上里ひなとはts勇者である   作:エフさん

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いやぁさすがに一年後にはなってなくて安心


第二話

 走り込みが終わり、シャワーを浴びて横になっていたら日をまたいでいた。お父さんの話からすると今日は乃木家に挨拶をするらしい...

 

「どうして乃木家に挨拶しに行くの?」

 

 出かける準備をしながら俺はお父さんに聞いた。

 

「んー?乃木家とは昔からの付き合いでね、何なら遠い親戚なんだ。子供が生まれるまでは二年に一度くらいはあっていたんだが両家とも子育てに一回集中したくてな、子供が生まれてからはあってないしお互い子供も見たことがなかった。まぁ行ってしまえば少し暇になったから会いに行くみたいな感じだな」

 

 郡家の親戚が乃木家...?なんだか俺の知っているゆゆゆ世界ではないような気がした。もしかしたら同性婚が認められたのってこれが原因なのだろうか?まぁ高嶋友奈が死なないとこの世界成り立たないから妥当な結末かもしれない。

 

「挨拶といっても、勝太に何かしてほしいわけじゃない。適当に乃木家の娘さんと遊んでいてくれ。今日が終わったらまたトレーニング尽くしだ、今日のうちによく休んでおくんだぞ」

 

「はい...」

 

 必要なことなのだろうが、容赦のない宣告を食らい俺の気分は少し下がった。


 車に乗ってしばらく揺れていると片方が城の壁のようなものがずっと続いている道路になった。

 

「なんか左だけやけにずっと和風だね」

 

「あぁこのずっと続いているのが乃木家の敷地だ」

 

「えこれ全部?乃木家ってそんなすごいの?」

 

 気になったので俺は聞くことにした。

 

「乃木家は政治などに大きくかかわっているからな...郡家は大赦に所属していて子孫繁栄さえしてしまえば働かなくても過ごせるから楽なのは郡家なのだがすごいのは乃木家だな」

 

「働かないといっても大赦の集まりには参加しなくちゃだめよ?あと大赦の命令に従わないと」

 

「フーンそうなんだ...」

 

 身もふたもない話を聞かされた。というか子供を産んでしまえば働かなくても生きていけるのか...いやしかし大赦に所属...う~ん...

 少し複雑な気分になりながら車に乗っていると車はでかい門を通り、あたりには木々しかなかった。しかし、道は舗装されているのか全く揺れは感なかった。そして目的地に着いたのか車が止まった。降りて乃木家がどんな家なのか見てみると寝殿造りの建物があった。築地塀・門、寝殿、対の屋、庭園・池・釣殿・泉殿・作泉、車宿・待所...そのすべてがそろっているようだった。しかも一つ一つがでかい。一つ一つが元ネタであろう平安時代の寝殿造りの建物よりも何倍もでかいのではないだろうか?

 

「使用人さんがいる...」

 

 目の前には道の両端に使用人が等間隔で並んでいた。

 

「お父さんとお母さんがたまにしか働いていなくて暇だから我が家に使用人がいないだけだぞ?使用人自体は雇えるからな?」

 

「変な見栄を張るんじゃありません」

 

 お母さんが軽くお父さんをチョップしてるのを横目に俺はその経済力の差に圧巻されていた。

 

(乃木家スゲー!)

 

 実際すごいことはわかっていた。だが実際で見るとさらにすごい(語彙力皆無)

 

「さぁ二人とも、よそはよそ、うちはうちの精神で比較はやめてさっさとあいさつに行きましょう」

 

 そうお母さんに促されたので俺はあまり周りを見ないでまっすぐ向いて歩き始めた。しかし比較をしないのは無理である。

 屋敷の中に入ったらてっきり和風な景色が見られるものかと思ったら違っていた。外側木でしたよね?と思うほど壁は人工物の大理石っぽい見た目をしていて、廊下にはたまに美術品が飾られていた。廊下の幅もうちよりも広く、カーペットが永遠に敷かれているように感じた。

「お母さん」

 

「何?勝ちゃん」

 

「これで比較しないでは無理かも」

 

「ええ、さすがに私も無理よ」

 

「べ、別にいいだろ?うちもそこそこ広いしゲームで埋め尽くされた部屋だってあるし、本で埋め尽くされた部屋もあるし、それぞれの部屋もあるし、客人用の部屋も何部屋かあるし...」

 

「乃木家のほうがいいなんて一言も言ってないわよ。ただすごいとは思うけど」

 

「そ、そうか...」

 

 お父さんは安心した様子で一息ついていた。そんな感じで靴からスリッパに履き替えたところで一家団欒していると目の前の廊下から人が歩いてきた。

 

「やぁ、郡君久しぶり」

 

「ほんとに久しぶりだな。少しやせてるかと思ったがあんまり変わっていないな」

 

 そうやってお父さんと話し始めたのは誠実そうな黒髪の男性(以下:乃木父)であった。

 

「で、その子がそうなのかい?」

 

 話している途中に子供の話題にでもなったのだろう。大人たちの視線は俺に集まった。

 

「ああそうだ」

 

「隠し子とかではなく?」

 

「失礼ね、ちゃんと産みました」

 

「すまないね、いかんせんジンクスがあったじゃないか」

 

 話の空気がつかめないまま俺は話を聞いていた。

 

「まぁな、だからおやじとかそこら辺のほうからめちゃくちゃ褒められたよ。この時代で男を産んで褒められるなんてないはずなんだけどな」

 

「男を産むのが君たち郡家の悲願だろ?」

 

「...この話はあとでにしないか?」

 

 気づけば気まずそうにお父さんがこちらを見ていた。なんでだろ...

 

「それもそうだこんなところで立ち話をしてしまえば爺さんたちがくたびれてしまうな」

 

 大人たちが歩き始めたので、俺も続いた。

 

「珍しいわね、あなたが冗談を言うの」

 

「正直家にあの人たちを招待はしたくなかったからな」

 

 話が終わったのか少しの静寂が訪れてから、お父さんはこちらを向いた。

 

「いいか勝太。今からお前は大人たちの前で自己紹介をしなければならない。できるか?」

 

「うん。でもそんな礼儀正しくはできないかも」

 

「大丈夫だ、あまり気にされない。お前は存在さえしていれば大人たちは満足するからな。それが終わったら子供同士で遊んでなさい。俺たちは少し話し合いをしなければならない。わかったか?」

 

「了解であります」

 

 そうこう話しているとでっかい扉の前についていた。何のためらいもなしに乃木父はドアを開けた。すると中にあったのは大きな部屋ではなく、右側にものすごくでかい靴置きがあり、スリッパが規則正しく並んでいた。そこはまるでもう一つの玄関であった。気の段差が一つだけありそこから先は畳のようだ。スリッパを脱いで乃木父がふすまを開けるとたくさんの大人がものすごく細長い楕円になって星座していた。円の一部はかけていてそこに座れと言っているようだ。そこにたどり着くとお父さんは椅子に座らずすぐに口を開いた。

 

「前置きなしで話させてもらう。この子が私たちの息子だ」

 

 そう紹介すると少しのざわめきが起きた。ざわめいている間に俺はお父さんに肩をたたかれた。どうやら自己紹介を促しているようだ。というかウソつき!これじゃ乃木家に挨拶しに行くんじゃなくて大赦に挨拶してるようなもんじゃん!

 

「郡勝太です...これでいいの?

 

 不安になりながら父親のほうを見る。父親は頷き、入ってきた扉の方に手をかざした。

 

「娘の部屋はここを右に出て、二本目の十字路を左に曲がり、外国の甲冑が並ぶ廊下の方へ進んだらシカの壁飾りがあるので斜めに入る、その先に葵竜が描かれているツボがあるからそこを左に曲がって見える白いドアだ」

 

 乃木父が俺に耳打ちをする。それに対してコクコクとうなずき俺はあの重い空間からすぐさま退散した。ちなみにもう忘れた。

 

「...まぁ何とかなるだろ」

 

 俺は根性で頑張ることにした。

 

 

 

 

十数分後...

 

「...全然つかないしわかんない」

 

 俺はほぼ半泣きになりながら歩いていた。何が休憩しろだ、道が分からない分普段のマラソンより精神的にきついわい!うぅ...シカの壁飾りってなんだよぉ...そんなの全然ないよ...

 

「あのぉ...どうなさいました?」

 

 俺が半泣きになっているからかそれとも子供だからか、その両方か使用人さんが声をかけてくれた。

 

「えっと、この家?の娘さんに会いたいのですが道が分からなくて...」

 

 鼻をすすりながら事情を話すと目の前の使用人は少し気まずい顔をしていた。

 

「こちらは園子様の部屋と真反対の方向です...案内しますのでついてきてください」

 

「はい...」

 

 俺は半べそをかきながらついていった。ものすごくくねくねと曲がりながら20分ほど歩くと使用人が止まって扉の方に手を向けた。

 

「こちらです。私がノックさせていただきますね」

 

「ありがとうございます...」

 

 返事をすると使用人さんはすぐにノックを四回した。

 

「園子様お客様をお連れいたしました」

 

「はーい」

 

 中から元気な声がすると使用人はドアを開き、中に入るよう促してきた。

 

「ありがとうございました」

 

 俺はお礼をしてから部屋の中に入った。

 

「お、おじゃましまーす...」

 

 中は俺がちょっと昔に見せてもらった暫定俺の部屋よりも数倍大きく、倉庫にされているということもなくもはや大学生の家の数倍は広くきれいな部屋であった。俺高校で死んだから大学生がどんなもんか知らないけど...

中に入ると目の前には天使かと思うほどの可憐さを持つ金髪の幼女がいた。

 

「私の部屋に大人以外が来るなんて初めてなんよ〜さっ、こちらにどうぞ〜」

 

 そうして俺はキラキラとした目を向けられながら真ん中にある机にとうされた。机の近くには対面させようとしているのかなかなかに分厚い布団らしきものがあり、辺りにはサンチョが沢山存在していて全てが机の方向を向いていた。少し怖い。周りのサンチョを気にしながら座布団だか、クッションに正座すると、園子は鼻歌をしながら近くのサンチョを取り抱き抱えながら対面に座った。

 

「ねぇお名前なんて言うの?最近私漢字をお勉強したから漢字も知りたいなぁ〜あ!名前を聞くからにはまず自分からだよね〜。私は乃木園子庭園の園に子供の子だよ〜」

 

 目の前の少女は俺を見つめている

 

「...あ、俺の番か。俺...僕は郡勝太、漢字は勝利の勝で、太は太陽の太だよ」

 

 目の前の少女のマシンガントークに圧倒されながら俺は返した。というか漢字って...今幼稚園生よ?

 

「じゃあ()っちゃんだね」

 

 俺はそのうち額に絆創膏を貼る系主人公になるのかもしれない。郡家ということもありカードゲームの才能もあるかもしれない。そんなことを思っていると園子はまたもや目をキラキラと輝かせてこちらを見つめていた。どうやらこっちにあだ名をつけたのでお返しが欲しいようだった。

 

「...じゃ、そのちゃんで」

 

「わぁやった!私園子以外の呼び方されるの初めて〜!」

 

 さっさと言わなければ失礼と思い適当に2文字を取っただけだが喜んでいるようで何よりだ。それにしても可愛らしい部屋だと思ったが本棚には子供とは思えない本が沢山あった。園子が興味を持ったのか、それとも乃木家の長女として部屋にあるのかどちらなのだろうか...?

 

「そのちゃんって本読むの?」

 

「ん〜?あぁその本たちは退屈だな〜って思ったら読んでるんよ〜。本を読むために漢字勉強したんよ〜。そんなことよりなにかして遊ぼ〜私友達と遊んだことないんよ〜」

 

「...まぁ遊ぶということには何も反対は無いけど何で遊ぶの?」

 

 辺りを見渡しても遊び道具というものはなかった。サンチョは大量にいるんだけどね。

 

「ん〜、あ!私おままごとしてみたいな〜」

 

「じゃあそれで」

 

 実に年頃の女の子らしい意見が出て少し安心した。これでよくわからん遊び提案されてたら少し困っていたところだ。例えばサンチョごっことか?

 

「役はどうするの?」

 

 向こうがやってみたいというのだこちらが役を決めては楽しめないかもしれない。そう思い全てを託したのだが

 

「私がシングルマザー役で勝っちゃんはその子供ね。でこのサンチョがペット、あのサンチョが不倫が発覚して離婚した元夫、そのサンチョが浮気相手・・・」

 

「???」

 

 リアルおままごとだろうか?そう思いながら本棚を見ると浮気などのドロドロとした恋愛を題材にした本が1箇所に固まっていた。ちょうど園子の頭の位置くらいにあったので最近読んだのだろう。というか園児にこんな感じの本渡すなや。

 

「どぉ?覚えられた?」

 

「ごめん...ちょっと覚えきれなかったかも」

 

 部屋の中に20匹?体?いるサンチョすべてに役を与えられているため俺は覚えられずにいた。決して考え事をしていたためではない。

 

「そっかぁ~でも大丈夫だよ~。勝っちゃんはあんあまりほかの役の子と関わりないから~」

 

「そっか...じゃあ安心だね」

 

 正直俺はもう試行放棄をしていた。そうしているといつの間にかおままごとは始まっていたらしい。園子はぶつぶつとサンチョに対して話しかけていた。正直俺に話しかけられるのは数回で、適当にお母さん思いの息子役を演じていたら園子は満足していた。年齢を聞かなかったからどのくらいのを演じればいいのかわからないんだよね。しばらくしていると園子が泣きまねをしてから少し大きな声を出してサンチョをポンと軽く殴った。確かあのサンチョは浮気した元夫だったはずだ。

 

「ふぅ...」

 

 どうやらおままごとはいったん終わりらしい。さっきまでの少しこわばっていた顔が緩やかになっている。

 

「人生初のおままごと楽しかった~」

 

「ならよかった」

 

 正直俺は何にもしていないのだが...まぁ園子が楽しそうにしているから別にいいのだろう。

 

「はしゃいだら疲れちゃった...」

 

 そういうと園子は近くにあったサンチョを枕にして別のサンチョを抱き始めた。なんてマイペースなんだろうか?やることがなくなった俺は本棚の前へと足を運んだ。

 

「この本棚、倒したら俺の部屋の半分くらいありそうだな」

 

 そう呟き、どんな本があるのか見る。学問の本だったり小説だったりと色々なジャンルの本が存在していた。俺は適当に小説らしきものを手に取り読み始める。読み始めてわかったがこれホラーだ。結構グロイこと書いてあるけどよく渡したな...まぁホラーは苦手だが映像じゃないし大丈夫だろうと思い読み進める。

 

 

 

 

 その本が読み終わるころには日が沈んでいた。俺が本を読んでいる間に園子は起きることはなく、使用人やお父さんたちは来なかった。

 

「随分時間がかかってるな...正直何を話しているかはどうでもいいんだけどここまで遅いときになるな」

 

 部屋を抜け出すことを考えたがこの屋敷の広さを思い出しその考えは一瞬で無くなった。もう一冊読み始めるかと思い本棚に足を向けた瞬間扉が二回たたかれ、園子のお父さんが入ってきた。

 

「園子は...ねてるのか」

 

 俺一人本棚に向かっているのを見て娘の状態が気になったのだろう

 

「すまないね...退屈だっただろう?」

 

「いえ...本を読んでいたためそれほど」

 

「そうかい。ならよかった」

 

「話し合いは終わったのですか?」

 

「ああ。君のお父さんたちは先に帰ったよ」

 

「...は?」

 

「今日はここに泊まるといい。明日迎えに来るそうだ」

 

「はぁ⁉」

 

 さすがにお泊りイベント回収するの早くないか?俺は置いていかれた両親の恨みはすぐ忘れそう能天気なことを考えたのであった...




また十月に投稿してたりしてね...
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