深海から始まるヒーローアカデミア   作:リン・オルタナティブ

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外伝的なものをやりたいと思っていた今日このごろです。
それではゆっくりしていってね!

この話は本編第11話までの鬼姫の動向を凝縮した内容となっております。


#1 深海ノ姫、目覚メヲ見ル

 海―――それは地球の神秘にして、全ての生命の始まり、源であると考えられている。しかし、英雄(ヒーロー)がいる限り悪役(ヴィラン)が生まれ続けるのと同じ様に、海にも光が当たれば、必ず闇ができるもの。小笠原諸島の海の中、深い深い深海の底で、()()は目覚めようとしていた。

 

 深海のさらに奥深く少数の深海生物しか寄り付かない最下層に位置する海底に、ポツンとソレがあった。ソレは黒い繭のようなものだった。海底に根を張るように鎮座する繭は3メートル程の大きさで、繭の表面は繊維のようなものに覆われ、非常に頑丈なようだ。繭は時折ちょっかいをかけてくる深海生物達を片っ端から取り込みエネルギーへ変換し、繭の内部で胎動し、眠り続ける()()へエネルギーを送り続けていた。

 

 

 ......繭が内部へのエネルギー供給を始めて3ヶ月が経過した。世間では小笠原諸島周辺に生息する海洋生物が極端な減少を続けている、というニュースが流れていたのだが、()()が知る由もない。そして―――――

 

ズズズ.....

 

 繭は花が開くように6枚に裂けて、その内部が明らかになった。内部は人一人が入れる様になっていて、繭の中心だったところには一つの人影が丸まった状態のまま眠りについていた。肌の色は雪のように白く、口元には繭と同じ材質で形成されたマスク型の甲殻が装着されていた。肌と同じ色の髪は背中ほどまで伸びており、胸などの大事な部分はマスク同様黒い甲殻らしきもので覆われていた。

 

「..........?」

 

 口からコポポ...と泡を口から漏らしながら少女は瞼を持ち上げ、目を開ける。彼女の瞳は左が青、右が赤のオッドアイだった。そして同時刻――――小笠原諸島周辺の海域が黒く染まった。

 

◇◆◇◆◇

 

 ふわふわと、漂うような優しい浮遊感が突然終わりを告げたのを感じると、私――煉黒(れんごく) 鬼姫(きき)は目を覚ます。目を開けると口からコポコポと泡が漏れ出ているのが見える。どうやら海中―――それも深海のようだ。

 なのに、私の思考はクリアで落ち着いているどころか、深海にもいるにも関わらず妙な安心感を持っているのだ。なぜ水圧で体が押し潰されていないのか?なぜ息苦しくないのか?なぜ()()()いるのか?湧き水のように出てくる疑問は、自身の腕を見たことで一瞬によって解決した。

 

「コレハ....深海棲艦ノ腕.....カ?」

 

 雪のように白い腕は、いつの日か憧れとして目指していた怪物(ヒーロー)、深海棲艦のものだった。確かに深海棲艦なら水中で呼吸できるし、水圧などで身体が押し潰されることもないだろう。立ち上がると、感触に違和感を感じ取り、ふと足元を見る。ちょうど自分が立っている位置は丸く黒ずんでおり、さらには魔法陣のような絵が描かれていた。何かしらの儀式が終わった後のようだ。尤も、その儀式から誕生したのが鬼姫(わたし)という可能性しかないようだが。

 

「.......トニカク、今ハ住メル場所ヲ探サナイト...」

 

 転生、という言葉が脳裏をかすめるが、鬼姫はふるふると横に振り、思考を一度止める。落ち着いて考え、今後の方針や考察ができ、且つ定住できる“拠点”を探さなければならない。黒んずんだ、丸い台のようなところから降りると、辺りへ視線を走らせる。深海棲艦になった影響で、深海だといっても暗い場所でもお構いなし。視界良好で海底の遠くまで見渡すことができたからなのか、拠点候補となる場所はすぐに見つかった。

 そこは、真っ二つに裂けて沈没したであろう客船が墓標のように海底へ突き立っていた。そんな沈没船と化した客船を見上げていると、鬼姫の胸の内がチクリと刺激される。“客船には沢山の人が乗っていたんだろうなぁ...”と思いながら客船の片方――船首側へと向かい、そこから船内へと入り込む。

 拠点にできる一室を探している道中、時折過去―――前世の記憶が黒いノイズのように視界を駆け巡り、その度に発生する激しい頭痛に悩まされながらも、損傷が低く、ちょうど良い広さの客室を見つけ、その一室を拠点として活用し今後の生活を送ることになるのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

 鬼姫が転生してから4、5年が経過した。――とは言うものの、鬼姫の身長や体格は全く変動していなかった。それは、彼女の個性が原因となっている。

 

 個性“深海棲艦”...文字通り、艦隊これくしょん――通称“艦これ”に登場する敵、深海棲艦に関する個性だ。その能力は、深海棲艦への変身、そして艤装の使用。他にも鬼姫の身体を深海棲艦同様に変化させるといった、発動型と異形型の複合型に分類させる強個性だ。ただ、今のところ変身可能なのは空母ヲ級、戦艦レ級、重巡ネ級の3(にん)のみ。

 

 鬼姫は少し拍子抜けしながらも、2年は個性の把握と周辺調査、そして残りの3年はその3(にん)をある程度は使えるように、特訓に費やしていた。

 

「そろそろ、原作が始まっているのかなぁ...」

 

 そんな鬼姫は、船内の一室に用意した椅子に腰をおろし、艤装の手入れを行っていた。椅子―と言ってもそこら辺の海底に沈んでいたガラクタの中から使えそうな金属パーツなどで造り上げた、急拵えの椅子なのだが。転生初期は片言だった口調も、すっかり流暢な日本語へと変化し、日常的な会話は可能なほどだ。

 

 だが、少しの間とる休眠の際に時折見てしまう悪夢にうなされ、眠りはそこそこらしい。――尤も、深海棲艦は補給はすれど寝たりなどはしない。休眠や食事は、あくまで鬼姫が人間であるための必要だと思っているからこその行動だった。

 

「.....よし、遠征をしよう(ほんしゅうへむかおう)!!」

 

 そう決断した鬼姫は、ヲ級へと変身する。特徴的な帽子の口を開くと、予めストックしていた食材(勿論生物)を口内に放り込み、蓋をする。本来、艦載機を飛ばすための帽子を食料庫として使う辺り、鬼姫自身、頭の回転は良いようだ。

 

 ちなみに、彼女は毎日の食事をどうしていたかというと、魚や蟹などの水棲生物、時には深海にやってくるクジラや鮫、ダイオウイカなどにも興味本位でちょっかいを出し、美味しく頂いていたらしい。

 

閑話休題(そんな話は置いといて)

 

 拠点としている客船を後にした鬼姫は、ヲ級としての持ち物になっている“ヲ級の指揮棒”を右手に持ったまま、海上へと浮上する。大きな水柱を立たせてしまったのはノーカン!と区切りをつけつつ、早速鬼姫は本州へと出発した。

 

「....なんか、海黒くなってない?」

 

 本州へ進むため、海上を滑ることしばらく、小笠原諸島から少し離れたところで後ろを振り返ると、曇天に黒ずんだ海という、深海棲艦の縄張りと言いたげな光景がそこに広がっており、鬼姫の口からそんな言葉が漏れ出た。曇り空のなか、鬼姫が本州に到着するまで、もう少し時間がかかりそうだった――。

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