目が覚めたら狸妖怪で現代じゃん   作:酒田オト

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8話 加害者は誰だ? 上

 

『じゃあ12時に事務所に来ておいてくれ』

 

『わかりました』

 

藤崎さんからかかって来た電話を切る。どうやら作家ではなく探偵としての仕事が出来たらしく、それで俺の方にも手伝いをしてほしいらしい。

 

「どこか出掛けるの?」

 

「藤崎さんのところに、仕事があるんだって」

 

「ふ~ん…」

 

ソファに座りながら聞いていたのか、桐子からの質問に答えるとジト目でこちらを覗いてきた。

 

「そんな長く居なくなる訳じゃないよ」

 

「夜ご飯までには帰ってきてよね」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

葉っぱによる変化でしっぽと耳を隠し、フォーマルなスーツに着替えて事務所へと向かう。

 

ここで少し、俺がこの世界に向き合う為に考えたことを纏めようか。まず一人称、いくら前世が男だったとはいえ今の身体は明らかに女性のもの。心の中はともかく誰かと話す時の一人称は私に直そうと思う。

 

そしてもう一つは、この世界の出来事や人に対して誠心誠意向き合うことだ。当たり前と言われたらそうなんだが、今までそうしていたかと言われると……自信がない。なので自分に気合を入れる意味でもある。

 

そうこう頭で考えている内に事務所に着いたみたいだ。時刻は11時45分でしっかり15分前行動。この探偵のお手伝いというのもいかにもフィクションぽくはあるがこの世界で得た仕事。しっかり頑張らねば。

 

「お邪魔します」

 

「おう、来てくれたか。服もちゃんとしてるな……真面目で結構」

 

壁に掛けられたシンプルな時計をちらっと確認しつつ藤崎さんは返事をくれた。

 

「依頼者は12時半に来るらしいから適当に冷蔵庫の飲み物でも飲んで待っててくれ」

 

言いながら指を指してくれた方向を見るとホテルによくあるような小さめの冷蔵庫が置いてある。ちょうど歩いてきて喉が渇いていたのでお礼を言いながら中身を覗くと、大量のエナドリと……端にお茶が数本置いてあった。

 

「今日の依頼ってどんなの何ですか?」

 

冷蔵庫の中からお茶だけ抜き取りながら聞いてみる。探偵なんて某頭脳が大人の少年くらいでしか見ないから疑問だった。

 

「男の人でストーカー被害にあってるとか言われたな。詳しくは会ってから聞いてみないと分からない」

 

「そういう依頼が多いんですか?」

 

「あぁ、そもそも依頼自体少ないが……大体ストーカーとか浮気調査とかになるよ。よく見る事件調査とかはフィクションの世界だ」

 

前世に見てた頃もちょっと思ってはいたが、やっぱり事件とか派手なもの無いらしい。むしろあれが現実だったら恐ろしくて即辞表していたところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく談笑しながら待っていると、部屋にピンポーンと呼び鈴が鳴り響いた。藤崎さんがドアを開けに行くのを横目に立ち上がり服の皺を伸ばしておく。

 

そうして入ってきたのは事前の情報通り男で、大人しそうな印象を受ける青年だ。そのまま二人は対面する椅子に座り、俺は藤崎さん側の椅子の後ろに立つ。

 

「本日はお越しいただきありがとうございます。私が探偵をやっています、藤崎香織です。こちらは助手の二ッ岩です」

 

名前を紹介されたのでペコリと頭を下げる。

 

「お名前を伺っても?」

 

「あっ斎藤隆也と言います」

 

「斎藤さんですね、それではご依頼の方お聞かせください。二ッ岩、飲み物出しといて

 

出すのをすっかり忘れていた。こういう人を招き入れるような体験が少なかったせいだと勝手に恨みながら慌てて冷蔵庫へ向かう。

 

「電話でも話した通りなんですけど、最近ストーカーというか……視線を感じたり、家の中で物がいつの間にか移動してたりするんです」

 

「それは……私が言うのもあれですが警察には連絡しないので?」

 

「そこまで大事にはしたくないなと」

 

「はい、お茶をどうぞ」

 

ここでコップに注ぎ終えたお茶を斎藤さんの方に置いて再び定位置に戻る。

 

「加害者の心当たりは……」

 

「詳しい被害は……」

 

その後も藤崎さんによる聞き取りが続いておよそ1時間弱、藤崎さんにお礼と、お茶をありがとうと俺に斎藤さんは言って依頼の相談が終わった。

内容を纏めると、被害は付きまとわれている感覚、家を少し荒らされているというのがメインで他はなく、またそういう被害に遭う心当たりもないと言う。

 

「結局どうでした?」

 

「こういう一般人相手のストーカーは大抵恋愛関係のもつれで、連絡手段を使ってそれで何回も……とか、後は家に貼り紙したりというのがあるんだけど、今回は直接的な被害は無いらしいからな。にしては家に侵入していたりよく分からんが」

 

「ほおほお……」

 

「ま、とにかく被害者の家を張り込むってことになりそうだ。明日の朝またここに来といてくれ」

 

さすが探偵を仕事にしているだけあって藤崎さんはすぐにやる事を決めていた。見習いたいくらいの頭の回転の速さである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「おかえり! 初仕事どうだった?」

 

帰ると同時に犬が如く桐子が飛び込んで聞いてきた。しっぽを振る姿を空見しそうだ。

 

「明日の朝から張り込むみたい、詳しいことは守秘義務とかで言えないけど」

 

「へぇ~探偵っぽいね、お昼はどうするの?」

 

「そういえばどうしようかな」

 

考えてなかったけど、張り込みっていうくらいだからお昼も必要だよな……藤崎さんに言えば用意してくれそうだけど申し訳ないし、適当にコンビニとかで買おうかな。

 

「コンビニとかでかな?」

 

「ほぉ~私というものが目の前に居ながらコンビニとは……」

 

「え?」

 

「そんな所で買うよりも私が作りましょう!」

 

作ってくれる……? いや、嬉しいけど、前世でももうずっと手作り弁当なんて食べてなかった。いやでも、年下の女の子に作られるのもなにか恥ずかしいような……

 

「どうしたの? それとも……私の作る弁当は嫌?」

 

「そんなことない! けどちょっと恥ずかしいような……

 

目を逸らして言いながら、朝に考えたことが頭によみがえる。ここで前世とかに拘って遠慮したら誠心誠意向き合ってないかもしれない、でも男としてのプライドが……

すると桐子に両手を繋がれる。

 

「じゃあ嫌じゃ無いんだね! 恥ずかしくない弁当を作ってあげるから楽しみにしといて!」

 

「は、はいお願いします……」

 

桐子はすごいな、と思った。




一応加害者は誰だ編のプロットは出来てます。
モチベの為に感想か評価が……欲しい!(直球)
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