難産でした。ブランクで駄文でございます(懺悔)
「うばぁ......つかれたぁ~」
期末試験が終わった後の保健室のベッドの上で、鬼姫は横になったままそういう。一見すると独り言を言っているように見えるが、鬼姫の目には3人の深海棲艦――――戦艦水鬼、泊地棲鬼、港湾棲姫が見えており、三人はそれぞれ個として独立した意識を保っているのだ。
『シカシ、初ッ端カラ使ウト聞イテ心配シタガ、東洋棲姫ノ入レ知恵ノオカゲデ助カッタナ』
戦艦水鬼の言葉に泊地棲姫と港湾棲姫がウンウンと頷いて肯定する。三人はそれぞれ艤装などをつけていない――――いわゆるラフモードであり、真っ白な素肌がよく見えて可愛らしいものだ。だがその性能は深海棲艦の大ボスなだけあった、かなり凶悪なものである。
結論から言えば、鬼姫の期末試験はクリアとなった。
「...まぁ、先生方へ押し通す内容は決めているんだよね」
3人へそう言いつつ、鬼姫は保健室の扉を見つめる。もうじき、ラフモードのヲ級とネ級が教師陣の人たち―――オールマイトや根津校長辺りを連れてここに案内してくるだろう。そこから先は行き当たりばったりなノーガード戦法である。鬼姫は一人回想に浸りながら、二人を待つことにするのだった。
「...そう言えば、緑谷達は大丈夫かなぁ」
進行しているであろう林間合宿の前にある原作イベントを思い出したのもこの瞬間であった。
◇◆◇◆◇
「ルールの変更...と言うと?」
「簡単なことです。私と必殺技を打ち合って、先にダウンした方の負け...。ね?簡単でしょう?」
時は遡り、期末試験の最中。鬼姫がオールマイトへ提示したルール―――それはシンプルで、且つ一番手っ取り早いものだった。観戦組は耳を疑っただろう。オールマイトと必殺技を撃ち合うとは、正気なのか?と。
だが、、隣に立っていた東洋棲姫、そして彼女の中に避難しているヲ級、ネ級、レ級は全容をあらかた察していた。
「HAHAHA!煉黒少女がそれでいいなら、私は構わないぞ!...怒られるかもしれないけど」
「...
「...ふふ、了解した」
オールマイトからルール変更の案を承諾されるとベルトからボトルを抜き、変身を解除した鬼姫だったが、雰囲気の変わった彼女からの指示に東洋棲姫は二つ返事で承諾すると、軽やかな跳躍でその場から離れていく。オールマイトが鬼姫へ問おうとしたところで、空の様子が急変する。青空だった空は暗く厚い雲で覆われ、雷鳴が轟き始める。
「...この姿は、初めてだな.....!」
ズズズ......!!
鬼姫の足元から黒い水らしきものが溢れ出ると、その水らしき粘液質な液体は鬼姫を包み込むように球体状へと変化していく。透けて見える球体の内部では鬼姫の姿が徐々に変化......否、変質していく。それこそ、人から人ならざる者へと変わっているかのように――――。
「煉黒少女...くっ!!」
危険を察知し、止めようとしたオールマイトだったが、時すでに遅し。オールマイトの接近を拒むかのように球体からはどす黒い暴風が吹きわたると同時に球体が突然破裂し、液体が雨のように降り、四散していく。
その中から、一歩、また一歩とオールマイトの元へと歩み寄ってくる人影が一つあった。その正体は紛れもなく鬼姫であったが、明らかに姿が大幅に変化していた。
半袖になった純白の軍服らしき衣装に、同色のサイハイブーツ。両手は大きな鉤爪へと変化し、首には詰襟状で枷のような形の金属パーツが装着され、手首や足首にも枷のような金属パーツがあって、まるで囚われの身のようだ。
頭から生えた角は更に肥大化しており、ほとんど左目と溶けて合体したような状態で、他の人から見ればかなり痛々しい様となってしまっていた。
「この姿が言われていた...。なるほど、確かにこれは厄ネタだね」
ゆっくりと手を握ったり開いたりしていた鬼姫だったが、やがてオールマイトとの距離が5メートル程になったところで足を止める。おそらく見えているであろう右目でオールマイトを捉えると、優しく
なぜここで微笑んだのか、その意図は誰にもわからない。だがその後、オールマイトには鬼姫が展開した
「...あの時は大変だったねぇ」
もうすっかり昔の事だと言わんばかりの鬼姫だったが、コンコンと保健室の扉にノックがかかると、はーいと扉の穂へ返事を返す。ノックをした正体はヲ級かネ級であろうと鬼姫は目星をつけていた。そして保健室の扉が開かれると、そこには───────、
「お待たせしましたマスター」
「ヲッ!」
ラフ形態のヲ級とネ級、そして当事者であるオールマイトと根津校長が二人の後ろに立っていた。教師陣を2、3人とは頼んだものの、この人選は流石の鬼姫でも想定外だったようで、顔は少し苦笑気味な笑みを浮かべていた。
「おかえりなさいヲ級、ネ級。そして...ご無沙汰しています、オールマイト、根津校長」
「HAHAHA!元気そうでなによりだよ煉黒少女!」
「お久しぶりなのさ!」
ヲ級とネ級が席の準備をすると、オールマイトと根津校長の二人を席へと促しつつ、鬼姫は横たわらせていた上半身を起こし、視線を二人のほうへと向ける。霊体三人組はというと、静観を選んだのか特に介入してくることもなく、事情聴取が始まった。
「じゃあ最初に...ルール変更した後に変化した姿。あれは何だい?」
オールマイトからの質問に鬼姫は少し沈黙した後、ゆっくりと深海棲艦とその形態について説明を始めた。
「...私の個性は深海棲艦って説明はしましたけど、それは半分間違っているんです」
「間違っている...というと?」
「...深海棲艦というのは種族。一つの生命体として確立しています」
「つまり、君の個性は生きているということかな?」
やはり頭脳明晰な根津校長、その言葉に鬼姫は頷いて肯定した。そこから鬼姫はオールマイトと根津校長へ深海棲艦の艦種や上位個体"姫・鬼級"、解釈次第という点でまだまだ考察の範疇を出ない深海棲艦の正体についても匂わせ程度に話しておいた。
肝心の"深海棲艦は元々ヴィラン側に近いこと"と"職場体験にて脳無を撃破した"という事実は伏せたままだったが、いずれ判明することだ。すぐに話すようなことでもないと鬼姫は判断したのだった。
「君のことについて、話してくれてありがとうなのさ!」
「それほどまでの力とは...。煉黒少女、その力は制御できるのかい?」
「う~んそうですねぇ......定期的な戦闘と回転効率さえ落とさなければ、特に問題はないんじゃないかなぁ...」
ある程度の情報を共有した後、オールマイトからそんな質問が来たが、軽く濁すような感じで答えていた。
それは何故か――――簡単な話、既に個性としての深海棲艦から大きく逸脱し始めているのだ。東洋棲姫を解き放った今、東洋棲姫を封じていた分の出力に余裕ができたため、ここから先の出力は自己強化を最優先にしていくつもりだ。
現在出すことのできる重巡ネ級や空母ヲ級、そして戦艦レ級を含むいわゆる雑魚キャラであるイロハ級の一斉出現数強化や、鬼姫の小型端末にあたるたこ焼き艦載機の発艦数増加など、やることは山積みだ。
「ふむ...君には定期的な戦闘訓練、または自主訓練をしてもらったほうがいいのさ!」
「煉黒少女も、それでいいかな?」
「はい。私に関しては、私が一番知っているので」
オールマイトと根津校長からの提案に、二つ言葉で返答した鬼姫は後日から、放課後に自主トレーニングを行うようになるのだが、これはまた別のお話である。
◇◆◇◆◇
「――――これより第一回、鬼姫を魔改造しようの会を始める」
鬼姫が眠りについて夜も更けた頃。鬼姫の深層意識内で集結した深海棲艦ズは、とある会合を開いていた。それこそ、“鬼姫を魔改造しようの会”である。
この会の目的は、鬼姫の戦闘能力の向上と、自分たちの出番を増やすため、日々たくさんのアイデアが行き来する場である。
「まずは、鬼姫の現状況を整理しよう...。ヲ級、頼んだ」
「了解しました、姫」
東洋棲姫の指示に答えたのはヲ級。そしてヲ級の口から現状の戦力に関して設置されたスクリーン上にリストアップされた。それらを見た深海戦艦ズは騒めき立つが、東洋棲姫による鶴の一声でその場は静かに収まる。
「ありがとうヲ級。...しかし、今後を加味しても私が共有できるのは神野の悪夢まで...。そこから先は初見攻略になるか...」
そんなこんなで始まった魔改造しようの会だったが、さまざまな策が出る中、最終的に朝日が昇る頃、東洋棲姫が発した一つの指示で魔改造しようの会は終わりを告げたのだ。
「――――当面は姫・鬼級召喚が可能なまでに鬼姫を強化。それと並行して他の姫・鬼級を呼び寄せる準備を各自で行ってくれ。...総力戦までは、近いぞ」