使徒は少女の未来を守護れるか?   作:B.I.G

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やっとGWが終わって、少しお休みがもらえたので投稿出来ました……
今更ながら自己解釈、設定が結構多いです。
あと、今作のゲンドウはシンジに対して結構優しめ。
付け忘れてましたが、LASタグ付けました。

読んでくれた方々、本当にありがとうございます。
宜しければ感想お待ちしてます!


第三話 『迎撃、第三新東京市』

 

「松代での3号機起動実験、式波がテストパイロットなんだろ?碇は行かなくても良いのか?」

 

「うん、松代にはミサトさんもリツコさんも一緒に行ってるし、唯の起動実験だから心配いらないってアスカが。……それに、今日は綾波がね」

 

「ほーん、前にセンセが言うとった食事会か?碇のおとんとセンセが仲良うして欲しいから、なんて綾波も健気な所があるのぅ」

 

 学校の屋上で昼食を食べながら駄弁るのは、第3の少年(サードチルドレン)である碇シンジとその友人である鈴原トウジ、相田ケンスケだ。当然のように3号機起動実験の事も知っているケンスケ(彼の父親のPCから情報を抜き取った)には苦笑するシンジだったが、一緒に松代に行きたいと思う気持ちも確かにあった。

 

 だが、今日は綾波が自分と父親──碇ゲンドウを招き、一緒に夕食をと提案してくれた食事会の日だ。アスカが自分から3号機のテストパイロットに志願した理由は、シンジにもわかっていた。勿論、アスカが素直にそれを認めるとは思っていないが、帰ってきたら彼女の好きなハンバーグを作ってもてなそう、とシンジは考えていた。

 

 正直なところ、父が綾波の招待に応じる事には驚きもあった──だが、シンジは嬉しかった。第8使徒を殲滅した時に褒められた時、もっと父に褒められたい、仲良くなりたいと思ったし、父もそう思ってくれていたら──。

 

「ネルフから?──はい、碇です。松代で事故!?それで、アスカやミサトさん達は!え?使徒殲滅を確認?」

 

 支給された携帯端末にかかってきたコールに出るシンジだが、耳に飛び込んできた言葉に思わず声を上げる。心配そうにこちらを見るトウジとケンスケに目配せしながら話を聞くが、アスカ達が無事な事に胸を撫で下ろす。

 3号機起動実験の場に使徒が現れたのも驚きだが、どうにも歯切れの悪い喋り方をする電話口の相手──青葉シゲルに問おうとした瞬間、警報の音が聞こえた。

 

「──使徒だ」

 

 

 

 

 

 

「あー、さむっ!ま、でもやっぱり新型!窮屈な旧型とはおさらばしたし、久しぶりにエヴァに乗れる訳だし?ワっクワクするなぁー!」

 

 封印処置を解かれた2号機とウェポンコンテナを見下ろしながら、嬉しそうな様子で声を上げるプラグスーツ姿の少女。エヴァ本体や精密機器を保管している格納庫故か──彼女の吐く息は白くなっているが、その頬は興奮で朱に染まり、唇を舐める様子はどこか肉食獣じみた雰囲気を感じさせる。

 

 周囲には彼女以外の人影は無い。手にした端末を手慣れた動作で操作して、2号機の輸送準備を鼻歌交じりで手早く進めながら──彼女は心底楽しそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 駆ける。使徒に蹂躙された大地を、漆黒の巨人が大気を切り裂きながら。第8使徒の自爆特攻紛いの攻撃は阻止したものの、形象崩壊の際に起こった血液の津波とも言うべき傍迷惑な代物で、未だ街は赤く染まっている。

 防衛機能は麻痺し、ろくに使徒の侵攻を遅らせる事も出来ない──その隙を突かれた。破壊され尽くした廃墟を駆けながら、アスカはインダクションレバーを壊れんばかりの強さで押し込んだ。

 

──早く、もっと疾く。

 

《──私としては、このまま撤退する事を推奨するのは変わらない。私の性能では、拒絶タイプ(ヤツ)を排除出来る可能性は低いと判断する》

 

「アンタねぇ……どうせ使徒がネルフ本部の地下に到達したら、サードインパクトが起こるんでしょ!それにこのエリートたるあたしには、バカシンジ達を守る義務があるの!あたしだけ尻尾巻いて逃げるなんて事、出来るわけないでしょ!」

 

《──バカシンジ。この機体とデータリンクした初号機パイロットと認識。式波・アスカ・ラングレーの心拍の上昇具合から、該当人物に何らかの個人的感情を抱いて──》

 

「Seien Sie still! Sie Idiot! Stirb!(うっさい!バカ!死んじゃえ!)」

 

 些か緊張感の欠けたやりとりをしながらも、エヴァンゲリオン3号機は俊敏な動きで瓦礫を飛び越え、第3新東京市へ駆ける。3号機は2号機とほぼ同一規格の量産機であり、稼働には当然ながらアンビリカルケーブルからの電力供給が不可欠だ。予備バッテリーを装備する事も出来るが、これだけ機体を最大稼働させればあっという間に活動限界を迎える程の容量しかない。

 

(活動時間♾……正直半信半疑だったけど、こいつ本当に使徒だったわけね)

 

 これだけの長距離を移動する場合、アンビリカルケーブルを装着は出来ない。にも関わらず、エントリープラグ内のモニターに表示されている活動限界時間は『♾』と表示されている。

 

 第9使徒(バルディエル)の本体は他の使徒とは違い、不定型の青黒い粘菌だ。単体では無力な存在故に、エヴァンゲリオンという肉体に寄生する事でその力を発揮する。粘菌状の身体を宿主(エヴァ)の肉体隅々にまで行き渡らせ、その能力値を飛躍的に向上、変質させる。

 

 そして使徒であるが故に、当然第9使徒(バルディエル)も持っており、エヴァ3号機に無制限の活動時間を与えている物こそがS2機関。永久凍土から冬眠状態で発見され、切り刻んで解析された第3使徒からデータこそ得ていたものの、実用化には至っていなかった『生命の実』に等しいもの。

 

《──半信半疑だったとは心外だ。先の戦闘で私の有用性は提示した筈だが》

 

「だからうっさい!黙ってろっちゅーのぉぉぉっ!」

 

 3号機に寄生している使徒(バルディエル)は、シンクロしている関係で言葉に出さずともアスカの思考を読み取る事が出来た。彼がヒトであったなら、わかっていても言葉に出さない方が良い事もあると理解出来ていただろうが、生憎とそこまでの配慮を(使徒)は出来ない。

 

 こめかみに青筋を立てたアスカの怒りに呼応するように3号機の双眼が赤く輝き、音速を超えた機体が山を飛び越えて跳ぶ。──第3新東京市まで、あと僅か。

 

 

 

 

 

 

『総員、第一種戦闘配置。繰り返す。総員、第一種戦闘配置』

 

『地対空迎撃戦用意!目標は現在も進行中。旧小田原防衛線を突破!』

 

 ネルフ本部司令塔第1発令所では慌ただしく職員が動き回り、オペレーターである青葉シゲルが報告を上げる。

本来であればここにいるべきミサトとリツコだが、彼女らが松代から帰還するのを使徒は待ってはくれず、指揮を指令である碇ゲンドウと副指令の冬月コウゾウが執っているからだ。

 

『使徒の攻撃が第4地区に直撃!地表全装甲システム融解!』

 

「まさか……24層全ての特殊装甲が一撃で……」

 

 かつて現れた最大の攻撃力を誇る第6使徒ですら、突破には数時間を要する堅牢さを誇る24層の特殊装甲がただの一撃で融解する様を見て、日向マコトが愕然とした顔でモニターに映る使徒を見る。

 

「第11の使徒、最強の拒絶タイプか。予想以上の破壊力だが……碇。第9、第10の使徒は明らかに死海文書の記述とは齟齬があるぞ」

 

「ああ、本来であればアレは()1()0()()使()()だ。4号機の事故に第2の少女と第9の使徒の共生……死海文書に無い出来事も起きるとは言え、気にかかる」

 

 使徒殲滅後に衛星通信が可能になった為、ミサトとリツコは事の顛末をゲンドウに報告していた。冬月の言うように今回の事件の成り行きは()()()()()()()()()()。ゼーレは果たして慌てふためいているのか、それともこのイレギュラーも折り込み済なのか……ゲンドウはしばし思案するが、状況は切迫している。

 

「零号機並びに初号機パイロットは?」

 

「現在保安部が両パイロット共に身柄を保護しています!ジオフロントに向かっていますが、まだ……!」

 

『観測所より入電!松代から陸路で移動中のエヴァ3号機が、強羅絶対防衛線を通過!』

 

 本部に残るエヴァンゲリオンは封印中の2号機を含めて三機だが、突如現れた上に恐ろしい速さで侵攻する第11の使徒への対応は後手に回った。パイロットの安全こそ確保したものの、未だ二人ともネルフ本部へは辿り着けず。第9使徒(バルディエル)が寄生しているとはいえ、完全にパイロットの制御下にある3号機の救援も、このままではあと少しながら間に合わない。

 

「初号機はダミーシステムで起動させ、ジオフロントに配備しろ。僅かでも稼働可能な迎撃設備を突貫運用し、少しでも使徒の侵攻を遅らせる!」

 

 左腕部の処置が途中の零号機よりも、万全の状態に整備された初号機をダミーシステムで起動させる事を試みるゲンドウ。常に泰然としている彼だが、指示を飛ばす言葉にも思わず熱が入る。ここで使徒を倒さなければ、全てが終わる──それを誰よりも知っているのだから。

 

「了解!──なんだ!?誰が乗っている!応答しろ!2号機パイロット!」

 

 ゲンドウの指示に従ってコンソールを叩く日向だが、封印されている筈のエヴァ2号機を乗せた貨物車が稼働している事に気付き、声を上げる。本来のパイロットであるアスカが3号機に乗っている今、2号機に乗れるパイロットは居ない。ましてや、封印処置を施されている2号機を起動出来るように出来る人間など──。

 

「構わん、好きにさせろ。ダミーでの初号機起動は一時中断。初号機パイロット、並びに3号機が到着するまでの時間を2号機に稼がせろ」

 

 ゲンドウにとって心当たりのある人物は一人だけ。出来れば手を借りたくない相手だが、この状況下では背に腹はかえられぬと判断して許可を下す。

 それに彼女は()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。極めて有能だが、決して信用出来ない女──それが、真希波・マリ・イラストリアスに対するゲンドウの評価だった。

 

 

 

 

 

 

「良い匂い……確かシキナミタイプの完成品だったかな、2号機のパイロット。中々どうして、他人の匂いのするエヴァも悪くないじゃん」

 

 エヴァ2号機のエントリープラグ内で感慨深げにそう呟くのは、桃色のプラグスーツを身に纏った第4の少女──真希波・マリ・イラストリアス。彼女がプラグ内で手を握る動作に同調(シンクロ)して、エヴァ2号機の巨大な手が力強く握り締められる。

 

「さぁーてと。ゲンドウ君は初号機を出す気が無いのか、それともワンコ君がまだ来れてないのか……どっちにせよ、速攻で片付けないと本部がパーじゃん?」

 

 ジオフロントの天井から轟音を響かせながら落下する武装ビル群の中に、不気味に黒いローブ状の身体をたなびかせる使徒の姿が見て取れる。

 ジオフロントの地底湖のほとりに陣取ったエヴァ2号機の周囲には、格納庫からついでとばかりに拝借してきたウェポンコンテナが置かれており、無造作に2号機が脚でコンテナを踏み付け、ロックを解除。

 

「へぇー、良いじゃん良いじゃん!よっと!」

 

 コンテナから取り出したのは、試作型長距離狙撃用ライフルだ。遠距離からの狙撃用として主に零号機用の武装として技術開発部が開発した代物で、大口径の劣化ウラニウムライフル弾の破壊力は特筆に値する。

 

「的を〜狙えば〜外さないよーん♪ヘイ、カモーン!」

 

 エヴァ2号機の放った弾丸が使徒に着弾した瞬間が、後に第一次ジオフロント防衛会戦と呼称される死闘の幕開けだった。

 

 

 

 

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