目が覚めたら狸妖怪で現代じゃん   作:酒田オト

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1話 目覚めと出会いじゃん

 

「む……」

 

 

気が付いたらうたた寝をしていたらしい。背中のクッションがやけに柔らかいなと堪能しながら目を開ける。

 

「うん…? えぇ!?」

 

そこに待っていたのはいつもの自分の身体……ではなく、明らかに細くなった白い肌、綺麗に膨らんだ胸に何も無くなった恥部。そして自分から生えた巨大なしっぽをクッションとして丸めて使っていた。

 

ど、どうなってるんだこれ!? 身体を触ってみてもただただ自分のだと感じるだけだし、頬をつねってみてもシンプルに痛みが走って夢じゃないと伝わってくる。

 

「まさか……異世界転生したのか……?」

 

俺は現代を生きていた男だし、当然世の中には異世界に転生して冒険するような小説があるというのは知っている。

 

改めて周りを見渡してみると一面森が広がり地面には石で整備された階段と道が続いて、その道の先を見れば……神社がある。

 

あれ? 現代じゃん。

 

日本の特徴である神社が見えて安心したやら異世界じゃないんだと落胆したやら複雑な気持ちだけど、取り敢えず近づいてみることにしよう。

 

鳥居をくぐった所で隣に手水舎があったので試しに水を覗いてみる。

 

「おお……かわいい」

 

目覚めた所で若干察し気味ではあったけど、その予想を上回るほど美人な女の子に俺はなっていた。さながら獣人のような出で立ちではあるけど、見慣れないはずの頭に付いた丸い耳と後ろにあるしましま模様のしっぽが不思議と自分にフィットしている感じがする。

 

それにしてもこれからどうしようか。うんうんと悩んでいると丸い耳が足音を捉えピンと立った。こんな耳としっぽ生やした変な姿を見られたらまずいだろ! と急いで近くに生えている草むらに飛び込み様子をうかがう。

 

「女性が一人と……んん?」

 

足音はあの歩いて来た10歳後半くらいの女の子一人だけだけど、目を凝らしてみるとその後ろで変な黒いもやが付いていて離れない。そのまま見ているとどうやら女の子は神社にお参りに来たみたいでお金を入れてなにやら願ってるみたいだった。

 

他には何もなくそのまま帰ろうとするので隠れながらこっそりと後を追いかける。階段に差し掛かったあたりで後ろのもやが女の子の足元に近づいて……足を引っ張った! 

 

「キャッ!」

 

慌てて草むらから飛び出しバランスを崩した女の子を抱き止める。まだ足を掴んだままの黒いもやを踏んで思いっきり蹴飛ばすとそのまま霧散して消えていった。

 

「あ、あの……ありがとうございます。その格好は……」

 

「あっえっと、これはえーっとね」

 

しまったぁ! 危ないところを助けたのは良いけどこの格好の言い訳がない! このままじゃ変な人だと思われてしまう!!

 

こちらの姿を下から上まで舐め回すように見た女の子はそのまま口を開いて……

 

「マミゾウのコスプレですか!?」

 

「えっ?」

 

「えっ…?」

 

気まずい空気が流れる。それ以外あるの…? みたいな視線が突き刺さって痛い。

 

「ごめん、マミゾウって何?」

 

「し、知らないんですか。ちょっと待ってください、今絵を見せますから!」

 

そう言ってスマホを少し触った後こちらに見せてくる。そこに映るのは水越しに見た自分にそっくりなキャラクターだった。

 

「これがマミゾウっていうキャラなの?」

 

「そうです!東方projectっていうシリーズのキャラクターで私大好きなんです!」

 

東方projectは前世で聞き覚えがある。でもこういうキャラクターが居るのは知らなかった。外見だけ借りてるみたいで申し訳ないな……しかも中身は男だし。

 

「それで、こんな山奥でどうしたんですか?」

 

「気が付いたらここで目が覚めて、自分でもよく分からないんだよね。この格好も起きたらこうなってたから」

 

「へぇー起きたらこの格好に……」

 

「君はどうしてここに来たの?」

 

「あ、申し遅れました。私は音海桐子(おとみとうこ)と言います。どうしてかと言われたら……最近運が無いことが多かったので厄払い的な理由です」

 

確かにあんな変なのが纏わりついてたら運が無いのも納得だ。

 

「貴女のお名前は?」

 

「俺の名前は……あ…れ?」

 

思い出せない。名前だけじゃない、自分がどこに住んでいたのかも、家族すらも思い出せない。ど、どういうこと? 前までどこかで暮らしてたはずなのに?

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

声をかけられてハッとする。気が付いたら冷や汗をすごくかいていた。

 

「大丈夫……なんか自分の事が思い出せなくて名前も分かんないみたい……」

 

「記憶喪失、ですか。泊まる場所に当てがないなら私の家に泊まって良いですよ!」

 

「ありがたいけど、ホントに良いの?」

 

「もちろんです! シッポモフリタイシ」

 

こうして桐子の小声に気付くことはなく、俺は家へと招かれるのであった。

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