高町なのはが魔法と出逢ったのはまだつい最近の出来事で記憶に新しい。
キッカケは頭に直接響く声により負傷した小動物を発見、病院まで連れて行った日の晩に再び声が聞こえて駆け付けた結果、異形と化した魔物と遭遇してそのまま助けた小動物のユーノ・スクライアから魔法の力を授かり魔導師となった。ジュエルシード集めに協力する形でなった魔導師としては日が浅く、見習い中の見習いではあるがその才能は魔法を教えた師であるユーノも認めるほどで、超直感にも等しいソレは"自分がどうするべきか"を状況に応じて判断及び行使する術を持っていると言っても過言ではない。
彼女に託したインテリジェントデバイスであるレイジングハートは高性能なAIが搭載された正に魔法の杖。自ら思考し使い手に合う様にサポートも兼ね備えている魔導師としての武器と使い手の相性は元々の持ち主の予測以上で、しかもそれを扱う少女がまだ数回の魔導経験しか経ていない上での現在があるので正直末恐ろしい。故にやはり高町なのはが高い魔力量以上に特別なのを体現していた。
────とは言え見習いなのもまた事実。現に先程横槍されたおそらく格上の魔導師に押されていて、更に乱入された何から何まで正体不明の少年には圧倒されてしまった。
前者はスペック自体は同程度だろうが単純に経験の差で、手練れの魔導師が優遇される所以でもある。ならば後者に至ってはそれこそ未知でユーノからしても実力差は測れない。兎に角、片やなのはやユーノが集めている物を奪われてそのまま逃がす顛末に(少年の介入が主な原因だが一騎打ちであのまま戦ってもいずれ敗退していただろう)、そして今も目の前に居る男に関しては余力を残されていそうな余裕の顔で無力化されていた。
そんな分析をなのはの肩に"フェレット状態"で乗るユーノが行う。
逆廻十六夜が己の常識外で未知な光景に心踊らされ、寝転んでいた木の枝から身を乗り出し、傍迷惑?そんな単語は知らないとばかり茶々を入れ誰かの事情もお構い無しに武力を奮ってから数刻。片方には逃走されもう一方は直ぐに無力化してしまい、興が冷めたように脱力。面前の少女の威嚇も涼しい顔で躱しながら楽しみ方の方針を変える。
「で…、結局お前らってどういう連中なんだ?」
「…見ての通り、どこにでも居る普通の女の子とそのペットです」
即答。怒られているにも関わらずどこ吹く風か十六夜が気掛かりな事を躊躇なく問うも、なのはは完全に不貞腐れていて意趣返しし顔を背けられた。
「ハハッ!近頃の"普通の"女子は銃砲刀剣類所持等取締法も無視で!斬ったり撃ったり鈍器や凶器をブンブン振り回したりが流行りなのか!?そいつァ知らなかったぜ」
「じゅ、じゅうほう…とうけん?るい?」
『
「……って、ちが…ッ!」
そんな意趣返しも知らぬ存ぜぬとばかり高笑いし真に受けるフリの彼は態とややこしく告げて茶化し、途端に怒気は疑問に上塗りされたように霧散。最初こそ目を瞬かせ復唱しながらレイジングハートを見ると解りやすく略式名称で補足され把握するも、今度は焦りが勝り訂正しようとするなのは。まぁ側から見れば完全におちょくられているが当の本人は気付かぬ模様。
「なのは、あまり相手にしない方が……グェッ!」
だからなのか、見兼ねてつい声にして指摘してしまう一匹。
そんな状況を十六夜は当然見逃さずキラーン!と擬音と片目に星が浮かんだかのようにギラギラした眼差しを物理的声帯活用した少女の肩の小動物へ向け、サッと首根っこを摘んでユーノをなのはから奪い取れば挙句宙ぶらりんに。
「オマケに人語を発するペットも普通ってか?」
「ユーノ君!」
「うぐっ……苦しい…」
「ッ……レイジングハート!!」
『Yes,my Master』
対して解放されたレイジングハートを両手に威風堂々と矛先を向けてまた臨戦態勢へ。
険悪な空気で場を支配する。
「───ハッ、なのは!魔法を使ってはダメだ!」
それでも非魔導師かもしれない相手に魔法攻撃するのを畏怖したユーノが咄嗟に叫び。
「…へえ?」
それによりまたしても聞き逃さなかった十六夜の耳聡く目敏い視線が手の下の小動物へ向けられ、咄嗟な訴えで暴露してしまった事に気付いたユーノは直ぐに己が両手で口を塞ぎ、恐る恐るなのはに視線を移すと件の少女も固まって困惑気味。
その目が上手い誤魔化しを思い付かずに助けを求めるモノだと察した師匠は弟子のフォローをするべく動く。
「…な、なーんてね!おおお驚いた?魔法なんかある訳ないじゃないかハハハッー!ね、なのは!?」
「にゃ!?ア、アハハ…ジツハコレオモチャナノ」
演技下手な動揺と棒読みである。
対して十六夜は。
「ハッハッー!そうかそうかオモチャだったかついモノホンだと思ってうっかり身構えちまったぜ、っとでも言うと思ったか?」
「「………」」
当然引っかからず睨みを強め、いつの間にか掴みから逃れ少女の足下へ四足着けるユーノとその少女であるなのはを見る。
あちら側は言葉にならず無言。
心配になるほど双方の迂闊な会話に十六夜は以後2人が飛んで火に入る"面白い玩具"にしか認識出来ず、暫し注いだ目線を外し腕組み、更に右腕を上げ顎に指を添えると思案顔に、其れも暫し続いたがナニやら思い付いたようニヤリと口端を吊り上げると再度二人は向き直る。
そして暇で暇で仕方なかった時間を利用して知識欲を満たすべく様々な書籍等を閲覧した記憶の中からその手の事柄を思い出して。
「そういや以前読んだ本で知ったんだが、魔法ってのは諸説あるらしいぞ」
「え?えーっと………。……?」
突然振られた言葉になのはが困惑を深め。
「なんでもそいつは人ならざる姿、例えば動物の見た目で現れていきなり"君には素質がある"だの"チカラを授けるから助けて"だの宣った挙句に魔法を使える道具を渡すんだとさ。因みに西洋系の魔法の道具だと宝石類がメジャーって知ってたか?」
「んん?」
イマイチ話しの筋が見えずなのはは両手の人差し指を側頭部のチャームポイントなツインテールに当てて疑問符を浮かべ。
「理解に及ばない"無垢な少女"にはとっておきの謳い文句があるんだそうだ。例えば"力を貸してくれたらどんな願いも叶えてやる"とかな」
「ちょっ…何を言って…?」
なんとなく自分の事を云われてるのだと至ったユーノも心当たりが無く、意図が読めない十六夜の言い掛かりに動揺を隠しきれず。
「魔法を与える動物?それに道具……あっ」
しかし高町なのは、今教わったばかりの豆知識(?)を脳内でも巡らせ、思い当たる節があるのか唐突に目を見開く。
『君には魔法の資質がある』
『お願いします、僕を助けてください』
『お礼は後で必ず…!』
そしてレイジングハート(宝石)を渡す
お礼とは願いを叶える事と曲解して漸く十六夜の言葉の意味を理解し、その結末を告げられる。
「…で、その実チカラを与えた奴を最終的にモルモット扱いにするらしいぞ」
「えっ…えええええええ!?」
「君は一体僕をなんだと思ってるのさ!?「…珍獣?」違うからね!?あ、いやある意味違わないけど」
「だが心当たりはあるみたいだぜ」
完全に思考誘導された"無垢な少女"を利用した十六夜の遊びが成功、まるで自分が魔法で詐欺を働くような風評へ勿論即座に否定する。
「そ、そう言えば確かに………」
「……な、なのは?」
そんなユーノの言葉が届かないのか次第に顔を青白くさせて、眼下の相棒で魔法の師をまるで得体の知れないモノのように見て。そんな視線を受けて恐る恐る呼び掛け。
「おいおい、マジかよ…」
「…ユーノ、君…?ま、さか……」
「なのはぁぁぁぁあああああ!!?!!??!?」
ゆっくりと後退りするなのはへ合わせ十六夜も身を引き。
あまりにショックな事態に相棒の名を世界へ叫んでしまう。曰く「こんなのってないよ…」と嘆くユーノだが、散々楽しんだ十六夜は悪ふざけも程々に今までの語りがフィクションである事を告げる。
「そうなんだ…よかったぁ…」とは告発されたなのはの言で、そんな返しに十六夜は別の意味で心配になるが一先ずこの場の収拾をつける。何にしても誤解が解けて晴れた顔のユーノは観念してある程度の事情や魔法について簡単に説明すると別件で表情歪ませる事に。
「封時結界ってある程度は言葉のままの意味か?」
「概ねそうだね」
「なら多分解けてるぞ?」
要は人避けだと解釈した十六夜は先程までの自分の行動を鑑みて言うもユーノは訝しげ。
「…あー、俺が暴れたからって理由だからある意味俺の所為だな」
金髪の漆黒魔導師が猫の中のジュエルシード回収に行った弊害と十六夜が"手加減して"投擲した小石が子供が潜れる程のクレーターを作りあちこちに被害を与えた現場の惨状を尻目に、そちらに視線を向ければ本来は聞こえる筈のない声が耳に届く。
此処で漸く事態を理解出来たユーノが索敵魔法と結果の有無を確認して本日何度目かの焦りをみせる。
『なのはーーー!!』
「アリサちゃんにすずかちゃん!?」
複数の自分を探していたであろう友達達の声に振り向くと遠目に紺髪の少女や金髪の少女、月村すずかとアリサ・バニングスを目に捉え、そんな光景を隣で見たユーノは「どういう事だ!?」と視線を先程まで居た少年に向けるも既にその姿は無く、弁解するのを押し付けられた事実に気付く。
その後駆け付けたなのはの兄の恭也やすずかの姉の忍とメイド一同に誤魔化すのは大変だったといえよう。結局少しだけ嘘を付きペットを探していた間に気絶していて気付いたらこんな状況だったと言い、いつの間にか怪我した右腕の負傷を応急処置するのも相まってか事なきを当てから既に夕暮れ時となり月村の屋敷に宿泊の打診が来てからは兄の言葉も無視して了承し、無事帰宅していくアリサを見送って入浴の世話をされた後のある時、ユーノが彼を見つけ薄暗い部屋へ突入してはパソコンを弄る十六夜と再会した。
「……不法侵入は駄目だと思うよ?」
「なら安心しやがれ、此処は俺の部屋だからな」
そんな一幕があったが事情を説明される。