目が覚めたら狸妖怪で現代じゃん   作:酒田オト

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3話 買い物と何かが見えるじゃん

 

「昨日はごめんね」

 

「こっちこそのぼせちゃってごめん。重かったでしょ?」

 

のぼせた後は桐子がベッドに運んで寝かせてくれたらしい。ついでに服もフワフワのパジャマにされていた。

 

「全然大丈夫! むしろ役得だったから!」

 

「それは良かった……のかな?」

 

むしろ元気そうだった。

 

「まぁその話は置いといて、今日はマミゾウちゃんの服を買いに行きたいんだよね。私のじゃちょっとサイズが小さいし」

 

なるほど。今のところ目覚めた時に来ていた服しか俺は持ってないし、別の服は必要になるだろうな。あれ? でも……

 

「それって俺も付いていくの? しっぽとか耳とか目立つと思うんだけど」

 

「コスプレイヤーて言ってごり押ししても良いけど……昨日の勉強でマミゾウが人里に居る時の話したじゃない? しっぽとか耳も本物だし、試してみる価値はあると思うのよね」

 

そう言ってどこから拾ってきたのか綺麗な緑色の葉っぱを取り出す桐子。勉強した時の記憶を思い返してみれば、確かにあの時のマミゾウはしっぽとか耳が付いていなかった。

 

「ちゃんと洗っておいたからそこは安心してね」

 

親切に洗ってくれた葉っぱを受け取ると試しに頭において祈ってみる。

 

「しっぽを失くす……しっぽを失くす…………っうわ!?」

 

急にバランスが取れなくなって思わず尻餅をついてしまう。後ろを見てみるとあんなに大きかったしっぽは影も形も無くなっていた。

 

「試してとは言ったけど本当に成功とは思ってなかった……大丈夫そう?」

 

心配して桐子が聞いてきたので、頷きながらゆっくりと立ち上がってみる。

 

「気持ち悪くとかなったりはしてないんだけど、すごく違和感があって動きづらいかな」

 

動物はしっぽで重心を取ると言うらしいがどうやらそれは俺にも当てはまるみたいで、我慢は出来るが立ってるだけでも動きがぎこちなくなってしまう。

 

「でも……ちょっと服を買いに行くくらいなら大丈夫だと思う」

 

「それじゃあ早めに買い物行こっか。頭の葉っぱは……この帽子で隠しておこうね」

 

桐子から高級そうな白いキャペリンを受け取り、俺たちは買い物へショッピングモールへと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかみんなこっちの方見てきてない? ほんとに歩き方とか大丈夫?」

 

「大丈夫だって! 全然変じゃないよ」

 

「それなら良いけど……」

 

いざ来てみたは良いものの、男の時よりもよっぽど視線を向けられてる気がする。どこか変なんじゃないかと思っちゃうけど桐子は問題ないと言うので信じることにする。

 

「今日は色々買うからね、早速お店に行くよ~」

 

手を繋いで先導する桐子に付いていくまま着いたのは、店頭にお洒落なマネキンが並ぶ綺麗なアパレルショップだった。

 

「取り敢えずこれ着てみて!」

 

あらかじめ言っておくと、昨日目が覚めた時にはマミゾウのキャラクター通りのスカートとドロワーズを着ていたから、女性物の服にめちゃくちゃ抵抗があるわけではない。既に体験済みである。

 

ただ抵抗が少ないからと言って恥ずかしくないという訳ではなく……太ももが見える短いスカートやノースリーブの服を試着すると恥ずかしくて鏡を直視出来ない。

 

「やっぱり素材が良いから何でも似合っちゃうね~」

 

「褒めてくれるのは嬉しいんだけど、もうちょっと落ち着いた服をお願いできない?」

 

「うーん……じゃあこれはどう?」

 

差し出された服を見ると白色と濃いベージュ色が組合わさったワンピースだった。着てみると頭に被っているキャペリンと良く合うし、露出も控えめで落ち着いている。

 

「これ良いね……似合ってる?」

 

「もっちろん! めちゃくちゃ可愛いよ!」

 

桐子からの太鼓判も貰って安心だ。

 

「上着はそれと何着か似合ってたのを買うとして……次は下着行こっか!」

 

「下…着……?」

 

「マミゾウちゃん、下はドロワーズ履いてるけど上は何も付けてないでしょ」

 

「確かにそうだけど、胸とか大きくないし付けなくても良いんじゃない……?」

 

「ダメだよ。ちゃんと付けてないと痛くなったりするんだから」

 

上着に関してはある程度許容出来ていたが、下着……ブラジャーとかに関しては自分が付けているイメージが湧かない。そうして固まっていると、桐子が店員さんを呼びあれよあれよというまに採寸が始まってしまった。

 

「めっちゃ恥ずかしかった……」

 

店員さんがニコニコしながらパパッと測ってくれたのでそんなに時間は掛からなかったのだけどそれでも何か大事なものを失ったような気がする……。ちなみにサイズはAだった。

 

「これで一旦必要なものは買えたかなー」

 

下着は結局上下どっちも買い、試着で気に入ったワンピースを着ながらショッピングモールの出口へと向かって歩く。

 

「……あれ? 財布落としたかも」

 

桐子が手提げを探しながら言う。

 

「ありゃ、戻って探さないとね」

 

「ごめん、出掛けるといっつもこんな事起きちゃうんだよね。……マミゾウちゃんと会った時も転びそうになっちゃってたし」

 

「あはは……確かにあれは危なかったね」

 

思い返しながら来た道を戻る。そういえばあの時の変な黒いもやは何だったんだろう? と考えていると、ふと目につくものがあった。

 

「ねぇ桐子、あそこにいる子供なんか変じゃない?」

 

「えっ子供?」

 

「ほら、ベンチの近くにいる子供が立ってる」

 

なぜ目についたのかと言えば、4~5歳くらいの子供が一人で居るからと答えるだろうけど、よく見るともっと違和感があることに気付く。キョロキョロと辺りを見渡しているけど不安気には見えないし表情も薄く笑っているように見える。

 

「ベンチの近くには誰も居ないけど……」

 

「え?」

 

桐子には見えてないのか? いや、それどころか周りの人達も子供が一人だというのに誰も反応していない。

 

「あっベンチの上に私の財布置いてある」

 

「ちょっ待って!」

 

ベンチに向かって歩きだした桐子を慌てて追いかける。そして財布を手に取ったところで……その子供が桐子へと歩きだした。

 

嫌な予感がして、触ろうとしている子供の腕を掴んで止める。すると、驚いたような顔をしてこちらを見てきた後、突然地面にしゃがみこんだ。

 

「……?」

 

どうしたのかと一歩近付いてみようとすると

 

「うぎゃっ!?」

 

足を掛けられ前のめりに思いっきり転んでしまう。

 

「マ、マミゾウちゃん?」

 

「何でもない……」

 

心配して桐子が声をかけてくれたので、返事をしながら子供の方を見てみるとこちらを指差しながらお腹を抱えて笑っていた。

 

「こ、こいつ」

 

「え~と、財布は拾えたから帰ろっか?」

 

「そうだね……帰ろう」

 

周りからの温かい目線も痛いし、桐子も居るから今日のところは帰ろう。次は覚えておけよこのいたずら小僧め……

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