JIJIMORIに女の子付けてみた   作:ちゅぴま

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1年ほど放置してましたがお許し下さい


激情奏でるムジーク

「適合係数、規定値をクリア」

 

「了解。それに伴いリンカーの投与も不要と判断」

 

「バイタル安定、正常です」

 

「ギアペンダント、データと照合…誤差なし。問題ありません」

 

 

慌ただしく無数の白衣が動き回る。

その様子はまるで巣を突かれた蜂のようにも見えるが、貴重な機材を傷つけまいと細心の注意を払いながらの行動だ。踏み場を探すのも一苦労しそうな床を風鳴機関の研究者たちはスイスイと進んでいく。

 

 

その中心に嵐野 琴葉は立っていた。足元の床は円状に切り込みが入っており、よく見ると色も違う。

インナー姿の身体。その至る所にバイタルチェック用の機械が張り付けられており、何も知らない人が見れば実験体と見間違えられるような現状だった。実際に人体実験のようなものではあるが。

 

 

「こちらを」

 

「ありがとうございます」

 

 

一人の研究員が手渡したのは深紅に輝くギアペンダント。

メンテナンスなどはできないがそれでも聖遺物研究の最先端の施設。ギアに異常がないかどうかの検査ぐらいは実行可能だ。

 

 

しばらくすれば慌ただしさも収まってきたのか飲料水を片手に一息つく職員も出始めた。

しかし、琴葉が頑張るのはこれからだ。

 

 

 

 

『作業完了を確認。第六十三回シンフォギア稼働試験、実証項目『シンフォギアの活動限界』。装者がシミュレーションフロアへ到着次第、試験を開始します。繰り返します───』

 

 

 

 

ガコンと、琴葉の立っている床だけが下がり始める。施設内に響く声に耳を傾けているうちに、気付けば別の階層まで降下していた。

 

シュミレーションフロア。旧大戦の時代から現代に至るまで使われ続けてきた由緒正しき試験区域。正方形の切込みの入った床に壁が、あらゆる状況を再現する変幻自在の空間。

 

 

『装者、配置完了。試験を開始します。装者はターゲットを排除し続けてください』

 

「了解」

 

 

インカムにてそれだけ返すと、特異災害"ノイズ"を模したバルーンが室内に放たれる。

 

それらに相対した琴葉は、ギアペンダントを構え胸の歌を口にする。

 

 

「beruwennto amenohabakiri tron」

 

 

衣服がギアインナーに置き換えられ、聖遺物を元とした戦装束を纏う。空色を基調とした装甲は、少し刺々しいデザインであり何より肌の露出が激しいものだった。

 

 

「いつ着ても思いますが、よくこんなもので身を守れますね」

 

 

淡々とした感想を零しながらアームドギアを展開する準備をする。両足に付随する装甲の隙間より一本ずつ柄が飛び出し刀へと変形。更に刀の背を合わせる事で合体し、西洋剣となる。蒼いラインが走る刃は、どこか近未来的な印象を与える。

 

 

「では始めます」

 

 

『嵐ノ散花』

 

 

刀身に集まったエネルギーを空を斬る動作で発射、散弾銃のように拡散させる。無論、シンフォギアから放たれる技。バルーン程度では掠っただけで破裂してしまう。

 

 

「どんどんお願いします」

 

 

だがこれはエンドレス。シンフォギアが何処まで稼働し続けるかを測る試験だ。次々と追加されるバルーンを見据えながら次の技の用意をする。

 

 

『羅刹 風車』

 

 

脚部ブレードを展開しアームドギアを二刀に握り直す。右手の刀を軸として全身を回し、手足3つの刃でバルーンを切り刻んでゆく。ブースタによって高速回転している琴葉は、ただのバルーンで止まる事はない。

 

 

 

──────────────────

 

 

 

数時間経過しても試験は続いていた。休息なしの全力戦闘、それに対してギアよりも、意識よりも先に琴葉の身体が根を上げた。正規軍人ならまだしも10歳の子供の小さな肉体では限界はすぐに訪れた。疲労の果てにふらりと倒れ、それに伴いギアも空気に溶ける様に解除される。

 

 

『実証結果、█時間██分██秒。回収班は装者を医務室へ運んでください。繰り返します───』

 

 

平坦な声がスピーカーから響く。

元々疲弊で倒れるのは想定の内であったため焦りはない。回収班と思われる人達も手際よく琴葉を担架に乗せトレーニングルームを後にする。

 

 

「訃堂様のお気に入りとはいえ、ここまでとは…」

 

 

試験の担当者がポツリと零す。手元のタブレットにはノイズの撃破数と稼働時間など、検証中の事細かなデータが表示されている。稼働時間は正直な所、想定していた数値を下回っていたが驚かされたのは撃破数とそのペースだ。

 

最初から最後まで一定のペースを維持し続けている。更にノイズの平均的な出現数を撃破するのにかかった時間はこちらの想定を大きく上回っていた。風鳴訃堂の強力な私兵、まさしく…

 

 

「護国の鬼の金棒、というわけですか…」

 

 

そんな折、ジリリリリと電話が鳴り響いた。

 

 

「はい、風鳴機関聖遺物研究部門です。…ノイズ?皆神山にですか?確かにここから近くですが…はい、分かりました。そのように…失礼します」

 

 

そのままダイヤルを回し、琴葉が運び込まれた医務室へ電話をかける。

 

 

「装者を起こせ、今度は実戦形式でデータを取るぞ」

 

『いやしかし、先程の試験で彼女は疲れ果てており…え?あ、どうぞ』

 

『…代わりました』

 

 

向こうで物音がしたと思えばどうやら通話相手が代わったようで、聞き慣れない声が電話越しに聞こえる。いや、ついさっきまで存分に聞いていた声だ。

 

 

『私は大丈夫です。少し休んで水も貰いましたので、いつでも』

 

「ではすぐにでも表のヘリコプターで。準備ができるまで休息を兼ねて待機していてください」

 

『了解しました』

 

 

これほどまでとは、内心驚嘆しながらも指示を出す。疲労で気絶したというのにすぐさま復帰し、戦闘への意欲がここまで高いとは。しかも市街地ではない山の中、避難指示さえあれば被害は1人もでないというのに。一体、何が彼女を駆り立てるのだろうか。

 

 

 

──────────────────

 

 

 

皆神山内部、発掘作業現場を1人の少女が走っている。

背後には無数のノイズが同化せんと追いかけてきていた。

 

 

「ハァ…!ハァ…!」

 

 

逃げる、逃げる、ひたすらに

 

妹は、別の道に逃げ込んで生きているか分からない

 

母さんは、そんな妹を連れ戻そうとして足を止め灰になった

 

父さんは、疲れ果てたアタシを庇って灰になった

 

逃げる、逃げる、全力で

あの気持ち悪い"雑音"から、死んでも生き残ってやると

 

 

「!」

 

 

光が見えた。外だ。あと少しで外へ出られる。そう思った途端、アタシの足は軽くなった気がした。胸が痛いが、あそこに行くまでは走れる。

 

 

あと10歩、振り返るつもりはない。

 

 

「ッ、ハァ…!」

 

 

あと5歩、もう少しで。

 

 

「ァ…!!ッ!」

 

 

あと1歩。

 

 

「!」

 

 

そして遂に、外へ出た。

身を投げ出すように身体を地面へ放り出せば山の斜面にそってゴロゴロと転がっていく。ぶつかる石や砂利が痛いが、気にしている場合ではない。来る時に見たが急な斜面や崖はなかった筈だ。

 

 

ドン

 

 

木に転がっていた体がぶつかり、止まる。

 

 

「ゼェ…ゼェ…」

 

 

もう1歩も動けない。指を動かすのもしんどい位だ。だけど、もっと遠くへ行かなくちゃ、そう思い瞳を開けば…

 

 

「ノイ、ズ…」

 

 

はっきりと見える範囲まで奴らは来ていた。動けといくら念じても、腕も足も限界でピクリとも動かない。諦めたくない。家族の為にも、生き残りたい。そして──

 

 

 

『嵐ノ散花』

 

 

 

空から何かが降り注ぎ、雑音達を粉微塵にしていく。舞い降りたのはコスプレをしたような同年代の少女。何も分からないが、きっと助かったのだと思い。アタシは意識を手放した

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「目標とエンゲージ、殲滅します」

 

 

フォニックゲインを高めるために歌いつつ、体勢を整える。初手で数体を葬り、残りは十数体。状況から察すれば逃げた後ろの彼女を追ってここまで来たのだろう。

 

 

「であれば、時間はかけられません」

 

 

『鬼ノ一閃』

 

 

巨大化した刀を両手で握り、一振で数体ノイズを蹴散らしていく。これならばすぐに終わると襲いかかるノイズをカウンターの要領で排除していく。体術、剣術ともにかの風鳴訃堂直伝の技術。そこらの雑音に後れを取る道理などありはしない。

 

 

「こんなものでしょうか」

 

 

残るのは灰のみ。元々群れからはぐれたようなものであり殲滅するのには数分もかからない。このままノイズの発生元へ行こうとした時に、通信が入る。

 

 

「…ノイズの反応が消えた?自壊にしてはいくら何でも早すぎると思いますが……はい…はい、撤収します」

 

「初陣にしては、些か物足りませんね…」

 

 

ギアを解きながら、嵐野琴葉は1人呟いた。

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