「それで、何からお話するんですか?」
「そうだねぇ……まずはお互いに自己紹介からしようか?」
近くにあったカフェに適当に入ったあと、赤髪の女性に話を振ると自己紹介しようと返ってきた。
「えっと……先ほども言いましたが多分妖怪の、名前は二ッ岩マミゾウって言います。ーーあっパンケーキとコーヒーお願いします」
自分の名前、そして恐らく妖怪であることを伝え、オーダーを取りに来た店員に注文する。
「私もコーヒーを一つ……職業は一応探偵をやらせて貰っている。まぁそれだけじゃ首が回らないからライターをやらせて貰うこともあるんだがね。名前は
探偵に作家とは……何というか、こんなドラマみたいな職業で生きている人もいるんだなぁと勝手に感心してしまう。
「じゃあ早速君に質問だけど、そこの子供やさっきの怨霊みたいに、そう言った類でちゃんと会話が成り立つやつは見たこと無いんだが……君はその辺人間っぽいよね?」
人間っぽいというか、元人間だ。
しかし、その辺の事は桐子にも話してない。というか男だったことや社会常識的なのは覚えてるが、それ以外は特に覚えてないので言っても言わなくても関係無いと思ってる。
「話せる理由は分かりません。起きたらこうなってました」
「ふぅん? 家とかはどうしてんのさ」
「友人……というか何というか、起きた時に出会った人のところで居候しているので衣食住は困ってません」
思い返してみて疑問に思ったが、良く桐子はこんな得体の知れないやつを家に誘おうと思ったな……今は恥ずかしいだけで性欲は出てこない身体だから良かったものの、心配になってくる。
「なるほどね。じゃあ次、そっちの子供は何なんだい?」
「多分、俺と同じ妖怪だと思います。昨日と今日を見た限りいたずら大好きなようで……のう!」
レシートを置く為の透明の筒を転がそうとしている小僧を、注文を運んでくる店員にバレないようにげんこつする。
「……あんた、そういうの相手する時はその口調になるのね」
「あはは……」
頭を押さえる小僧を横目に苦笑する。最初にマミゾウの方の口調で話しかけたせいでこっちに定着してしまった。
「まぁ何でも良いんだけど、そいつは消滅させないのかい? さっきの怨霊みたいに」
「それは……何故ですか?」
「私が見てきた限り、怨霊や妖怪の類いは人に仇なす事をする。時には命を奪うこともな。危険だとは思わないか?」
ふむ。確かに藤崎さんの言ってることも一理あると思う。さっき戦っていたあれに万が一普通の人間が出会ったらどうなるかは想像に難くない。
でもあれと小僧は違う。確かにいたずらはしてくるが、命に関わるようなことはしていない。例えば桐子と会った時のあのもやみたいに、階段で足を転ばすとかしてくれば危険だとは思うが。
「あの怨霊とは違います。それにもやの大きさも違う」
「もや?」
「はい。怨霊には大きくもやが巻いていましたがこの小僧には少ししかありません」
「私には、そのもやってのは見えたことがないな」
このもや俺にしか見えてないのか……そういうのが見える人でも、こういう個人差があるのかな?
「それでも、万が一の危険性があるんじゃないか?」
「万が一まで考えたら、それはもう人間にだって万が一があるでしょう? 私も、貴女も」
そう答えると藤崎さんは目をしばらく閉じ、ふっと笑った。
「……ふふっ、それもそうだな。質問責めして悪かった。代金は私が払うよ」
「ありがとうございます。助かります」
お互いに会話を交わした後立ち上がる。
「あぁ最後に、もしお金に困ったりしたら私の事務所に来ておくれよ。いつでも歓迎するぞ」
そう言って内ポケットから名刺を差し出してくれた。実際衣食住全てで桐子に負担をかけてしまっているのでこれは助かる。
「じゃあお会計をお願いします……ってあれ? 財布がないぞ……?」
クールにレジに向かった藤崎さんであったが、最後の最後だけ締まらなかった。ハッとして席の方を見てみると、そこには笑顔で赤い財布を持つ小僧が立っていた。
こっこいつ、折角人が弁護してやったのに……
「おしおきが必要みたいじゃな? 小僧よ」
プルプル首を横に振る頭にげんこつを落として、この後気まずい空気が流れたが無事に? 藤崎さんとの出会いを終えたのであった。
この話で今のところメインとなる登場人物は全員出ました。
ちなみにいたずら小僧は盗んだ訳じゃなく、置き忘れてたのをマミゾウちゃんに教えてあげただけです。かわいそうですね。