上里ひなとはts勇者である   作:エフさん

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プロローグ5(リメイク)

「ひなと、着いたわよ」

 

 俺はお母さんに肩を揺さぶられ目を開ける。視界がぼやぼやしていて、脳があんまり仕事をしてくれないので道中で寝たんだと思った。

 俺はあくびをしながら車を出て目の前の一軒家を見る。新築だからか物凄く壁がきれいだった。しかしやはり前の家よりかは一回り、二回り小さかった。

 

「もう部屋に必要なものは置いてあるはずだから見ておいて。ちなみに二階の奥ね」

 

「わかった」

 

 お母さんが玄関を開けながらそう言った。玄関で靴を脱ぎ、前よりも細く短くなった廊下の真ん中にあった階段を上り、前よりも急になった階段を手すりを掴みながら登る。そして上った先に三つドアがあり、俺は奥にあったドアの方に向かった。

 ドアを開けるとベッドと勉強机とタンスがあり、それだけで何か大きいものを置けるスペースはなかった。しかし

 

「狭いってなんか落ち着く~」

 

 前の部屋がお姉ちゃんと同じだからと言っても広すぎたので俺はこっちのほうが良いと感じていた。まぁ過ごしているうちに前の方がよかったって思うんだろうけど...

 

「ひなと~、お母さん今からご近所さんにあいさつしてくるけど一緒に行く~?」

 

 俺が新しいベッドの寝心地を確かめているとお母さんが下から呼びかけてきた。

 

「いいや~、でも散歩には行きたーい」

 

 どうせ良好な関係にはなれなさそうな予感がするので俺はそんなことを言った。

 

「わかった~。じゃあお母さんが挨拶している時に散歩をすることでいいわね?」

 

「うん」

 

「じゃ早速行くからさっさとしてに降りてきなさ~い」

 

「は~い」

 

 俺は下に降りてお母さんと玄関から出た。さっきは家しか見なかったからわからなかったが辺りは自然いっぱいで、たまに家などの人工物があるといった感じだった。

 

「きれ~」

 

「そうね」

 

 それにしてもお母さんはご近所などと言っていたが、そんなものは近くに存在しておらず少し歩けばやっと家があるといった感じであった。

 

「じゃ、村回ってくるね!」

 

「それはいいけど迷子にならないでよ?」

 

「大丈夫!」

 

「本当に大丈夫?ひなと、たまに方向音痴なとこあるからお母さん少し心配...」

 

「...大丈夫だし」

 

「ま、信じるとするわ」

 

 そして俺はお母さんと別れた。俺はまだ散歩を開始しないで、家から奥の方をじっくりと見ていた。すると小学校っぽいのが見えた。

 

「意外と遠いな~。あの距離を歩くのか...ま、一回歩いてみますか!」

 

 目的地が決まった俺は散歩を開始した。

 

 

 

 

「思ったより近かったな...」

 

 周りの景色が、山と田んぼと家と電柱から変わらないうちに俺は学校に着いた。

 

「前の学校よりかは少し小さくて木造だな...」

 

 目の前にある学校はそれはもう昔の学校という感じがしていた。

 

「さて、学校まで行けたことだしさっさと帰るとしますか」

 

 そう俺は呟きながら帰路を辿った。少し迷いかけたが無事家に着くことができた。

 家に帰るとちょうどお母さんがあいさつ回りを終えたところだった。

 

「お帰り、学校はどんな感じだった?」

 

「ただいま、前より少し小さいかな...あと行きと帰りの道の変化が乏しい」

 

「そう...まぁそれはともかく明日から学校だからさっさと引っ越しの片付けをしてしまいましょう...って言ってもほぼ引っ越し業者さんがやってくれてて衣服を入れるだけなんだけどね」

 

「そーなのかー」

 

「そうなのよ。あ、自分の服は自分で入れてね。ちなみに今日のご飯は引っ越しうどんが余ったからうどんよ」

 

「そこはそばじゃないのね」

 

「なんか言った?」

 

「イエ!マリモ!」

 

 そう言って俺らは家に入り、片付けや明日の準備など諸々やって寝た。

 

 

 

 

翌日...

 

ひなと...ひなと...ひなと起きなさい!」

 

「...お姉ちゃん...?」

 

 肩を揺さぶられて俺は起き、ぼやけた視界で見えたものを俺は呟いた。

 

「はぁ~完全に寝ぼけているわね...」

 

 いつも起こしてくれている人とは違う声が聞こえ俺の意識ははっきりとしたものになった。

 

「あれ?お母さん?」

 

「...学校、遅刻するわよ。転校初日で遅刻とかだいぶ目をつけられるわよ」

 

「転校...あぁ...道理で...」

 

「ご飯できてるから早く下に降りてらっしゃい」

 

「はーい」

 

下に降りるとお母さんはスーツ姿で机の上には鍵と目玉焼きと食パンがあった。

 

「私もう行かないとだから、しっかりご飯を食べて家の鍵を閉めて言ってね」

 

「はーい。行ってらっしゃい」

 

「行ってきます」

 

 俺はお母さんが仕事に向かったのを確認し、急いでご飯を食べ、出されていた服を着てランドセルを背負い家を出た。もちろん鍵は閉めたよ。そして目の前にかすかに見える学校を目指し俺は歩き始めた。

 最初は俺しかいなかった小学生も学校に近づくほど多くなっていった。小さい村で同じ学校の人を認識しているからか、こいつ誰だ?という視線がちょくちょくあった。

 

(下駄箱に着いたはいいけど...靴をどこに置けばいいんだろう)

 

 俺は適当に三年生の場所において手提げバッグから上履きを取り出し、職員室に向かった。

 

「三年何とか組の上里ですが...三年生の先生いらっしゃいますか...?」

 

 ドアをノックしてから入って用件を伝えたが、どの先生もこちらを見るだけ見て何にも反応を示さなかった。

 

(はぁ、帰りたい)

 

「ん?君何でこんなところで立ってるの?」

 

 後ろから声を掛けられ見てみると、スーツを着た中年のおじさんが立っていた。

 

「えーっと...今日から転校することになっていたものなんですが...どこに行けばいいのかと思って、職員室に来たはいいけどそこからどうすればいいのかな~って思ってたからです」

 

「ずいぶん長ったらしくてわかりにくい説明をどうもありがとう。話は聞いてるよ、僕が担任だからさっさと教室に向かいましょう」

 

「あ、はい」

 

(なんだろう...俺今めっちゃ馬鹿にされなかった?)

 

 心に生まれたもやもやを無視して俺は先生の後ろを歩いた。

 

「いいですか?私が朝の会の途中で呼びますのでそしたら名前さえ言ってくれればいいです」

 

 教室に着いたのか、先生はドアに手をかけながら言った。

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

三分後...

 

「はいってきてー」

 

 ドアの向こうから声がかかったので、俺はドアを静かに開け黒板の前まで歩いた。視線が大量に向けられていた。珍しいものを見る目、興味がなさげな目、時計を見る目...

 

「上里ひなとです」

 

 俺が自己紹介しても先生はそこから話を進めようとしなかった。

 

「え、それだけ?」

 

 口を開いたかと思ったら出てきた言葉はそれだった。

 

「...香川から来ました。これからよろしくお願いします」

 

 心にも思っていないことを言いながら俺は頭を下げる。

 

「はい。というわけで転校性の紹介でした。上里さんは三号車の一番後ろの席ね」

 

 先生が指差した方向を見るとぽつんと一つ席があった。どうやら俺がこのクラスに入ったことにより偶数クラスが奇数クラスになったようである。体育の時心配だな...

 そこから先生は無駄に長くわかりにくい今日の動きを説明した後に職員室に帰っていった。

 先生が帰った後、俺に珍しいものを見る目をしていた人たちだけ集まってきた。

 

「ねーねー香川から来たんでしょー?うどんおいしいの?」

 

「うーんおいしいとは思うけど毎日食べてるとおいしくなくなるかな」

 

 あとは質問が思いつかなかったのでカットする。

 

 

 

 

 

 新学期で三時間しかなく、さっさと帰ろうとしていた時であった。突然世界が止まった。止まったというよりかはゆっくり動いてはいる。

 

(あれ、これは若葉とくみ手をしようとしたときにいつも発生する現象...)

 

 これが発生するということは体が戦闘モードに入ったということである。この状態で体を動かすと動かした分だけ世界も動くため、感覚で何が起きているのかを探る。

 

(は?)

 

 感覚で探って分かったことは階段から人が落ちてきているというのであった。俺は慌てて階段の方向を向き、受け止める姿勢を作る。

 

「うおっ⁉」

 

 向いた瞬間階段から落ちてきた人は目の前にいて、そのあとその人の重さが伝わってきた。しっかりその人を受け止められたことを確認してから階段の方を見ると慌てて逃げる人の姿が映った。

 

「ねぇ」

 

 俺が階段の方向を睨んでいると下の方から声がかかる。見ると受け止めた人が死んだ目と表情でこちらを見ていた。

 

「あ、ごめんなさい。降ろしますね」

 

 俺は足の方から降ろしていった。

 

「けがはないですか?」

 

 目の前の黒髪ロングの少女は何も言わずに階段を下りて行った。俺は黙ってその後姿を見ていた。

 

(まさかこんな早く会えるとは...)

 

 階段から落とされる人物なんてこの世界では俺の想像している人以外いないであろう。

 俺は今日得た収穫にウキウキしながら家に帰った。

 

「ただいまー」

 

 家に帰ってもお母さんはおらず、俺は部屋でダラダラ過ごすことにした。部屋に言ったはいいがすることはなく、俺はゴロンゴロンと部屋を何往復もしていた。

 

(あー暇だなー...)

 

 そんな感じで新しくなった天井を見ていると下の階から何やら電子音が聞こえてきた。

 下に行ってみると電話が鳴っていた。

 

「あれ、実家の番号じゃん」

 

 電話に表示されていた番号を見ると小学一年生くらいの時に宿題として覚えさせられた番号があった。セールスなどの知らない番号はともかく知っている番号なら取らない理由はないので俺は受話器を取った。

 

「はいもしもし」

 

『もしもし、お姉ちゃんですよ~』

 

「切るね」

 

『え⁉ちょっ!』

 

「冗談だよ」

 

『笑わないでください』

 

「はいはい。そんなことより何の用?」

 

『...私がひなとの高知へ引っ越すのを許可するときに出した約束を覚えていますか』

 

「なんかあったっけ?」

 

 普通に思い出せなかった。

 

『毎日電話をすることですよ』

 

「あー」

 

『あーって何ですか...昨日ひなとは私に電話をしてくれましたか?』

 

「してないです...」

 

 急に低音になるお姉ちゃんに対し俺は返事をすることしかできなかった。

 

『そうですね。してません。次こういうことがあったら私はひなとを無理やり連れだし監禁するか、若葉ちゃんを誘拐してそちらに行きますのでそういうことで...』

 

(あれ?じゃあ若葉に来てもらってここの連中をボコしてもらえばいいのでは...?いやさすがにやめておくか)

 

「あ、はい...で俺は今日の報告をすればよろしいのでしょうか...?」

 

『そうです。今日会ったことをすべて隠さずに行ってください』

 

「...まず、ちょっと寝坊して」

 

『寝坊⁉』

 

「お姉ちゃん、いちいち突っかかってたら日が暮れちゃうよ」

 

『そうですね...続けてください』

 

「えーっと、一人で朝ご飯を食べて、家の鍵を閉めてから学校に向かってー、職員室に行ったかと思ったら誰も反応してくれなかったでしょー、(中略)でー、帰るときに女の子が降ってきたから受け止めた」

 

『...』

 

「え、お姉ちゃん?」

 

 さっきまで相槌をしてくれていたのに急に無言になった。

 

『すいません。聞き取れませんでした。もう一回お願いできますか』

 

「女の子が降ってきたから受け止めた」

 

『どういう状況ですか⁉』

 

「俺が聞きたいよ!」

 

『そのあとはどうなったんですか?』

 

「えーっと、何にも言わずに去っていった!」

 

『なんて失礼な方なんでしょう...お礼も言わなかったんですか?』

 

「うん。そうだけど...でもしょうがないと思うよ。受け止め方がお姫様抱っこだもん」

 

『お姫様抱っこ...ずるい...しかも何にも言わないんなんて...もし私ならそのまま部屋まで連れて行ってもらってそのまま抱きしめて…」

 

「お姉ちゃん?おーい」

 

『っは⁉ごめんなさいひなと今日お姉ちゃんにはちょっとやることができたから今日はこの辺にしておきますね。明日も報告、忘れないでくださいね?』

 

 それだけ言ってお姉ちゃんは通話を切った。

 

「お姉ちゃんだって挨拶しないでどっか行ってんじゃん...」

 

 俺は受話器をまだ耳元で持ちながらつぶやいた。そして黙った自分の部屋に行き、布団の中で丸まった。

 

 

 

 

ひなと...ひなと!」

 

「ん~?お母さん...?」

 

「は~まさか一日で二回も起こすとは思わなかったわ...」

 

「なんかごめん」

 

「別に謝る必要はないわ、帰ってきても声が聞こえなかったから少し心配しただけよ。そう言えばひなたに電話しなくていいの?」

 

「向こうからかかってきたよ。報告したら報告しただけでそこから一方的に切られた」

 

「拗ねてるの?」

 

 お母さんが少しから買う様子で聞いてきたが無視する。

 

「ご飯ができたから一緒に食べましょ?今日もうどんよ」

 

「...」

 

 少しけだるい様子を出しながら俺は下に降りた。




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