上里ひなとはts勇者である   作:エフさん

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待ってw外伝2から話数間違ってんだけどwだれか言ってよ()
ハイ有言実行で遅れました。忙しいとはいえ遅れすぎなんだよなぁ...何回も最終話詐欺をしている気がしますが今回も詐欺です。してない?気のせいだったかな...(作者確認中)うん!してるわ!一向に終わる気配がないね!今回も余計なことを書いたせいで最終話に行けません。
イラスト集?楽しみ。ゆゆゆいは買えん。


第37話 外伝⑤

 その日は大赦に呼び出されていた。大赦と言っても今お姉ちゃんが実質支配している方ではなく、地下で細々と勇者システムについて研究している方の大赦である。政治に関係しない人たちなのでまだ俺のことを覚えてられる人たちだ。

 

「それで、どうかしたんですか?」

 

 急に電話がかかってきて『なるはやで来てくれ』と言われたので勇者に変身してワープした俺はそう言った。職員は急に現れた俺に大層驚いているようだ。

 

「...なるべく早くとは言いましたが、電話を切った瞬間にいらっしゃるとは。少しお待ちくださいお茶お出します」

 

「いえお構いなく。自分こう見えて忙しいんです。用件を早く聞いておきたいのです」

 

「そ、そうですか。で、では単刀直入に...あなたの勇者システムを一週間ほどお借りしたい」

 

「...調査をするのであるのならば、死んだ後でもよいのでは?」

 

 システムを家事で使っていて、手放したくないので俺は質問した。

 

「できることなら我々もそうしたいのですが、調査の結果ひなと様が見つけた勇者システムの...なんでしたっけ...あ、バックルでしたかな?は、本来あの神社にあるものではなかったのです」

 

「そんなことまでわかるんですね。あとベルトって呼んでもらった方が自分的にもわかりやすくありがたいです。で?」

 

「恐らく、例の天災の時にバーテックスとともに出現したものだと我々は考えています。つまり、もしかしたらひなと様が死んでしまった時にベルトも消えてしまう可能性があります。ですので今使えるうちに調査をしておきたいのです。もちろん終わったら返しますよ?」

 

「...一週間ですね。わかりました。でも一日待ってください」

 

「わかりました。では明日の昼までには届けてくださるとうれしいです」

 

「わかりました」

 

 そう返事をして俺は瞬間移動で屋敷に戻った。

 

 

 

 

「まずくね?」

 

 勇者システムの崩壊=家事の崩壊である。

 

「待って、ほんとにやばいぞ。この脆弱な体じゃ洗濯物を干して畳んでで一日が終わっちゃう...家事どころじゃないよ」

 

 俺は対策を念じるため屋敷を歩き回った。そうして一つの案が出てきた。

 

「試してみるか...」

 

 そうして俺は墨を持って図書館へと向かった。

 

「昔アニメでキレイを保つ呪文があった気がする。どのくらいまで持つかはわかんないけど...一週間は持ってくれるよね?」

 

 そんな魔法があるなら最初から使えという話だが、使ったらやることがなくなるし使えなくなったらなんやかんやで困るはずだからである。

 

「ふぅ...」

 

 俺は魔法をかけ終わっって一息ついた後に墨汁のふたを開けた。これで本が汚れたら一日中杏の言いなりになるか、ビンタの数発を覚悟しよう。俺は成功していることを祈りながらカーペットに一滴たらした。しかしカーペットの一部に墨はついておらず濡れている様子もなかった。どうやら成功したようである。今更ではあるがなぜエントランスの絨毯でやらなかったは不明である。

 

「よし後はこれを家中に使えば一週間は耐えられるね!」 

 

 そうして俺は家中に魔法を使った。だいぶ時間がかかったため夜ご飯を作ることができずみんなに謝りながら出前で済ませた。みんなは久しぶりの外食だ!と少しうれしそうにしていたため少し複雑だった。

 

 

 

 

翌朝...

 

 みんなを送った後に俺はリュックに水筒や、お財布などを入れたりして外出の準備をした。そして勇者の姿で、できるとこまでの家事をしてから大赦に瞬間移動をした。

 

「...おお!ひなと様、いらっしゃらないかと思いましたよ」

 

 現在時刻は十二時ちょっと前。職員がそう思うのも無理はない。

 

「では預からせていただきます」

 

 大赦がそう言って何か箱を持ってきたので俺はディケイドライバーと電王ベルト、そしてゼロノスベルトを箱に入れた。

 

「ありがとうございます!では私たちはより一層研究に力を入れます!今日入れて六日で調査を終わらすので七日目にとりに来てください。では!」

 

「ちょっと待ってください!出口はどこですか?」

 

「え、で、出口?瞬間移動を使えばいいじゃないですか?ひなと様は生身でも勇者の力が多少使えると伺っていますが...」

 

「最近使えなくなったんです...」

 

「そうでしたか...あそこにエレベーターがありますのでそこから出てください」

 

 そうして俺は職員が指した鉄の扉に向かった。

 

 

 

 

 長いエレベータから出て、玄関から出た先は森であった。俺はこれから歩いて森から出なければいけないらしい...

 

「確かまっすぐ進めばいいんだよな...」

 

 俺は昨日ネットでここいらを調べたことを思い出した。

 歩いてから三十分もしないうちに俺は足に痛みを感じていた。森の中はどうやって研究室を作ったんだと思うくらいに何も整備されておらず足に疲労が行きやすかった。そしてこの体がなまりすぎているということもある。俺は歩いても歩いても森の外の気配を感じずにいた。今何時だろうと思いスマホを見ると充電を忘れていたおかげでバッテリーを示す色は赤になっており、山の中ということもあり圏外であった。

 

(まずいな...S〇icaスマホに連携してあって充電が切れたら使えない...まぁお財布にあるお金を使えばいいんだけど)

 

 しかしこのまま山にずっといて終電を乗り過ごす羽目になってしまえばタクシーを使うことになり、さすがに運賃が高くなりつつあるタクシーの料金を払えるほどのお金は持ち合わせていなかった。家にとりに帰るから待ってほしいといえばいいかと思うが、屋敷までの坂は立ち入り禁止なのでタクシーは入れず取りに行けないのだ。そうこう考えながら歩いていたため、俺は足元がお留守になっていた。俺は派手に転び色々なところがじんじんと痛み出した。

 

(あ、やばい友奈がやばい状況になる)

 

 両ひざにできた傷を見てそう思った。以前みんなで山を歩くということをしたのだが、木の枝に引っ搔かれて少し傷ができたときに友奈が真顔で

 

「ひなと君は外に出ちゃだめだね...」

 

 と言ってきたことがあった。俺はそれ以降ちょっと怪我押したらすぐに勇者になって直すということをしていたのだがそれはもうすることができない。俺は少しだけ憂鬱になった。

 夕方になっても俺は森を抜けることができなかった。よほど大赦は山奥に研究室を作ったらしい。携帯はいつの間にか充電切れになっていた。なんか知らんが屋敷に引っ越してから充電の減りが早いのだ。正確な時間はわからないが、腹時計的にそろそろみんなが帰ってくる時間であろう。あ、お姉ちゃんはまだ帰ってこないか。

 

(今日帰れるのかな...)

 

 サラリーマンがお酒を飲む時間帯にようやく俺は山を出ることができた。服は土まみれ、髪はボソボソ(しかも所々に葉っぱがついている)であった。足がじんじんと痛み、一歩一歩が確実に俺の精神と体にダメージを与えてくる中俺は若干足を引きずりながら歩いていた。駅までの道はまだ長い。俺は本当に終電までに駅に着くことができるのだろうか...?ネガティブなことを考えていると頭がくらくらしてきたような気がした。

 

(あれ?これマジで気のせいじゃなくてくらくらしてね?)

 

 そう気づいたころには俺は倒れていた。

 

 

 

 

屋敷にて...

 

「ただいまー...あら皆さんお揃いでどうかしました?」

 

 ひなたが帰ってきた瞬間いつもはひなとだけなのが今日はひなと以外が出迎えてきたのだ。

 

「ひなとくんがいない...」

 

「落ち着け友奈。大丈夫だきっとお義母さんのところに行っているのだろう。ひなた、何か聞いていないか?」

 

「?今日は大赦に呼び出されたといっていましたが...それ以外は聞いていませんね」

 

「大赦ということはひなたさんはあっていないの...?」

 

「ええ...どうかしたんですか?」

 

「ひなと君がいなくなってしまったんです」

 

「え...?」

 

「どうせちょっと出かけただけだと思うんだけどなー、友奈があまりにも探しに行こう探しに行こう言うもんだからみんなで止めてたんだー」

 

「そうなんですね...ふむ、では呼び出した職員にちょっと聞いてみるとしましょう」

 

「誰だかわかるの⁉ひなとくんを連れだしたやつ!」

 

「呼び出したよ...高嶋さんは少し落ち着きましょ?大丈夫よ...」

 

「わかるに関しては、ひなとは家に電話がかかってきたと言っていたので履歴を確認しており返せばいいでしょう。早く行きますよ」

 

 そして一行は履歴を確認して折り返しの電話をした。

 

「もしもし?上里ですが、ひなとを呼び出した職員の方はいますか?」

 

『呼び出した職員は急いでやらねばならないことがあるといって研究室に閉じこもってしまいましたが、呼び出した場所ではあります』

 

「そうですか...ひなとはいますか?」

 

『え?十二時前に来てすぐにお帰りになりましたが...』

 

「そうですか...ちなみに何の用件で呼び出したのですか?」

 

『あぁ、なんでもひなと様の勇者システムを調べたいらしく、一週間だけ貸してもらうために呼び出したそうです。今日ひなと様が勇者システムをその職員に預けていたのを見ていましたので間違いないと思います』

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

「あ!ちょっと待て友奈!探しに行くなら私たちも探すから!最後まで一応話を聞こう!」

 

「...確認しますが、ひなとは今勇者システムを持っていないんですね?」

 

『そうなりますね...』

 

「わかりました、後で呼び出した職員に事情を聴きたいのでその職員が出てきたら連絡をください。それでは失礼します」

 

 ひなたが受話器を置いた瞬間場は静寂に包まれた。

 

「勇者システムを研究するところってかなり山奥でしたよね?」

 

「そうですね...天の神に見つからないように私が選びました」

 

「ってことはひなとくんはその山奥をあんなにひどくなった体で歩いているってことだよね?」

 

「そう...なるわね...」

 

「死んだな」

 

「あ、ちょ!高嶋さん殴りたい気持ちはわかるけどダメよ!後で、殴りましょう。ね?ほら今はひなと君を探すことが一番でしょ?」

 

「そういえばひなとのスマホにGPS仕込んでいたと思いますがそれでわかんないんですか?」

 

「それが山のせいで圏外で痕跡がわからなくて、仮に山から出てももう充電が切れているだろうから...」

 

「なぁ杏、あの二人なんかやばいことを言っていないか?」

 

「タマっち先輩、見ちゃダメ。ひなたさんでも十分だったのに友奈さんまで加わるんだらもうひなと君に人権はないといっても過言じゃないね」

 

「千景はあの輪に入らないのか?」

 

「私を何だと思っているのよ...私はひなと君がどこへ行こうが自由だと思っているから...」

 

 とりあえず探しに行こうということで屋敷の中は空になった。

 

 

 

 

 目が覚めると全くもって知らない天井であった。

 

「あれ?ここは...」

 

「気づいた?」

 

 そこにいたのは髪色は薄い緑色で前髪の左側になんか隙間があり、両端には細い触手(髪の毛の話だぞ)が胸の方が伸びており、髪を一本にまとめて降ろしている金色の目をした俺と同じくらいの女性だった。

 

「...あなたが倒れた後に薄汚い笑い方をした男性が介抱しようとしていたから同情で助けてあげたの」

 

「えっと...ありがとうございます...」

 

 反射的に礼を言ったがそのあとの会話が思いつくわけもなく、無言が続いた。今何時だろうかと思い、スマホを見ようとしたが充電がなく見ることができなかった。周りをきょろきょろしていると電子の時計があり、一時と表示していた。

 

(こんな時間にもなって帰ってきてなかったらものすごく通知が来ているんだろうな...)

 

「あの、「ものすごく服汚れてたし髪もなんか葉っぱついていたりしたけど何をしていたの?」

 

 俺が何にも発しなかったからか向こうは質問をしてきた。

 

「あ、えっと...ちょっと冒険してました」

 

「冒険...結果倒れてひどい目に会おうとしていたんだから目も当てられないね。で?なんか言いかけてなかった?」

 

 最初のあのが聞こえていたのであろう、聞き返してくれた。

 

「助けてもらったのに図々しいのですがコンセントと充電器を貸していただけないでしょうか...!」

 

「そんな泣きそうな顔にならなくても...ほら」

 

 そう言って女性はコードを引っ張って来てくれた。充電してしばらくしているとホーム画面が映りだした。

 

「ひっ...」

 

 開いた瞬間に百件以上のいろいろな不在着信が来ていた。

 

「迎えは来そう?」

 

「正直呼びたくないです...」

 

「それはこっちが困るんだけど」

 

「そうですよね...はぁ...」

 

「何かあったの?」

 

「自分、巫女みたいな立場でして」

 

 そう俺が言うと目の前の女性は渋い顔をした。

 

「ちょっといなくなったらまずい人なんですよ...帰るのが怖いなぁ」

 

「そう...」

 

 そこから俺と女性の会話は続かなかった。早くどっかいかないかなというオーラを浴びながら誰に連絡をしたら一番被害が小さめにすむのだろうということだけを考えていた。よくよく考えればこんなところに勇者を呼び出すわけにもいくまい。早急に帰らなければ...いやしかしもう電車はないだろうし電車に乗れたとしてそこからバスで行くようなところだ、絶対にバスはもうないし、何ならあの坂を上りきる自信もない。まぁ途中まで歩いて誰かに連絡すればいいか...そう思考を巡らせていると

 

『ピンポーン』

 

 とインターフォンが鳴った。

 

「...こんな時間に誰だろう」

 

 女性は少し怪訝な顔をしながら玄関へと向かっていった。

 

「え⁉ゆうちゃん⁉なんでここに⁉」

 

 女性は深夜に出してはいけないような声量を出した。

 

「え、茉莉さん⁉」

 

 どうやら二人は知り合いらしい...

 

 

 

 

 リビングに移動した後、二人は四国にいてからの話をしていた。

 

「ゆうちゃん、やっぱりボクはゆうちゃんは勇者になるべきじゃなかったって思ってるよ。巫女たちが生贄になるちょっと前まで自然災害がひどくて勇者は批判されていたし、結局巫女たちが死んでこの地が安全になるなら最初からそれをやれって意見も出てる。勇者たちはまだ誰も死んでいないんだからまだ戦えっていう人もいるけどね...だったとしても、もう勇者としてのお役目は終わりで後は普通に余生を過ごしていいはずなのに、テレビに出たり、四国中を回ったりして毎日大忙し...しまいには結婚したって聞いたけど神樹が指定した相手で同性婚でしかも多妻...報われないよ。こんなの頑張った人が過ごす普通の生活じゃない」

 

 最後らへんの当事者である俺は黙って話を聞いていた。

 

「隣にいるのがその婚約者なんだけどね」

 

「は⁉」

 

「でも私は幸せだよ?ひなと君だって勇者として戦ってきた仲間だし、何なら私たちは自分たちで選んだから!みんなひなと君のことが大好きだよ!」

 

「ちょっと待って、色々追い付かない。そもそも勇者はこの人じゃなくて上里様でしょ?確かに少しだけ似ているけど...というかひなと君?」

 

「あ、すいません。言い忘れていましたが俺、男なんですよ...神樹のせいで女になってるんですけど」

 

「男が介抱しているのをそのまま見過ごしてもよかったんだね」

 

 友奈の日常を壊した一因だからか目線と口調がきつくなっていた。

 

「茉莉さん、それどういうこと?」

 

「この子道端で倒れてね、チャラそうな人にお持ち帰りされそうになってたの」

 

 横手さんがそう言った瞬間友奈の顔から笑みが消えた。

 

「やっぱりひなと君はずっとお屋敷の中にいなきゃだめだよ。少なくとも女の子のうちは」

 

 低い声で淡々と言われて、俺は身震いをした。

 

「まぁそっちのことは後でにしてもらうとして...それでも納得いかない。勇者なのは上里様でしょ?ここら辺の人に聞いてもみんな同じことを言うと思う」

 

「...俺が民衆の記憶を改ざんしたからな」

 

「勇者の力ってそんなこともできるの?じゃぁ!ゆうちゃんが勇者という民衆の記憶も消して、ゆうちゃんに普通の生活をさせてあげてよ!それが夫のやることでしょ⁉テレビに出ているのは勇者様たちと上里様だけ...あなたは何をしているの?自堕落な生活かな?ハーレム生活?どちらにしろあなたが働いていないのは確かなはず。だったらいっそ勇者の記憶だけ民衆から消して、勇者たちで普通の生活をすればいいじゃん!」

 

「みんなやりたくてやっている、それをやめさせるのはどうかと思う。そもそも消したんじゃない、書き換えてんだ。お姉ちゃんが大赦内で動きやすくなるように」

 

「それはあなたが勝手に言ってることでしょう?」

 

「そっちが言っていることは勝手なことではないのか...お姉...ひなたがこの国のトップに君臨し、それをサポートして未来の勇者につなげるためにみんな頑張ってるんだ。だから自分の価値観を押し付けることはやめてくれ」

 

「........................ごめんなさい。そもそもボクに勇者たちに対してとやかく言う権利はもうないんだったよ」

 

「ひなと君は確かに外で仕事はしていないけど、おっきいお屋敷を一人で掃除して、私たちの洗濯物を一人で干して畳んで、私たちの弁当を朝早くに作って、夕飯も作って...すごいんだよ」

 

「そう...なんだ...非礼のわびと言ってはなんだけど今日はもう遅いから泊ってていいよ」

 

「いいの?」

 

「うん。だってその子、僕とさっきまで口論していたのに寝ちゃったし」

 

「あ、ほんとだ。じゃ、お言葉に甘えて」

 

 

 

 

翌朝...

 

「知らない天井だ」

 

 呟きながら俺は身を起こす。時計は六時を表示していて、だいぶ寝てしまったらしい。そして状況確認が終わった後に隣の部屋で寝ているかもしれない横手さんの方へと向かった。

 

「すいません横手さん」

 

 俺が寝ているのにもかかわらず声をかけると、横手さんは眠そうに唸り声をあげた。

 

「少し冷蔵庫の中身を使わせていただきますね」

 

「いいですよぉ~」

 

 寝ぼけている人に了承を得て、俺はキッチンへと向かった。

 冷蔵庫の中を見て俺は味噌汁と白飯と目玉焼きを作ることに決めた。幸い冷凍されたご飯があるため炊く必要はなさそうだった。とりあえず起きてくるまで味噌汁を作って待つことにした。

 

 

 

 

 起きてきたのは友奈が七時で、横手さんが八時であった。

 

「おはようございます。簡単ではありますが朝食を作っておいたのでどうぞ。使った分は今から買ってくる予定なのでご安心を。必要でしたら食材も買いますが、何か希望はありますか?止めてもらったお礼です」

 

「いいよ...そこまでしなくて。とりあえずご飯、頂くね」

 

 そうして横手さんは黙々と食べ始めた。

 

「ご馳走様」

 

「お粗末様でした。ほんとに食材買い足さなくていいんですか?卵切れてまいましたけど」

 

「いいの...昨日言ったことのお詫びで止まってもらったのに、朝ご飯を作ってもらってお使いに行ってもらっちゃね?」

 

「そうならいいんですが」

 

 

 

 

 

「お邪魔しました」

 

「また来るね!茉莉さん!今度は久美子さんもつれて!」

 

「う、うん...」

 

 横手さんは微妙な顔をしていた。

 

 

 

 

 友奈が呼んだのか、出てすぐにお姉ちゃんがよく乗ってる車が駐車してあった。俺らは車の中に入りシートベルトを着けた。シートベルトを着けると車はすぐに発進した。

 

「ごめんねー、朝早くに」

 

「いえ、ひなとがいるんじゃ帰るのにものすごい時間がかかりそうでしたし、それに送ったらすぐに仕事に行く予定だったので...そういえばひなと勇者システムを大赦に預けたんですよね?どうしてだれにも相談してくれなかったんですか?一人じゃ帰れなくなることくらいわかったでしょう?」

 

 お姉ちゃんは少し怒っているようだった。

 

「ごめん...でもみんな忙しそうだったし、迷惑かけないほうがいいかなって」

 

「忙しいのは確かにそうですけど、迷惑なんて誰も思いませんよ。五日預けるというのを聞いたので皆さん一日ずつ休んでひなとの手伝い兼見守りをしてくれるそうです。五日間はみんなを頼ってください。受け取る日は大赦の人間に車を出させるので安心してください。友奈さんの休みは勝手に取らせていただきました。今日です。お願いしますね」

 

「うん分かった!」

 

 一通りの話がすんだのか車内は静かになった。

 

(『みんなひなと君のことが大好きだよ!』か...)

 

 俺は昨日友奈が言ったことを思い返す。本当にそうなのだろうか?お姉ちゃんやちーちゃんは違うかもしれないが言ってしまえばひとめぼれな気がする。ひとめぼれじゃなくてもみんなは勇者の俺を見て好きになったはずだ。多分おそらくメイビー。今の弱い俺を好きなやつはいるのだろうか...?まったくとは言わないが、俺のことは別人として見られていてもおかしくわないのではないだろうか?若葉なんかは俺を見て残念そうな顔をしている気がする。

 こんなことを思っても仕方がない。弱くなってしまったものはしょうがないのだ。みんなが俺のことを好きでなくなってしまったのなら、俺は甘んじて受け入れ、みんなが嫌な思いをしないように家事だけはちゃんとしよう。でも気になるから若葉と二人っきりになったらちょっと聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 俺たちはお姉ちゃんに屋敷の目の前まで送ってもらった。屋敷に入ってみるとがらんとしており、俺たち以外は仕事に行っているようだった。

 

「まずは何をするの?」

 

「昨日かけた魔法がしっかりと働いていたら掃除はしなくていいはずだから洗濯物を干そうかな。そろそろ洗濯機が仕事を終わらせてるころだろうし」

 

「わかった!」

 

 

 

 

一時間半後...

 

「ゼェ...はぁ...げっほ...」

 

「...大丈夫?」

 

 洗濯物がこんなにも重いとは思わなかった。一階に洗濯機があり、干す場所は二階のベランダ...つまり洗濯物を干すためには二階まで運ばなければならない。しかもめちゃんこ遠い。馬鹿でかい屋敷の対角線なのだ。

 籠が小さく、三つに分けたが俺が一つを運んでいる間に友奈は二つを運び終え、干すところまで終わらせていた。途中から友奈が持つよと言ってきたが、さすがに一個も運ばないのはあれなので拒否した。

 

「いつもはどうしているの?」

 

「...洗濯籠ごと瞬間移動してる。いやはやこれから五日間みんながいると思うと本当によかったよ...きっと洗濯物を干すだけで一日が終わる」

 

「次は何をするの?もうひなと君は休憩してていいよ」

 

「疲れているとはいえこれは俺の仕事だからさぼるわけにはいかないよ...次は風呂掃除だね」

 

 うちの風呂は広い。大浴場くらい広い。なぜそんなに大きくしようと考えたのだろう...この腐りきった体では終わらないことぐらいわかるはずなのにどうして俺は魔法の適用外にしてしまったのだろう...?

 そんなことを考えている間に俺らは大浴場に移動した。

 

「私が湯舟?を洗うからひなと君は床でも掃除してて。あ、転んだら危ないからやっぱ見学してて」

 

「ヤダ」

 

 俺はすぐに否定しモップを持った。友奈は膨れっ面を見せた後に掃除に取り掛かった。

 いつもは七人岬を使って掃除をしているせいで逆に暇になり、鏡をきれいにしたり天井や壁も洗っているのだが、勇者の能力がない今それをするには大変な時間がかかるし、飛べないので壁も天井も掃除をすることはできない。

 しゃべりながら掃除をしているとちょうど昼前に掃除が終わった。案の城坤畔には友奈も床掃除をしていた。

 

「ふぅ想定より早く終わった...お昼作るけど何か食べたいものある?」

 

「うどん!」

 

「...わかった」

 

 自分で言うのもなんだがここはひなと君が作るものだったらなんでもいいよというものではなかろうか?そう思いながら小麦粉から作って魔法で保存していたものでうどんを作り始めた。

 

「お待たせ」

 

「全然待ってないよ?」

 

「...作ってる間ずっと俺の後ろにいたじゃん」

 

「あれは早くしてって意味じゃないよ」

 

「さいで」

 

 自分で作ったからか店よりもおいし...くはないか。うどん生産量二位の家庭で作られたうどんよりかはおいしいうどんであった。

 

「ご馳走様!次は何をするの?」

 

「ん?今日はもうやることないし...ゲームでもピクニックでも友奈がやりたいことがあるなら付き合うくらいかな」

 

「私特にやりたいことないよ?」

 

「えぇ...じゃ俺昼寝するけど」

 

「じゃあ私もお昼寝するね。ほらベッド行こ?」

 

「え゛」

 

 こうして俺は友奈の抱き枕になった。力が強いのか俺の体がもろいのかその両方か、ちょっと苦しかった。

 

 

 

 

 翌日はちーちゃんであった。相変わらず俺の洗濯物を運ぶスピードは遅く、ちょっと哀れなものを見る目をされた気がするが運んでいたものを奪ってそそくさとベランダに向かっていったため気のせいだろう。

 息を挙げながらベランダに向かうと半分くらい洗濯物を干し終わっていた。残った半分の三分の一くらい干したら干し終わっていたので前日と同じように風呂掃除をしたら昼の時間となった。

 

「何が食べたい?」

 

「うどん...」

 

「...うい」

 

 昨日と同じように俺はうどんを作くった。

 

 

 

 

「昨日高嶋さんと寝たらしいわね...」

 

「昼寝しただけね?その言い方やめて」

 

「結局寝たことに変わりはないじゃない...でも経緯も聞いているわ...私はゲームがしたい」

 

「んわかった。じゃあゲーム部屋に移動だね」

 

 ゲーム部屋とは名の通りゲームをする部屋である。据え置き機すべてが置かれており、その他ゲームをするうえで快適になるものすべてが置かれている。

 久しぶりのゲームであったが、やることは昔と変わらず俺がボコされて飽きたちーちゃんが協力ゲーを持ってくる流れだった。

 

 

 

 

 

 翌日は杏であった。杏は洗濯籠を二つ持ちながら俺の歩くスピードに付き合ってくれた。心配そうに見てくるのでなんだか居た堪れない気持ちになったがさすがに仕事をしないは嫌なので頑張った。杏が歩幅を合わせてくれたのもあって、干すのに時間はかかったが。風呂掃除を終えた時間は結局昼前だった。

 

「何が食べたい?」

 

「ヘルシーなうどんが食べたいです」

 

「...へるしーナウドン?わかった...」

 

 俺はそうしようと思いながらキッチンへと向かった。

 

(テキトーに具を少なくしてサラダを作ればいいよね)

 

 俺はゆゆゆいでの杏の料理を思い返しうどんを作った。某煮干しもヘルシーということでわかめも乗せていたのでわかめも入れた。

 

「はい、サラダわかめうどん」

 

 おれはゆゆゆいでよく見た?サラダうどんとわかめうどんを合体させたうどんを出した。作ってる途中にめっちゃゆゆゆいがやりたくて仕方のない気持ちになってしまった。

 

「そういえばひなと君は家事が終わった後なら皆さんのやりたいことに付き合ってくれるんですよね?」

 

「うん、常識の範囲内でね?」

 

「そんなことはわかってます。私、ひなと君とお出かけしたいです?」

 

「今から?」

 

「はい、三十分でも構わないので...今のひなと君を見ると昔の私を思い出すんです。病弱だった時の...多分まだひなと君のほうが動けてると思いますけど、でもやることがいっぱいであまり外に私用で行けてないだろうひなと君にちょっとは出かけてほしいなって思って」

 

「わかった!すぐにいこう?」

 

 杏があまりにも真剣に言うもんだから俺はすぐに了承した。

 

「あ、待ってください。メガネを取りに行くので」

 

「あ...そうだったね」

 

 みんなが有名人になってしまったばかりにあまり自由に外に出られなくなってしまったので、よくアニメなどで見る認識疎外の魔法がついたメガネを全員に渡しているのだ。

 それから俺らは町へと出た。杏の読みたい小説を買ったり食器を買ったりどうせ出かけないけど服を買ったり、食材以外の買い物はなかなか楽しかった。だが足の限界のほうが先に来て後半は少しつらかった。でも楽しかったのでよし!

 

 

 

 

 翌日は球子だった。

 

「タマが洗濯物を全部持っていくからひなとは干していてくれ!」

 

 と言われたので今日俺が息を切らすことはなかった。明日は運ぶ。結局俺の干すのが遅いため球子が手伝ってくれた。俺が運ぶという過程がなかったためか、風呂掃除が終わった時間がいつもよりも早かった。

 

「家事が終わったらタマのやりたいことを聞いてくれるんだろ⁉」

 

「当たり前の流れになってるね...まぁそうなんだけど」

 

「タマな、バーベキューしたいんだ!河原で!でもここから河原は遠いし、今のひなとには行かせられない...でも外でご飯は食べたいから庭でピクニックがしたい!」

 

「わかった。じゃあサンドイッチ作るね」

 

「うどんもな!」

 

「...うん」

 

 ピクニックにうどんとは...と思いながら俺は調理をした。まぁいいか

 その日はポカポカとした気温、日差しで絶好のピクニック日和であった。

 

「いい天気ですねぇ...おばあさん」

 

「だ~れがおばあさんだ!タマはまだぴちぴちだぞ!」

 

「確かに子供みたいだね」

 

「身長はタマのほうが勝っているぞ!」

 

「ふん」

 

「あぁ!鼻で笑ったなぁ!」

 

「ふふ、ごめんって。あまりにもいい天気だったから定番のセリフを言いたくって...」

 

「確かにいい天気だけど」

 

「勇者システムが帰ってきてみんなの休みが取れたらバーベキューしようね」

 

「タマ達休みを取らなきゃいけないのか...とれるかなぁ...いや取る!絶対に!」

 

「まぁお姉ちゃんが少し怪しいけどね」

 

 俺は少し悲しげに言った。

 

「この間のは...まぁしょうがない!ひなただって次は大丈夫のはずだ!」

 

 こんな感じに俺たちはご飯をゆっくりと食べ世間話や日向ぼっこをしたりして過ごした。

 

 

 

 

 翌日は若葉であった。

 

 せっかくなんで家事に取り掛かる前に質問をしてみることにした。

 

「ねぇ若葉」

 

「なんだ?」

 

「俺のこと好き?」

 

「...何を言うかと思えば面倒くさいやつみたいなことを...好きでなければ結婚などしていない」

 

「お姉ちゃんに言われたからじゃないの?」

 

「違う」

 

「そう...で、今の俺は好き?」

 

「...くだらないことを言わないでさっさと仕事に取り掛かるぞ」

 

 若葉は答えてくれなかった。

 俺は悲しくなりつつも洗濯籠を運ぶ作業を開始した。たかが一個に両腕を使って顔を赤くしながら運ぶ。若葉はこちらを見向きもせずにすたすたと歩いて行った。俺は悔しくなった。それもそうだろう?いくら弱くなったのに慣れかけているとはいえ成長して再開した時には力は俺のほうが上で俺が二個運ぶということができたはずなのだ。対等に話せるはずなのだ...なのに若葉からの視線は厳しい...俺は少しでも追いつけるように無理やり力を振り絞った。

 

 

 

 

「遅かったな」

 

 ベランダにつくとドアの近くの段差に若葉が洗濯物のかごを置いて座っていた。

 

「はぁ...はぁ......ごめん」

 

 俺は咳き込みつつ洗濯物を干した。先に干すぐらいしてもいいじゃんと思ったが、俺が一つのかごに入っている洗濯物を干す半分以下の時間で自分の持ってきた分を干し終えていたのでなんも文句は言えなかった。

 そしていつも通り風呂掃除へと移行した。

 

「さっき言っていた今のひなとが好きかということだが」

 

 黙々と掃除をしていると若葉から声がかかった。

 

「正直に言うとそこまで好きじゃないな」

 

「...そう、だよね」

 

 わかりきっていた。正直顔を見れば何となく若葉に関してはわかる。明らかに行為を抱いている人物に見せるような顔ばっかを弱くなってからずっと見せてきていたから。

 

「私は今のような精神が体に引っ張られているとはいえ自信が全くなく自分を卑屈にみていたりしているひなとを好きになったわけではないからな」

 

「...弱くなったからじゃないの?」

 

「まぁそれは少し残念だが、どちらかというと性格面でほぼ別人になってしまったというところだな」

 

「別人...か」

 

(俺もともと自分を卑下に見るようなタイプなんだけど...もしかして勇者の時に自分を無理やり鼓舞していた時の自分を若葉は好きになったのだろうか...)

 

「でも頑張ろうとしているときのお前は好きだぞ、やっぱだめだ、みたいに諦めたりして落ち込んでいるだけのお前はやはり嫌いだ」

 

「...」

 

(そうか...やり直しをしまくってた時の俺に若葉はときめいたのか...)

 

 ときめくという言葉はどうなんだと思いつつも俺は掃除をした。

 

 

 

 

「ご飯は...うどんですよね」

 

「ああ」

 

 俺はいつも通りうどんを作った。

 

「体力をつけよう!」

 

 うどんを食べ終わった若葉からそのような言葉が出てきた。

 

「体力?」

 

 俺は食器を洗いながら聞き返す。

 

「そうだ、今お前は体力が落ちているから自信を無くしてしまっている、または弱い体につられて精神も弱くなっている!」

 

「だから体力をつけようと?」

 

「そうだ!よしその食器洗い終わったら道場へ行くぞ!水筒も作ってくれ」

 

「え、あ、うん。わかった」

 

 若干嫌な予感を感じつつ俺は急いで食器を洗うのだった。

 

 

 

 

「よしまずはストレッチだ!」

 

 久しぶりジャージを着た俺に対し、来たな、などの掛け声などもなく急に言ってきた。ストレッチといってもただの準備運動だった。+αでラジオ体操をしただけなのにかなり息が上がってしまった。

 

「よし次はスクワットだ。しっかり深くやれよ」

 

 そういうと若葉はスクワッドを始めた。

 

「私が五十回やって十回できてなかったらプラスでもう十回やってもらうからな」

 

 そんなことを言うので俺は急いでやり始めた。

 

「いぃっ...ちぃ」

 

「なんでそんな卑猥な声を出しながらやるんだ?」

 

 出しているつもりはなかったが無効にはそう聞こえていたらしい。

 

「すまない、悪かった。『出したくて出しているんじゃないもん』みたいな顔をしないでくれ」

 

 三回くらいまではスムーズにできていたのだが、四回目からはものすごく時間がかかってしまった。そして...

 

「五十回終わったが...おまえ...まだ六回しかできていないのか...」

 

「もう動かない...」

 

 そういう俺の足は小刻みに震えており、腰を下ろそうものならそのまましりもちをつきそうであった。

 

「動かせ」

 

 若葉はスパルタであった。無理やり腰を沈めさせられ、そこから放置をするという所業に走ったのだ。

 

「尻をついたらカウントしないからな」

 

 そういわれ俺は休憩をすることができずにいた。三回に一回はカウントされず、十五回目くらいで俺は涙目になっていた。

 

「あぁ...あしがぁ...!」

 

 二十回終わらした俺は地面に寝そべり悶えていた。

 

「次はジョグでいいからここの周り(校庭くらいある)を二周走れ。しかしあまりにも遅いとあれなので私が二十周走るまでに二周していなかったらその度に一周+な」

 

「まだ、立てないんだけど!」

 

 そういうと若葉は俺を無理やり立たせた。くそ!こいつ弱い人の立場を理解してねぇ!

 

「何を弱気になっている。お前は暇なときにこれを一人でするんだぞ?」

 

 そういうと若葉は走り始めてしまったので、おれは重たい足を無理やり動かし走った。しかしそれは傍から見るとただの歩きであった。俺はどんどんと周回遅れとなり結局俺の走る数はどんどんと増えていったのだ

 そして俺の足は本当に限界を迎え...

 

「え...」

 

 まったく力の入らなくなった俺は前に倒れた。その際に足を強くぶつけたがもう感覚すら残っておらず痛くなかった。

 

「おい大丈夫か?」

 

 若葉が駆け寄ってきたので力を振り絞って顔を上げるとほんの少しだけ心配したような若葉の顔があった。

 

「しょうがない...今日はこのくらいにしておこう」

 

 そういうと若葉は俺を子供のように抱っこした。

 

「これやだ...」

 

 そういうと若葉は少しめんどそうな雰囲気を醸し出した後に、お姫様抱っこをした。おんぶがいいという意味だったのだがまぁいいか。

 てっきりリビングにでも運ぶのかと思ったが、若葉が運んだ先はなんと浴場であった。

 

「なんで風呂...?」

 

「よく自分を見てみろ汗びっしょりだぞ」

 

 運動している最中に熱くなったので脱いだジャージの下にあった体育着を見てみるとびっしょりになっていて透けていた。

 

「...」

 

「言っておくが洗濯しているところにお前の下着があったからな?今更だぞ」

 

「別にいいよ...もう何度もこういう場面あったし...なんで一緒に入るの?」

 

「風呂の中で寝られても困るからだ。脱げないなら脱がすが?」

 

 いつまでもたって動こうとしない俺に向かって若葉は言ってきた。正直動けなさそうだったので脱がしてもらうことにした。

 浴室に入り、若葉に体を洗われて湯船につかったと思ったら俺はパジャマを着てベッドにいた。

 

「あれ何でベッド...」

 

 そばにいた若葉が本から目を離し顔を上げた。

 

「気が付いたか、お前湯船につかったと思ったらそのまま寝始めたんだ。しょうがないからある程度浸からせてから体をふいて服を着させてここまで運んできたんだ。ドライヤーでも起きないから多少驚いた」

 

「ありがとう...あ、夕飯!」

 

 時刻を見るともう夕飯を作り終えている時間だったので俺は声を上げた。

 

「大丈夫だ、友奈たちがやってくれている。そろそろできているころだろう」

 

「そう...ならいいけど」

 

 そういって俺は立とうとするが足が全く動かなかった。

 

「どうした早くいくぞ?」

 

 若葉はドアを開け、不思議そうにこちらを見つめていた。

 

「...運んで」

 

 俺は抱っこのポーズをした。

 

 

 

 

「若葉さん...友奈さんみたいなことするんですね」

 

 リビングについて最初の一言は杏のそれだった。

 

「珍しいわね...ひなと君とくっついているなんて」

 

 みんなちーちゃんと同じ思考なのか驚いた顔をしていた。

 

「仕方なくだ」

 

「だったら私がひなと君を見てたのに!」

 

「それもそうだな」

 

 友奈が冗談半分で言った言葉に若葉は冷静に返した。

 ご飯を食べて自室に行くころには足は回復していたので帰りは誰かに運ばれずに済んだ。

 

 

 

 

 

翌朝...

 

(やばい立てない...)

 

 お姉ちゃんの朝食やみんなのお弁当を作ろうとして起きようとしたのだが筋肉痛でなかなか立てずにいた。

 立つのに苦戦していると、『トントン』というドアを軽くノックする音が聞こえた。

 

「ひなと?起きてますか」

 

 ノックしてきたのはお姉ちゃんであった。

 

「うん起きてる。...ちょっと手伝ってくれない?」

 

 そういうとお姉ちゃんはドアを静かに開け部屋に入ってきた。

 

「上半身だけ起こして何をするんですか?」

 

「筋肉痛で立てないの」

 

「あぁそういうことでしたか」

 

 納得したようにつぶやくとお姉ちゃんは俺の両足をベッドの外からだして両手を差し出してきた。俺が両手をそれぞれ握ると強く引っ張られ無理やり立たせられた。

 

「っつぅ!」

 

 立った瞬間ものすごい痛みが足を襲い、俺はお姉ちゃんの方に倒れこむような形で抱き着いた。

 

「あらあら、かわいそうに...リビングに行くときに階段がありますけど大丈夫なんですか?」

 

 お姉ちゃんは俺の背中をやさしくさすりながら言う。

 

「無理」

 

「しかし降りないことには何も始まらないですからね...私が支えるのでゆっくりでいいから降りていきましょう?」

 

「でもそんなことしてたらお姉ちゃん仕事に行けないし」

 

「大丈夫です!今日は少しぐらい遅れても大丈夫なんです!何なら最近は安定してきたのでこれから数年は多少遅れても大丈夫ですし、育休もとれるようになります。ということなので早くいきましょう」

 

 階段を下りている時間は一分が一時間に感じるほど長く苦痛であった。

 お姉ちゃんが少し楽しそうに階段を下りていたのが少しイラついたが無事に降りれたのもお姉ちゃんのおかげなので俺が少しジト目するだけで終わった。

 筋肉痛の痛みに何とか耐えながらお弁当を作り、みんなを見送った後しばらく日向ぼっこをしていると大赦らしき車が敷地の中に入ってきた。というか効果が作用していたら俺らが許して人物しか入れないようになっているので消去法で大赦の人である。

 

「先日は大変ご迷惑をおかけしました!」

 

 最初の一言はそれプラス土下座であった。

 

「気にしないでください。言わなかった俺が悪いので」

 

「そういっていただきありがたいです...ささ、さっそく車にお乗りください」

 

 そういうと後部座席のドアが開いた。

 

「あ、持ってきたわけではないんですね」

 

「はい、さすがにお天道様がこんなにも出ているところで出すわけにも持ち運ぶわけにもいきません。あれはひなと様が持つことだけを許されていて本来は我々は持つこと見ることを許されていませんから...」

 

「なるほど」

 

 適当に相槌を打って俺は車に乗った。シートベルトを締めると車は発進し、森への道を辿るのであった...




途中で終わらすことによって次回余計なことを書かないようにする俺による俺のためのテクニック...
ほんとに次回は最終回のはずです...(のわゆのね)
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