深海から始まるヒーローアカデミア   作:リン・オルタナティブ

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さてさてぇ…遂に、彼女が登場しますぜぇ…!!


#11 姫級・東洋棲姫

 暗い暗闇の中で鬼姫は目を覚ました。最初は自分の体がどうなっているのかがわからなかったが、背中に硬い感触が伝わってくるのを感じると、床に寝かされていると判断する。

 

「ここは、一体......?」

 

 鬼姫は身体の上半身を起こすと、警戒しながら辺りを見回す。グルリと一度見回した鬼姫だったが、その視界に映るのはただただ深い虚無のような空間だけ。まるでそこが切り取られたかのようにぬけおちたくうかんだけが鬼姫の目に写った。

 

「なんで、こんなところに......」

『ソレハ、貴方ガ一番知ッテイルンジャナイカ?』

 

 鬼姫が必死にこんな状況になった経緯を思い出そうとするが、前後の記憶が曖昧な今の彼女では、思い出すことすらできなかった。そんな鬼姫の目の前に一つの人影が現れ、声をかけてきた。

 その人物は黒髪を腰まで伸ばした女性で、黒いドレスを身に纏い、胸元には痛々しい金属パーツが装着されていた。両手には鉤爪が装着され、その鉤爪の手首部分には肥大化しており、首には枷らしきものが首輪のように取り付けられていた。

 見たことのない姿。だが、雰囲気は深海棲艦を彷彿とさせる姿をしていた。そして、その女性の顔立ちを見た鬼姫は、目を見開いた。

 

「私......!?」

 

 その顔立ちは、鬼姫そっくりの顔立ちをしていた。その瞳は鬼姫のように青と赤のオッドアイではなく、両目の瞳とも深いクリムゾンレッド。そして、額の右側から漆黒の角が一本、無造作に湾曲しながら伸びていた。

 

『...ソウ。私ハ、貴方。可能性ノ先ニイタ、貴方』

 

 鬼姫が警戒していた女性が黒いオーラに包まれ、溶け消えていく。やがて現れたのは、鬼姫とそっくりそのまま、ただし、色が反転した黒色をベースとしたカラーリングの少女がその場に現れた。

 

「...私の話を、聞いてくれるか?」

「まぁ、聞くだけならタダだし、いいよ」

 

 そうして、漆黒の少女と純白の少女―――鬼姫は、互いに暗い深海のような暗闇の空間で語らうことになったのだった。だが鬼姫は気づくことになる。ここで語っていた時間は、現実時間では1秒にも満たない時間で、精神年齢だけが老いていくということなのだと。

 

◇◆◇◆◇

 

「はぁ、はぁ....くそったれ」

「意外と持つんだね、甘く見てたかも」

 

 茶髪の少女はナイフをクルクルと回しながら、目の前に立つ男―――プリズムへそういう。彼女は無傷であるが、プリズムの格好は満身創痍に近いものだった。プロテクターのあちこちは傷つき、頭につけたプロテクターに至っては、ひび割れ、何らかの衝撃が加われば簡単に割れてしまうくらいには損傷が酷いものだった。

 スペースは大通りに堂々と現れた謎の怪人の対処のために大通りへと向かったが、戦闘音が響いているということは、交戦しているようだ。

 

「で、どうするの?貴方達、詰んじゃったよ?」

「へっ、言ってくれる...」

 

 そう言いながら、路地裏の奥に目を向ける。あの奥には、無残に斬られたまま放置されている少女――鬼姫の遺体があるはずだ。

 彼女を見捨てる、という選択肢をプリズムが視野に入れていたときのことだった。

 

「じゃあ、さっさと終わらせて――――!?」

「なっ...!?」

 

 茶髪の少女がナイフを振り上げ、そのまま振り下ろそうとしたその時、誰かが少女の手首を掴み、その動きを止めさせる。プリズムは少女の後ろから現れた人物に驚き、目を見開いた。

 

「...大丈夫か?」

「あ、あぁ。大丈夫だ」

 

 その人物は、鬼姫と姿そのものは同じに見えるが、髪色が焦げたような黒色であること、そして額の右側から異常に発達し、湾曲したまま伸びた漆黒の角が特徴的な少女だった。その身体は鬼姫が着ていた純白とは正反対の漆黒のドレスみたいな服装。

 手首を掴んだまま、少女を裏路地の奥へと放り投げると、プリズムの前に立ち、少女のほうへと向き直る。その後ろ姿は、どことなく鬼姫を連想させるものだった。

 

「君は一体―――?」

「さぁ、な。私にもわからん」

 

 問いかけてくるプリズムへ背を向けたまま答えた鬼姫(?)はドレスに備え付けられたポケットから、()()を取り出した。ソレは黒い装飾が施された、スイッチのようなものだった。やがて鬼姫に似た少女はソレに備え付けられているスイッチを2()()押した。

 

 

   〔オーバー・ザ・エボリューション!〕

 

 

 そうして鳴り響いたスイッチを、いつの間にか少女が腰に装着していた赤を基調としたベルトへと装填。続けて少女がポケットから取り出したのは、赤いボトルと黒いボトル。その二本のボトルをカチャカチャとある程度振ってから、スイッチと同じく腰に巻かれたベルトへと装填する。

 

 

〔コブラ!ライダーシステム!レボリューション!〕

 

 

 その音声が流れた直後、待機音らしきものがベルトから流れ始める。鬼姫に似た少女はベルトへと手を伸ばし、ベルトの右側についたレバーを回し始める。そうすると少女を中心に銀色の何か――――EV-BHライドビルダーが現れ、その周りを立方体が黒い竜巻に乗って飛び交い始める。

 

「くっ......!」

「さあ、何が来る....!」

 

 プリズムはその風圧に耐えようとする中、少女と対峙している茶髪の少女は戦意を膨らませながらその光景を見つめていた。そして――――

 

 

  〔覚悟はできたか(Are you Ready)?〕

 

 

       「――――変身」

 

 

 〔ブラックホール!ブラックホール!

     ブラックホール!レボリューション!〕   

     〔フハハハハハハハハ......!〕 

 

 少女がそう宣言した直後、EV-BHライドビルダーと立方体が合体して柱状になり、少女の身体を暗黒空間中へと飲み込んでいく。そこからすぐに何者かが小型の黒い立方体を飛び散らせながら再び茶髪の少女の前に現れる。

 現れたのは、先ほど暗黒空間に飲み込まれた鬼姫に似た少女。だが、黒を基調としたドレスの上から、白を基調とした追加アーマーが装着されていた。上半身の各所には降着円盤(ブラックホールの周りに形成されるガスの輪)の様な、黒い円を白で縁取ったディテールが施されており、胸部には物々しいリアクターらしきものが追加装甲として装着されていた。

 

「私は姫級...東洋棲姫。まぁ、やるだけやってみるさ。かかってこい......Chara」

「   :)   」

 

 茶髪の少女―――Charaが両目から黒い液体を垂らしながらナイフを構え、鬼姫に似た少女――東洋棲姫が右手をCharaへと翳した直後――――路地裏から爆発のような轟音が轟いた。

 

◆◇◆◇◆

 

「......そんなことがあったんだ」

「あぁ、まさか轟沈したと思ったら今度は誰かの一部になってたって話など...信じてもらえるかどうか......」

 

 東洋棲姫に連れられて鬼姫が見たのは、個性の奥に封じられていた東洋棲姫そのものの記憶。それは、彼女がここまでやってきた大まかな経緯が頭へ流れ込んできた。それと同時に、鬼姫の精神年齢は最長期まで生きていた東洋棲姫に同期する形で合わさり、その精神は遠くを見据え、達観する結果となった。

 

「...でも、これで私達は友達...でしょ?」

「......っふ、友達、か」

 

 東洋棲姫が轟沈するまでの最後の記憶を見終え、真っ暗な空間になった深層意識の中、静かに佇む二人は短く言葉を交わす。だが、今ならそれだけで互いの思っていることがよくわかる。それが一心同体、以心伝心の関係になるのか。

 

「....傷が完治したようだな」

「...そうだね」

 

 ふと東洋棲姫が言葉を口にし、鬼姫がほぼ自動的に言葉を返す。やがて、二人が見つめる先、深層意識を構築する暗黒の空間がひび割れ、崩壊していく。気づけば、鬼姫はネ級の姿になっており、東洋棲姫自身の腰には、見たことがある赤く派手なベルト。

 

「次会うときは―――」

「―――襲撃の後、ね」

 

 最後に短く言葉を交わし、互いの左手と右手を繋いだが、東洋棲姫の身体は黒い靄のように溶け消え、鬼姫の身体は上に昇る光を追って、上へ上へと上昇していく。やがて鬼姫は意識は意識を取り戻したが、その目で最初に見たものは――――

 

「........っ!!」

「□□□□□□□□□!!」

 

 大きな体躯をもつ怪物が拳を目の前の女性―――スペースに振り下ろそうとしていた。

 

◇◆◇◆◇

 

「(ごめんなさい。プリズム――――)」

 

 女性......スペースは心の中でそう言いながら、目の前で拳を振り下ろそうとしている巨大な人型怪人を見つめていた。彼女は路地裏から大通りに出てきて、大通りで暴れるその怪人―――脳無と接敵し交戦したが、いかんせん彼女一人では分が悪すぎたのだ。

 大通りで暴れていた脳無は、(ヴィラン)連合が調整した強化型、そのプロトタイプにあたるが、そのスペックは単純性能で言えばレ級に匹敵するとまではいかないものの、迫る性能をしていた。

 おまけに、空間探知能力の個性を有しているため、空間操作のスペースとは相性が最悪。故にスペースがここまで追いつめられることになったのだ。

 スペースはそのまま脳無の攻撃を受け入れようとして目を閉じ、最期の時を待っていたが、拳による強い衝撃が訪れることはなく、代わりに大きな衝撃音と、強風がスペースの体を包み込む。

 

「......ぇ.....?」

 

 彼女が自分が死んでいないことを訝しみながらも目を開ける。するとそこには―――――

 

 

  〔Clock(クロック) Over(オーバー)!〕

 

 

「間に合った...みたいだね」

 

 巨大な体格を持つ脳無の拳を易々と受け止めてスペースへと問いかける少女――――鬼姫がいた。だが、白無垢にも見えた純白の姿は大きく変貌していた。

 まず、特徴的だった純白の髪は毛先に白銀を多少残し、大半は焼け焦げたように黒く染まり、さながら堕天使のような風貌へと変化している。こちらへと向けている左目の瞳は綺麗な蒼色では無く、深海の奥底のように濁り切った深い紺色へと変色していた。

 

「鬼姫ちゃん......なんで――――」

「説明はあと、私はあれを何とかする...。スペースは避難誘導を」

「わ、わかったわ!」

 

 鬼姫の言葉に一瞬戸惑ったスペースだったが、安全を守るため、そしてこの戦闘では自分は役に立たないことを自覚し、住民の避難誘導をするために空間を繋ぎ、その場を退避する。その後、襲撃が鎮圧された後、鬼姫がいた場所に向かったスペースだったが、そこに鬼姫の姿はなく、代わりに残っていたのは、無残に砕け散った首枷らしきものだった――――。




はい、というわけで東洋棲姫が降臨しましたー!書いててめっちゃ楽しかった(こなみ)
東洋棲姫の設定はすべてが出揃ってから設定を掲載しようと思います!
感想をくれたら作者がビルドアップします( ˙꒳˙ )
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