目が覚めたら狸妖怪で現代じゃん   作:酒田オト

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4話 いたずら小僧を追え! 上

 

突然ですが俺は今、昨日買い物をしたショッピングモールに来ています。何故かって?

 

「やられっぱなしは癪じゃからのう」

 

前回笑い者にしてきたあのいたずら小僧をとっちめる為です。桐子や他の人は見えなかったことから、恐らくあいつは妖怪か幽霊かその類い。対して俺が転生したキャラ、二ッ岩マミゾウは聞けば大妖怪なのだそう。

 

中身の俺としても悔しい、キャラクターとしてもやられっぱなしは似合わない。よって口調もマミゾウモードでやり返しにきたという訳だ。ちなみに桐子は大学があるためーーー連絡用に余っていたスマホを貰ってはいるがーーー付いてきていない。

 

近くにあったカフェでコーヒーを啜りながら、窓から人通りが少なくなるまで眺める。その間もいたずら小僧は通りがかった人の靴ひもをほどいたり、ポケットの中に入れているスマホを落としたり、何処から拾ってきたのか黄色い帽子を被ってたりと地味にめんどくさいことを繰り返していた。

 

「そろそろ人が少なくなってきたかのう」

 

昼時が過ぎて人もまばらになったところでカフェから立ち上がり、いたずら小僧の元へと歩く。

 

「昨日ぶりじゃのう?」

 

近付きながら挨拶をする。するとこちらの顔を見た途端、身体に向かって思いっきり駆け出して……タックルしてきた。

 

「うおっ……と、ご飯が食りてないみたいじゃ、な!」

 

小僧を受け止めながら頭頂にげんこつを下ろす。

ふふふ、タックルで転ばそうなど100年早いわ。

 

右手で痛そうに頭をさすっているが、左手はまだ俺の身体に抱きついたままだ。

 

「どこをまさぐっておる……ってあぁっ!」

 

お尻の方に手が触れてつい気を取られている内に、ポケットの中からスマホを抜き取られてしまった。さらにあっかんべーと挑発して逃げようと走り出した。

 

「逃がすかっ!」

 

小僧を追いかけて駆け出すが、しっぽを消してるせいもあって重心がおぼつかずなかなか速度を出せない。

 

いつの間にかショッピングモールも抜け出していた。

その道中に横断歩道を渡りきれてないおばあちゃんを一気に抱えて運んで「ありがとうねぇ」お礼を言われたり、いたずら小僧が幼稚園児くらいの子供に軽くぶつかって風船が木に引っ掛かってしまったのをちょっとジャンプして取ってあげたり、こまごまと他の事がありつつも、人気のない路地の中まで追い詰めることが出来た。

 

「ここなら人はおらんな!」

 

頭のキャペリンの中から葉っぱを取り出すとしっぽと耳がポンッと出てくる。これで完全体だ! 足に力を入れ踏み込むと、一気に詰め寄って小僧の服を掴み持ち上げる。

 

「さぁ、スマホを返して貰おうかのう?」

 

最初は持ち上げられたままジタバタと暴れていたが、敵わないと分かると渋々スマホを差し出してきた。

 

「物分かりの良い子供は好きじゃぞ」

 

実際子供は嫌いじゃない。このくらいのいたずらならまぁ……多少のげんこつで許せる。そう思いながらスマホを受け取ると、突然小僧が俺の後ろを指を差しながら震えて固まってしまった。

 

またいたずらかな? と疑いながら後ろを振り替えようとして……

 

「ガハッ!?」

 

突然後ろから衝撃が来て吹き飛ばされる。 

 

いたた……一体何が起きた!?

 

小僧を右に抱えたまま衝撃に任せて一回転し、しっぽをクッションにして着地し振り返えると、その先には黒いもやを纏った巨大な肉塊がもぞもぞと蠢いていた。所々に人間らしき手や足が突き出ているからなおのこと気持ち悪い。

 

『ぼぉ……ぼ……』

 

「なんじゃあお前さん……?」

 

しかし質問には答えてくれず、代わりに返ってきたのは直径1mほどの、肉塊で出来た巨大な触手であった。

 

「二度目は当たらんわ!」

 

横に避けながら飛んできた触手を蹴り飛ばしてみるが、いまいち手応えがない。ならば本体は、と触手を掻い潜り左こぶしをぶつけてみるがやはり効いていなさそうだ。

 

反撃に来た触手をまた回避したり叩き落としたりしながら、どうしたものかと考えていると

 

「そいつの被っている帽子を投げろ!」

 

え? どゆこと? というか誰だ?

 

突然路地の入り口からハスキーな声が聞こえてきて、そちらの方を見てみれば赤い髪を一つ結んだ女性が立っていた。帽子ってこのいたずら小僧の被ってるやつのこと? と目で確認すると頷き返される。

 

ええい! よく分からんがくらえっ!

 

小僧から帽子を剥ぎ取り肉塊に向かってフリスビーのように投げる。すると触手が優しく帽子を包み込んで肉塊の中心に運び出した。

 

「今なら攻撃が効くはずだ!」

 

女性がそう叫んだのを聞いてライダーキックさながらに空中に飛んで叩き込むと、足が肉塊の中に沈んで、そして貫通する。振り返れば肉塊が徐々に透けて消えていくところだった。

 

『ぼぅ……』

 

完全に消えてなくなったみたいだ。

 

「うげぇ……足の感触が気持ち悪かったのう。まったく何だったのじゃ?」

 

「あいつは……言わば怨霊さ。この辺で人死にが出る事故でも昔あったんだろう」

 

「ほう?」

 

疑問をつい口にすると先ほどの女性が解説を加えてくれた。

 

「まぁそれは別に良いんだが……あんたは何だい? そのしっぽや耳……それにさっきの戦いぶりを見るに人間では無さそうだが」

 

続きは教えてくれないのかい。いや確かに自己紹介は大切だ、やっておこう。

 

「儂は……何者かと言われたら妖怪じゃな、多分」

 

「多分?」

 

「いやその、気付いたらこうなってたから……」

 

「はぁ? ていうかさっきまでの口調演技かよ」

 

そこ最初に突っ込んできます?

 

「取り敢えず……立ち話も何だからどこかの店に入るぞ。そっちの小さいやつの話も聞きたいからな」

 

こうして私は小僧を抱えたまま一緒にカフェへ同行、もとい連行されたのであった。




この話くらいバリバリの戦闘シーンは今のところ書かない予定です。
それにしても戦闘やギャグ描写は難しい……何度も読み返している内にいたずら小僧が羨ましすぎて憎悪が湧いてきました。
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