ人々が避難してきたため、四国の人口は以前よりも増加した。そのため商店街や駅前などは、普段から多くの人々の姿が見られる。

 商店街の中には、いたるところにお祭りのポスターが貼られていた。8月下旬に行われる『まるがめ婆娑羅(ばさら)まつり』のポスターだ。

 

「もう祭りの時期ですね」

 

「ええ、今年も盛大に行われるそうです」

 

 まるがめ婆娑羅祭りは、5月に行われる丸亀お城まつりと双璧をなす、市内最大の祭りだ。花火大会も行われ、市外からも多くの人々が訪れる。

 

「でも、婆娑羅祭りの『婆娑羅』って何だろうね?ゲーム?」

 

 通名がポスターを見ながら、怪訝そうに言う。

 

「高嶋さん。それは日本の戦国時代を舞台とした、三人称視点3Dの一騎当千型スタイリッシュ英雄 (HERO) アクションゲームね」

 

「なんかよくわからんがすごそうだな...えっと、確か江戸時代の丸亀藩主、京極氏に由来するそうだ。京極氏の祖先である佐々木道挙が、『婆娑羅大名』と呼ばれていたとか。婆娑羅は、派手さや粋さを表す言葉で、『伊達』と似たような意味だな」

 

「おお、若葉は物知りだな~」

 

「昔からこのあたりに住んでいるからな。地元の歴史だ」

 

「すいませーん。俺子供の時から住んでますけど、何一つ地元のこと知らないんですけどー」

 

「ひなと、それは言ってはいけないお約束です。それに何ならひなとは5歳くらいからここに来て最初からいるわけではないですし、何なら途中で高知に行きましたからそこまで長く住んでませんよ?」

 

 商店街の雑貨屋に通りかかり、そこで売られている団扇に友奈が目を止めた。

 

「あ、手作り団扇だ!」

 

「暑いしちょうどいいわね...」

 

「そうですね。みんなで買いませんか?」

 

 杏がそういったのに対し俺らは

 

「さんせーい」×6

 

 ちなみに丸亀氏は団扇の生産量日本一で、熟練の職人が作る団扇は、一つのブランドになっている。

 みんなで団扇を買い、再び商店街を歩いていく。

 

「むむ、こうして団扇を持って歩いていると、何かが足りない気がします...」

 

 お姉ちゃんは眉間にしわを寄せ、考え込む。

 

 若葉と俺は同時に何かを悟ったような顔になる。

 

「そうです!団扇と夏が揃ったら、浴衣です。皆さん浴衣を買っていきましょう、今から着替えていきましょう!」

 

「い、いや、祭りでもないのに浴衣を着るのは変だろう」

 

「そうだよ、みんなは買っても着るかもしれないけど、俺は買って今日着たとしたらそれ以降着ないよ?そしてもう着替えたくない」

 

「私も...」

 

「タマだって動きづらそうだしいやだ...」

 

「私も買うこと自体はいいですけど、今着替えるのはちょっと...」

 

「みんなもこう言っているし...また今度にしようよ」

 

 お姉ちゃんが勢いで浴衣を着せようとしてくるのに対し、俺らも勢いでカウンターをする。仲間がいてよかった...俺と若葉だけじゃ押し返せなくて着せられていた...

 

「仕方ありませんね...じゃあお祭りの時には、皆さんに一番似合う浴衣を、私が選びます。ああ、お祭りの日が待ち遠しいです」

 

 お姉ちゃんは心底楽しみそうに言った。

 その後、商店街を歩いて、うどん(俺はそば)を食べて。丸亀駅を通り過ぎて、海の方へ向かった。丸亀駅の辺りから海へ向かう道は、丸亀街道と呼ばれる通りの一部だ。街道は丸亀港から、香川で最も有名な神社・金比羅宮まで続いている。江戸時代、本州から渡ってきて金比羅宮を参詣する人たちの通り道だったのが、この丸亀街道である。

 

「金比羅宮かぁ...そういえば私、小さい時はよく神社に言っていたんだ」

 

「神社に?珍しいな」

 

「うん。金比羅宮みたいな、大きなのじゃないけど」

 

 道を歩きながら、友奈が話す。

 

「そういえば、友奈さんが丸亀に来る前の話は、あまり聞いたことがないですね」

 

「そういえばそうですね...千景さんは何か聞いたことないんですか?」

 

「私も...高嶋さんの昔の話はそこまで聞かないわね...」

 

「友奈はいつも自分よりも他人を優先して、話の聞き手に回ることばかりだからな。究極の聞き上手というやつだ。それができる人間はなかなかいない」

 

「気遣い屋さんだからなー、友奈は。でもそれってすごいことだな。だから、あまり人を好まない千景にも好かれているんだろうなー」

 

「土居さん...一言余計よ...でも確かに高嶋さんの気づかいはすごいわね...」

 

「...ありがとう...でも...」

 

 友奈は言いかけていた言葉を途中で飲み込み、それ以上は何も言わなかった。

 俺らが海に着いた時には、日が傾き始めていた。空気が茜色に染まっていき、港に停泊しているフェリーの姿がどこか哀しげ見える。マ〇オオ〇ッセイでもそうだが、夕暮れの海というものはどこか寂しげでもあるし、美しいなと思わせてくるものである。

 友奈はそんな夕暮れの海を見ながら、話し始めた。

 

「本当はね、そんなに褒められることじゃないんだ」

 

 友奈の言葉に、俺以外は怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「よく、みんなのことを気にかけてるとか、気遣い屋って言われるけど...褒められたことじゃないよ。ただ...嫌なんだ、気まずくなったり、誰かと言い争ったりするのが...つらいから。だから、相手の話を聞くばっかりで...全然、自分を出せなくて。でも―」

 

 いつも明るく、人のことを優先し、たまに俺のことをからかってくる、勇者たちの和を取り持つムードメーカーだった少女―高嶋友奈は、夕日を背にして俺らの方を振り返った。その表情は少し寂しげで。

 

「タマちゃん、杏ちゃんが死にそうになった時に...自分のことが話せないままになったときのことを考えて、なんだか悲しくなって...次が最後の戦いになるんでしょ?だから、私や...みんながもし死んじゃった時に、もっと自分のこと話しとけばよかった...ってことになりたくないなって...今更、思ったんだ...」

 

「友奈...」

 

「だから、みんなには...知っていてほしいんだ。私のこと」

 

 みんなは友奈を見つめ、優しい顔で頷く。

 

「もちろんよ...高嶋さん...」

 

「ああ、話してくれ。お前のことを」

 

「はい、私ももっと友奈さんのこと知りたいです」

 

「タマも、もちろん聞きたいぞ」

 

「ええ、私も」

 

「...存分に話せばいいんじゃないか...?」

 

 少しぶっきらぼうになってしまった...まぁいいか。

 

「...ありがとう」

 

 友奈は微笑んで、まるで自己紹介するように、少し緊張しているように、語り始める。

 

「私は勇者、高嶋友奈。奈良県出身。誕生日は1月11日。血液型はA型だって。趣味は...武道なのかな。あと、おいしいものを食べるのも好き。勇者になる前...小さい頃は、よく自然の中で遊んだよ。それと家の近くの神社に行って、ボランティアで掃除を手伝ったり、境内で遊んだりしてた。神社の境内ってね、かくれんぼにピッタリなんだ。隠れる場所がいっぱいあって。でも、入ったらいけないことに入って、神主さんから怒られたりもしたっけ」

 

 友奈は懐かしむように、取り留めもなく、友奈は自分のことを話し続ける。

 友奈の語る言葉を、俺らは静かに聞いていた。

 

「だから私にとって、神社とか神主さんってすごく身近で...そのせいで、大社の雰囲気とか、そういうのをみんなより自然に受け入れられてるのかも」

 

「友奈さんは小さいころから神社っ子で、昔はもっとやんちゃだったんですね」

 

「やんちゃ...うん、ちょっとだけ、そうかも」

 

 友奈は少しだけ照れたような顔をした

 

「そういえば、精霊のデメリットを調べている時に本で読んだことなのですが、清浄、穢れ、神威、神秘など、そういった目に見えないものは、接触によって人の身に蓄積されるそうです。文化人類学で『感染呪術』とも呼ばれる、一度すれ違ったものは離れた後も影響し合うという法則があります。その法則は、接触によって目に見えない何かが人の身に蓄積されるからこそ成り立つそうです。友奈さんが天の逆手の力が使えることや、ひなと君に取られましたが本来は酒呑童子の力を使えるのも、友奈さんが幼いころから神社の空気に触れ続けていたことが関係するのかもしれませんね...」

 

「杏...タマには何を言っているのはさっぱりだぞ...」

 

「私も少しわからないかな...でも一つ言えることは...タマちゃんみたいにアウトドアが得意だったり、杏ちゃんみたいに頭がよかったりってわけじゃないし、すっごく普通だった。だから勇者になったときは、『どうして私なんだろう?』って驚いたし、戦うのも怖かった。でも...家族とか友達を失うのは、もっと怖かった。私、本当はね、怖いから戦っているんだ...臆病者なんだ...だから...『勇者』って言葉に憧れるのかも」

 

 友奈は、ちょっとだけ苦笑気味に言った。

 

 

 

 

 それから、友奈はほかにもたくさんのことを語った。幼稚園や小学校時代の出来事、当時の友達のこと、家族のこと...ひとしきり語り終えた後、友奈はほう、と一息ついた。

 

「なんだかこんなにたくさん話したの、生まれて初めてかも」

 

 ちーちゃんが微笑みながら自分の両手で友奈の両手を握って言う。

 

「おかげで高嶋さんのことがよくわかったわ」

 

「タマもだ」「私もです」

 

「私はうれしいぞ、友奈がこんなに自分のことを話してくれて」

 

「ええ友奈さんのことが、今までよりも分かった気がします。...では、お返しに、私がひなとや、若葉ちゃんのことを教えてあげます」

 

「「え、ひなた(お姉ちゃん)のことではなくて、私(俺)の⁉」」

 

 お姉ちゃんは当然のように、

 

「はい。まず若葉ちゃんから。若葉ちゃんの小さい頃はですね、とにかくまじめで頑張り屋さんでしたね。真面目すぎて、周囲からちょっと怯えられるくらいですね。でもそんな自分に悩んだりする姿も、かわいかったです。で、次にひなとですね。ひなとはご存じの通り、最初は私の弟ではなかったんです。若葉ちゃんを見て男の子の面倒も見てみたいなーって思っていた頃に両親がなくなって、引き取られたひなとが来ました。この時私は思いましたね。この子は神が私に下さったに違いないと。まぁひなとのほうが誕生日が早かったら私が妹になるので上から言えなくなりますが、幸いなことにひなとの誕生日は10月14日、私は10月4日でしたのでそんな心配はありませんでしたね。とりあえずの第一印象は...とにかくしゃべりませんでしたね。なんかのロボットじゃないのだろうか...と思うほどしゃべりませんでしたね。必要最低限の挨拶しかしませんでした。極めつけは、私より精神年齢が高いと思わせるほど、物事を冷静に判断していました。私、この子の世話できないな...と思いましたね。ですがある雷雨の夜のことでした。私たちは小さかったからか同じ部屋で寝ていました。で、寝ようとしていたのですが、雷がうるさすぎて寝れなかったんです。ひなともそうなのかなーって思って見てみたら布団の中で丸まって震えてましたね。私の布団に入りますか?ってきいたときにだまって入ってきたときに私は思いましたね。これは私が面倒を見れる人物だと。そこから私はひなとの弱点を探すことにしました。まぁ一緒に散歩しただけですけどね。散歩したらちょこちょこと私の後をついてくるんですよ。それがもう可愛かったですね。で、散歩したら結構弱点が見つかりまして...まず虫が無理ですね、犬は見てる分では大丈夫ですが吠えられるとだめですね、後高いともダメですねあと結構ありますがまずはこのくらいですね。で、あと...」

 

「長いわ!あとほぼ俺のことだし!それに俺はそこまでしゃべっていないわけではなかったわ!そんなに話すなら俺から自分のことを話すわ!」

 

「でもひなとより私の方がひなとのこと話せますよ?」

 

「いや、お姉ちゃんでも知らないことが一つだけあるから」

 

「ほう?言ってみてくださいよ」

 

「...俺実は...転生者っていうか、前世の記憶を持っているっていうか...まぁそんな感じの人間なんだ」

 

 そう俺が言った瞬間、体感で夏とは思えない冷たい風が俺らの空間に吹いた。ついでに俺の心臓がうるさいほどなっていた。




ページをめくる→なるほど今回は友奈の自己紹介か→お、挿絵これでこの章終わりかな→まだ続くか...→四国、バーテックス云々→なるほどここで終わりか→若葉のセリフ→???→戦闘シーン→いやなげぇ。終わんねーよ

的な感じでいつもは章の終わりを合わせていますが、今回は途中で切っています。
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