死ぬぅ!(モチベが)死ぬぅ!
『Ready?Go!』
期末試験当日。鬼姫が試験会場のスタート地点に当たる大きな扉をくぐったとき、スピーカーからアナウンスが響く。期末試験の演習試験、順番的には鬼姫で最後だった。おまけに破巌、ドレミー、宇覇、鬼姫は単独での試験となり、別室で待機されていたため、相手の対策すらできていないのが現状だ。
「よし、じゃあ...進軍開始だね」
そんな状況の中、鬼姫は焦ることなくスタート早々に周りを見回し、状況を確かめる。周りにはドローンらしきものが一台だけ浮遊していた。これで音声と映像を拾い、観戦している他の生徒たちに見せているのだろう。
ドローンへ軽く手を振ってから一つ頷くと、目の前に広がる市街地へ向けて進軍を開始する。何故か他の深海戦艦へ変身せず、素体のままで堂々と姿を晒したままだった。
だが映像を見ていた彼らは気づいてないだろう、歩き始める鬼姫に、
◆◇◆◇◆
『......さて、私達なりに作戦を立てようか』
『それはいいけど......。現状、相手がわからないしねぇ...』
案内された別室にて、目を閉じて精神統一する――――ふりをしながら、深層意識の中で鬼姫と東洋棲姫の二人は、今後に備えた作戦を考えようとしていた。だが、肝心の試験相手がわからないという鬼姫に対して、東洋棲姫はある仮説を立てていた。
『じゃあ逆に考えればいいのではないのか?』
『逆に?それって、既に見せた手札から選出を考えるってこと?』
『そういうことだ。』
東洋棲姫からの肯定にむむ...と鬼姫は考える。現在切って公になっている手札はヲ級、ネ級、そしてレ級の3体。特にトーナメントで大暴れしたレ級は教師陣に目をつけられているだろう。
超大火力の主砲、堅牢な装甲、ヲ級に似た艦載機発艦能力、馬鹿げた再生力、オールマイトのようなパワー、複合型故の読みにくさ――――...、
『...ん?複合型?』
『気づいたか。変身前の私達は発動型だ。だが深海棲艦のどれかに変身してしまえば異形型になる。つまり――――――』
『相澤先生の個性を事実上封じることができる』
『そういうことだ』
ここまでくれば、鬼姫にも東洋棲姫の伝えたいことがわかってきた。そこから先は、教師陣それぞれの個性と自分達の相性を照らし合わせて判定を行うだけだった。判別を続けてそうして教師陣の中で残ったのは――――――――
『...オールマイトか』
『まぁ...順当だね』
オールマイトただ一人だった。レ級の単純なパワー勝負に追いつけ、且つ
『だが、特定できればこちらのものだ』
『ん〜...でも何切るの?レ級はメタられるだろうし、ヲ級は完全に遠距離特化。ネ級は...可能性あり?』
『いや、恐らくだがオールマイトもそこまで馬鹿ではない。故にここは――――』
一度言葉を切った東洋棲姫は、
『――――
『それって...嘘でしょ』
東洋棲姫が取り出したソレを見て、鬼姫は目を見開いた。いつの間にソレを造っていたのか。
東洋棲姫が両手に一つずつ持っていたソレはメーターらしきものがついた赤いスイッチと、スイッチに酷似した黒いスイッチの2つだった。
◇◆◇◆◇
「ふむふむ、ここまで来ても反応はなし...か。案外我慢強いな、相手は」
街の中央までやってきた鬼姫は歩きながらそんなことを呟く。この発言も観戦側に届いているため、何かを考察していることを示唆している。
「隠れるのが上手いか、あるいは――――いや、駆け引きは無しにしましょう。......オールマイト」
鬼姫は足を止めるとそう宣言した。静かな街に、鈴のような声が反響する。すると――――
「HAHAHA!流石は煉黒少女!敵を察知するのが早いね!...でも私だとどうしてわかったんだい?今の段階だと、私はなにも音を立ててないはずだよ」
オールマイトからの言葉に沈黙した鬼姫は、少しすると芝居がかった言葉で話し始めた。
「ふふっ、ええ、確かに貴方からしたらわからないでしょう。でも、私がこれまでに切った手札から用意に推察ができますよ。例えば――――相澤先生、いや、イレイザーヘッドの個性無効は変身してしまえば防げてしまう...とかね」
「まさか...雄英に所属する全ての教師の個性を把握しているのかね!?」
一通り説明したあとに出てきたオールマイトの問いにも、鬼姫は頷き肯定した。
「ええ、そのまさかです。流石の私でも骨が折れましたよ?雄英高校の教師陣は皆ヒーローを経験している方。多少の個性の使い方なら載ってますし、そこから私と相性の有利不利を洗い出せば、自然と貴方へ行き着きましたよ」
スラスラと、種明かしを始めた鬼姫だが、全てが真実ではない。実際、鬼姫でも雄英高校の教師陣全ての個性を知っているはずもない。つまりブラフだ。全ての情報を整理し、模索する......そういうのは東洋棲姫の専門職だ。だが、オールマイトはそのブラフに引っかかってしまったのだ。
「さぁ、これで小細工一切なしのバトルになりますね」
「...最初から、私と戦う気でいたのかい?煉黒少女」
「ええ、そのとおりです。だって...貴方にはヴィランは似合わないですもの」
「何を言って――――――!?」
オールマイトは言葉の途中で横から激しい衝撃を受け、ビルの壁へと吹き飛んでいく。ビルの壁面にぶつかったことで吹き飛びは終わったが、オールマイトからしたら何が起こったのかわからない。だが、攻撃があった方を見ると、その衝撃の犯人が悠々と見えた。
「う〜ん、駄目だったかぁ。飛距離弱めだなぁ」
「開始早々としてはいい出だしではないか?不意打ち」
その犯人は鬼姫だった。...鬼姫が二人いるという状況にオールマイトは目を疑ったが、すぐにその状況は改善された。
なんと、今までオールマイトと話していた方の鬼姫が黒い泥のように溶けていったのだ。そして再びその場に現れたのは、鬼姫と正反対の漆黒のドレスを着た少女。
「煉黒少女、君は一体...」
「今回は新たな手札を一枚、切らせていただきました。皆の前でお披露目するのは初めて...ですね」
「そして、ダメ押しのもう一枚...だ」
鬼姫は赤いスイッチを、鬼姫に似た少女は黒いスイッチをそれぞれ取り出す。二人はそのスイッチを
〔OVER THE EVOLUTION!!〕
〔MAX HAZARD ON!!〕
その起動したスイッチを鬼姫は黒いボックスのようでシンプルなベルト、少女は赤と金、そして青の装飾が施されたベルトのレバー上部へと差し込む。
「私は...いや、私達は貴方を超える」
「私達なりの方法で、だがな」
そう言って二人の少女はそれぞれボトルを取り出す。鬼姫が取り出したのは、何かが爆発したような形の蒼色のボトルと、怪獣のような漆黒のボトル。
片や少女が取り出したのは、深淵の闇を彷彿とさせるような、深い紺色のエボルボトルとビルドのライダーズクレストが施された黒いエボルボトルだ。
「ぶっつけ本番、行きますか」
「まぁ、9割失敗に近いがな」
「大丈夫なのかいそれ!?」
黒いドレスの少女の言葉にオールマイトはとても心配していたが、二人はお構いなくベルトにある差込口へそれぞれボトルを二本装填していく。
〔核!〕〔怪獣!〕
〔スーパーベストマッチ!!〕
〔アビス!〕〔ライダーシステム!〕
〔エボリューション!!〕
装填する際、金尾哲夫氏と小林克也氏のボイスが同時に鳴り響き、待機音らしきメロディーが二人のベルトから流れ始める...のはいいものの、うるさい。そう、二つのベルトからそれぞれ個性的なメロディーが大音量で垂れ流されているのだ。うるさくないわけがない。
二人は顔を見合わせて頷き合うと、足並み揃えてレバーを回し始める。
〔ガタガタゴットンズッダンズダン!
ガタガタゴットンズッダンズダン! 〕
鬼姫が巻くベルトからはなんだか物騒な音声のついた音楽が、少女の方からは派手な曲がベルトから流れ始める。そうしてベルトのレバーを回す二人の前に現れるは、二つのお立ち台らしきもの。
片方からは銀色の何か――――EV-BHライドビルダーが現れ、その周りを立方体が黒い竜巻に乗って飛び交い始め、鬼姫の方からは地面から真っ黒に焦げたかのようにも見える黒い鉄板を鏡合わせにしたような何か――――ハザードライドビルダーが地面からせり上がり、鬼姫を挟み込むように展開されていく。
〔Are you Ready?〕
〔Are you Ready?〕
レバーを回すのをやめると、ベルトからは開始音声が。Are you Ready?―――覚悟はできたか?というベルトからの言葉に、鬼姫は右手で指パッチンし、少女は腕をクロスさせて高らかに宣言した。
「「――――変身!!」」
〔オーバーフロー!!〕
〔フィーバータイム!!〕
変身と宣言した直後、二人はオールマイトの前で変身を開始した。だがそれは、ヒーローの変身にしては些かダーク染みていた。
鬼姫は前後に展開されていたハザードライドビルダーによってプレスされ、外からは鬼姫の安否がわからなくなり、片方の少女もEV-BHライドビルダーが発生させた異空間への穴へ身を投じ、穴は塞がってしまう。
「一体、何を......!?」
オールマイトの言葉が発されるのと同時に、再び派手でとてもヒーローとは思えない変身音が大気と、モニター越しに見ているであろう観戦者の鼓膜を揺らした。
〔アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!〕
〔ABYSS...!ABYSS...!EVOLABYSS!!
フゥハッハッハッハッハッハッハァァァ!!〕
そんな変身音と共にハザードライドビルダーの扉とその隣の空間に穴が同時に開き、中から二人の少女が出てくる。だがその姿は、変身前より大きく変貌していた。
鬼姫はまず、尻尾が生えていた。その尻尾はレ級のような深海棲艦仕様の尻尾ではなく、純粋なトカゲのような尻尾だ。その尻尾を伝っていくと、背中からは不規則に背鰭らしきものが3列程度に並んでいた。そして全身各所を黒い皮膚のような装甲で覆い、その装甲は所々淡い青色に光っており、オールマイトを見据える瞳もいつものオッドアイではなく、淡い水色の瞳だった。
対して空間を割って現れたもう一人の少女は全身を漆黒のドレスで身を纏い、藍色と青色のグラデーションが施された追加装甲が装着されていた。
「煉黒鬼姫...改め仮面ライダービルド。ハザードモンスターフォーム...!」
「仮面ライダーエボル 新フェーズ3。またの名をエボルアビス......」
「「さぁ、始まりだ...!」」
二人仲良くポーズを決めた鬼姫と東洋棲姫は、オールマイトへ突撃する。オールマイトも二人を相手するために身構える。だが――――
「TEXAS SM――――」
「――遅いな」
拳を振りかぶった時点で、オールマイトはすでに二人の射程圏に引きずり込まれてしまっていたのだ。
最初に仕掛けるは東洋棲姫。オールマイトが
ブラックホールの重力を使ってオールマイトを反動で吹き飛ばすが、一応体の事を気遣って無力化する程度の威力だ。
「え〜っと...腕にかければ勝ち...だよね?」
「ああ。だが相手は
「...じゃあ、オールマイトもWin-Winなルールに変更してしまえばいいんじゃないかな」
オールマイトを吹き飛ばしたあと、東洋棲姫と鬼姫はそんな会話をする。だが、ルール変更は教師陣も想定外のことだ。どう反応するかは未知数である。
「ふむ...行けるか?」
「やるだけやってみよう。教師陣が私達の本気を知らない...それがアドバンテージ」
「...デメリットは?」
「
「...まぁ、それだけなら想定内だ......なッ!」
そう言いつつ、東洋棲姫は遠方より飛んできた大岩を回し蹴りによって打ち砕く。大岩を飛ばしてきたのは間違いなくオールマイトであろう。だが、まだ戦えるというのか。とんだ化け物だ。
「痛たたた...。もうすこし加減してくれてもいいんだよ?」
瓦礫の中からひょっこりと現れたオールマイトに二人はドン引きした。いくらオールマイトは言え、手加減のブラックホールに殴られたのに、多少の瓦礫で擦り傷こそあるが、大きな怪我もなくピンピンしているのだ。
「...私のパンチでピンピンしている奴は大抵ヤバいと相場が決まっている」
「それは酷くないか!?」
「――んで、オールマイト。私達から提案があるんだけど、いい?」
「何かな?試験の支障が出ない程度なら――――」
「――――ルール変更、しませんか?」
鬼姫は、オールマイトとの試験に決着をつけるため、そして前例を作るために一つの賭けへと出るのだった――――――――――。
というわけで、鬼姫ちゃん…ビルドになる(小並感)
タイトル的にはクローズビルドにしようか迷ったんですよ。でもなんか…はい。魔が差しました。すみません()
なお次回の序盤では既に変身解除(床ペロじゃないよ!)してるんですけどね、初見さん(笑)