JIJIMORIに女の子付けてみた   作:ちゅぴま

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他称や言動が合ってるか不安…


美しく地獄へ

時は幾許か流れ2037年

 

特異災害対策機動部二課、通称 特機部二。

その本部は私立リディアン音楽院の地下にある。届けたい物があると言われ荷物を持たされた私がこれから向かう場所。当主様が既に話は通してあると言ったが不安は拭えない。

 

 

「此方です」

 

 

風鳴機関から派遣されたエージェントの一人が二課本部への入口へ案内する。後身組織ということもありその辺りの情報は共有しているらしい。エレベーター内へ入りデバイスを翳す。

 

 

「お気をつけ下さい」

 

 

エージェントの人がそう言ったので出てきた取っ手に両腕で捕まる。次瞬、とんでもない速さで降下を始めた。普通の10歳の握力では吹き飛ばされかねないが私は当主様による特殊な訓練を受けていたので事なきを得た。…暫くすると変な模様のついた内装がエレベーターシャフトに見える。安全保障の観点から地下にこんな広大な空間があっても大丈夫なのかという疑問は残った。

 

 

「っ…」

 

 

いきなり止まったので身体がぐらついた。身体に優しくない設計、やはり安全保障的に色々と駄目なのでは?しかし風鳴機関の迷宮地味た複合通路よりは許せる。あそこは実質私専用の案内システムがあるくらいには目的の場所へ行くのが難しい。なんて思ってる内にエレベーターが開く。

 

しかし、その先には赤い髪をもちそれと同色のスーツを纏っている巨漢が待ち構えていた。

 

確かこの人は…

 

 

「お前達が鎌倉からの使いだな。…そっちの少女は?」

 

「い、いえ…」「使いは我々では無く…」

 

「使いは私で御座います、弦十郎様」

 

 

風鳴 弦十郎、当主様が愚息と呼ばれる御人。風鳴の剣である以上いつかお仕えする日が来るかもしれない人だが…風鳴機関からの人達を当主様の使いと間違えられたのは少し屈辱的に感じた。……決して虫の居所が悪くなってなどいません。

 

 

「お初お目にかかります、嵐野 琴葉と申します。この度は当主様よりお預かりしたお荷物を受け渡しに参りました」

 

 

片手はアタッシュケースで塞がっていたが反対側だけでもしっかりと裾を摘んでカーテシーと呼ばれる礼儀作法をする。するとどうだろうか、弦十郎様は何やら信じられないモノを見るような目で私を見ているではありませんか。

 

 

「…弦十郎様、如何なさいましたか?」

 

「…いや、何でもない。それで鎌倉からの贈り物というのは?」

 

「だいぶ前に其方から譲渡頂いた第一号聖遺物、天羽々斬のシンフォギア。その模擬戦データ「何ィッッ!?」と…」

 

「シンフォギアの模擬戦データ、だとォッ!?」

 

 

弦十郎が驚きのあまり声をあげた。

ビリビリとした空気が肌を刺激し、思わず息が詰まる。シンフォギアの実戦データ、扱える人物が限られているから珍しいのは分かるが二課にも装者が居た筈。そこまで驚くことだろうか。それにしても声が大きすぎて耳が痛い…

 

「あぁすまん。いきなり叫んでしまって…」

 

「……大丈夫です。一応、当主様からは模擬戦のデータと伝えられています。それともう1つ」

 

「もう1つ…?」

 

「はい、当主様からの書面です。中身を読み上げますと

『風鳴機関と特機部二による聖遺物、ひいてはシンフォギアの運用データの共有』

その打診となっております」

 

 

 

ーーー

 

 

 

風鳴弦十郎は今、頭を悩ませていた。

鎌倉からの使者、とりわけ父からの刺客。本来ならばエレベーターの昇降口で話を聴き物を受け取りそこで追い返す筈だったが、幾らか理由があって内部まで招き入れてしまった。

 

 

「それで、シンフォギアの運用データの共有。それが双方にどんな利益があるというんだ?」

 

 

第一に、贈り物とは名ばかりの交渉。

即決できる話でもなく、すぐに追い返したら話を聞かなかったのは其方だと何をされるか分かったものではない。相対している者たちの後ろにいるのはかの護国の鬼なのだから。なので応接室で腰を落ち着かせて交渉に入った。

 

 

「特機部二はノイズとの交戦が必然的に多くなるはずです。だから替えのきかない戦力を遊ばせる訳にもいかず負担のかかりそうなデータ取りも積極的には行えない。それにあなた方はノイズを制圧することが目的の組織。ギアの運用、管理はしても本格的な研究はお門違い、そうですよね?」

 

「ああ、確かにそうだ。つまりそちらでギアの運用試験を行うと?」

 

「そういう事になります。例え古代の遺産、異端技術と言えどどんな不調を起こすか分かりません。原因解決に至らなくともその問題点を発見し想定内にしておけば対処法も何かしら浮かぶでしょう」

 

 

言い終えると彼女はズズズと茶を口にした。

彼女の言う通り、戦場に於けるギアの機能不全は文字通り死に直結する。仮に炭素分解を防ぐバリアフィールドが正常に作動しなくなればノイズによる一撃一撃が致命傷になり得るだろう。

 

確かに、"こちらにとっては"悪い話ではない。だが

 

 

「…風鳴機関側のメリットは?」

 

 

あの男がただ利益を齎すだけの筈がない。弦十郎は一語一句聞き漏らすまいと彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「知りません。少なくともその件については私は何も聞かされておりません」

 

「そ、そうか…」

 

 

弦十郎は神経を張り巡らせていたことがバカみたいだと天井を仰ぐ。

 

だが、今までのやり取りで分かった事がある。

訃堂と琴葉の関係は不明だが彼女の精神の成熟さから考えて父が何か手を加えてるのは一目瞭然だ。幼少期、いやこの様子だと赤ん坊の時から徹底した洗脳教育を施されてきたとみて間違いない。

 

だが、仮にそうであるなら国外の礼儀作法であるカーテシーを行ったのはほんの少し引っかかる。

 

 

「ところで琴葉くん。私的な質問で申し訳ないのだが…君と俺の父、風鳴訃堂との関係はどういったものか教えてくれないか?」

 

「関係…そうですね。剣とその所有者、とでもお思い下さい」

 

「……そうか、ありがとう」

 

 

二つ目の理由はこれだ。

訃堂の手先としていいように扱われている彼女を見過ごすなんてことは大人としてできない。だから少しでも訳を聞き、力になれればと思ったのだが…彼女の心の壁は高く厚かった。

 

姪である風鳴翼の出生もそうだが風鳴訃堂は未来ある若者をなんだと思っているのか。握り締めた拳に血が滲む。

 

 

「………データの共有の件についてはもう少し待って欲しい。そうやすやすと決めることはできんのでな」

 

「畏まりました。では内容を纏めた書類、及び模擬戦のデータはこちらになります」

 

 

受け取ったアタッシュケースを開くとそこには確かに書類とデータチップ、その両方が収められていた。弦十郎はそれを確認すると元の状態に戻し自らの脇に置く。

 

 

「ああ、確かに受け取った。では、鎌倉にもそのように伝えてくれ」

 

「承知しました。では、私はこれにて失礼させて頂きます」

 

 

スタスタと黒服たちを引き連れて出口へと歩き出した琴葉。機械的で感情を感じさせぬ一律な動き。例えこちらが何かしても今の彼女の心を動かすことはできないだろう。

 

 

「待て、ウチの職員に見送らせよう。緒川!」

 

 

自身の右腕、緒川 慎司を呼ぶ。

内部を物色されても困るので信頼出来る人物に監視を兼ねた見送りをさせる。有事の際に対処できるよう姿を消して室内で待機してもらっていた筈だが、何事もなかったかのように扉を開けて入ってきた。力の司令、技のNINJAとはよく言ったものだ。

 

 

「分かりました。こちらにどうぞ」

 

 

緒川が琴葉達を応接室から連れ出したのを見ると深くため息をつき、コーヒーを一口飲む。

 

 

(鎌倉の狙いは何だ?聖遺物の研究内容をかすめ取る為の算段?しかしわざわざ装者が擁していることを暗に伝えてきたことも分からん。分からん尽くしだ…)

 

 

少し、思考の海に沈んでいると先刻出て行った緒川が戻ってきた。

 

 

「指令、彼らに不審な動きはなくそのまま地上に戻りました。本当に交渉しに来ただけのようですね」

 

「ご苦労だった。ところで緒川、お前から見て琴葉くんはどう映った?」

 

「…あの年であれだけ大人びていて、尚且つ交渉までしてくるんですから。奇妙でしたよ」

 

「文字通り、心の通わぬ護国の剣…」

 

 

訃堂の望んだ操り人形。自らの正義を絶対だと思うあの男にとって都合の良すぎる存在だ。

 

 

「どうにかして鎌倉から引き離せんものか…」

 

 

だからこそ、救わなくてはと思わずにはいられない。




用語解説
カーテシー
挨拶、あるいはお辞儀の1種。
米国における西洋的なあいさつ法。
歴史的には目上の者に対する会釈としての意味合いがあったが現在では王宮での礼儀作法、あるいはダンスに於ける演技後の感謝の意として用いられている。

琴葉のカーテシーは歴史的な意味合いの目上への挨拶であるが、それを仕込んだ人物が何を思って教えたかは当人以外には知り得ない。

ただ、現代風の女給服とカーテシーの組み合わせは悪くない。
むしろ可愛い。
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