生き物は集合精神を通じて、『ビースト』の目から世界を見ていた。凄まじいスピードで風が、雲が、景色の全てが後ろに流れていく。あいにくと物見遊山と洒落込むような精神は今の、外部刺激により目覚めさせられた本能だけは著しく発達しているものの精神性はまだ生まれたてゆえに未熟な種でしかない生き物には持ち合わせてはいなかったが、それでもその広さ果てしなさははっきりとした自我を得てからは研究所内部の風景しか知らなかった生き物にとって純粋な驚きだった。
そしてその空のはるか遠くに、1つの黒点が浮かび上がった。互いに猛スピードで接近する黒点はその距離が詰められるにしたがってぐんぐんと大きくなり、やがて人間の形をとる。
生き物は理解した。これこそが驚異の正体……『敵』だと。
『敵』は空中に留まりつつ、手にした武器らしき光る棒をこちらに向けながらも信じられないものを見るような目で『ビースト』を……そしてその奥にいる生き物のこともはっきりと見ている、そんな気がした。無論、それはあり得ないことだろう。この研究所にいた人間は誰も彼も、『ミュートリアル』達の向こう側で見ている生き物の存在には気が付かなかったのだから。
おそらく、攻撃の機会は今だろう。研究所の人間がそうであったように、この『敵』も『ビースト』の姿を見て精神が硬直状態にある。生き物はそう判断し、『ビースト』の自我もそれを支持した。
「 !!」
『ビースト』の口から鳥とも獣ともつかない、低い唸り声とも金切り声ともつかない形容しがたき音が漏れ、翼を巧みに操りホバリング状態から一気に距離を詰めてその異常に発達した剛腕が目の前の小さな『敵』の細い首を刈り取らんと振るわれる。
「問答無用、ですか……!イーグルブースター、起動!」
しかし目の前の『敵』は、やはりただの人間ではなかったようだ。到底見切れるはずもない剛腕の速度に対抗して何事かを鋭く叫ぶと、その背から鋭利な刃のような形をした金属の翼が生える。その翼が火を噴き、信じがたい速度で避けられるはずのない一撃を更に上空へと回避しようとしたのだ。
だが、しかし。人間の反応速度をはるかに超えるその回避を、『ビースト』は捉えていた。もしこの場にいたのが『ミスト』や『アームズ』……そうなった過程こそまるで違えど生身の体を機械のガワに寄生させることで効率よく戦闘力を手に入れた、という点では共通する残り2種の『被検体』の進化の果てであったならば、その速度には反応しきれなかっただろう。そう、生き物は分析した。それらの索敵能力は、寄生したそれのレーダーや内蔵カメラの域を越えられないからだ。
だが、『ビースト』だけは違う。生体としての要素を強く押し出す形に進化を遂げたその能力は、ひとつひとつでは機械に敵わずともいくつもの要素を重ね掛けすることで、時にそれを凌駕する。例えば、昆虫の持つ複眼による観察。例えば、コウモリやイルカ等の持つ超音波での空間把握、通称エコーロケーション。そういった無数の生物の特徴をすべて同時に行うことで、『ビースト』は機械仕掛けよりもなお速い『敵』の反応速度の、そのさらに上をいく。
「 !」
大きく口を開いた『ビースト』が、空に浮かぶ雲を散らすほどの衝撃で怪音波を放つ。その周波数と共鳴を起こし急速にその耐久力を失っていく金属の翼が、ぼろぼろと空中で崩れていった。
「そんな!?……きゃっ!」
当初の目的通りに首を刈ることにこそ失敗したものの減速したその胴体に、『ビースト』の剛腕が横薙ぎに叩き込まれる。いかに『敵』が強大だろうとも、その姿が人間のものである以上は弱点も人間のそれと同じ。すなわち、予想外の事態が発生し不意を突かれればもろい。研究所で散々見てきたその事実を、生き物は改めて実感した。力を失って地表へと落下していくその体を見下ろしたその目は、しかし次の瞬間驚きに見開かれた。
あの『敵』は、まだ生きている。確かに、決して無傷ではない。体表の色は当初の緑から白へと変化しており、その目は固くつむられたままだ。今なお落下しながらも、空中で姿勢を立て直そうという気がその姿からは見られない。だが、間違いなく生きている。
生き物はためらった。ここで『ビースト』に追撃をさせるべきだろうか?落下するあの体を掴み上げ、地面に叩きつければ間違いなくあの『敵』は絶命するだろう。だが、もしもその判断が間違っていたら。そもそもあの『敵』の受けたダメージとその影響を、こちらが見誤っていたら。しかし『ビースト』自身の自我はあえて集合精神の、生き物自身の考えを振り払った。このまま戦い続ければ、索敵にこそ優れるものの純粋なパワーでは機械仕掛けの体に及ばない生体では不利になることを誰よりも理解しているのは、他でもない『ビースト』自身だった。ならばここで、少しでも有利なうちに一気に仕留める……それは、生体の要素が強いがゆえに芽生えた狩猟本能のようなものだったのかもしれない。
鋭く伸びた鉤爪を掲げ、落ちていく『敵』を追い『ビースト』もまた急降下を始めた。
君の意識は、実は落下しながらも明瞭としていた。不意を突かれたのは確かだし、イーグルブースターを破壊されたことが完全に予想外だったことは間違いない。しかし、あの生物の前で見せている姿ほど弱っているわけでもない。特殊合金製の『閃刀』スーツは、丸太を振り回すかのようなすさまじい一撃をまともに受けてなお君の骨がへし折れたり、そのまま内蔵に突き刺さることを防ぎ切ったわけだ。そして君の耳に、小型通信機を通じてオペレーターのほとんど悲鳴に近い叫びが届く。
「レイちゃん、レイちゃん!」
「……大丈夫です、私は平気。それよりも、イーグルブースターの損傷状況を教えてください」
唇を動かさずとも、君のその声は遠く離れたオペレーションルームへと届く。深呼吸らしき音の次に君の耳に入ったのは、どうにかパニックを抑え込んだらしいオペレーターの通信だった。
「ごめんなさいレイちゃん、もう大丈夫。でも状況はかなり悪いわね、翼どころか予備エンジンもボロボロ、帰還するまで再度の使用は無理ね。それと、今の衝撃で『ハヤテ』が解けているわ。次の『閃刀』の準備を」
「……あの生物、こちらに来ていますよね。接触2秒前に合図をください」
君も、オペレーターも。お互い聞きたいことはたくさんあっただろうけど明らかな敵対存在を前に、戦場の予断を許さないこの状況ではのんきにお喋りもしていられない。質問も疑問をすべて横にのけて今この瞬間に必要なことだけを短く要求するその姿は、まさしく歴戦の戦乙女と呼ぶにふさわしいものだろう。そして君がプロであるということは、同じくオペレーターもまたプロであるということだ。何を狙っているのかなんて、いちいち君に聞き返したりしないのだから。
「4、3、2、1、今よ、レイちゃん!」
「これ以上はやらせません、今度は私のターンです!『閃刀姫-カガリ!』」
瞬間、落下するだけだった君の両目がカッと見開かれた。『閃刀』スーツもまたその意志に反応して瞬間的に白から紅蓮に染まり、手にしたままの『閃刀』が溢れるエネルギーを炎に変えてその刀身に解き放つ。
これこそが、『閃刀姫-カガリ』。君の使用可能な『閃刀』の中でも、もっとも高いシンプルな火力と機動力で一点集中突破に向いた最大の攻撃形態だ。今回の出撃においてはただ1度しか使用不可能ないわば切り札ではあるが、それを出し惜しみしないこの判断は果たして吉と出るか凶と出るか。
その直後、この空で接敵した怪生物……『ビースト』が君の体に組み付いた。無論、イーグルブースターの使用を読んで先手を打ちそれを潰すほどの難敵が、これほどわかりやすい君の変化を見過ごし無策で突っ込んでくるはずもない。その何よりの証拠を、君は見た。ある程度の反撃は覚悟しているのだろうか、すでにその体表の細胞は変化を初めており、先ほどまではなかった魚のような鱗がその半身を覆いつくしている。
ただ『ビースト』に誤算があったとすれば、あまりにも『カガリ』の火力の見積もりが低かったことだ。君は胸ぐらを掴まれながらも笑い、燃え盛る『閃刀』の切っ先をその巨大な目玉へと向ける。
「かかりましたね、この距離でなら『術式』は外しません……アフターバーナー!」
瞬間、君の持つその剣先は数倍に伸びた。いや、伸びた、という表現ではまだ正確ではないだろう。突如としてそれまでの勢いをはるかに上回る勢いで噴出した炎の刃が、せっかく生やした鱗ごといともたやすく『ビースト』の脳天を焼き貫いたのだ。つまり、これが君の策。あえて自由落下に身を任せることで自分が実際よりも弱っていると誤認させ、追撃に来たところを超反応での回避がしようもないレベルにまで近づいたところに一撃を叩き込む。合理的ではあるが、それを見せられていたオペレーターにとってはたまったものではなかったらしい。
「無茶するんだから、もう!」
「すみません。でも、もう大丈夫ですよ。それにしても、こんな目標の手前で戦闘することになるとは思いませんでしたね。もう大丈夫だとは思いますが、ウィドウアンカーのロックを外しておきます」
力を失った『ビースト』の体を地表へと逆に振り捨てながら、小さく舌を出す。通信機の向こう側にいる彼女はお怒りのようだが、実際のところこれは捨て身などではなく、むしろその逆。君の持つ天性の戦闘センスと、冷静な分析による一撃と称するべきだろう。
あらゆる生物の特徴がでたらめに表れている『ビースト』の見た目から、その自我に宿ってしまった動物の狩猟本能……弱った獲物に追撃を仕掛ける習性を。最初の一撃が剛腕を振り回してのものだったことから、飛び道具やそれに類するものがないことを。その観察眼でそれぞれ読み取った君は、自分の落下する姿を見せれば高確率で今のように接近しに来ると踏んだ。だからああしてあの瞬間、先ほどイーグルブースターを半壊させた音波を出す暇もないほどのタイミングで、アフターバーナーをたたき込める唯一のタイミングをただ待っていた。
「心臓に悪いわね……待って、レイちゃん!真下、まだ生体反応が残っている!」
「そんな!?わかりました!」
弛緩しかけた空気が、一瞬にしてまた引き締まる。脳天を貫かれたはずの死体がまだ生きていて、事実その体がまたしても変化しその手足に空気抵抗を大きくし、落下のスピードを落とすための皮膜が張られつつあるのだから当然だろう。実際君の知るところではないが、この時『ビースト』にはまだかろうじてとはいえ息があった。たとえ細胞の欠片でも残ってさえいれば、生き物のところに帰ることができる。
もはや先の致命傷によりその自我のほとんどが失われつつあった『ビースト』を動かしていたのは、集合精神により保たれていた意識と、これもまた生体らしい帰巣本能だったのだろう。しかしそんなか細い意識を断ち切るかのように、真上から先ほどよりもさらにその明るさ激しさを増した紅の一閃が迫っていた。無論、その正体は君だ。
「あれがどんな生き物なのかはわからないけれど、もし生きたまま逃がしたら現地住民にどんな被害が出るかわからないわ。着陸前に確実に抹殺して!」
「了解しました……はっ!」
徐々に減速しつつあった落下速度よりもはるかに速く、君と『閃刀』の一撃が残った胴体を両断する。そして、返す刃でさらにもう一閃。
「 ! !」
断末魔の叫びが、空に散る。『ビースト』は細胞一つ残さずに、その生命の全てが今度こそ君の手によって焼き滅ぼされた。
激戦。戦闘そのものはほんの短時間だったが、君にとって『ビースト』は紛れもない強敵だった。小さく息をついて空中で少し立ち止まり、接敵の瞬間からずっと聞きたかったことを口にする。
「ですがなんだったんですか、あの生き物は?方向からして、目標の方向から飛んできたように見えましたが」
「あなたの送ってきた映像から、今こちらでも分析中よ。でも、何なのこれは……鳥のくちばしに翼、後ろ脚の蹄、側面のエラ、魚の尾……こんな生物が、本当に実在していいというの?」
この疑問が解消されるか少なくとも納得のいく答えが出るまでは、ここから動かないことも辞さない。そんな強い意志を込めての質問。しかし返ってきた答えからは君と同じだけの当惑の色がにじみ出ていて、君が期待していたような返答はどんな形であれ得られないだろうとすぐに悟った。
「つまり、そちらでも何も情報はないということですか?列強側の生物兵器とか」
「確かにイーグルブースターをピンポイントで止めることができたあたりそれが一番可能性は高いけれど、あのSPYRALが列強側では今任務中なのよ?いくら別任務とはいえ実用段階、少なくとも戦場に出せると判断したあんな恐ろしい兵器について彼らが何も掴めず、こちらに連絡も取れないなんてことあり得るかしら」
「……そうですね。となると……すみません、私の任務ですが。これから向かう研究所、そもそもどんな兵器を開発していたんですか?」
「あなたの言いたいことはわかるわよ、レイちゃん。私もちょうど、同じことを考えていたところ。でもごめんなさい、本当に情報が何も入っていないのか、それとも意図的に上のところで止められているのかも。いずれにせよ、私たちのところにはただ新兵器の開発をしていたとしか入ってきていないの。とにかくあなたは現場に急行して、嫌な予感がするわ。その間、私は少し上層部を突っついてみるから。波風立てず、穏便にね」
この通信に、映像は付属していない。しかし君の脳裏に真っ先に浮かんだのは、ろくでもないいたずらを思いついた子供のような生き生きとした笑顔で両手の指をワキワキと動かすオペレーターの笑顔だった。「波風立てず、穏便に」……これは、暴力的な手段に訴えないという意味だけではない。言葉の裏に秘められた本来の意味は、セキュリティを突破し内部ハッキングを試みるとの宣言だ。元々このオペレーター、正規の軍人ではない。かつて国内の機密サーバーへのハッキングを逆探知されて捕まった女ハッカーが腕を買われて軍への協力と引き換えに恩赦を受けている身であり、それを知るものは軍の中でも数少ない。君は仕事での付き合いもあり個人的にも彼女に気に入られているため、ある時人数合わせと称して連行された合コンの帰り、悲惨な結果のやけ酒にまで無理やり付き合わされた際にぽろっと漏らされたのだ。
そしてこの女は、やると言ったら君がどれほど止めても無駄なことを君はよく知っている。だからこうなることを予想できず話を振った自分のうかつさを後悔しながらも、こう釘を刺しておくことしか君にはできなかった。君も現場に急行しなければならないという点では同意見であり、今からハーキュリーベースに取って返す選択肢はなかったからだ。
「無茶、しないでくださいね」
「何言ってるの、それは私のセリフよ。こんな得体のしれない任務に説明もなしにあなたを単騎で向かわせたのは、私たちいい年した大人の側。私にはね、あなたが成人したら最初にお酌したげるのは私っていう壮大な夢があるんだから。いいこと、絶対無茶するんじゃないわよ」
「ふふっ、なんですかそれ?初めて聞きましたよ」
「そりゃそうよ、今思いついた夢なんだから。さ、お喋りはおしまい。整備班!私は少し席を外すから、問題はないと思うけど一応イーグルブースター以外の装備が先の攻撃でダメージを受けていないか点検と、アフターバーナーの冷却急いでね」
その言葉が遠くなっていき、すぐに通信そのものも切れる。少し緩んでいた表情を引き締め、君は空に深紅の軌跡を引きながら再び飛び出した。
???先生の決闘☆解説コーナー
さあさあ今回も始まりだ、私こと???……むぅ、まだ私の名前は名乗れないのかい?仕方ないな、では今回も起きていた出来事のおさらいを一緒にやっていこう。今回は後攻2ターン目、変異体側のバトルフェイズから3ターン目、レイのターンが終了するまでだね。
変異体
1,ミュートリアル・ビースト(A)で閃刀姫-ハヤテ(A)に攻撃。
2,レイ、セットされた閃刀機-イーグルブースター(A)発動。対象は閃刀姫-ハヤテ(A)。
3,ミュートリアル・ビースト(A)、(2)の効果発動。手札のミュートリア超個体系(A)をコストとして除外し、閃刀機-イーグルブースター(A)の発動を無効にして除外。
ミュートリアル・ビースト 攻2400→閃刀姫-ハヤテ 攻1500(破壊)
レイ LP8000→7100
4,閃刀姫-ハヤテ(A)、(2)の効果発動。閃刀機-イーグルブースター(B)を墓地に。
5,墓地の閃刀姫-レイ(A)、(2)の効果発動。自身を墓地から特殊召喚。
閃刀姫-レイ 守1500
イーグルブースターで1ターン耐えようとしたものの、ミュートリアル・ビーストはカード1枚をコストにして魔法を無効にし、かつ除外する能力を持つ。この攻防はそちらの方が一枚上手だったようだが……しかしハヤテには戦闘を行ったことで発動する墓地肥やしの効果があり、さらにその墓地にはすでにレイが落ちている。一撃こそ与えたものの損害は軽微、まだいくらでもリカバリーが可能な範囲と言っていいだろう。
6,メインフェイズ2、ターンエンド。
エンドフェイズ時盤面
LP:8000 手札:4
モンスター:ミュートリアル・ビースト(攻)
魔法・罠:なし
場:なし
伏せカードはないが、これはどちらかというと伏せることができなかった、という方が正しい。今の戦場は研究所からかなり離れており、物理的な距離が遠すぎて今の『ビースト』は変異体側の声を聞くことこそできるもののその支援を受けることができないわけだからね。そのことを踏まえたうえで、次は閃刀姫側の反撃を見てみよう。
レイ
1,ドロー、スタンバイフェイズ。
2,閃刀姫-レイ(A)素材に閃刀姫-カガリ(A)リンク召喚、(1)効果発動。墓地の閃刀起動-エンゲージ(A)を対象にとり、自身の手札に戻す。
閃刀姫-カガリ 攻1500→2100→2000
3,閃刀術式-アフターバーナー(A)発動。ミュートリアル・ビースト(A)を対象にとり、破壊。追加効果は使用せず。
4,ミュートリアル・ビースト(A)、(3)効果発動。除外されたミュートリア超個体系(A)を対象にとり、手札に。
あ、ストップだ。ここを少し解説しておくと、ミュートリアル・ビーストは確かに手札1枚を除外することでこの発動も無効にすることができた。だがそれをしなかったのは、彼自身の本能が警鐘を鳴らしたから。俗にいう嫌な予感、というやつだ。カードゲーム的に見ると、アドバンテージの問題だね。
よし、もう少し詳しく説明しよう。ミュートリアル・ビーストは1ターンに1度しか魔法無効効果を使うことができない関係上、このアフターバーナーで自身が破壊されることを通そうが通すまいが見えているエンゲージを止めることはもはや不可能。そうなると、変異体側にとって最も恐れる事態は何だろうか?ミュートリアルはいずれも、相手に破壊された際に除外されているミュートリアカードから1枚を回収する能力を持つ。だが裏を返せばそれは、破壊以外の方法を受けてしまえばどうにもならないということだ。仮にここでアフターバーナーを止めたとして、続くエンゲージで閃刀機-ウィドウアンカーをサーチ、あるいは追加効果のドローで引かれてしまうこと……それが、先ほどの質問に対する私の答えだ。このカードの効果は対象を取るモンスター無効だが、墓地に魔法カードが3枚以上存在する場合の追加効果としてそのモンスターのコントロールをターン終了時まで得ることができる。
こうなると、もう最悪だ。がら空きになった場に2体がかりでの直接攻撃は命中し、メイン2で新たなリンク召喚の素材なり発動中のフィールド魔法、閃刀空域-エリアゼロの効果を発動するためになり、いずれにせよコントロールが戻る前に破壊以外の方法で墓地に送られてしまうだろう。先の先まで見据えた場合、このアフターバーナーで大人しく破壊されておく方がよほど傷は浅いというわけさ。もっとも、『ビースト』側は私たちのようなメタ視点からこの戦場を見ていたわけではない。言葉にはできないものの嫌な予感がし、仲間のためにあえて抵抗せず自らの死を受け入れた……そんなところだろう。
5,閃刀起動-エンゲージ(A)発動。閃刀機-ウィドウアンカー(A)を手札に、追加効果で1枚ドロー。
6,カードを1枚セット、手札抹殺(A)発動。手札3枚(閃刀空域-エリアゼロ(B)、テラ・フォーミング(A)、
7,変異体、手札5枚(ミュートリア超個体系(A)、サルベージ(A)、ミュートリアル・アームズ(A)、被検体ミュートリアM-05(B)、アームズ・ホール(A))を捨て、5枚ドロー。
え、手札抹殺なんていつ使われたのかって?オペレーター君が言っていただろう、確実に抹殺して、と。あの指示の前後あたりで、カガリの攻撃力はさらに跳ね上がった。つまり、その永続効果を高めるために必要な何枚もの魔法カードが同時に墓地へ送られたとみるのが素直な考察だろうね。
8,バトルフェイズ。閃刀姫-カガリ(A)で直接攻撃。
閃刀姫-カガリ 攻2000→2500
閃刀姫-カガリ 攻2500→変異体(直接攻撃)
変異体 LP8000→5500
9,メインフェイズ2、カードを1枚セット。ターンエンド。
さあ、今度は変異体側にずいぶんと手痛い反撃が入ってしまったようだ。このリンク1モンスターとは思えないほどの火力、さすがはあの閃刀姫-カガリといったところか。
それでは次回、いよいよ舞台は研究所へと移ることになる。だが今日のところは散っていった『ビースト』の命に対し追悼の意を示し、お別れとしようじゃないか。
エンドフェイズ時盤面
LP:7100 手札:2
モンスター:閃刀姫-カガリ(攻)
魔法・罠:2(伏せ)
場:閃刀空域-エリアゼロ
最初にあっさり倒したかに見えた敵が実は後々考えると相当上位の実力者だったの、少なくとも私は好きです。