管理局員である翔駒が悪ノリでユーノをゲージ型拘束結界に閉じ込めたのを皮切りに再度始まった戦いは打開策を講じたなのはの闘志で熾烈化し、相対する方も24基の魔力弾を何とか凌ぎ其の事に内心かなり安堵するも少女側は言い切る通り決して諦めずに向かってきて。
『Divine───』
「……バスター!」
桜色の魔法陣がレイジングハートの矛先に展開されると彼女を体現する直射砲撃魔法が放たれては然し案の定AMAに妨げられ。
「あっぶねえ……そろそろ諦めたらどうだ?」
「ならユーノ君を解放して!どうしてこんな事をするの!?」
「ん?そう言えば……────フハハハ!甘いぞなのはたん、その手には乗らん!!」
「その手ってどういう意味!?……どうしよう。会話が成立してる気がしない…。……シュート!」
防壁の制御や戦闘に集中したりと意識を割いて忘却した演技を思い出した様に顔を片手で覆い、もう片腕を上げ掌を向けて仰々しく中二病ポーズを決める翔駒。黒歴史も更新中。
当然理解を超えたなのはが珍しく話すのを億劫に感じて諦め。直ぐに魔力弾を4基出すと今度は操作誘導式に切り替え背後けらの奇襲を狙うべく脇へと放ち、客観視は明後日の方向に向かうディバインシューターに翔駒は"知識"を活用した。
「だから甘いと言っただろう?アンチマギリンクエリアにはこういった使い方もあるんだぜ!」
今度は臆さず後方へ走ると少し距離が開いた個所で立ち止まり両手を左右にそれぞれ向けて最後に背後へ振り返って同様の動作をし、その間にも目標位置に来た桜色の魔力弾は翔駒目掛けて飛んでくる。
然し今度は至近距離どころか離れた位置で霧散して其の事に驚愕して目を見開き。
「ええ!?うそ、なんで───」
「何故かって?それは俺の魔法無効が壁の様に設置されたからだ。今は前後左右に張り巡らせたから死角は無いぜ!」
優位に立てて気分良さそうに解説し、続けて左右に飛び交った魔力弾は形状が有耶無耶になりつつ制御が外れて地面や貨物へと弾け飛び。
更にダメ元と検証に最後の魔力弾を正面へ撃つも矢張り壁に遮られて、今の事態と律儀な説明でなんとなく翔駒のAMAの粗方理解するなのは。
「でもそれって……えーっと、……あ、そうだ!籠の中の鳥!そんな状態だと思うけど。まさか移動する度にバリアを設置するのかな?」
「………え?」
「うーん、でも籠られたら厄介だなあ」
こう見えてなのはは優等生である。
少し思考を巡らせて弱点に気付いて指摘するが当の翔駒は要領を得ていない様で、腕を組んで呑気にうんうん唸るなのはを妙に思う。
「……フ、フン。何か策を考えてるみたいだがそんな時間は与えないぜ!」
「……?…あっ、ちょっと…!」
然し"認識"として己の能力に不備は無いと過信しているのか考える事をやめてキザっぽい口調を装うと今度は翔駒側が薄い緑色の魔力弾を4基出し。本人の適正故に直線にしか撃てない弾丸がなのはのまるで制止する声も無視して射出した結果、其の儘自分の生み出したAMAに掻き消される。
「…………」
「……………どういう事だってばよ」
「それは多分、そちらの張ったバリアの所為なだけじゃないかなあっと…」
再度の指摘で漸くハッと大口を開け。
「あ、しまったあああああ!」
辺りに木霊するくらいの絶叫。
そう、何を隠そうこの火神翔駒は本格的に魔法戦の訓練を始めてから半年も経っていなく今までは独学自力で業に試行錯誤する事はあれど当然戦闘する機会も無く、管理局の嘱託魔導師になってやっとまともに魔法を運用する場を儲けられた。
因みにその時クロノに始めて訓練を付けて貰った時にAMAの性質をある程度考察され、その中に確り「此方も魔法は使えず射撃系や飛行は以ての外、拘束等遠方から飛ばす術も阻む」と注意された経験が在るもすっかり頭から抜け落ちている模様。
「にゃはは……出来ればこのまま降参してくれるとわたしも助かるんだけど」
一々リアクションが激しい翔駒に苦笑しながら促すなのはに苦虫を噛み潰した顔で呻り。
「ぐぬぅ……い、いや!まだ勝負はついてないぞ!要は設置状態を解除してまた前面にAMAを展開すれば良いんだからな!」
「うう……やっぱりダメだよね。仕方ないな───レイジングハート!」
『All right, Kanon mode setup.』
それでも往生際悪く周囲に張り巡らせた魔法無効の壁を解いては自分の前方を身を覆う範囲で展開して剣のデバイスを構え駆け出し。
なのはも観念してレイジングハートを左手を軸に両手で構えると、向けた矛先が槍の先端部の様な形状で銀を基調としたカラーに変形させ更に矛先の手前に蒼いトリガーも装着される。
以前一度使用して出力を上げるには此方の形態の方が適していると判断しての形態移行。
「チッ…念の為拘束してから───」
「そうはさせないよ!」
相手の気迫に危機感が過ぎった翔駒が走る足を止めて用心にとAMAを解いた瞬間、声と共に己の手足が淡い緑の鎖に繋がれる。
慌てて周囲に視線を巡らせ振り向いた先に、魔法陣を足場に空中で拘束魔法を使うユーノの姿を視界に捉え。
「どうしてユーノが!?まさかあの結界を破ったのか!?」
皮肉にも逆に拘束された翔駒とAMAの影響を恐れてか離れた上空に跪き両手を魔法陣に着けるユーノ。
彼が攻撃魔法を得意としなく、またあのゲージ結界はクロノ達でも突破するのに困難だった検証結果もあってか驚き声を荒げる。
「ユーノ君!よかった、自力で脱出出来たんだね」
「あ、いや違うんだ。助っ人に頼んでね」
「助っ人…?」
「十六夜」
「ああ、うん。何となくだけど分かった」
無事脱したユーノに弾む様に顔を明るませるも救出者の名を聞き光速で納得したなのは。
「くっそ、外れねえ…!」
「……よし、ならありったけのフルパワーで。行くよレイジングハート!」
『Divine buster, stand by.』
どうにか踠いてチェーンバインドを破ろうと試みるもこの間にも、否カノンモードに移行してからずっと矛先から桜色の魔力塊を増幅させ足下の同色な魔法陣も翔駒が気付いた時には巨大化していて。
「ッ!やべッ!!」
「ディバインバスター・フルパワー……」
威勢増す声音と強気な双眸に至急前面を覆う様にAMAを宛ら壁の様に展開。
どうやら翔駒のバリアは拘束魔法を受けている最中も発動に支障は無いとまた見識を得ながら───。
「シュートッ!」
そしてなのはの掛け声と共にドドドドドドォオッ!と通常より太い広域直射砲撃が照射される。
「た、耐えろ………!!」
必死に願うも魔力砲とAMAの壁が拮抗したのは最初の数秒で、徐々に桜色の砲撃に押され始め。
「全力………全開ッ!!」
そして更に出力を上げた砲撃。
遂にAMAが耐えれなくなり翔駒も精魂尽きた如く霧散、其の儘迫る照射砲に戦慄し。
「嗚呼、悪魔───うぎゃあああああああああああああああああああああッ!!!!」
そう言い残して目の前が桜色に染まり。
圧倒的な威力を誇る砲撃に呑まれた翔駒の意識はそこで途絶える。
*
刹那の激しくも凄烈な打つかり合いを繰り広げた後に再び均衡を保つフェイトとクロノがお互い動向を探り合い暫しの時が過ぎて。
先に痺れを切らして動いたのはフェイトだった。
「はあああああッ!」
漆黒のマントを靡かせながらバルディッシュを両手に疾走、飛行状態からの素早い進撃にクロノは目を見張り。
「やはり速いな。だが………」
其の儘振るわれた金の魔力刃を寸前で躱し。
「……!!」
「さっきと比べて攻撃が単調過ぎる!それにあまり直情的になると簡単に読まれるよ!」
「くう……ッ」
反撃とばかりに真横に移動して意識を刈り取るべくS2Uの先端シャフトを首筋目掛けて振り落とすも、類い稀なる反応速度でバルディッシュを同じ部位で打つけて防御。
内心でフェイトの力量に感心するも真っ直ぐな接近戦では恐らく分が悪いと判断したクロノは杖を払うと共に後退する。
「逃がさない……!」
『Photon Lancer』
退避も反撃も先制の暇も与えぬと、然しフェイトの額には汗が流れ焦りと疲労感が露に。
金の直射魔力弾を展開とほぼ同時に放つ。
「………」
だがクロノは無言で前面に手を翳し青白い魔法陣を展開して容易く防ぎ切り、先程より冷静な顔でフェイトを見据え。
「…バインドを警戒していたが、どうやら仕込みの下拵えが不十分だったのかな?」
一戦交えた時の意表を突いた戦法も無く、其れを態と挑発気味に刺す口振り。
クロノの言に臨戦状態のまま静寂で返すも余裕無さげな表情から沈黙を肯定を受け取って。
「関係無い。力押しでも私が勝つ」
「……やれやれ、僕も随分と甘く見られているな」
「違う。強敵だからこそ余裕が無いだけ……それでも意地で押し通すよ!」
言うが早いかまた真っ直ぐ突っ込んでいくフェイトに何処までも冷静なクロノは僅かな移動距離で躱し、其の儘間髪入れず青白い魔力光なる直射型射撃魔法を放ち。
フェイトも反撃は織り込み済みだったのか直ぐに反転して掌を前に翳し防御陣を展開。
「………ッ!?」
然しクロノの放った魔力の弾丸『スティンガーレイ』が予想以上の貫通能力を誇り予め重複し準備した魔法陣は以前より強度を増したにも関わらず着弾と同時に軋み始め、放たれた8発全てを受け終わった途端に砕けるもフェイト自身には届かず反動で体勢を反らしたのみに済み。
「防ぎ切ったのは賞賛に値するけど、そろそろ終わりだ!」
だが空中で姿勢を崩したのが手痛く。
其の隙を逃す筈もなく追撃しようと肉薄し。
「くっ………アルフ!」
「任せなフェイト!はああああッ!」
そんな事は想定内とばかりフェイトが叫ぶと共にクロノの背後を取る様にいつの間にか意識を取り戻し浮上して来たアルフに一瞬驚くも状況判断は速く───否これも想定内だと云わんばかり急停止し。
「それも予測の範疇だ。スティンガー!」
アルフが魔法弾を生成するより速くクロノは対応魔法を発動して直ぐ様発射。
「しまっ……ッ」
「フェイト!ぐっ、あああっ!?」
魔力光弾は螺旋状に一周した後左右に分かれると鋭い速度でフェイト達へ飛来し、複数人を殲滅する魔弾は防御の魔法陣を砕かれ体勢を崩したフェイトと今まさに復帰したばかりのアルフ、容易く両者を無力化して地へと落とす。
「勝負ありだ…」
「そいつはどうかな」
「なに───ッ!?」
墜とされた2人がフェイトは気を失い一方アルフは意識を残しながらもダメージが甚大で緩く小刻みに身を震わせて中々起き上がれず、其れを確認したクロノはゆっくり降り始めるが突如死角から反応が間に合わない程の速度で飛来する影と打つかり。
声の前置きに(十六夜からして態とではあるが)助けられ何とかS2Uを縦に構えると肉薄した十六夜の拳に杖の柄を両断されて自身も吹き飛ばされてコンテナに激突し。
「かっ、は……!」
「悪いな、白黒チビが見つからないから先にこっちを対処させて貰うぜ。卑怯だとは自覚してるけどこっちも切羽詰まってるみたいだし、文句はねえだろ?」
不意打ちに申し訳無さを伝えるも飄々とした顔からはとても悪気は感じられず、十六夜が予め持っていた石ころを建造物目掛けて投擲。
第一宇宙速度で投げられた石弾はクロノの足下に着弾して其の一辺を吹き飛ばし、十六夜の"狙い通り"土煙が巻き上がる。
「……今のうちに─────あ?」
そして周囲に視線を這わす十六夜だが踠くアルフ以外の姿を捉えられず探し。
『聞こえる?十六夜君』
「あん?なんだよ金糸雀か。生憎だが今は忙しいから後に───」
『フェイトちゃんはこっちで回収したから後はアルフちゃんを逃しなさい。それとあまり時空管理局とやりあっちゃダメよ」
「……チッ、相変わらずどんな手品使いやがったのか。ああ了解だ、適当に降伏する。それでいいんだろ?」
直後インカムから聞こえた言葉に懐疑の念を抱くもまるで金糸雀の言いつけを律儀に護る"十六夜らしからぬ"反応。
舌打ちを混じえて返すと『それでOKよ』とのお告げ後に即通信が途絶して、以降この機器が機能しなくなった事に気付きヘッドホン型インカムを外しては放り投げ。
「後は自分でなんとかしろってか。あの女狐、わかり易くて面白いじゃねえか」
「はっ?ちょ………十六夜ぃーーー!?」
徐に歩む十六夜がアルフて腕を掴み、おそらくと予想付けた孤児院の方向に投げ飛ばす。
当のアルフは何がなんだか理解に苦しみ為すが儘空を飛び、結界内から身を消して。
「ハッ、今日はしゃらくさいのオンパレードだなオイしゃらくせえ!」
「はッ……!?」
土煙が晴れる間際に青白い直射型の魔弾が飛んでくるも構わず空を蹴り上げれば地面を抉る質量の粉塵が巻き上がり、軌道を逸らした弾丸は十六夜の的から左右上下にズレてしまい。
「………」
「キミは…………いったい」
防護魔法でなんとか難を逃れたが完全に晴れた場には十六夜とクロノしか残されず。
疑惑を込めて紡いだ言葉に睨み返し。
「十六夜君!」
丁度その頃、なのはの呼び掛けに振り向くとユーノと共に気を失った翔駒を両手でぶら下げて向かい来る光景を目に。
クロノも同様に映して唖然。
「
「は?はあ!?ちょっと待ちたまえ!大体あの2人は何処に!?それにいきなりどうして……」
「だから一端話しさせろって言ったんだよ」
両手を上げて参る十六夜にクロノのみならずなのはも隣に降りては杖を構えながら緊迫から驚愕へ。
一方ユーノは何処か安心した顔だが。
「そもそも先にこっちにちょっかい出したのはテメェ等だろ?どういう組織かも説明せず場を乱したそこの奴が俺は尤も責任重大だと思うが」
「………それはすまなかった。彼はまだ新人なんだ」
十六夜が指差した先、なのはとユーノに運ばれて来た翔駒を見てクロノも食い下がり。
「そういうワケだから先ずは話し合おうぜ。お互い誤解があるかもしれないし、な……?」
「…………なるほど、キミがイザヨイか」
正論なのにまるで邪悪な笑みを向ける十六夜に底知れぬ恐ろしさを感じるとクロノは交戦中今は見失ったフェイトが述べた名を思い出して額に一雫の汗を流す。
*
フェイトが目を覚ましたのはもう陽も落ちてまもなく。
気付けば己と同じか暗闇ならそれ以外に眩い金の髪を持つ母性溢れるも何処か幼げな女性にお姫様抱っこされていた。
「カナリアさん………?」
どういう状況か分からず視線を逸らすと丁度狼形態で横わるも戦闘の負傷が見当たらない相棒を見て。
更には自分もあれだけ魔法戦をしていたにも関わらず"全裸だがそれ故に解る傷一つ無い身体"に色々目を見開き。
「ああ、安心して。全部治したから。本当は衣服が在ればベストだったけど戦闘の影響かしら?バリアジャケットを解いてもこのままでね」
「そう、だったんですか……」
けれど気にした様子も無いフェイトは無意識に金糸雀へしがみつき。
「───お休みなさい、貴方は頑張った」
それからは頭を撫でる毎に嗚咽。
其れを見た金糸雀は然し、表情にはクスリと笑みを浮かべ。