「レイ!レイ!……やってくれたな、化け物め。『カガリ』を解除するその瞬間、サイキック能力を一段と増幅させたな?計算が狂った、想定以上のエネルギーが爆発を起こしたか」
博士が何事か言っているのはかろうじて君の耳にも届いたが、その内容はうまく君の頭にまで入ってこない。軽い脳震盪でも起こしたのだろう、意識がはっきりせず手足にも力が入らない。しかし君にとって、幸運だったことが2つある。まずひとつは、今は意識こそ朦朧としているものの骨折や内臓破裂といった、後を引くような外傷を受けていないこと。これは爆発の起きる寸前、ほんのわずかに自由になった両手足で最大限に防御の姿勢を取ることができたことも大きい。
そしてもうひとつは、その様子をハーキュリーベースから見ていたのがこの博士、しょっちゅう許可もとらなければ頼みもしていないのに『閃刀』をいじくりまわし、その武装についてもはや当の本人である君以上にすべてを知り尽くしているといっても過言ではないマッドサイエンティストだったことだ。君からの返答がないことを確認した彼女は、すぐに気持ちを切り替えて彼女にできる最大限の手を打った。
「音声認識システム起動!コード「26077387」、『閃刀』使用最終権限の一時的な移譲を行う。対象はハーキュリーベース指令室!」
文字通り非常用、ほんの1瞬だけ『閃刀機』の使用権限を君から移すための奥の手。期間はごく限定的、1度使用すると同じコードは2度と受け付けられないなどの制約も多いのだが、それでも当然いち研究員に過ぎないこの博士が知ることなどできるはずがないほどの機密情報だ。しかしそれを可能にしたのが彼女自身の研究対象に対する自分が知らないことがあるのは気に食わないとする異様な熱意とオペレーターが得意とするハッキングの技術、そして両者に共通した致命的なまでの一般常識及び倫理観の欠如、だろう。そんな機密情報を平気な顔して我が物としてのけた不良職員2人のおかげで君の命は助かり、しかも彼女は君のためにその貴重な奥の手を惜しげもなく放出した。真面目な君のことだ、言葉にできないような感謝とお説教しなくてはという使命感に板挟みとなり、さぞかし微妙な顔になることは容易に想像がつく。
「よし、通ったな?ならば、ホーネットビット射出!」
そして落下する君の体、正確に言えば『閃刀』スーツから、計6つものおもちゃの戦闘機のような飛行物体が飛び出した。さらに自立飛行するそれぞれがその上部を開くと、仕込まれた特殊ホログラム発生装置から一斉に映像が照射される。そこに映し出されたのは、いずれも君だ。寸分たがわぬ6人の君の姿が、本物の君の位置を錯乱させるかのように寄り添ってともに落ちていく。
「さあ、これが見抜けるか化け物……?ホーネットビットの特殊ホログラム、あまり舐めないでもらおうか。さあ、今のうちにレイに電気ショックを!地表に落ちる前に彼女を叩き起こすんだ!」
これが自分の祈りが多分に含まれた楽観的観測であることは、彼女自身も重々承知していたが。それでも博士の目には、あの研究所の奥に潜み落下する君へその触手を伸ばしとどめの一撃を入れようとしていた化け物が、どれが本物でどれが映像なのかを見極めその伸ばす先を決めかねているように見えた。
しかし、それも当然だろう、と心の中で博士は独り言ちる。ホーネットビットが映し出すホログラムは、単なる映像ではない。それは本物には及ばずとも一定の質量を持ち、簡単な物ぐらいなら操作できるほどの代物。
……本来この技術は、君たちの国が最初に開発したものではない。それを成し遂げたのは君たちの国とも縁が深い隣国、「幻獣機」と呼ばれる動物の姿を模して造られた戦闘機群を戦力とし圧倒的な空軍部隊を築き上げた大国である。その最大の特徴はあらゆるレーダーや計器、果てはベテランパイロットによる目視でさえも本物と区別がつかない圧倒的な攻撃吸収率を誇るホログラム製のデコイであり、その生存率の高さはたとえどれほど激しい戦線に千度の出撃を行っても、ただ一機たりとも欠けることなくそのすべてが帰還するとまことしやかに噂されるほどである。当然その生命線ともいえるホログラム投影技術は本来他国に渡らせるようなことなどあるわけがないのだが、その技術がこうして『閃刀』の一部に組み込まれているのには理由がある。
ウォーブラン。「空」に対し一定の立ち位置を得た隣国は、次にそのさらに上の世界である宇宙開発へと着手した。その際のプロトタイプ、一番最初に大気圏を突破した幻獣機の名だ。実験自体は成功し、様々な改善点を隣国は得た。しかし問題が起きたのは、再び大気圏に突入する際のこと。何かのはずみでスペースデブリの密集地帯にその鼻先を突っ込んでしまったウォーブランの軌道はほんのわずかに狂い、地表に落下するころにはすでにそのずれは取り返しもつかないほど大きなものになっていた。本来用意されていた着陸地点からは遥か離れた隣の国、つまり君たちの国のとある畑に落ちてしまったのだ。
ひとつ断っておくと、そこに誰かの作為は入っていない。あれは本当に不幸な偶然であり、ただの事故だった。ともあれ隣国は丁重な謝罪とともにウォーブランの譲渡を打診し、君たちの国は当然の権利としてそれを受け入れた。ただしその前に、その機体に組み込まれたホログラム発生装置のブラックボックスの解析に成功したうえで。
「もっとも、この技術を大っぴらに利用しては列強の奴らに加え隣国まで敵に回すことになるからね。やはりこのたった6機が限界、あのホーネットビットにだけ内蔵するのが政治的に見てもギリギリのラインだろう」
途中から思考を口に出していたことにようやく気が付いた博士がビーカーコーヒーを一口飲み、画面に向かって渋い口調で語りかける。
「それで、だ。そんな貴重なホーネットビットは、デコイにしたおかげで全機破損、まるで映画の隕石か何かのようにあっさり撃ち落とされたわけだが。それだけ時間をかけてたっぷりと味わった電気ショックのお味はどうだったかな、眠り姫さん?」
「うう、お恥ずかしいところをお見せしました。おかげで目が覚めました……」
ばつの悪そうな表情で、もう意識もはっきりしたらしい君のしゃんとした声が響く。先ほどまでの我を忘れた様子はどこへやら、すっかりいつもの調子を取り戻してならばよし、と小さく頷いた博士が、手にしたままのコーヒーをまた口に運んだ。ゆっくりとすすり、小さく息を吐く。
「先ほどの言葉は覚えているね?先ほどは良いようにやられていたが、今度は我々の番だ。先の精神防壁をまた張られる前に、どうにかカタをつけようじゃないか」
「はい!『閃刀姫-ハヤテ』!」
その全身にまたしても緑のエネルギーラインが走り、『ビースト』戦の衝撃で消失したジェットエンジンと丸盾が再展開される。先端に銃口が開いた『閃刀』が、かすかな反動と共に無数の小型エネルギー弾を雨あられのように浴びせかけた。
「 !」
生き物の巨体に対し、それはほんの豆鉄砲程度のものでしかないだろう。だが、今回君が狙っているのは高速移動やそれを生かしての戦法、高所からの銃撃戦ではない。小型ジェットエンジンを装填できるその形態、『ハヤテ』だからこそ可能な必殺技。エネルギー弾を囮に上空高くに飛び上がり『閃刀』の切っ先を遥か眼下の生き物に向けると、その全体がパックリと割れて刀というよりも巨大なライフルのような形へと変貌する。いや、それは実際に強大な、それこそ君の身長よりもなお巨大な銃だった。
「ここぞという時にそれを使うとは、なかなかロマンというものがわかっているじゃないかレイ。さあ恐れるがいい、慄くがいい化け物め。刀が切りつけるためだけの武器だなんて、誰が決めた?私が直々に手を加えた一撃必殺の単体殲滅兵器の力、とくと味わってみるといい」
すっかり空になったビーカーを握りしめながら画面を注視する博士の手に、ぐっと力がこもる。一方君の方はといえば、こちらを見上げ蠢く生き物へと照準を合わせながら、『閃刀』へと全機関のエネルギーを可能な限り回していた。そちらに集中しながらも微妙に目が遠いのは、以前全くの突然に「そういえば、レイ。『閃刀』だが、少し新機能を付けておいたぞ。すまないが私は徹夜で作業したから眠い、仕様書は置いておくから上官への事後承諾は取っておいてくれ」などとすれ違いざまに言い放たれ、大慌てで見に行くと本当にこの兵器への変形機構がインストールされていた時のことを思い返しているのだろう……本当にあの時は、それはそれは大量の事後処理に追われてえらい目にあっていたからね。それでも最後まで投げ出さなかったあたり、本当に真面目というか。
「エネルギー充填、50……80……100パーセント!」
「ふむ、充填スピードに多少の難あり、か。連発は不可能だから仕方がないとはいえやはりここは改善点だな、覚えておこう。まあいい、やれ、レイ!」
「『術式』!ベクタードブラスト!」
背負ったジェットエンジンから回したエネルギーを全て『閃刀』の先端に収縮させ、極太のレールガンとして放つ問答無用の超遠距離武器。圧倒的な反動は残りの全てのパワーと姿勢制御用ジャイロを限界まで駆使して打ち消し、それでもなお君自身が後方に吹き飛びかねないほどの火力ただ1点に的を絞った、あまりに使い勝手の悪い兵器。しかしそれだけのリスクを負うだけあってその威力は折り紙付きで、たとえ『閃刀』スーツであっても掠めただけで蒸発……「破壊」ではなく「蒸発」するほどの火力を誇る博士自慢のロマン砲だ。
映像通信に回すエネルギーまでそちらに使われてしまっているためハーキュリーベース内からは何も見ることができないが、あの化け物は見たところ生身の肉体を持っているように見えた。ならば、あの武器の火力で殲滅できないはずがない。誰もが、そう考えていた。再び映像が復活し、君が一足先に見ていたものがハーキュリーベース内に映し出されるまでのほんの短い間は。
「ほう……!?」
そこに映ったものは大量の触手や1本ずつの手足、長い尾の全てを限界まで体に巻き付け、先ほどウィドウアンカーを防いだものと同じ精神防壁を自分の周りに張り巡らせることでベクタードブラストさえも耐えきった、その化け物の姿だった。そしてその防壁がゆっくりと消えていき、再び触手が宙を掴むように伸びる。
しかし、次に放たれたのは先ほどと同じ不可視のサイキック能力ではない。もはやあの力は打ち止めなのか、はたまたらちが明かないので攻撃パターンを切り替えて勝負に出たか。君にそれを知ることはできないが、とにかくそれは先ほどまでとは異なる動きだった。こちらを見つめていた触手先端の目玉が一斉に赤く光り、そこから放たれる怪光線が幾筋も空を赤く裂く。
「私のベクタードブラストを、精神防壁1枚だけで耐えきったか……!いやあ素晴らしい、素晴らしいぞ化け物!私はお前のことを見直そう、レイを傷つけた相手でさえなければ、是非ともお近づきになりたいところだった!」
「言ってる場合ですか、博士!?そんなことより、今なら……!『閃刀姫-カイナ!』」
光線を空中回避しつつその叫びと共にその全身から飛び出したのは、『ハヤテ』や『カガリ』の状態で実体化されたものとは比べ物にならないほどに大きな機械の腕。2対4本ものそれぞれがつい先ほど戦った『ビースト』のそれにも負けぬほどに巨大で、力強く、優美さよりも武骨という印象が先に出る明るい茶色の装甲に包まれた剛腕。重い金属音と共にその拳を打ち鳴らし、光線の出所である生き物本体めがけ君は急降下していった。
生き物は、率直に表現すると驚いていた。なるほど、確かに『敵』は強い。それはわかっていたし、でなければ『ビースト』も喪いはしない。しかし、まさか進化した自分の力をもってしてもここまで決まり手に欠けるとは。それどころか先の一撃は、あと少し発射が早ければ再度の精神防壁を張るのも間に合わずに自分がこうなっていただろう、と視界の端に映った瓦礫だったもの……防壁の範囲外かつ光の届く圏内にあったため瞬間的に蒸発し、地面に落としていた影の跡だけがドロドロに溶け崩れた床に焼き付いている様子に視線を向ける。
あまりにも短期間に連発しすぎたせいで、当面攻撃にも防御にもサイキック能力は使用できない。しかし、生き物はまだ諦めてはいなかった。なぜならば今のあまりに規格外の攻撃は『敵』にとっても負担が大きいものらしく、再び同じことを行おうとはしてこなかったからだ。代わりに体色を緑色から茶色へと変化させ、その小さな体躯から生えた不釣り合いなほど大きな4本の腕を振りかざし急降下してくるところを見ると、今度は接近戦を挑むつもりらしい。
「 !」
熱線を放っての反撃を時に回避し、時にその機械の腕で弾きながらも『敵』は勢いを止めることなく、生き物へと接近してくる。ぐんぐん近くなる『敵』を前に生き物は、ひどくスローモーションに感じる時の中で自分の判断を後悔した。あの金属の腕は堅く、強いだろう。しかし自身の間合いまで近づくのを待ってからこの触手で直接応戦していれば、あるいは質量差で『敵』を弾き飛ばすこともできたかもしれない。だが遠距離武器であるこの目からの熱線にこだわり続けたがゆえに、ここまでその接近を許してしまった。あの腕が、自分の体に触れることが可能な距離にまで。
「絶対に、離さない……!」
そしてその腕が、一斉に生き物の体に伸びる。触手を締め上げ、胴に指を食い込ませ、想像を絶するほどの膂力でギリギリと左右から押し潰さんと挟み込む。
「 !」
苦痛、苦悶、屈辱。瞬間的なものだった『ビースト』の死とは違い、絶え間なくそして果てしなく自らの体を襲う苦痛に対し懸命に抗いながら、生き物は叫んだ。自ら体内に生成した、この巨大化した体を動かすための骨が、運動能力を生み出すための筋肉が、内臓が、全てが生き物自身に対し押し潰されそうになる苦痛という形で牙を剥く。
そして生き物は、機械の指によって塞がれた視界の合間から見た。『敵』があの武器を元から生えていた方の両腕で、再び赤熱させた状態で構えている。こうして動きを封じつつ、また自分を焼き尽くそうというのだろう。あの時『ビースト』にそうしたように。
自然と蘇ったその記憶は、その生き物を眼前の苦痛さえも忘れるほどに激怒させた。集合精神から生き物が止めようとするのも聞かず、自らの感情と自我に従いその生き物は動き出した。手に入れた体中に纏いその姿を上書きしていた大量の肉が、筋が、皮膚が、ブチブチと音を立てて引きちぎられていく。胴体の緑色に光る単眼がことさら強い意思の光を放ち、その体から突き破って生えた2本の腕……奇しくも『敵』が操るものと同じ武骨な機械の両腕が、『敵』腕のうち2本の関節部分を握り潰した。そしてそれまで体内に隠していた、その生き物本来の腕を突き出したままの勢いでこれまで胴体だった肉塊の中にある元々の足を動かす。
ぶちぶちぶちぶちぶち。用済みとなった細胞の鎧を脱ぎ捨てて、機械の両腕が、両足が、外に出る。格納されていた丸ノコを飛び出させてこの体が通りやすいように先ほどまで自分の体だったものを切り裂きながら、自分が握り潰した直後にそのまま引きちぎったことでもはや動かなくなった『敵』の機械の腕を念を入れて踏みにじる。その生き物……生き物からは『アームズ』と呼ばれた個体は改めての憎しみを込め、残った2本の機械の腕を構える『敵』を見下ろした。
???先生の決闘☆解説コーナー
さて、今回は少しばかり何が起きたのかの説明が難しい。とはいえ、実は行われた応酬自体はそう多くはない。ひとつひとつ丁寧に一体ここで何が起き、そしてその裏ではどんな処理が行われていたのか。今回も私と共におさらいしていこう。
変異体
1,装備魔法、ビッグバン・シュート(A)を発動。対象シンセシス・ミュートリアス(A)、効果で攻撃力400アップ。
シンセシス・ミュートリアス 攻2800→3200
2,バトルフェイズ。シンセシス・ミュートリアス(A)で閃刀姫-レイ(A)に攻撃。
3,レイ、攻撃宣言時にセットされた閃刀機-ホーネットビット(A)発動。(1)効果で閃刀姫トークン(A)特殊召喚、追加効果で攻守1500アップ。
閃刀姫トークン 守0→1500 攻0→1500
ここの部分も、カードゲームとしての意味は限りなく薄い。レイを戦闘破壊から守りたかった、あるいはビッグバン・シュートの効果で貫通能力を得たシンセシス・ミュートリアスからの戦闘ダメージを抑えるにしてもこの時レイ側に存在する閃刀姫-レイとこのトークンの守備力は同値だし、そもそもカードとしてのホーネットビットに攻撃対象を誘導する能力はない。
ただこの世界では、博士が言及したようにホーネットビットは幻獣機の技術を解析して作られたという過去が存在する。フレーバー的に添えられたデコイ能力が功を奏したのか、はたまたすべては単なる偶然か。いずれにせよレイではなく閃刀姫トークンが攻撃された、それが実際にあったことだね。
4,変異体、閃刀姫トークン(A)に攻撃対象変更。ビッグバン・シュート(A)効果で守備力を攻撃力が越えた分だけ戦闘ダメージ。
シンセシス・ミュートリアス 攻3200→閃刀姫トークン 守1500(破壊)
レイ LP7100→5400
さあ、ここでわずか100ポイントとはいえ両者のライフが再び逆転したわけだ。お互い決定打に欠けるシンプルな殴り合いではあるが、それもまた一興……だと感じてくれると、共に観戦している私としても嬉しいのだけれどね。
5,メインフェイズ2、カードを3枚セット。ターンエンド。
この3枚セット、というのは変異体側に攻撃あるいは防御の意識が出たというよりは、ようやくこれらの伏せカードが使えるようになったという意味合いの方が大きい。戦場が閃刀姫のホームである遥か空の彼方から彼らにとっては勝手知ったる研究所へと移ったことで、ようやくそこにあるものが使えるようになったという意味だ。
しかしそれは同時に、彼らにとって隠し玉となる一手は存在しないという事実にも繋がる。これで変異体側の手札は0、この3枚がすべて攻略されてしまえばあとは出たとこ勝負のドローに賭けるしか手はない。その隙をこじ開けることができるのか、それともこの勢いに押し切られるのか。そこがこの先の勝負のポイントとなるだろう。
エンドフェイズ時盤面
LP:5500 手札:0
モンスター:シンセシス・ミュートリアル(攻)
魔法・罠:ビッグバン・シュート、3(伏せ)
場:ミュートリア進化研究所
レイ
1,ドロー、スタンバイフェイズ。
2,閃刀姫-レイ(A)素材に閃刀姫-ハヤテ(B)リンク召喚。
閃刀姫-ハヤテ 攻1500
3,閃刀術式-ベクタードブラスト(A)発動、追加効果の適用。
4,変異体、シンセンス・ミュートリアス(A)、(2)効果発動。相手からの完全魔法耐性を自身に付与。
5,デッキトップ2枚(増援(A)、閃刀起動-エンゲージ(B))墓地へ。
6,変異体、デッキトップ2枚(仁王立ち(A)、フュージョン・ミュートリアス(B))墓地へ。
虎の子として鳴り物入りの登場だったベクタードブラストだけど、残念ながらシンセシスの完全耐性付与は毎ターンノーコストで行える。ちなみにベクタードブラストの本来の効果は互いのデッキトップ2枚の墓地送り、追加効果が相手のEXモンスターゾーンに存在するモンスター全てのデッキバウンスだ。本来ならばかなりの耐性を無視できる強力な除去ではあるのだが、いかんせん相手が悪かったようだ。ちなみに、これは完全に余談なのだけれども。ここでベクタードブラストを追加効果目当てで使用していることから、変異体側はシンセシスをEXモンスターゾーンに融合召喚していることがわかる。
単純な打点では閃刀姫での突破は難しく、多用される魔法での除去に対しても一方的に封殺できるシンセンスの相手は実際かなり辛そうだが……しかし、ここでただ手をこまねいて見ているほど【閃刀姫】は甘いデッキではない。ほら、次の動きが見えてきた。
7,バトルフェイズ。閃刀姫-ハヤテ(B)、(1)効果で直接攻撃。
閃刀姫-ハヤテ 攻1500→変異体(直接攻撃)
変異体 LP5500→4000
追いついたと思えば、またすぐに引き離される。これで変異体側のライフはきっかり半分、まだ余裕はあるとはいえあまり笑って見ていられる数値でもなくなってきた。そろそろこのデュエルも中盤戦、ということかな?
8,閃刀姫-ハヤテ(B)、(2)効果発動。閃刀術式-アフターバーナー(B)を墓地に。
9,メインフェイズ2、閃刀姫-ハヤテ(B)素材に閃刀姫-カイナ(A)リンク召喚。
10,閃刀姫-カイナ(A)、(1)効果発動。シンセシス・ミュートリアス(A)対象に取り、相手ターン終了時まで攻撃宣言不可を付与。
魔法効果が通用しないということは、裏を返せばモンスター効果に対し無防備ということ。とはいえこれはたかだか1ターンの攻撃抑制というよりも、物理的にシンセンスの動きを封じ込めることが目的だったんだろう。
この直後に未遂とはいえ続けてアフターバーナーを放とうとしているらしいと彼らは認識しているけれど、まだ魔法耐性が生きている状態でそんなことをしてもカイナの効果でたわずか100のライフが回復するだけだから、むしろ使ってもらった方がお得だったろうね。もっともさらにこの後の展開を考えると、そう見えたのは完全に気のせいでアフターバーナーの3枚目を最初から彼女は手元に握っていなかった可能性の方が高いけれど。真相は闇の中、とも言い切れないかな?さあ、この後の展開も追ってみよう。
11,変異体、ミュートリア超個体系(B)発動。(1)効果でデッキより被検体ミュートリアGB-88(A)特殊召喚。ミュートリア進化研究所(A)の(2)効果で攻撃力アップ。
被検体ミュートリアGB-88 攻500→800
12,被検体ミュートリアGB-88(A)、(2)効果発動。自身をリリースしシンセシス・ミュートリアス(A)を除外、除外されたミュートリアル・アームズ(A)を特殊召喚。ミュートリア進化研究所(A)の(2)効果で攻撃力アップ。
ミュートリアル・アームズ 攻3000→3400
13,カードを1枚セット、ターンエンド。
エンドフェイズ時盤面
LP:5400 手札:2
場:閃刀姫-カイナ(攻)
魔法・罠:なし
場:閃刀空域-エリアゼロ
さあ、これがこの長い1ターンに起きたすべての出来事だ。GB-88は他の被検体とは異なり相手ターンにミュートリアルへの進化を行い、その先も手札及びデッキ内ではなく墓地及び除外されたカードで、さらに言えば進化の際に必要なコストの種類も問わないとかなり異色の存在であり、その特性をフルに活かしてあらかじめフュージョン・ミュートリアスでデッキから除外しておいたアームズを特殊召喚したというわけだね。
実際の戦闘の流れから見るとそもそもシンセシスとしてレイと戦っていたのは最初からミュートリアル・アームズ、ひいてはその正体であるこのGB-88で、生き物こと変異体ミュートリアははじめからこの場所にはいなかったというわけだ。変異体はずっと、集合精神を通じて『アームズ』の視界を共有してみて、そして考えていたわけだね。では、そもそもなぜそんな回りくどいことをしたのか?本物の変異体は今どこに?疑問は尽きないだろうが、それについてはまた次回。