深海から始まるヒーローアカデミア   作:リン・オルタナティブ

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最近、ヒロアカ関連の二次作品でエボルトが出てくる作品を見つけまして、速攻お気に入り登録してきました。
それでは、職場体験編最終回、どうぞ!


#12 深海ノ姫、ダークヒーロート化ス

「さて...まだやるのかい?」

「当たり前...だろう?」

 

 プリズムは何度も驚愕した。自分では捉えることなど到底できなさそうな攻撃の数々を繰り出す茶髪の少女―――Chara。そして、それをいとも容易く弾き、相手を追い込んでいるモノクロカラーの異形の怪物―――否、その怪物を纏った少女――――東洋棲姫。

 互いの力は拮抗しているかに思われたが、プリズムは彼女――東洋棲姫がまだ全力で戦闘していない事を察知していた。

 

「(それなりにヤバイ()()なのか...あれは)」

 

 同時に、プリズムは誤解していた。彼女は個性を持っている筈もない。故に個性だと。

 ―――しかし、元の彼女は艦隊これくしょんに転生した生粋の深海棲艦。個性など持っているはずがない。だが、東洋棲姫は個性――――それも二桁、下手すれば三桁を超えるレベルの能力を保有しているのだ。わかるはずもない。

 

「...時にChara、お前は初見殺し要素をどう思う?」

「なっ.....!?」

 

 東洋棲姫の言葉にプリズムは目を見開いた。戦闘中に相手と会話するなど、正気なのか。だが――――

 

「どうだろうね。少なくとも....()()()かなぁ?」

 

 Charaは素直にそう答える。彼女自身の本心なのか、あるいは――――。

 

「......ふっ、来たか」

「遅れた...訳じゃなさそうだね」

 

 東洋棲姫がそう告げると、プリズムの背後から、聞き慣れた声が響く。鈴のなるような、澄んだ声をしていた。

 プリズムが後ろを振り向くと、そこにはネ級へと姿を変貌させ、全身をどす黒く変色した血で染めた鬼姫の姿があった。さらに、ネ級の特徴だった二叉の尻尾の先には砲身があるものの、レ級の尻尾の先につく顔のように変形していた。

 

「HADES―――!?」

「はは、ネ級か。それも、かなり魔改造を施されたやつか」

「うん、私なりのカスタマイズを施したよ」

 

 自分の向かう方向からプリズムの声が聞こえると反応し、そちらへ視線を向けたが、すぐに歩みを始める。そうして辿り着いた先は異形――――東洋棲姫の隣だ。到着した鬼姫へ開口一番そういう東洋棲姫に、苦笑しながら答える鬼姫。その姿は、姉妹同然の姿をしていた。

 

◆◇◆◇◆

 

 東洋棲姫と鬼姫が合流する少し前まで時間は遡る――――。

 

「さぁて......やりますか」

「□□□□□□□□□□□□!!」

 

 拳を振り上げこちらに向かってくる異形の怪人―――強化型脳無を前に鬼姫はそう呟くと、右手を自身の右腰に添え、スイッチを押し込むように手を動かす。すると―――

 

 

  〔Clock(クロック) Up(アップ)!〕

 

 

 鬼姫以外の人、モノ、現象、鬼姫が触れていないあらゆる事象の時がゆっくりと()()()()()()、流れていく。

 

 

 クロックアップ――――それは時間流を自在に行動可能になる超高速の特殊移動方法。仮面ライダーカブトに登場する各マスクドライダーのライダーフォームとワーム成虫が持つ能力である。

 

 

「今のお前は――――」

 

          (ワン)

 

「私にとって――――」

 

          (トゥー)

 

「―――――ただの置物(サンドバッグ)さ」

 

          (スリー)

 

 ゆっくりと流れていく世界の中で、たった一人で動き続ける鬼姫は言葉を紡ぎながら、右首筋に浮かび上がり、縦に並んだ3つのボタンを一歩ずつ歩く度に下から上へ順番に押していく。

 3歩目で全てのボタンを押し終えると、鬼姫は口元で2つに割れ、両頬に繋がったマスク型甲殻の片方に手をかけ、口元へ持っていくようにスライドさせる。すると、もう片方の甲殻も連動して口元へスライドしていく。そうして甲殻を操作した後にその足を止めると、ちょうど脳無の目の前にまで辿り着いていた。

 

「さぁ......これで終わりにしようか」

 

 そう言った鬼姫は閉じていた甲殻を口元から頬にかけて一気にスライドさせる。

 

 

 〔RIDER(ライダー) KICK(キック)!!〕

 

 

 右足に暗い青色の焔を纏った鬼姫は、脳無の前で回し蹴りを連続的に繰り出す。青い軌跡は一本、また一本と脳無の胸部へ次々と刻まれていき、最終的には軌跡の本数は二桁を超えた。

 

「そして...時は動き出す――――」

 

 

  〔Clock(クロック) Over(オーバー)!〕

 

 

 仕込まれていたスピーカーからシステム音が流れた直後、世界の時間の流れが戻り、再びいつもどおり時間が流れ始める。

 当然、脳無は突然目の前に現れた鬼姫(ターゲット)に手を伸ばそうとする。

 だが、脳無の手は彼女に届くことはなかった――――。

 

「お前はもう...散っている」

 

 鬼姫が手を伸ばしたままピタリとその場に停止した脳無へそう告げた直後、脳無の身体に青い軌跡が何十と駆け巡った数秒後、黒ずんだ群青色の光が脳無の身体から煌めき、血の塊となって()()した。

 

「...ふぅ。さて、東洋棲姫と合流しなければな」

 

 バッチリ決めた後、上から降り注ぐ血の雨に打たれ、全身を赤黒く染め上げた鬼姫は歩みを進め、路地裏にてCharaと戦闘していた東洋棲姫と合流し、今に至るのだった―――――。

 

◇◆◇◆◇

 

「―――さて、どうする?」

 

 東洋棲姫はおにひめとアイコンタクトをしたあと、再度Charaへと問いかける。

 闘争か、逃走か。その意図を汲んだのか、Charaは静かに言葉を紡ぐ。

 

「...ふっ、仮に私が逃げるとして、お前達が私を逃がすと?」

「さぁ、それはどうだろう」

 

 Charaの言葉に鬼姫が答える。そして訪れた少しの沈黙の末、再びCharaは言葉を絞り出す。

 

「じゃあ、私は失礼するよ」

「なっ!おい待て――――」

 

 Charaの言葉にプリズムが静止させようとするが、そのときには既にCharaの姿は塵のように崩れ去り、溶け消えていた。

 鬼姫はネ級から通常―――元の素体に戻り、東洋棲姫もブラックホールフォームから変身を解除し、鬼姫と同様で、色違いになった姿へと戻る。

 

「ふぅ...、なんでCharaが...って思ったけど、納得いったわ」

「まぁな...。とりあえず、私は一旦戻る。補給しないと行けないからな」

「了解。お疲れ様」

 

 短い会話の末、東洋棲姫は鬼姫の影へ足を踏み入れると、階段を降りる感覚でその身を沈めていく。

 そうして完全に影へ沈んだのを見届けた鬼姫は、プリズムを治療し、裏路地から出るために足を進める。

 

「...何故、あのヴィランを逃した?」

「......少なくとも、彼女はヴィランではない。そう...思いましたから」

 

 後に続くプリズムからの問いに、鬼姫は素直な感想を述べた。

 彼女――――Charaは少なくとも悪意を持っていたとは思えない。悪意があるのなら、今頃自分は(ソウル)そのものが破壊されていた。それが鬼姫の考えだ。

 

「...そうか。だが―――」

「彼女を、信じてあげてください」

 

 プリズムの方へ顔を向けた後、静かに鬼姫はそう言った。昔のCharaならば、鬼姫は容赦なく潰しにかかってただろう。

 だが、今回の彼女は鬼姫を殺さないどころか、会話までしたのだ。彼女なりに変わろうとはしているのだろう。

 ならば、今は待つまで。彼女が、彼女なりの答えを導き出すまでは、殺してはならない。

 

「....一度私は離反します。自力で帰れますし、血まみれの私を見せて、市民を怖がらせたらいけませんし」

「......そうか」

「それでは......ありがとうございました」

 

 プリズムから了承の言葉を貰うと、鬼姫は建物の壁を伝って上へと登り、足早に走り出した。

 

◇◆◇◆◇

 

 こうして、鬼姫の職場体験はもやもやを残したまま終了した。

 SansやCharaの存在を知った今、他の世界からも様々なキャラクターが入り込んできているのでは無いのか。鬼姫はそんな自体を危惧していた。

 

『しかし、いいのか?単独で帰っても』

「ん、別にいいでしょ?特に指摘されないだろうし」

『それならいいがな....』

 

 頭の中に直接語りかけてくる東洋棲姫の言葉に、鬼姫はそう答えつつ、海の中へ一度潜行し、身体についた血を洗い直すと、海上に浮上してくる。血の匂いは当面は落ちそうになさそうだ。

 

『いっそのこと、ダークヒーローになったらどうだ?』

「まさかぁ...」

 

 東洋棲姫の言葉に鬼姫は苦笑する。自分がダークヒーロー?卑怯上等というものなのか、はたまた相手の生死は問わなくていいのか。

 そんな考えが鬼姫の頭で回るが、頭を振って考えを追い出す。それを考えるのはもう少し先の話だ。そう結論づけると、鬼姫は海上を滑り続け、雄英高校まで帰宅するのだった。

 

「待てや密航者ぁぁぁぁぁ!!」

「またかぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 尚、再びセルキーと死の鬼ごっこ(デスレース)が行われたのは、ここだけの話だ。




はい、これにて職場体験編、終了となります!
ッスゥー……、ぬあんもう疲れたもぉぉぉん!!
……次の難所が待ち構えていて禿げそう(こなみ)
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