JIJIMORIに女の子付けてみた   作:ちゅぴま

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筆が進まない…


鵬翼の羽撃き

風鳴本邸の朝は早い。

 

 

「当主様、おはようございます。本日の朝食は白米、味噌汁、焼き魚です」

 

 

琴葉が食卓の上に朝食を並べていく。家庭的なメニューだが食べる者にはとっては少々は不釣り合いであろう。

日本のフィクサー、かの風鳴訃堂が口にするに相応しいとは思えない。

 

 

「うむ、では…」

 

「「いただきます」」

 

 

しかし、2人は平然と箸を進める。

余談であるが、今日の朝食は琴葉の手作りなので護衛の者は全員襖の向こうだ。

…護衛は必要か?という疑問は持ってはいけない。

 

 

「EUの経済破綻、その不良債権の一部を背負って管理することとなった完全聖遺物『デュランダル』」

 

「現在は松代の風鳴機関本部にて管理・解析を行っています」

 

 

食事中にも関わらず機密情報のやり取りを行う琴葉。それを焼き魚の身を口に運びながら聞いている訃堂。

襖の奥で聞いているであろう護衛達はさぞ困惑しているだろう。

 

 

「して、使いの件。どうであった?」

 

 

琴葉もすっかり大きくなったので先日、はじめてのおつかいとして特機部二の司令を務めている愚息、風鳴弦十郎へ届け物(取引)を運ばせた。

果たしてしっかり出来たのか、真の護国の鬼は不安はなくとも気にはなっていた。

 

 

「……問題ありません。結果としては特機部二は思案の時間を要求。決して嫌な事なんてありませんでした」

 

 

心做しか食べるスピードが速まる琴葉。

その僅かな変化を培った観察眼で見逃さなかった訃堂。

 

 

(おのれ愚息、琴葉に何をした……!)

 

 

…一旦怒りは心の片隅に置いておく。決して忘れないが。

それはそれとして訃堂はある懸念を抱いていた。

 

それは琴葉の友達不足。

 

訃堂は何処ぞの馬の骨とも知らぬ奴らに教育を任せる気など毛頭ないので自ら指導している。しかし、一般的な10歳は普通の学校に通って友達とキャッキャウフフしているのだ。

 

 

「どうしたものか…」

 

 

味噌汁を一口。素朴な味わいが口いっぱいに広がる。

残念ながら風鳴一族の思考回路は壊滅的なまでに日常的な事には向いていない。なので幾ら頭を捻ろうとも解決策のかの字も出ないのだ。

 

 

「「…」」

 

 

黙々とご飯を口に運ぶ。

訃堂は酷く頭を悩ませながら。

琴葉は特に何も考えずに。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

食べ終わったら糧となった食材への感謝の言葉を忘れない。

 

そのまま琴葉は立ち上がり食器の片付けに移る。

 

訃堂は初め、家の者に身の回りの世話をさせようとしたが琴葉がそれを拒否。しかししかしとどちらも一歩も引かなかった為妥協案として琴葉が週一での家事を担当している。

 

 

「当主様、本日のご予定は…」

 

「儂のことはよい。お前は先日同様、特機部二へ出向け。お前の戦場は今はあそこなのだからな」

 

「承知いたしました」

 

 

一礼。そしてすぐさま屋敷の掃除に取り掛かる。とはいっても毎日プロの清掃員が手を加えているお屋敷。目立った汚れどころか隠れた汚れもほとんどない。

なので琴葉がすることは庭の落ち葉を片付けることぐらいであり実は一般的に掃除と呼べるものはあんまりしていない。

 

そして掃除の終わった琴葉は外出用の女給服…は全て洗濯中なので擬装用の女児服を身に着ける。

 

 

「それでは当主様、行ってまいります」

 

 

 

ーーー

 

 

 

先日同様、風鳴機関のエージェント達と特機部二の本部へ出向いたのだが…

 

 

「それで、今日も来たと…」

 

 

困ったような表情をする弦十郎。

どうやら今日は訃堂からのアポイントメントがなかったようで突然の来客として扱われている。

 

 

「先日の話についてだが、こちらはまだ審議の結果が出ていなくてな。それと、少し悪いのだが琴葉くんは部屋の外で待っていてくれないか?」

 

「……はい」

 

「その間は緒川…こいつが止める場所以外なら自由に見て回ってくれても構わんぞ」

 

 

弦十郎は隣に立つ男性を指さしながら許可を出す。

目に見える範囲では機密情報は漏れる事はなく仮に、もしも緒川を短時間でも出し抜けたとしても認証コードなどの壁があり得られる情報はほんの僅かしかない。

 

 

「琴葉さん、こちらに」

 

 

平凡そうな顔が逆に胡散臭さを醸し出している男性、緒川に連れられるままに1人だけ部屋の外に連れ出される琴葉。

 

 

「お飲み物が欲しかったら言って下さいね。色々とありますから」

 

 

女児の心というものは分かっているつもりだが相手は護国の鬼の手先。緒川は琴葉の一挙一動に注意しながら会話を進めていく。

 

 

「いえ、お気になさらず。飲み物は自分で用意してきていますので」

 

 

たぷんと音を鳴らしながらリュックサックから水筒を取り出す。その中身は高級な茶葉を使ってい…ない至って普通のお茶である。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「………」

 

 

暫くして、沈黙の時間が訪れる。

緒川は決して悪くない。むしろ話題を出していた側だ。

だからといって琴葉に悪気があったかといえばそれも違う。

 

答えは単純。琴葉の口から出る返事はどれも天羽々斬並の会話切断力を有しており、話題の悉くを広げることなく切り伏せてしまうのだ。

 

何とか空気を変えようと緒川が会話を再開しようとしたその瞬間。

 

 

「あれ、緒川さん?その子は?」

 

 

声を掛けたのは運動後なのか汗をかきスポーティーな格好をした風鳴 翼(12才)である。これ幸いと思った緒川は琴葉のことを翼に紹介する。若い女の子同士少気が合うだろうと、少なからずそんな算段はあるが。

 

 

「こちらは嵐野 琴葉さんです。今とある事情でこちらに…」

 

 

琴葉は風鳴宗家の人の顔だいたい覚えている。もちろん、翼に対しても無礼の無いように頭を深く下げて…

 

 

「お初お目にかかります、つびゃ_」

 

 

 

ゴン

閉め忘れていたリュックサックから水筒が転がり落ち、鈍い音を立てて頭にぶつかった。

 

痛みに耐えかねたのかその場で蹲る琴葉。その光景に翼と緒川は呆気にとられたような顔をする。

 

 

「えっと…その、大丈夫?」

 

「痛みを感じてなど…」

 

 

心配する翼に問題ないと言い捨てる琴葉。

だが、痛みに悶えているその姿は先程までとは真逆の年相応の少女らしい情緒だった。

そんな姿を見た緒川は監視カメラ、その向こうに居るであろう特機部二職員達に目配せで監視の代役を要請した。

 

 

「何か冷やす物を持ってきますね。翼さん、それまで琴葉さんをお願いできますか?」

 

「は…はい。大丈夫です」

 

 

不安ではあるが泣きわめいていないようなので何とかなると思い了承する翼。そして空気に溶けるように立ち去る緒川を見送った後に改めて琴葉を視界に収める。

 

背まで伸びた艶やかな灰髪に今は痛みに潤わせているが輝いても濁ってもいなかった黒い瞳。背は…今の翼より少し低いくらいだろうか。観察するように見つめていると琴葉が頭を押さえながら立ち上がった。

 

 

「琴葉、だっけ?頭痛くない?今緒川さんが冷やす物を持ってきてるからね?」

 

 

あわあわと慣れない様子で話しかけてくる翼。知らない子と会話するのはなれない彼女だが、及第点の対応は行えた筈。

 

 

「…はい、お騒がせして申し訳ございません」

 

「……いいよ、私は気にしてないから」

 

 

実家にいた時のような対応をされ嫌な思い出が蘇るが、それとこれとでは話は別である。自分に言い聞かせるように翼は顔を上げてと頼む。

 

 

「つかぬことをお聞きしますが、翼様は何故此方に?」

 

 

そういえば、と問い掛ける。どうして風鳴翼様がここにいるのだろう。思い出したかのように疑問を口にする。

 

 

「翼」

 

「?」

 

 

訳の分からぬ返答に首を傾げる琴葉。

しかし、その意味はすぐに分かることになる。

 

 

「翼様じゃなくて、翼って呼んで欲しいの」




ロり翼さんこんな感じかしら?
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