・前回のあらすじ
ジュエルシード2個、GETだぜ!
それは突然の対峙で、ユニコーンと化した仔犬のジュエルシードを封印したなのはは暫しの刻を過ごして其の儘レイジングハートを十六夜に向け、表情は陰を落とす程の怒りの形相────。
「ちょっとだけ"お・は・な・し"しようか…?」
「まあ落ち着けよ、つまりなのははこう言いたいんだよな?OK完璧に理解したぜ」
「へ?…それなら良かっt」
「肉体言語(魔法制裁)と書いておはなし」
「〜〜〜全然ちがぁーう!もう、真面目に言ってるんだから茶化さないでよ!」
などという事は決して無く、あまりに話しが進まないので諭したなのはだが、十六夜は尚も飄々とした態度で返し。
「それにしても肉体言語って言い方さあ、…なんか卑猥じゃない?」
「ブハッ!?」
唐突なエルの発言でまたしても吹き出すユーノ。どうやら此処に居る男性陣は色々と歳相応の会話が出来ないらしい。
「ギッコンバッタンするのか?」
「ギッコンバッタンします」
「…?ギッコン、バッタン…???」
「……あーはいはい。要はこの犬っコロ様をどうするかだろ」
ニヤッと意地悪い顔の十六夜とエル。
然しユーノは真っ赤な顔でそっぽを向いてこれを受け流し、相変わらず天然純朴な反応のこの場唯一の少女に二人は複雑そうに苦笑してこの趣旨に光速で飽きてしまい、十六夜から話題を打ち切るよう本題を持ち出し仔犬を指差す。
あれから直ぐに仔犬は目を覚まして現在は大人しくお座り中。なので今後の処遇、主に誰が引き取るか決議の最中であるが───。
「うん!わたしの家はもうユーノ君が居るから……流石に2匹目は簡単に許してくれないと思うんだ…にゃはは」
「……そもそもなんでコイツを野生前提で飼うみたいな流れなんだよ?どう見たって飼い主居るぞ」
「───…え?」
遺憾な表情をするが動物扱いで無ければそもそも簡単に居候出来ない身の上、正体を暴露するは魔法等ある程度事情を赤裸々にしなくてはいけず止むに止まれずといった状況に力なく笑うなのは。
エルも当然飼えない旨を既に伝えている為一同の視線が十六夜に集まり、次にはさも当たり前の様に告げられた事柄に刻が一瞬止まってはぽかんと半開き口の者までおり、全員呆然と言葉を噤む。
「いや、ほぼ間違いなく飼育されてるパリア犬…つか柴犬だろ。特性的に警戒心は強い筈が、見ての通り未だに逃げ出す様子も無いしな」
「あれ、言われてみれば確かに…さっきから随分大人しいような」
「それに首筋の所をよく見てみろ、局所的ではあるけど首輪の跡がくっきりと残ってる。おそらくユニコーンの姿に模倣されて体型膨張した時にでも千切れたんだと思うぞ」
十六夜の主張に他種族とはいえ動物の特徴にある程度精通しているであろうユーノが最初に不思議がり。次いで述べられた物的根拠に一同がハッと悟って目を見開く。
「ホ、ホントだ!?わあ、凄い凄い!十六夜君よく気付いたね!」
「……兎に角、俺達がやらなきゃいけない事が在るとしたら、それこそ引き取り手の問答じゃなく飼い主の捜索じゃねえのか?」
絶賛するなのはに寧ろ何故誰も気付かないのかと、主に解っていて黙っていそうな含み笑いのエルを睨み付け。
当人も視線を感知したか剽軽な笑いを返し。
「アハハ、じゃあ先ずはポスター貼りとチラシ配りでもする?」
「それなら先に届け出があるのを期待して警察と保健所、動物愛護センターに確認と報告だろ」
「あ、でもその前にフェイトちゃん達と合流しないとね!」
「……ハァ、なんかジュエルシード探しがすっかり飼い主探しになっちゃったね」
それぞれやる気満々とばかりに意見を述べ、流石のユーノも苦笑して肩を竦めるしかなく。
なのはが嬉し気に仔犬を抱くと矢張り人慣れしてるのか鳴き声一つ発せず、愛らしい間抜け面で尻尾まで振っており。
「そうと決まれば俺の方もさっさと済ませちまうか。丁度お出ましみたいだしな」
「…?十六夜君の方って────…ッ!?」
髪を掻きながら立ち上がった十六夜の言葉を不可思議そうになって彼と同じ方向へ向くなのは。それに従って他の面々もそちらへ向けば全員顔を顰め。
「な、なな……なにあれ!?」
「うわあ〜もう見るからにキメラだよね…」
「ヤハハ、ここまで珍妙だと逆に笑えてくるぜ」
森林の奥から這い出てきた灰色の手の甲は優に巨人並みの大きさで、木陰から次第に全体像が見えてくると其の巨手を右に生やし腕自体、否全長が6メートルと大人三人分を越えている。その形姿もあらゆる箇所が異様で左手は何本もの触手、下腹部から臍は牡牛の頭が首長にビンビンと生えており、本体は長舌をだらりと垂らした厳つい漢顔がフシューっと吐息を吐き『Youzyooo…』と呟き。
見るからに異形の魔物(変態)である。
「こ、今度は媒介になってる生命反応が無いから、ただ周囲の願望を模っただけだと思う…」
「……あれが周囲の抱いた願望って普通にヤバいよね。出来れば数人程度であって欲しいけど」
ユーノとエルが揃って嫌な顔を露に、流石のなのはも嫌悪感を抱いて後退しつつも腕の中の仔犬を庇い横を向いて"アレ"を視界に映させない様にし、十六夜だけは面白そうに観察していて。
「て、もしかして十六夜が此処に飛んで来た理由って…」
「ん?…ああ、予め報された予測地点から大きく移動したから、まあこの辺だろって勘でいったら跳び過ぎただけだ」
そこで漸く先程の突如現れた理由がエルに遮られたのを思い出したユーノが改めて問うと、片手をポケットに入れもう片方の手で地面の小石を拾い、まるで威風堂々と前へ出て応答する十六夜。
「勘って……そ、それよりどうする気なんだい?」
其の小石を暫し宙に軽く投げて受け止めを繰り返し、ジリジリと遅い足取りで近付く怪物に注視しながらユーノが恐る恐る尋ね。
「決まってんだろ?こうするんだよ」
『YOUZYOOOOoooooo!?』
その直後掌を宙に向けたまま受けた小石を握っては軽く指で弾いて土手っ腹へ向けて貫く勢いで投石され、着弾後に岩礁と土煙を巻き上げながらが異形は木っ端微塵に爆散し。
粉砕され最終的に誤魔化しきれない程大音量で叫んだ単語と慣れてきたとはいえ相変わらずデタラメな光景に各自言葉を失い。
「さ、取り分も回収したし早いとこ合流するか」
「………十六夜君って」
「本当に、なんなのさ……」
嘆きと安堵が入り混じったなのはとユーノの呟きを残してジュエルシードは無事レイジングハートに回収される。
*
それから何とか海鳴臨海公園の広場まで到着。
その時にはもう夕暮れ時となっており、遅刻した面々の主に十六夜とユーノに文句を言おうとベンチから立った黒ワンピースの私服姿なフェイト。然し今度は主に、同じくジャケットを解除した早退故制服姿のなのはが疲労困憊ぶりを露に。それを見て苦情も忘れ「なのは、大丈夫!?」と駆け寄って不安気に伺い。
にゃははと本日何度目かの脱力したから笑い、其の後なのはに変わりユーノが今までの経緯を教え。
「イザヨイはなのはと一緒に行動したりなのはを困らせたりなのはを抱っこしたり色々ズルイと思う」
「最初以外なんかおかしいよフェイトちゃん!?それに最初のって一体どういう意味!?」
頬を膨らませ非難の眼差しを向けるフェイトに透かさずツッコむなのはだが勿論華麗にスルーされ。
「おい待てよ。確かに困らせたのは主に俺だが、コイツだって共犯だぞ」
「え…?あ、居たんだね」
「存在すら忘れられてただとぅ!?それより僕はイザッちとただエロトークしてただけで、なのはっちの事は精々一回しか弄ってないよ!」
「……一回も二回も変わらない。凄く羨ましい」
「あれいつの間にそんなトークをしてたの!?フェイトちゃんも羨ましがってないで…ていうか十六夜君は自覚あるなら抑えてくれると嬉しいなあ!……ツッコミが追いつかないよ!!」
物申す十六夜が指差した先を一度見たフェイトが今気付いたとばかりキョトンと無表情で首傾げ、エルが割と本気で驚愕し心外だと訴えるもフェイトからはズレた返しでジト目を送り。
この一連の流れを一気に指摘したなのはがゼェハァと息切れしている様子を安全圏から眺めているユーノとアルフの図。
「お前等その辺にしとけよ。アイツにもちょっとは労いってヤツをだな」
「そうだよ。キミ達の所為でなのはが大変なんだから、ちゃんと自重してあげて」
「まったくだね。二人とももう少し優しくしてあげなよ、可哀想だと思わないの?」
上から十六夜、フェイト、エルの苦言。
「今は三人ともだよ!?」
おまいう発言に到頭うがーっと、今度こそ怒髪天を衝く勢いで両手を上げて振り。
人生で一番怒った瞬間かもと後になのはが想起するも、今は何より安穏な日々が恋しくお馬鹿三名を叩く為のハリセンが欲しい少女。
「それよりもさっさと四つ目を回収しちまおうぜ。此処に集まったって事はこの辺りなんだろ?」
「御明察。だけど反応が弱いから、まずは探す事からになりそうだ」
そんななのはにお構い無しに急かす様にユーノへ提言する十六夜だが、あまり芳しくない顔で返すと周囲へ気を配らせ。
「因みに戦闘になったら俺は参加出来ないからな」
そう言って自分の頭を指差す十六夜。
全員吊られて視線をそちらに移せば外跳ねした金髪に乗っかる仔犬が居て、実は此方に来る途中なのはの腕から十六夜の頭に飛び移り以降ずっとこのままで、最初はウザったそうに首根っこを掴みなのはへ返したが直ぐに乗り移りを数度繰り返して、面倒になった十六夜の諦めでこの状態が続いている。
上下関係に目敏い犬種なので、恐らく4人の中で一番ヒエラルキーが物的にも強いと判断した人物へ服従と懐柔が混じった行為だと思われるが、その真意は犬のみぞ知る。
つまり急かした理由もここにあり。
「大丈夫だよ、イザヨイの事は最初からアテにしてないから」
「ハハ、辛辣だなおい。ま、確かにお前等ならあの程度
フェイトの物言いにも笑って済まし。然しなのはがそんな十六夜を目を見開き震える手で指差す。
「あ、あの十六夜君が……わたし達を素直に認めてくれた!?」
「……コイツはコイツで俺をなんだと思ってんだよ」
その言葉には流石に呆れ顔で頭を掻こうとするも、その頭に仔犬が乗っていたのを思い出して途中で止め、行き場の無くなった手をポケットに突っ込むと後ろのベンチに腰を下ろし。
「ん?……なのは!」
「フェイト!」
途端に声を荒げるユーノとアルフたが、ジュエルシードの反応を急に感じ取った2人の呼び掛けに同じくそれをいち早く感知したフェイトが両手でバルディッシュを構え。
「「封時結界、展開!」」
「「──セットアップ!」」
2人の言葉と魔力に呼応して辺りは忽ち結界で覆われ任意の者以外を遮断し、その最中一本の樹が草むらから起動したジュエルシードを取り込みまるで両枝を絡め集め鎌の様な腕を模したトレントの化け物へと様変わりし。
直後レイジングハートを杖状で展開したなのはと臨戦態勢のフェイトが同時にバリアジャケットを纏う。
「十六夜君、ワンちゃんをお願い!」
「ん、任せろ」
ベンチに座っている十六夜も警戒は解かず、だが値踏みの結果で問題無しと判断したように落ち着きを見せて杖を大樹の物怪へ向けながら言うなのはへ応答。その隙を枝の鎌で攻撃しようとしたトレント擬きだが直後フェイトの放った金塊の魔力弾10発に阻まれ即時引っ込め。
「行くよフェイトちゃん!」
「了解、なのは!」
そしてなのはの元へ着地したフェイト。
隣合う2人に地面から巨大な木の根を浮上させてまるで蔦の如く振り回し。
「飛んでレイジングハート、もっと高く!」
「アークセイバー!……行くよ、バルディッシュ!」
根の蔓の鞭は正に自分達へ襲い掛かるも、上空へ桜色の翼で退避したなのはには当たらず其の隙を縫って飛来した金の魔力刃に根が切り裂かれながらトレント擬きの顔へ、その合間に障壁を展開して魔力刃を防ぐ。
「防がれてるじゃねえか」
「あらら、残念賞」
「───バリアまで張って……イザヨイ並みにすごく生意気。貫け轟雷!!」
それも初めての感情故か、汚辱る十六夜とエルは尚も微動だにせず座っており。
まるで態とらしい挑発だが、その言葉が完全に癇に障ったフェイトが青筋を立てながら魔力を圧縮した手で独特な印を高速で結び掌を翳し、派生した金の魔法陣へバルディッシュを叩き付けると速射の勢いで金の砲撃を穿ち、魔力刃と打つかり重れば意図も容易く障壁を砕き。
「すごッ!?……これはこっちも負けてられない、よね!」
「
「ディバイン…バスター!」
『Multiple Burst.』
それでも両腕の枝の集合体で出来た強靭の鎌を前にクロスして構え、防壁も加えて普段より高威力なサンダースマッシャーを受け止めるも触発されたなのはとレイジングハート。
胸に宿った不屈の衝動が鼓動を始め。
砲撃モードの先端部が更に進化し、紅の核を小型化した上で白銀の矛先を成しつつ出力を補う為のトリガーが付与されれば迷わず握り、収束される桜色の魔力は瞬時に球体を形成して、速射砲にも拘らず今までのディバインバスターの威力並な三位一体の拡散照射砲を放ち、緊急で展開した障壁は直ぐに砕けて頭上から受けたトレント擬きが叫び。
「アルフ、合わせて!」
「あいよ!」
尚も根強く対抗を見せるも防壁が完全に消え失せた間にユーノとアルフが足下に魔法陣を展開し、そこから淡い黄緑と燈の魔力鎖を放つと大樹の稼働域を封じる様に巻き付けて拘束し。
『『Sealing』』
「ジュエルシード…シリアルⅦ!」
「──封印!」
同時に展開した桜色と金色の翼を己がデバイスに、飛んで対極の位置から封印魔力を当てる。
「……ッ!おい、伏せろ!」
「え?………!?」
然し力加減が誤ったのか、それともなのはとフェイトの資質が想定外か、互いの魔力が砲撃という名の封印処置となり重なると大樹の化物は跡形も無くなり、剥き出しになったジュエルシードが激動して青白い柱が天に昇って忽ち雲を払う勢いで伸びる。
十六夜の警告でサポート役のユーノとアルフは事前に退避していて難を逃れ、なのはも衝撃の余波で此方へ飛ばされてきたが、咄嗟に庇った十六夜が受け止めるも背後の噴水まで吹き飛んで落ち。
「痛たた〜〜……十六夜君ありがとう。びしょ濡れだね」
「その言葉が凡そ7年後なら超エロかったけど、今はそんな事言ってる場合じゃ無さそうだな…」
水位は浅かったのか尻餅着いても精々腰までしか浸かず、頭の仔犬も危機察知からかユーノへ飛び移っているのを確認すれば再び柱へと視線を向け。
「……なっ!?どうして!?」
其の視線に吊られてなのはも向けば驚愕。
「おそらくお前等のバカ力が原因だろうが、……チッ、あの大馬鹿野郎…!」
「十六夜君!」
推察を述べるも十六夜が目にしたのは吹き飛ばされながらも体勢を立て直しなんとかこの場に戻ってきたフェイトの姿。だがそれは真っ直線に柱へと飛翔し向かい。
なのはも気付いたか当初は己が腰を浮かしそうと試みるも間に合わないと瞬時に察したのか傍らの少年へ叫び、当の十六夜は既に行動に起こしてその場から跳び。
「フェイト、ダメだ危ないよ!」
「く……ううっ…!!」
柱は次第に霧散するも蒼石は輝きを止ませず、現場に戻ったフェイトがアルフの警告も無視して即座に両手でジュエルシードを掴むも、物質力となったエネルギーはチカラとなって掌を傷付け出血。
構わずいつしか両目も瞑り祈る姿勢で力を相殺しようと必死に全魔力を封印効能に込めるが叶わず、遂には己が力も超越したエネルギーが掌を退けた時。
「貸しやがれフェイト!」
それでも必死に抑え込もうとするフェイトから目の前に飛んで来た十六夜。緊急事態と初めて自分の名をフルネーム以外で呼ばれたのも合わさった少女の驚きの間、強引に奪い取られた蒼石はもう掌に無く視線を上げれば輝きを失ったジュエルシードを掴む金の少年の立ち姿が視界を占めて。
「フェイトちゃん!十六夜君!」
「イ、イザヨイ……?」
「───検証はこれで十分だが……このじゃじゃ馬娘が。今のは下手すると確実に指が千切れ飛ぶコースだったぞ!」
「……ごめん…」
「お前の耐久力がどれくらいかは知らねえけど、少なくともこれを見れば一目瞭然だ」
次いでなのはも飛んで来ると二人の安否を心配し、呆然とし立ち上がるフェイトの手首を掴む十六夜に見せられた掌。
速やかに偸んで辛うじて手袋はボロボロで済んだも鮮血塗れの肌に息を呑み。
「フェイトちゃん大丈夫!?速く病院に!」
「ったく、動物より先に人間の方の病院かよ。七面倒臭え」
だからだろうか、フェイトは自分の感情を悟ってしまった。自分とは感性が違う事に。
「……うん、大丈夫。でも病院は……」
其の間にアルフやユーノも駆け寄ってきて。
「あ?……まさかとは思ったけどお前、不法滞在者か?だったら先ずは俺のホームだな。くそ、金糸雀に借りがまた増えちまった」
「え…?」
「安心しやがれ。アイツは何故か"
だが十六夜がどんどん話を進め、気付けばバルディッシュに回収したジュエルシードを取り込ませる所から更にはあれよあれよという間に白塗りの外壁で横滑りの門の前まで連れて来られ、自分が住むビル程では無くとも大きな建物に。
「……真っ白だね」
「此処が十六夜君のお家?」
「ああ、まあ養護施設だから素を辿れば違うが、それでも多分俺の実家みたいなモンになる予定だと金糸雀が言っていた」
他人事の様にまるで教わった事をそのまま告げる口振りで心配で付いてきたなのはとユーノ、そして当事者のフェイトと付き人兼使い魔のアルフに説明する十六夜。
気付けばいつの間にかエルの姿は無かったも気にせず門を潜って我が物顔で受付の扉を開き。
「金糸雀さんなら応接間に居るはずよ?さっきまで資産家の方の相手をしていたから間違いないわ」
「……丑松の爺さんか、それとも正妻愛人のどれか…はたまた最近まで世話になった月村や財閥側か?兎に角了解だ。こっちは救護人兼迷子二名と迷子犬を連れてきたから対処が忙しい」
すると綺麗な女性が十六夜の対応に勤しみ。当の少年を見て面倒臭そうな態度は如何かと思ったその他少年少女組も流れるやり取りに目まぐるしく、やり取りの間に月村の名前が出てなのはが一瞬訝るも、応接間にドスドスと歩む十六夜に連れてかれ進むと見るものを安心させるかの素振りで机に肘を掛ける金糸雀が笑顔で出迎え。
「あら、思ったより早いお帰りね」
「怪我人が出た。保険証も無さそうだから連れて来たが………悪いけど手を貸してくれ」
「驚いた…十六夜君がそうまでして───ああ、彼女なら納得。応急処置ならこっちで出来るけど、念の為作っておきましょうか」
その言葉を最後に金糸雀が応接間から立ち去り、十六夜が救急箱を持ってくるとアルフが率先してフェイトの手の治療に動き。
結局仔犬はフェイトの応急処置中に十六夜とユーノで速やかに愛護センターへ向かい、丁度飼い主のなのはより小さい女の子と其の母親と出会して問題解決。孤児院に戻って経緯をなのは達に報告して、フェイトも消毒が済み包帯を両手に巻いているが特に不調は無い様子で、金糸雀を待つ気でいたフェイトも十六夜が今日は多分帰ってこない事を教えてこの場は解散に。
*
それから数日後、十六夜から呼び出しを受けたなのは、ユーノ、フェイト、アルフが再び養護施設を訪れた。
「これは……」
「保険証とか諸々、どうやら国籍さえ無いみたいだったから作っておいたわ」
「……でも名前が」
カードと書類等を受け取ったフェイトはそこに記された名を見て呆然。
それも仕方ないだろう、何せ自分の名が『逆廻フェイト』と記述されているのだから。
「ああ、姓の処は隠蔽の為にね。これなら"万が一なにかあってもテスタロッサでは足取りが付かない"でしょう?」
「………ああ!?な、なるほど…!」
まるで犯罪計画でも建てるかの様なやり取りだが、身元が判別されて困るのは確かなのか要領を得たフェイトの顔を見て強ち間違いでは無いのを確認。
此処で第三者から不満が告げられ。
「ちょっと待てよ、なんでコイツが俺と同じ姓なんだ。他に幾らでもあっただろ」
「そうは言うけど急造だから手っ取り早かったのよ。十六夜君とは戸籍上兄妹という事にしたから。もしフェイトちゃんが事件等に巻き込まれても、これなら十六夜君にも接触してくる可能性があるし、妹お姫様を守れるナイト気取りが出来て鼻高々ね」
「……ああ光栄だね。嬉しすぎて久しぶりにクソババァと一戦交えるのも吝かじゃねえくらいだぜ」
金糸雀が座する執務机を片手で叩いて吠える十六夜に飄々とした笑みで受け流す。彼女の解説を皮肉で返せばバチバチと視線で火花を散らせ、当のフェイトはなのは達とぽかんと棒立ちで。
「えっと、つまりフェイトちゃんは十六夜君の妹さんで、十六夜君はフェイトちゃんのお兄さんって事?」
「地球ではそうなるね。ミッドの方は国籍があるんだろう?」
「あ……多分あると思うけど…。……イザヨイ、兄さん?」
なのはが顎に指を添えながら整理し、ユーノが補足を入れるとフェイトが囁く位の声量で十六夜に向けて呼び掛けると当の少年は嫌そうな顔で見返し、それがフェイトの悪戯心を刺激したのかニヤリ。
「ふふ、何かあったら十六夜君に守ってもらいましょうか、フェイトちゃん」
「あ、はい。…何かあったら真っ先にイザヨイ兄さんを盾にして逃げるから宜しくね?イザヨイ兄さん」
「ヤハハハハッ!なら俺は愚妹様の盾にならない様精々注意しないとな!」
率先して金糸雀が揶揄う口調で言うとフェイトも其れに乗っかり、十六夜が高笑いと共に向き直れば上からフェイトに邪悪な笑みを向け、対抗する如く涼しい無表情で見上げ。
瞳の色こそ違うが金髪同士ぱっと見では確かに兄妹で通りそうではあるが。
「あたしはそろそろ胃が…」
「アルフさん!?誰か、誰かあの問題児さん達を止めてー!」
一触即発な二人に顔色悪く腹を抑える燈髪犬っ子に寄り添いなのはの心の叫びが木霊するも叶う筈も無く、ユーノが苦笑。
そんな感じで賑やかな日々が良くも悪くも更に騒がしくなる予感を秘めながらもフェイトが良い方向に変わるならと、胃痛ポジを覚悟するなのはとアルフだった。
因みにユーノは巻き添えを恐れて早々にフェレット姿で離脱と一番ちゃっかりしている。
クロノ「僕の立場は!?」
ユーノ「ドンマイ、クロノ」←ニヤニヤ
黒ウサギ「───ハッ!何やら遠い世界の何処かで同士の気配を感じるのですよ!」
なのは「何処か遠い世界で、わたしと同じ気苦労をするハメになる人の気配を感じるの」
十六夜「へえ……」←超ニヤニヤ
なのはと黒ウサギは超逃げて