フェイトが時の庭園から還ってきて二日後。
あれから彼女に何を話して聞いても返る言葉は殆どが「母さんを助けて」か「早くジュエルシードを集めなきゃ」で、なのはも訳を聞こうと熱心に接したが結局は不分仕舞で現在。
即行十六夜が一度姿をくらまし、戻って来れば何処から手に入れたのか無線通信機器のインカムを持ってきて全員へ配り、後は日夜捜索に出向き。なのはだけは家の事情と朝夕を除くも、其の間はユーノがアルフかフェイト、或いは十六夜と連携態勢を敷いて、魔力も必要無い傍受対策に"改造"された現代のヘッドホン型通信機器で話し掛け。
『そっちはどうだ?』
『残念ながら外れ。やっぱり無茶だよフェイト、虱潰しなんて見つかりっこない』
『………』
十六夜の問いに応える、同じく改造されたイヤホン型のインカムで応じるアルフ。余談だが男性陣の十六夜とユーノはヘッドホン型、逆に女性陣のなのは、フェイト、アルフにはイヤホン型の無線通信機器を支給した。
十六夜の談では金糸雀から譲り受けたらしいが正に出所不明の品で、これでは良からぬ犯罪をしているのではとはユーノの心情。然し強ち間違ってない心情は常識外なフェイトとジュエルシード回収関係に於いてのみ見境ないアルフ、そして案の定デタラメな十六夜にスルーされ。
其れでも比較的冷静なアルフの進言もフェイトは無言で進展は無く。
『僕もアルフに同意見だ。十六夜はいいの?金糸雀さんにも迷惑を掛けているんだろう?』
『あの金糸雀が迷惑…?ヤハハ、冗談言うな。第一こんなモノを嬉々として渡すババァがそんな感情を持ってるとでも?』
『そのクソババァは止めなさいって何時も言ってるでしょう?』
ユーノの言葉に軽い言動で返す十六夜だが、唯一傍受出来る金糸雀に嗜まれ苦渋を噛んだ表情に。
事前にインカムを持たない彼女が一体何処からとは、現代の
尤も必要最低限以外は応答も無い彼女だが、今も孤児院で机に肘掛け両手を組む優雅な女性はクスッと笑い。
『別にクソとまでは言って無かっただろ。……要は気にするなってことだな?』
『…まったく、十六夜君は変わらないね。イグアスの滝壺やキリマンジェロ、七海の謎では飽き足らず今度は伝説の都アルハザード?そんな面白そうな事聞かされたら私も参加したくなるじゃない』
ただこの会話から金糸雀という人物も十六夜同様、或いは十六夜が金糸雀の影響を少なからず受けているのではとは聡明な方ならお気付きだろうが。
ビルの屋上から又ビルの屋上へ"加減"して物理的に飛び移る十六夜と、空を自在に"飛び回る"その他の魔導師陣。
『そういえばイグアスの滝とキリマンジェロは今日先生に聞いたよ!アトランティス大陸なんて出てきてもしかしてと思ったけど、十六夜君って世界一周でもしたの…?』
『ん?ああ、詳しくは金糸雀に連れられて世界中を旅したんだが、そこで色んなモノを見た。発電所や自然の神秘、それこそ地球の全てだ。其の中で反吐が出る意地汚ねえ組織や様々な紛争地帯とかも見たけど……ああ、それと無二の"親友"も出来た。兎に角この星は踏破した気でいたんだが、そんな直後にお前達魔導師なんて連中に出逢ったんだからやっぱ世の中面白さに欠かねえな』
『十六夜君の親友!?』
そして夕刻にも関わらず事前に親に友達の家へ行くと最早最近嘘もお得意になりつつ在るなのは。
彼女も結界内の夕暮れな街を飛び回る中の話し。本日学問の学舎にてなのはが質問した事、当の女性教師は太陽や月について小学生レベルに教える授業を終えたばかりで全く関係無い、それもギリシャの神秘やアフリカ最高峰、果ては世界最大の滝を質問されて当初は吃驚。
それでも生徒へ適切な対応をしたが語り合う中で十六夜の所業をつい喋った事で今度は唖然。
それもその筈。何せイグアスの滝壺に住む悪魔へ挑み生還した人類初の所業、キリマンジェロに僅か10歳で踏破した少年、何れも小学生単位な少年が為せる業では無く教師はなのはの嘘と捉えつつ笑顔で対応してみせたが、全て事実である。
然しイグアスの大滝に悪魔は居なく、キリマンジェロに神は存在しなく、アトランティスもムー大陸も、理想郷もシャンバラも何にも見つからなく、世界に適応されてしまった十六夜。
其れでも満足したのは金糸雀と今なのはが一番気にした親友のお陰だろう。
『そこに食い付く辺りお前が俺をどんな目で見てるのか大方予想付くけど…それに
『え───』
其れが意味するところは全員理解しているのか絶句だが"ソレ"を乗り越えた十六夜は普通に話す。
『……と悪い。話しの大本が逸れた…それとこっちにそれっぽいのが見つかったから手が空いてるヤツは来てくれ』
暫し沈黙が続いて、街の大規模な工場区画のコンテナが並ぶ物置場付近にて蒼い宝石を見つけた十六夜が全員に呼び掛け。
相変わらずどうやればそう容易く見つけられるのかユーノが呆れ顔で、魔導師組は飛行出来るので比較的早くジュエルシード捜査班の面々が集まり。
さっきの話題もフェイトのジュエルシードへ執着具合で流れて、まだ気に掛けるなのはやユーノの視線を無視する十六夜は内心安堵し。
「間違いなくジュエルシード。これで15個目……あと6個ッ」
だからか、雰囲気で察したのかなのははフェイトの方へ意識を傾け。
「順調そうで良かったね、フェイトちゃん♪」
「うん、有難うなのは♪」
「まあ第一発見者は俺なんだけどな♪……マジでなのは相手だと素直なのな、お前」
「───イ、イザヨイにも感謝はしてるよ…一応」
日を跨いで早速さにジュエルシードが見つかり肩の荷を一旦下ろすフェイト。その肩に手を添えて笑い合う少女2人の微笑ましい光景に茶々入れる十六夜だが途端にそっぽを向いて応え。
「…ふぅん、随分としおらしい反応じゃねえか」
「別に……そんなワケじゃ…」
それが少し面白いとなのはがにゃははと口許を隠して笑い、途端にフェイトは紅潮する頬に手を当て、然し応答が意外だったのか十六夜は目を細め。
日にちが経って少し落ち着いたのかフェイトの表情も時の庭園から送還された時ほど暗くない。
「じゃあ早速封印しちゃおうか」
「……そうだね───ジュエルシード、シリアルナンバーII」
なのはに促されてまだ起動していないジュエルシードへバルディッシュの矛先を向け。
「そこまでだ!」
直後フェイトとジュエルシードを遮る様、現れた眩い発光に視界と意識を奪われる。
*
時空管理局の次元巡航船アースラが特定の次元空間へと到着し、そこで艦を停滞させてブリッジでは管制等を預かる局員達が情報収集に勤しむ中、此方を訪れて艦長席に座る淡い緑髪を後ろで一つ結びに纏めた女性、リンディ・ハラオウンが声を掛ける。
「状況はどうなっているかしら?」
「はい、現在第97管理外世界の上空にて件の魔導師を探索中。次元震の反応は現在ありません」
「その2名の魔導師の子達も活動を停止してる様です。魔力の痕跡もここの所ごく僅かな反応しか見受けられませんし」
男性局員が応答すると艦長席の真横で給仕に勤しむエイミィ・リミエッタが補足を加え。
尤も其の反応も何処か違和感が在り、妨害されている可能性を追える旨を付け足し。
「何にしても、小規模とはいえ次元震の反応を察知したからには見過ごす事は出来ませんね…」
元々この出動も管理局顧問官を務める重鎮の1人が判断し、また其の情報提供者もリンディ個人にとって聞き逃せないワードが出てきた事からで、航路中は時折真剣な顔で想起して。
「お任せ下さい。その為に"僕と彼等"が居るのですから。迅速に解決してみせます」
そして思考に再び耽そうな時、全身黒の防護服で覆われた少年の言葉で我に返り視線を向け。
息子で執務官の殊勝で頼もしい進言に微笑を向けると其の少年、クロノ・ハラオウンがカード型のデバイスを胸元へ掲げ。
「まあ、彼の予言が的中したのは正直予想外でしたが……」
「ま、まだ言いますかクロノ執務官殿…」
続けて述べるクロノに軽く睨み付けられた、同じく黒いロングコートに黒のシャツとズボンを着込む赤みがかった黒髪の少年。自称予言者な火神翔駒が苦い顔で肩を落とし。
「翔駒が胡散臭いのは今に始まったワケじゃないのに、もしかして自覚無し!?」
「ぐぬっ、五月蝿いぞエル……」
「……胡散臭さではキミも同様、いや寧ろそれ以上だが」
最後に銀髪の、彼だけバリアジャケットでは無く私服の白黒と青ラインで纏めた移民服の少年エルネスティアが剽軽な態度でジト目を向け。
然しクロノから呆れ顔で即座な指摘が飛び。
「うーん……まあ良いでしょう…。それより3人とも、呉々も怪我とかには気を付けるのよ?」
「「了解です」」
「はーい!」
そんな賑やかな雰囲気に頬に手を当てながら不安気に苦笑するも、変に気を張りつけめよりはマシと前向きな考えに改めるリンディ提督。
嗜める事柄にクロノと翔駒が敬礼で応えるのに対し、元気良く片手を挙げて返事する歳相応を装ったエルを見てまたしても苦笑を浮かべてしまう。
(……それにしてもまさか、第一種特例不可侵条約『禁区域指定・第三点観測宇宙』がここで出てくるなんて)
リンディがこの条約名を聞いたのは今までの人生で2度だけである。最初は友人である提督仲間と共に重鎮から呼び出されたのが事の始まりで、重役の者のみ知り得て各提督陣も当然"厳命"される。
曰く、神々が住まう恒星規模の異世界。次元宇宙の中でも一部が相互観測世界となっていて、対象の次元世界は専ら如何なる理由でも管理対象外となっている。そして第97管理外世界・惑星名『地球』が纏わる宇宙は全銀河系単位で指定区域となっており基本的に干渉はしない。
だが勿論、素知らぬ犯罪者や侵略者は居て、更に地球やその他次元世界で魔導師や魔法に準ずるレアスキル持ちが生まれたり、其れに関連する事件等が起こるのも珍しくなく、その場合は管理側らしく正しい対処法を以て事に当てれば条約に叛くことも無い。だがそれが此方側から間接的でも関与した、例えば次元震等世界を揺るがす事態にあるなら一刻を争うレベルで対処する必要がある。
(火神君を引き入れたのは迂闊だったのか、それともこれ幸いだったのか……)
そして2度目に聞かされたのはエルからだった。
彼の談では火神翔駒は神の世界で転生に携わった個々人単位で問題となっていて、現時点では無害だと判断しているが間接的にどちらかの世界かで悪影響を及ぼす可能性が否めず、彼を暫く監視する事と今回の事件と次に起きる"リンディも重要視する事件"が解決するまでは管理局そのものも監視対象に含むとの事。
つまり彼は特定世界の管理職みたいなモノだと、本人は少し違うと否定していたが解釈は概ねこれで良いらしい。
そして一時的に民間協力者として管理局に属して現在。表向き民間協力者に中には厳格に煩い重鎮達も少なくない者が三跪九叩頭する光景など今後見られる機会は無いだろうとは友人提督の言葉である。
当のエルからは
『正確には相互不可侵だね。…君達も嫌だろ?無法地帯と化してそれこそ次元断層以上の滅びが前触れも無くやってくるのは?僕達も天災クラスの魔王が跋扈するとか勘弁して欲しいし』
との事。
「魔力反応特定、例の魔導師達です!」
「座標特定、いつでも行けます!」
何度目かの思考に耽っていると局員からの報せがブリッジに響き渡り、モニターに白服茶髪の少女と黒マントの金髪少女が映し出され。金髪の魔導師が黒杖の矛先を蒼い宝石へ向ける。
「よし、では行くよ2人とも!」
クロノの呼び掛けに翔駒は首肯で、エルは無反応だが構わず足下に白い魔法陣が展開され3人を囲い。
(───そう言えば映像の少女の他に3人ほど観測されていた筈。1人は使い魔だと思われるし、もう1人も魔導師であるのは間違い無い。…しかし残るもう1人の子は……?)
そしてクロノ、翔駒、エルが地球の十六夜やなのは達が居る場所へと転移されていく。
*
フェイトが今正にジュエルシードを封印しようとした処でタイミング良く介入して来たクロノ達一行を目の前に。
驚愕で目を見開くも十六夜だけは落ち着いて其の光を見据え、収まるとクロノが自身のデバイスであるS2Uの矛先を向け。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。全員その場から動かないでくれ」
「管理局だって!?不味いよフェイト!」
「………ッ」
名乗る口上を紡ぐ少年へアルフが警戒心を露に、見ればフェイトも苦々しい表情でそれでもバルディッシュを下さず臨戦態勢。更にユーノも「時空管理局……」と囁き緊迫した顔で、なのはに関しては事情がわからず困惑気味。
「よう、ご無沙汰だな白黒チビ。しかも御大層に寝返ったか、それとも最初からその気だったのか…」
「うぅん、寝返ったというか何というか…」
さして気に留めない飄々とした口調な十六夜の言葉に曖昧な返し。
フェイトやアルフもそんなエルを一度睨むが、直ぐに至近距離のクロノへ視線と警戒を戻し。
「まあ如何でもいいし、寧ろ敵の方が盛り上がりそう──……?そういや隣のヤツも見覚えが」
「ギクゥ!?ひ、人違いじゃ…」
「今思いっきりギクゥとか声に出てたぞ。……ああ、思い出した。前に公園で絡んできた奴だろ?」
「ギククゥッ!!」
「なんだコイツ、一々面白えな」
そんなクロノを一先ず無視してエルにジト目を送るが特に興味無さ気で、次いで真横へ視線を移せば記憶にある男の顔を視界に捉え。
当の翔駒は冷や汗をかいて顔を出来る限り背け遂には縮こまってエルの背後に身を隠し、記憶から該当人物を思い起こした十六夜が指差すと愉快なリアクションにヤハハと笑い。
「あれ?公園で絡んできた人って、もしかしてこの前言ってた……」
「ああそうだ。つまりはコイツがお前へのストーカー予備軍ってワケ」
「はああ!?」
なのはも思い出したのか十六夜の傍に歩み寄り耳許で尋ね、突如謂れのない不名誉な言い掛かりが飛んできて思わず声を荒げ。
然し十六夜は飄々とした顔で。
「ん?だってお前、コイツに接触した事に怒って俺に突っ掛かってきたんじゃねえのか?」
「何言って────」
そこでふと十六夜と初対面時を想起。
『高町なのはに近付いて何の真似だ!?』
「あ、………ああ!!?違う違う!アレはそういう意味じゃ無くてだな!!」
漸く自覚が芽生えたのか必死に弁解を試みる翔駒だが、なのはからは若干引き気味な顔を向けられ。
「あの、多分わたしとは逢った事無いですよね?す、少なくともわたしには心当たりがないなあ〜って……」
更に後退りまでされたからだろうか、焦りも限界値まで到達して弁明方針を変え。
「いや、いやいや!あり得ないから!だってこの人客観視で将来魔王だの白い悪魔だの言われる程怖い女になるんだぜ!?」
「……えっ、えええ!?」
ビシィッと翔駒が語気を強め、指差されながら今度はなのはが謂れのない言い掛かりを付けられて自らを指差して戸惑い。
「ハハハハッ!そうか魔王か、そいつは確かにおっかないな!尤も俺としては将来有望そうで嬉しい限りだけどよ!」
「ちょっ、十六夜君!?ならないからね!?魔王とか悪魔になんて!」
「はい嘘でーす。脳筋だし直ぐO☆HA☆NA☆SHI言って魔砲撃つし、最終的に『あの人世界人口全部で"喧嘩強い順"に並べたとしてもかなり上位に来る女』なんて言われる未来が待ったなしでーす!!」
この騒動にいつしかクロノもユーノもアルフも、そしてフェイトも此方に注目して視線を集め、エルは堪えた笑いから腹を抱えて顔を背けるも時折ブプッと吹きそうになり、最初はノリに乗った十六夜に顔を赤くして苦言を呈するも、尚も止まらない翔駒の言い掛かりに次第に俯いて羞恥心がいつしか表情に陰を落とし。
因みにだが勿論完全な風評被害である。普段から心優しい少女で将来も気遣いと面倒見の良い素敵な女性へ成長するのだが、翔駒も売り言葉に買い言葉で後に引けなくネタバレも全力全開で披露し。
「さっきから聞いていて思ったが、監視していたエルは分かるけどキミも面識があるのかい?」
「ふッ、ククッ…!ああうん、どうやらそうみたい。ねえストーカーの翔駒くーん」
「だから違うって!」
クロノの問いに笑いを噛み殺しながら応えるエルの呼び掛けに断固否定する翔駒。
そんなやり取りも最後に遂にはなのはの方からブチッ!という効果音を鳴らしながら青筋が浮かび。
「ちょっと、アンタ流石に言い過ぎ──」
「ふ、ふふふ………」
「───え、…なのは?」
「…………な、なのは…?」
流石に可哀想になったアルフが横槍を入れるも、最中になのはの口から漏れたとは思えぬ底冷えする笑い声にアルフのみならずユーノとフェイトも怯え気味に名を呼び。
「あり得ない。うんあり得ないかも。アリサちゃんと喧嘩した時も、十六夜君やフェイトちゃんやエル君という三大問題児が問題児ってる時も……"アハハハ"、此処まで腑が煮え繰り返った事なんて一度も無かったと思う。いいや、絶対に無かったなあ」
ボソボソと呟く程度だが何故か言葉がハッキリと聞こえるくらい怒気が宿り、年齢にそぐわない言葉まで遣うなのはに場の空気も鎮まり返る。
先程まで語気を荒げていた発端者もガクガクと身を震わせて冷や汗の量はバリアジャケットの襟元を濡らすくらい流れ。
「お望み通り。ううん、期待通りにちょっとだけ。それともお互い気の済むまでO☆HA☆NA☆SHIしようか?………レイジングハート!!」
『Shooting mode』
ガンッと足場を踏み締めて自慢の杖を向け、変形してシューティング形態に移行した先端から魔力粒が4個生成されては瞬時に膨大化して。
「シュートっ!!」
「うわああああ!めっちゃキレてらっしゃる!?ちょっ、……とりあえず逃げるが勝ち!」
「逃がさないよっ!」
四面楚歌で飛び交う拳大サイズの魔力弾を放ち、翔駒が慌てて後方へと飛び退くと地面に着弾した其処は土煙を上げて鋭い跡を残し。
其の威力に例え非殺傷設定でもタダでは済まないと悟った翔駒は全速力で逃亡を図ると間髪入れずになのはもブーツから桜色の翼を生やして飛翔して追い掛け。
「ええ!?待ってなのは!」
その後ユーノも飛翔し2人の後を追い。
「───今…、……ッ!?」
「なに!?」
其の騒動で荒れている隙にフェイトがジュエルシードの方へ駆け出すも威嚇ながら的確に撃ち出された白い魔力弾に急停止し、まるで背後に眼でも付いているのではと疑わしくなる超反応で真横に飛び回避し。その事にクロノが一時驚愕。
「くっ……あと少しだったのに…ッ」
「ッ、…でも、そうはさせないよ」
散々十六夜を相手にした故かまだ余裕もある模様で言うフェイト、地に片膝着いて睨み付ける先に矛先を向けるクロノが映る事から彼が放ったのは明確に認識し。
当の彼もフェイトに負けじとデバイスを構え直して魔力を溜め。
「フェイトの邪魔をするなあ!!」
直後に怒声と共にアルフが飛び出して拳を振るうもクロノには難なく柄で受け止められ、払う様に手慣れた動作で逆にアルフの土手っ腹に衝撃波を浴びせて吹き飛ばして、コンテナに激突。不意をつかれたのか衝撃をモロに受けたアルフは気を失って其の儘倒れ伏し。
「アルフッ!……邪魔をしないで、私達にはジュエルシードを集める使命があるんだ!」
「馬鹿を言うな!アレは危険だ、私利私欲で無闇に使うモノじゃない!どうしてもと言うなら、此方も力尽くで対応させて貰う!」
入れ替わる様にフェイトが矛先から金の魔力刃を形成して飛び掛かり、クロノも杖に魔力を纏わせて斬撃を受け止めて両者拮抗し。
同時に飛び退いて距離を取ると先にフェイトが回り込もうと後退し、クロノが追い掛ける為に飛行して宙を駆けて去り。
「──…俺は自動的に白黒チビとか」
「うわあ、イザッちととか貧乏くじにも限度があるでしょ。厄過ぎてお祓いしないと…」
そしてその場に取り残された、今まで事の経緯を静観していた2人が改めて向き合い。
十六夜に紛う事無き嫌気と共に肩を落とすエル。
「ハハ、そうつれない事言うなよ。こっちはお前とも一度戦ってみたかったし、この状況には結構喜んでるんだぜ?」
「相変わらず好戦的だなあ……でもキミを野放しには出来ないのも確かだし、お手柔らかにね」
獰猛な笑みを向けて心情を吐露する十六夜にエルは苦笑し両掌を上げると、直様鋭い目付きに変わり薄く笑みを向け。
発言から察せずとも最初からエルは十六夜の相手をする気ではあった。正確には戦いになる場合、他の2人に未知数な力を宿した十六夜をぶつけるには荷が重いだろうと判断した結果だ。
だから翔駒の失礼発言から伴う挑発を誘う事象、其れを敢えて放置して是見よがしに対戦させる算段を画策したのだが、其の反面笑いを堪えるくらいだったのもまた事実で。
「……そういえばいいのか?」
「それは他の2人の事?それとも時空管理局側に付く事?どちらにしても心配は要らないよ」
「そのどっちでもねえよ。お前って一応"しがない魔術師"で通してるんだろ?あまり力を見せるのは躊躇われるんじゃないか」
「んん?…ああ……それくらい、僕が"手加減"すれば問題無いさ」
兎に角今の状況はエルとしても好都合。然し急な問いに首を傾げ問い返すと十六夜から告げられた疑念に納得し、それでもクスッとした笑みと共に挑発的な発言。
其の言葉を耳にして間もなく十六夜は獰猛な笑みを深め、徐に握った拳を適当に構え。
「……へえ。じゃあつまり、テメェが手加減出来ないくらい徹底的に叩き潰せばいいんだよな?」
「アハハ、出来るならやってみなよ?」
「OK、ならさっさと始めようぜ!」
促される儘にエルも片手を翳して獰猛な笑みで返すと直後2人は激しく衝突して─────。
*
場はとある孤児院の屋内、椅子に座る金糸雀は静寂な場で机へ肘を預けて開いた双眸で虚を見据え。
そして緩く唇を開く。
「───久しぶりに一つ詩を綴っておこうかしら。お帰りなさい、
──"お帰りなさい、
其の言霊が応接間を響き渡るかの如く靡くと夕暮れの中、陽を帯びた黄金の詩人は再び双眸を閉ざして静観静聴を再開する。