目が覚めたら狸妖怪で現代じゃん   作:酒田オト

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2話 モフりとお風呂じゃん

 

「ここが私のお家です! ほとんど一人暮しだし遠慮は無用だから、さぁ入って入って」

 

音海さんに案内されて着いたのは綺麗な一軒家だった。

 

「お、お邪魔します」

 

今更になって付いてきてしまったことを少し後悔した。人を家に上げる時にこんな笑顔の人見たこと無いよ。

 

中に入ってみると整理された室内に所々にあるかわいいぬいぐるみーーー多分マミゾウを二頭身にしたものーーーや明るい色の家具が、いかにも女子の家って感じで感動してしまう。

 

「お腹は空いてる? 折角だからお昼ごはん作っちゃうけど」

 

思い返せば朝から何も食べずに結構歩いていたし、意識してみると自分がさらに空腹になっていくのが分かる。

 

「それじゃあお願いします」

 

「おっけー。そこのソファとかで休んでて」

 

そう言って鼻歌をしながらキッチンへと向かっていった。

 

残された俺はソファに座ろうとして……しっぽが邪魔になり失敗する。立ってる時は気にならなかったのだが、背もたれと自分の間に挟まってめちゃくちゃ窮屈に感じてしまう。

 

どうにか快適な座り方を探そうとしっぽを動かしてみたり、身体の角度を変えてみたりと悪戦苦闘していると音海さんがニコニコしながら料理を運んできた。

 

「お待たせ。そのしっぽってやっぱりコスプレとかじゃなく本物なんだね」

 

「うん、意識すればこんな風に動かせるし感覚もあるよ。ーーご飯いただきます」

 

そう言ってしっぽを左右に振らせながらご飯に手を付ける。味噌汁が胃に優しく染み込んですごく美味しい。

 

「そういえばー……名前思い出せないんだよね。思い出すまでで良いからマミゾウちゃんって呼んで良いかな?」

 

「良いけど、マミゾウのキャラクターとか性格とか全然知らないよ?」

 

俺としても名前はあった方が便利だしマミゾウちゃんって呼ばれるのも悪い気はしない。でも何も知らないのに名乗って大丈夫なのかな、と思って聞いてみる。

 

「じゃあどんなキャラクターなのか一緒に勉強しよっか」

 

「あっ」

 

地雷を踏んだかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、儂はもう疲れたのう」

 

「結構時間が経っちゃったね、大分上手になってきたし今日の勉強は終わりにしよっか」

 

地獄をみた。おかげで性格とかは結構掴めたけど、口調を間違えると叱咤されて強制的に直される。勉強の時以外なら気を付けなくて良いのが唯一の救いだ。

 

「音海さんって「桐子ね」……桐子って本当にマミゾウが好きなんだね」

 

「そりゃあもう、ミステリアスだけど母性があるところとか、モフモフのしっぽとか堪らないわよ」

 

「そんなに好きなら触ってみる?」

 

「さ、触っていいの!?」

 

身体を震わせて聞き返してくる桐子。ちょっと怖さを感じながらも勇気を絞ってしっぽを桐子の方に傾けてみると、優しく毛先を撫で始めた。

 

「サラッサラだね……」

 

先から中腹の方まで撫で回した後は、ギュッと抱きついてきたり顔をしっぽの中に埋めたりと堪能される。俺も痛かったりくすぐったかったりはせず、むしろ今まで感じたことの無い気持ちよさが伝わってきた。

 

「ひゃんっ!」

 

桐子の指がしっぽの付け根辺りを触れたところでビリッと電流が走ったみたいになってつい声を出してしまう。

 

「ごめん、痛かった?」

 

「いや、痛くはなかった……けど」

 

自分のものとは思えないくらい高い声を出してしまったのも相まってなにか恥ずかしくて、桐子の方を見ずに答える。

 

「それなら良かった……しっぽ触らせてくれてありがとう、いっぱい堪能できたわ。今日は歩いて疲れたと思うしお風呂に入って寝よっか。お礼に身体洗ってあげるね」

 

「ありが……ん?」

 

 

 

 

 

 

「もう~そんなに恥ずかしがらなくて良いのに」

 

「そうは言われても……のう?」

 

「口調をそうしてもダメですー」

 

結局お風呂場まで来てしまったが、やっぱり恥ずかしいし中身男の俺には目に毒すぎる! 見ないように必死に目を背けながら自分も服を脱いで中に入る。

 

「流してあげるから座ってね~」

 

さっきモフられていた時とはまた違う柔らかい手つきでしっぽや背中を洗われる。目を瞑りながら、お風呂場の暖かい空気で身体も暖まって力が抜けていくのが分かる。

 

「前はさすがに自分でやるからね」

 

「はーい」

 

前側を洗うために薄く目を開けるとやはりそこに居るのは美少女で、これが自分の姿だとはとても思えない。ボディソープを手に取り控えめに膨らんだ胸や細い腕に塗っていくと男の時とは比べものにならない柔らかさを感じてなんとも言えない気持ちになってくる。

 

身体を流し終わって二人でお風呂の中に入るとしっぽでかなり狭くはなるけどなんとか入ることが出来た。

 

「ねぇマミゾウちゃん、私って自分でも分かるくらい距離感の詰め方が下手……だと思うんだけど、迷惑だったりしない?」

 

「うーーん……大丈夫だと思うよ」

 

「ホント?」

 

「名前とか色々思い出せなくて、正直すごく怖い。でも桐子が優しくしてくれるからそんなに辛いってことはないんだ。改めて……ありがとう」

 

「……っもう! マミゾウちゃん! こっちこそありがとうだよ!」

 

「うぇっ!?」

 

突然抱きつかれて混乱し、そのままのぼせてしまったマミゾウであった。

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